CVD(化学気相成長)とは
CVD(Chemical Vapor Deposition、化学気相成長)とは、原料を含むガスを反応室へ導入し、基板の表面で化学反応を起こして薄膜を作る成膜方式です。 気相から表面へ回り込んで反応するため、深い溝や穴の側壁と底も覆えます。
CVDの出発点は、膜になる材料を気体として運ぶという発想です。東京エレクトロンの公式用語集は、CVDを、必要な材料を含むガスを反応室へ導入し、化学反応を誘起して基板上へ薄膜を堆積させる化学的プロセスとして記述しています。同用語集はまた、半導体の製造工程でCVDが回路を形成するための配線材料や絶縁膜の成膜に使われると述べています。
化学反応で膜を作るという性質は、そのまま被覆の形へ出ます。気相の分子は溝の奥まで拡散してから表面で反応するため、入口だけが厚くなる度合いが小さくなります。したがってCVDは、層間絶縁膜、パッシベーション膜、バリア膜のように深い凹凸を覆う膜で選ばれます。
反応を進めるエネルギーの与え方によって、CVDはさらに細かい形式へ分けられます。熱で進める形式、圧力を下げて均一性を上げる形式、プラズマで反応を促進する形式、有機金属を前駆体に使う形式の4つが代表で、この分類がそのまま装置の形と適用工程を決めます。
段差被覆性はどこで決まるのか
Section titled “段差被覆性はどこで決まるのか”段差被覆性を左右するのは、表面へ届いた分子が「その場で反応する確率」です。この確率が高い原料は入口の側壁で先に消費され、溝の底へ届く量が痩せます。確率が低い原料は側壁で何度も跳ね返りながら奥へ入り、底まで行ってから反応します。被覆の形は、原料の選び方と表面温度でほぼ決まります。
液体原料を使うと、この確率を低い側へ振れます。サムコの液体ソースCVD装置 公式製品ページは、TEOSを原料に使うLSCVD法でステップカバレージと埋め込み特性に優れた成膜が可能という点、一般的なアノードカップリング方式に加えて世界で唯一カソードカップリング方式をラインアップしている点を述べています。同ページはカソード方式の利点として、プラズマ中のイオンを積極的に利用できること、イオンエネルギーの制御による良好なカバレージ性、自己バイアスのイオンアシストによりアノード方式より低温で成膜できることを挙げ、TEOSとカソード方式の組み合わせでTSVの側壁絶縁膜を高アスペクト比のビアホール側壁にも低温で形成できると記しています。
数字も同ページに載っています。液体ソースCVD装置は80〜400℃程度の低温で成膜でき、樹脂基板などへも載ります。セルフバイアス法による成膜速度は300nm/min以上とされています。ø300mmウェーハ対応のPD-330STCでは、カソードカップリング法で100nm/min以上かつ低ストレス、80℃からの低温成膜という帯が示されています。80℃という下限は、樹脂の上に絶縁膜を載せる用途で意味を持つ数字です。
プラズマを入れると増えるつまみ ── 周波数
Section titled “プラズマを入れると増えるつまみ ── 周波数”PECVDでは、熱に加えてプラズマが原料を分解します。分解を担うのは主に電子で、成長中の膜を叩くのはイオンです。この二役を1つの周波数で調整すると、レートと応力が同じ向きへ連動します。そこで周波数を二段にします。
サムコのPD-2201LC 公式製品ページは、この装置が従来の13.56MHzのプロセスに加えて400kHzを重畳した二周波プロセスに対応し、膜応力を効果的に制御できると述べています。オプションとして2周波(13.56MHz+400kHz)とVHF(27、40、60MHz)のプロセスにも対応します。同ページは装置側の作り込みとして、四方向排気構造による対称なガスフローでの均一性、試料搬送に連動した防着板の昇降機構によるプラズマの閉じ込めを挙げ、ø8インチまでのウェーハ直接搬送と小径ウェーハの多数枚同時成膜(ø2インチ×9枚、ø3インチ×5枚、ø4インチ×3枚)に対応すると記しています。
Oxford Instruments Plasma Technologyの公式技術ページも同じ設計を採っています。同ページは装置構成として、上部電極をRFで駆動し下部の基板電極はRFバイアス無しとする形、基板を加熱した電極の上へ直接載せる形、上部電極のシャワーヘッドからガスを入れる形を挙げ、高い周波数と低い周波数を混ぜる手法で膜応力を制御できると記しています。PlasmaPro 100 PECVDでは13.56MHzと100kHzを上部電極へ加えて応力制御と膜の緻密化を実現し、抵抗加熱電極は400℃または1200℃までとされています。
低周波を増やす向きでは、成長中の膜が受けるイオンの叩きが強くなり、膜が緻密になって応力が動きます。低誘電率膜(Low-k)のように膜中へ空隙を残したい膜では、この叩きが誘電率を上げる向きに働くため、逆に低周波を絞り、応力の制御幅を差し出します。高周波側を上げる向きでは分解が進んでレートが伸びますが、パーティクルの素になる気相での重合も増えます。バイアス電力とRF電源・整合器の設定は、この二役の配分として持ちます。
バッチの取り方と装置の形
Section titled “バッチの取り方と装置の形”小径ウェーハでは、トレイに何枚載せるかが生産性を決めます。サムコのPD-3800L 公式製品ページは、ø360mmの大面積トレイに小径ウェーハを多数枚設置して同時に成膜する量産用プラズマCVD装置として、ø2インチ×26枚、ø3インチ×12枚、ø4インチ×7枚、ø6インチ×3枚を挙げ、独自の反応室構造による優れたトレイ面内均一性とバッチ間安定性、ロードロック室の搭載を述べています。PD-2201LCのトレイはø2インチ×9枚、PD-3800Lは同じ2インチで26枚です。同じレシピでも装置を変えれば1バッチの枚数が9枚から26枚へ、こちらの計算で約2.9倍になり、原料の消費と面内分布の出方も変わります。
300mmの熱系では、KOKUSAI ELECTRICの製品ページが反応炉の作り込みを挙げています。同ページはAdvanced TSURUGI Plus-Ⅲについて、独自構造でローディング効果を低減して膜厚均一性を向上させ、反応ガスの置換効率を上げて成膜にかかる時間を短縮すると述べ、Advanced TSURUGIの省フットプリント化を従来比マイナス10%と記しています。ラージバッチ側ではAdvancedAce-Ⅱが同社比で最大1.75倍、QUIXACE-Ⅱが最大1.25倍、200mm世代のVERTEX Revolutionでは高生産性炉175枚と低天井対応炉100枚のオプションです。
膜質を後から直す装置も同ページに並びます。同社は形成した薄膜へプラズマや熱を加えて膜中の不純物を除き膜質を改善するトリートメント装置を掲載し、枚葉トリートメント装置MARORAについて、独自のMMT方式で約1eVの低電子温度のプラズマを効率良く作り、プラズマダメージフリーなプラズマ処理を実現すると述べています。同ページはMARORAの生産性を従来モデルの最大2倍としています。約1eVという電子温度は、膜へのイオンの叩きを抑えたい場面で意味を持つ数字です。
熱CVDとLPCVD
Section titled “熱CVDとLPCVD”熱CVDは、基板を加熱して原料ガスの反応を進める最も基本の形式です。膜質が安定する一方で、基板温度が高くなるため、既に作り込んだ配線や素子の熱バジェットを圧迫します。
LPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition、減圧CVD)は、反応室の圧力を下げてガスの平均自由行程を伸ばし、ウェーハ間および面内の膜厚均一性を高めます。KOKUSAI ELECTRICの製品ページは、同社グループがLP-CVD技術、酸化技術、アニール技術、拡散技術、ALD技術に対応した成膜プロセス装置を提供していると述べ、LP-CVDをLow Pressure Chemical Vapor Deposition(減圧化学気相成膜)と注記しています。縦型炉で多数枚を同時に成膜する形式が、SiNやポリシリコンの成膜で広く使われます。
PECVDとMOCVD
Section titled “PECVDとMOCVD”PECVD(プラズマ支援CVD)は、プラズマで原料ガスを分解して反応を促進することにより、低い基板温度で膜を作ります。Oxford Instruments Plasma Technologyの公式技術ページは、PECVDを多様な膜種の成膜に使われる確立した手法として挙げ、屈折率、応力、電気特性、ウェットエッチレートを制御項目として示し、高品質なパッシベーション膜や高密度マスクの形成という用途を挙げています。配線工程のあとに絶縁膜を載せる場面では、この低温性が結果を左右します。
MOCVD(有機金属CVD)は、有機金属を前駆体に使い、GaNやGaAsなど化合物半導体のエピタキシャル成長を担います。パワー半導体、LED、光デバイスの製造で中心的な役割を持ちます。
何を測ると追えるか
Section titled “何を測ると追えるか”膜厚と屈折率は膜厚測定とエリプソメトリで同時に取ります。屈折率は組成と密度の代理指標になるため、同じ膜厚でも屈折率がずれた方向は膜質がずれた方向です。応力は反りとして成膜前後の差分で測ります。ウェットエッチレートは膜の疎密を映すため、Oxford Instruments Plasma Technologyが制御項目に挙げているとおり、レシピの当たり方を見立てる指標になります。段差被覆性は断面のステップカバレッジとして実測し、溝の底のボイドも併せて確かめ、SPCの管理図へ載せます。
この用語に対応する装置と製造メーカー
Section titled “この用語に対応する装置と製造メーカー”装置カタログDBから、この用語に一致する製品familyを持つメーカー 5社/6family を引いています。 各行は各社の公式製品ページを出典とします。 DBからの生成日: 2026-09-03
- AMAT
- Producer CVDCVD / Deposition
- Producer InVia CVDCVD / Deposition
- Annealsys
- MC DLI-CVD / DLI-ALD systemsDeposition / DLI-CVD / ALD
- KOKUSAI ELECTRIC
- TSURUGI / AdvancedAce / QUIXACE batch deposition familyDeposition / Batch CVD
- NAURA Technology Group
- NAURA PVD / CVD / ALD equipmentDeposition
- アルバック
- CVD / PE-CVD systemsCVD / Deposition
出典は各社の公式製品ページです。 装置カタログDB では、同じ製品familyを工程・メーカー横断で検索できます。
関連するデータ・ツール
Section titled “関連するデータ・ツール”- CVD・PECVDの工程ページ ── 工程分類と、この工程に接続している公開求人
- CVDの求人一覧 ── 現在この工程で募集している企業
- 装置カタログDB ── 公式製品ページ単位のメーカーと製品family
- 工程別の装置シェア ── 成膜を含む工程別のvendor share
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”CVDとは何ですか?
CVD(Chemical Vapor Deposition、化学気相成長)は、原料を含むガスを反応室へ導入し、基板の表面で化学反応を起こして薄膜を作る成膜方式です。東京エレクトロンの公式用語集は、CVDを、必要な材料を含むガスを反応室へ導入して化学反応を誘起し、基板上へ薄膜を堆積させる化学的プロセスとして記述しています。
CVDにはどんな種類がありますか?
反応を進めるエネルギーの与え方と圧力で別になります。熱CVDは基板の熱で反応させます。LPCVD(減圧CVD)は圧力を下げて均一性を高めます。PECVD(プラズマ支援CVD)はプラズマで反応を促進し、低い基板温度で成膜します。MOCVD(有機金属CVD)は有機金属を前駆体に使い、化合物半導体のエピタキシャル成長を担います。
CVDとPVDの違いは何ですか?
膜になるまでの経路が異なります。CVDは気相の原料が基板の表面で化学反応を起こして膜になります。PVDはターゲット材料から物理的に叩き出された粒子が飛来して積もります。CVDは表面反応で回り込むため段差被覆性に優れ、PVDはターゲット組成をほぼそのまま膜へ移せます。
CVDとALDの違いは何ですか?
原料の供給の仕方が異なります。CVDは原料ガスを同時に流して反応を連続させるため、膜厚は成膜レートと時間の積で決まります。ALDは前駆体と反応剤を交互に流し、各ステップが自己停止するため、膜厚はサイクル数で決まります。ALDはCVDから派生した手法にあたります。
CVDでどんな膜を作りますか?
層間絶縁膜、パッシベーション膜、バリア膜、SiN、SiO₂、ポリシリコンなどが代表例です。深い凹凸を覆う必要のある膜で選ばれます。Oxford Instruments Plasma Technologyの公式技術ページは、PECVDが高品質なパッシベーション膜や高密度マスクの形成に使われると挙げています。
PECVDの二周波とは何ですか?
高い周波数と低い周波数を重ねて電極へ入れる方式です。サムコは公式製品ページで、PD-2201LCが従来の13.56MHzのプロセスに加えて400kHzを重畳した二周波プロセスに対応し、膜応力を効果的に制御できると述べています。Oxford Instruments Plasma TechnologyもPlasmaPro 100 PECVDについて、13.56MHzと100kHzを上部電極へ加えることで応力制御と膜の緻密化が可能になると記しています。
CVDはどのくらい低い温度まで下げられますか?
原料と方式で変わります。サムコの液体ソースCVD装置の公式製品ページは、80〜400℃程度の低温成膜が可能で樹脂基板などへも成膜できること、独自のセルフバイアス法により300nm/min以上の高速かつ低ストレスの成膜が可能という点を挙げています。ø300mm対応のPD-330STCでは、80℃からの低温成膜と100nm/min以上の成膜速度を記しています。
CVD装置のメーカーはどこですか?
当サイトの装置カタログDBでは、CVDに一致する製品familyを持つメーカーを公式製品ページ単位で引けます。ラムリサーチ、KOKUSAI ELECTRIC、アルバック、Applied Materials、AIXTRON、Veeco、SAMCO、Oxford Instruments Plasma Technologyなどが該当します。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- CVDとPVDの違い(成膜プロセス比較) ── 成膜原理、段差被覆性、成膜温度、代表装置メーカー
- 酸化・成膜工程の全体像 ── 成膜工程が前後の工程とどう並ぶか
この記事の事実は次の一次資料を根拠とし、各URLの到達可否をこちらで実測しています。したがって、リンク先が移動または消滅した場合は、その旨をこのページへ反映します。
- 東京エレクトロン 公式用語集「Chemical Vapor Deposition」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── CVDの一般形と、配線材料および絶縁膜の成膜という用途
- Oxford Instruments Plasma Technology「PECVD」公式技術ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 制御項目(屈折率・応力・電気特性・ウェットエッチレート)、上部電極RF駆動と下部電極のRFバイアス無し、高低の周波数混合による応力制御、PlasmaPro 100 PECVDの13.56MHzと100kHz、抵抗加熱電極の400℃または1200℃
- KOKUSAI ELECTRIC「製品」公式ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── LP-CVDの正式名称と対応プロセス群、ローディング効果の低減、従来比マイナス10%の省フットプリント化、1ロットあたり最大1.75倍と1.25倍、VERTEX Revolutionの175枚炉と100枚炉、MARORAのMMT方式と約1eV、従来モデル最大2倍の生産性
- サムコ「プラズマCVD装置 PD-2201LC」公式製品ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 13.56MHzへ400kHzを重畳した二周波、VHF(27・40・60MHz)オプション、四方向排気構造、防着板昇降機構、ø8インチまでの直接搬送、ø2インチ×9枚・ø3インチ×5枚・ø4インチ×3枚のトレイ
- サムコ「プラズマCVD装置 PD-3800L」公式製品ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── ø360mmの大面積トレイ、ø2インチ×26枚・ø3インチ×12枚・ø4インチ×7枚・ø6インチ×3枚、ロードロック室の搭載
- サムコ「液体ソースCVD装置」公式製品ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 80〜400℃程度の低温成膜、セルフバイアス法による300nm/min以上、カソードカップリング方式の利点、TEOSによるTSV側壁絶縁膜。ø300mm対応のPD-330STC(同日実測、200)は100nm/min以上、80℃から
- サムコ「ALD装置 AD-800LP」公式製品ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 有機金属原料と酸化剤の交互供給、表面反応のみでの成膜、数百ミリ秒以下のパルス供給
- 装置と製造メーカーの行は
intel.equipment_vendor_families(公式製品ページ由来)から生成