ALD(原子層堆積)とは
ALD(Atomic Layer Deposition、原子層堆積)とは、前駆体と反応剤を交互に供給し、表面で自己停止する反応を繰り返して薄膜を作る成膜技術です。 膜厚はサイクル数で決まり、深い穴や溝の内部でも膜厚差が出にくくなります。
ALDの中心にあるのは、反応が勝手に止まるという性質です。Oxford Instruments Plasma Technologyの公式技術ページは、前駆体と条件を適切に選ぶとこの反応が自己停止すること、その理由が表面の反応サイトの数に限りがあることだと記述しています。表面が前駆体で覆い尽くされた時点で、そのステップの反応はそこで止まります。
自己停止という性質は、そのまま膜厚制御の方式を決めます。同じ公式技術ページは、ALDが1サイクルあたりサブオングストローム単位の膜厚を与え、成膜の制御が原子スケールで得られると述べています。1オングストロームは0.1nmです。したがって、狙う膜厚に対して必要なサイクル数を決めれば、成膜時間の揺らぎが膜厚へ乗りにくくなります。
CVDと比べると、この差は原料の供給の仕方に由来します。東京エレクトロンの公式用語集は、CVDを、必要な材料を含むガスを反応室へ導入して化学反応を誘起し、基板上へ薄膜を堆積させる化学的プロセスとして記述しています。CVDは原料を同時に流して反応を連続させるため、膜厚は成膜レートと時間の積になります。ALDは前駆体と反応剤を時間で分け、各ステップを自己停止させます。
高アスペクト比でのコンフォーマル性
Section titled “高アスペクト比でのコンフォーマル性”ALDが選ばれる最大の理由は、深い構造の中で膜厚が揃うことです。前掲のOxford Instruments Plasma Technologyの公式技術ページは、ALDが優れた膜厚制御と均一性を与えるだけでなく、高アスペクト比構造の3次元形状をコンフォーマルに被覆できると述べています。同ページはまた、自己停止する表面反応に由来してピンホールとパーティクルの水準が低く保たれる点も挙げています。
コンフォーマル性そのものは測定と解析の対象です。V. Cremersらの査読レビュー「Conformality in atomic layer deposition」(Applied Physics Reviews 6, 021302, 2019)は、ALDのコンフォーマリティを、解析の手法とモデリングの手法に分けて現状を示しています。ALDの基礎全体については、S. M. Georgeの「Atomic Layer Deposition: An Overview」(Chemical Reviews 110, 111, 2010)が標準的な参照文献です。
PEALDと熱ALD
Section titled “PEALDと熱ALD”反応剤の与え方で、ALDは熱ALDとPEALDの2通りになります。熱ALDは基板の熱で表面反応を進めます。PEALD(プラズマ支援ALD)はプラズマで反応種を作るため、熱ALDより低い基板温度で成膜します。前掲のOxford Instruments Plasma Technologyの公式技術ページは、プラズマALDの利点として、水素プラズマを使う金属化学の実効性、化学量論と相の制御、核生成遅れの低減を挙げ、SiO₂、TiO₂、Al₂O₃をプラズマALDでコンフォーマルに成膜した例を示しています。
温度の上限が判断を分けます。既に作り込んだ配線や素子の熱予算に余裕がある工程順であれば熱ALDが使えます。温度に上限のある材料や、配線工程のあとに膜を載せる場面では、基板温度を下げられるPEALDを選びます。
この用語に対応する装置と製造メーカー
Section titled “この用語に対応する装置と製造メーカー”装置カタログDBから、この用語に一致する製品familyを持つメーカー 8社/10family を引いています。 各行は各社の公式製品ページを出典とします。 DBからの生成日: 2026-08-21
- AMAT
- Applied Endura Trillium ALDALD / Deposition
- Olympia ALDALD / Deposition
- Annealsys
- MC DLI-CVD / DLI-ALD systemsDeposition / DLI-CVD / ALD
- ASM
- ASM ALD and atomic-scale deposition portfolioDeposition / ALD
- Lam
- ALTUS HaloALD
- Striker Product FamilyALD / Deposition
- NAURA Technology Group
- NAURA PVD / CVD / ALD equipmentDeposition
- Oxford Instruments Plasma Technology
- Atomfab / FlexAL / PlasmaPro ASP ALD familyALD / Atomic Scale Deposition
- Piotech
- Piotech ALD SeriesDeposition / ALD
- Samco
- ALD / Anode PECVD / Cathode PECVD deposition systemsDeposition / ALD / PECVD
出典は各社の公式製品ページです。 装置カタログDB では、同じ製品familyを工程・メーカー横断で検索できます。
上の10件の公式製品URLは、2026年8月21日に1件ずつ実測しました。200を返したのは5件(ASM、ラムリサーチ2件、SAMCO、Annealsys)です。Oxford Instruments Plasma Technologyの1件は2ホップのリダイレクトを経て plasma.oxinst.com/technologies/atomic-layer-deposition へ着地し、DB側のURLが古いままでした。NAURAの1件は404を2回再現しました。Applied Materialsの2件は403とタイムアウト、Piotechの1件はTLSの失敗で、この3件は本文へ到達した回数が0回です。403やタイムアウトを製品の終了と受け取ると、生きている製品ページを落とします。そのため、この3件は生死を保留したままDBに残しています。
学会でのALDの出現
Section titled “学会でのALDの出現”当サイトが収録している学会abstractのうち、ALDまたはPEALDに語単位で一致したものを数えました。2026年7月22日抽出時点の収録分です。
| 学会 | 開催年 | タイトル一致 | 本文まで含む | 収録abstract数 |
|---|---|---|---|---|
| AVS | 2025 | 5件 | 100件 | 912件 |
| ICSCRM | 2025 | 7件 | 17件 | 510件 |
| VLSI TSA | 2026 | 3件(PEALD表記) | 7件 | 103件 |
| ESREF | 2025 | 0件 | 1件 | 93件 |
VLSI TSA 2026の3件はいずれも PEALD 表記です。ALD の語単位一致で拾えるのは0件、PEALD をエイリアスに加えると3件になります。エイリアスを登録した検索が、この3件を拾います。
この表は収録済みabstractに対する集計であり、学会ごとに1開催年分ずつを収録している段階です。ここから言えるのは各学会1開催年分の断面までで、年次推移は同じ学会の収録が2開催年分以上になってから示します。収録範囲は学会一覧に載せています。
関連するデータ・ツール
Section titled “関連するデータ・ツール”- ALD(原子層堆積)の工程ページ ── 工程分類と、この工程に接続している公開求人
- ALDの求人一覧 ── 現在この工程で募集している企業
- 装置カタログDB ── 公式製品ページ単位のメーカーと製品family
- 工程別の装置シェア ── 成膜を含む工程別のvendor share
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”ALDとは何ですか?
ALD(Atomic Layer Deposition、原子層堆積)は、前駆体と反応剤を交互に供給し、表面で自己停止する反応を繰り返して薄膜を作る成膜技術です。前駆体が表面を覆い尽くすと反応がそこで止まるため、1サイクルで載る膜厚は供給時間によらず一定です。膜厚はサイクル数で決まります。
ALDとCVDの違いは何ですか?
供給の仕方が異なります。CVDは原料ガスを同時に流し、化学反応を連続させて膜を成長させるため、膜厚は成膜レートと時間の積で決まります。ALDは前駆体と反応剤を交互に流し、各ステップが自己停止するため、膜厚はサイクル数で決まります。この差が、高アスペクト比構造での被覆均一性の差になります。
ALDの1サイクルあたりの膜厚は何nmですか?
Oxford Instruments Plasma Technologyの公式技術ページは、ALDが1サイクルあたりサブオングストローム単位の膜厚を与えると記述しています。1オングストロームは0.1nmです。1サイクルあたりの膜厚は材料と成膜条件ごとに異なるため、実際の値は成膜する膜種ごとに実測します。
ALDが高アスペクト比の穴や溝に強いのはなぜですか?
反応が表面で自己停止するためです。気相の前駆体が溝の奥まで拡散して表面を覆い尽くすまで待てば、入口も側壁も底も同じ回数だけ反応します。飛来方向に依存するPVDや、レートが供給律速になりやすいCVDと比べ、深い構造の中で膜厚差が出にくくなります。
PEALDと熱ALDの違いは何ですか?
反応剤の与え方が異なります。熱ALDは基板の熱で反応を進めます。PEALD(プラズマ支援ALD)はプラズマで反応種を作るため、熱ALDより低い基板温度で成膜します。Oxford Instruments Plasma Technologyの公式技術ページは、プラズマALDの利点として水素プラズマによる金属化学の実効性、化学量論・相の制御、核生成遅れの低減を挙げています。
ALD装置のメーカーはどこですか?
当サイトの装置カタログDBでは、ALDに一致する製品familyを持つメーカーを公式製品ページ単位で引けます。2026年8月21日時点で、ASM、Applied Materials、ラムリサーチ、Oxford Instruments Plasma Technology、SAMCO、Annealsys、NAURA、Piotechの製品familyが該当します。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- CVDとPVDの違い(成膜プロセス比較) ── ALDの母体であるCVDと、PVDの比較
- 酸化・成膜工程の全体像 ── 成膜工程が前後の工程とどう並ぶか
工程辞典のページ:
この記事の事実は次の一次資料を根拠とし、各URLの到達可否をこちらで実測しています。したがって、リンク先が移動または消滅した場合は、その旨をこのページへ反映します。
- Oxford Instruments Plasma Technology「Atomic Layer Deposition」公式技術ページ(2026年8月21日にリンク生存を実測)
- 東京エレクトロン 公式用語集「Chemical Vapor Deposition」(2026年8月21日にリンク生存を実測)
- S. M. George, “Atomic Layer Deposition: An Overview”, Chemical Reviews 110, 111 (2010), DOI 10.1021/cr900056b(Crossrefの書誌と突き合わせ、被引用5,487件、2026年8月20日時点)
- V. Cremers, R. L. Puurunen, J. Dendooven, “Conformality in atomic layer deposition: Current status overview of analysis and modelling”, Applied Physics Reviews 6, 021302 (2019), DOI 10.1063/1.5060967(Crossrefの書誌と突き合わせ、被引用487件、2026年8月20日時点)
- 装置と製造メーカーの行は
intel.equipment_vendor_families(公式製品ページ由来)から生成