OCD(光学的寸法計測)とは
OCD(光学的寸法計測)とは、ウェーハに光を当て、返ってきた回折光のスペクトルから、パターンの線幅や高さや側壁の角度を逆算する計測です。 スキャトロメトリとも呼ばれ、装置が受け取るのは光のスペクトルだけで、形が光に残した痕跡から形を当てにいきます。
半導体の出来ばえには、上から見た線幅のほかに3つの寸法がかかわります。側壁の傾き、底の細り、膜の厚さがそろって、はじめて狙った特性になります。
形をいちばん確かに知る方法は、ウェーハを切ることです。日立ハイテクの技術者は日立評論の2022年の記事で、立体の形を測る方法のうちいま最も広く使われているのは、デバイスを切り出して断面を観察する断面TEM法だとしています。同記事は、この方法が不良チップの故障解析や開発時の出来ばえ計測に多用される一方で、ウェーハを壊してしまうため、製造を止めずに測るインラインの用途には別の手法が要ると記しています。切れば形は分かり、切ったウェーハはそのまま解析用の試料になります。
そこで量産ラインには、切らずに測る手が要ります。同じ記事は、インラインで広く使われている方法としてOCDを挙げています。可視光のスポットを当て、戻ってきた光のスペクトルの変わり方をもとに、当てた範囲にあるパターンの形を逆算する手法だと述べています。
現場では何を測り、どの工程へ数値を返すのか
Section titled “現場では何を測り、どの工程へ数値を返すのか”産業技術総合研究所の計量標準総合センターがまとめた技術資料は、OCDを光回折を利用したCD計測と位置づけ、スキャトロメトリとも呼ばれると記しています。同資料によれば、OCDが相手にするのはウェーハ上に作った一次元回折格子のような周期構造で、試料の表面すれすれの角度から光を入れ、戻ってきた反射回折光を分光して受けます。形が変われば分光の波形もそれに応じて動くため、周期の間隔だけはこの実測波形からそのまま求まります。
線幅や高さや角度や膜厚まで求めるには、もう一段の手続きが入ります。同資料は、はじめにナノ構造の形を想定して計測用のパラメータを一式決め、それを少しずつ振りながら計算を繰り返して分光波形の一覧を作り、実測の波形といちばん近いものをその中から選んで各パラメータを確定すると記しています。
この作って照らして合わせるという流れは、膜厚の計測でも同じ形をしています。堀場製作所は分光エリプソメトリーの解説ページで、まず測定してデータを得たうえで光学モデルを作り、そこから計算した値を測定データにフィッティングすることで各層の膜厚と光学定数を求める手順を示しています。精密工学会誌に載った玉川大学の解説は、スキャトロメトリがレフレクトメトリやエリプソメトリを発展させる形で生まれた技術だと述べています。OCDは平らな膜に対するこの考え方を、周期的な溝の形へ広げたものにあたります。
得られた数値は工程へ返します。産総研の資料は、OCDが各種の計測技術の中でいちばん速く、装置も安く済むため、微細加工の前と後でインライン測定にかけ、プロセスのモニタとしてよく使われていると記しています。エッチングの前後で測れば、その工程が形をどれだけ動かしたかが分かり、APCのように加工条件を直す仕組みへ渡せます。
速さと引き換えに差し出すもの
Section titled “速さと引き換えに差し出すもの”OCDには、速さと非破壊のかわりに差し出しているものがあります。
第一に、測れる場所が限られます。産総研の資料は、OCDで測れるのが繰り返しのあるパターンに限られ、ぽつんと1本だけのラインは適用の外だと述べています。精密工学会誌の解説も、測るのはウェーハ上に作り込んだ周期構造のテスト図形であり、孤立したラインは対象外だとしています。測っているのは、製品の回路のかわりに用意した計測専用の図形です。
第二に、答えは平均です。日立評論の記事は、OCDがスポット光の大きさ、およそ10マイクロメートルの範囲をならした形を返す点を欠点として挙げ、歩留まりを管理するには1つ1つのパターンの崩れを追う必要があるので、狭い範囲を測る計測が要ると続けています。同社の測長SEMの立場からの記述です。精密工学会誌の解説も、ビームスポットの中を平均して線幅を求めるやり方である以上、答えはスポット内の平均までで、ライン1本ごとのライン・エッジ・ラフネスは対象の外だとしています。
第三に、細かく見ようとするほど計算が増えます。産総研の資料は、どこまで細かい違いを見分けられるかが、棚を作るときに与えた形状パラメータの数と、その刻みをどれだけ細かくしたかで決まってしまい、上げようとすれば計算量が膨れ上がると述べています。精密工学会誌の解説も、形が入り組むほど数値計算の時間もデータ量もかさみ、棚を先に用意する時間が延びる欠点を挙げています。トレンチホールのような立体構造も測れますが、その場合は棚を作るのに時間がかかると産総研の資料は付け加えています。
数値を信じてよい条件
Section titled “数値を信じてよい条件”OCDが手にするのは光のスペクトルです。したがって、出てきた数値が実物と合っているかどうかは、別に確かめる必要があります。
産総研の資料は、シミュレーションに頼る計測で気をつける点を3つ挙げています。土台にする物理モデルそのものに信頼できるものを選ぶこと、答えを裏づけるために形の分かっている標準試料を別途測っておく必要があること、そしてパラメータを増やすほど計算の手間がかさむことです。
JEITAの半導体技術ロードマップ専門委員会が訳したITRS 2007年版のメトロロジの章は、条件をもう一段細かく挙げています。同章によれば、スキャトロメトリーの計算は、ラインパターンについても下地の材質についても、光学的な性質が場所によらず一様であることを前提にしています。そのため表面に異常があったり、ドーパントの分布が偏っていたりすると答えが動きうるので、モデルの校正と定期的な検証を必須としています。同章はまた、スキャトロメトリーが特殊なテスト構造で測る以上、SEMやAFMやTEMといった他のCD計測技術を使って、テスト構造の寸法と回路の中のパターンの寸法との相関を取る必要があるとしています。2007年版の記述です。
産総研の資料は、この役割分担を短くまとめています。製造の現場ではインラインで測りたい場面が多く、形を追ったり工程の異常を見つけたりするモニタ役には測定の速いSEMやOCDが向く一方、寸法そのものの絶対値を求めるならAFMがいちばん向く、というものです。速く測る道具と、正しさの基準を与える道具は別に要ります。OCDは前者を担い、計測の全体はその組み合わせで成り立っています。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”OCDとは何ですか?
ウェーハに光を当てて、返ってきた回折光のスペクトルから、パターンの線幅や高さや側壁の角度や膜厚を逆算する計測です。スキャトロメトリとも呼ばれます。
なぜ断面を切らずに測るのですか?
切ったウェーハは破壊計測の試料になり、そこで工程から抜けるためです。日立評論の記事は、断面TEM法なら立体の形を直接見られる一方で、ウェーハを壊してしまうので、製造を止めずに測るインラインには別の手法が要ると記しています。
どうやって形を求めるのですか?
事前に計算しておいた分光波形の一覧と、実測した波形を照らし合わせます。産総研の資料は、形を想定してパラメータを決め、それを少しずつ振りながら計算を重ねて一覧を作り、実測の波形といちばん近いものを選ぶ手順を示しています。
どんなパターンでも測れますか?
測れるのは繰り返しのあるパターンです。産総研の資料は、OCDの対象が周期構造に限られ、ぽつんと1本だけのラインは適用の外だとしています。そのためウェーハ上に専用の周期構造のテスト図形を作り込んで測ります。
OCDと測長SEMはどちらが速いですか?
OCDです。産総研の資料は、OCDが各種の計測技術の中でいちばん速く装置も安く済むため、微細加工の前後のインライン測定によく使われるとしています。
OCDの弱点は何ですか?
答えがスポットの中の平均になることです。日立評論の記事は、スポット光の大きさ、およそ10マイクロメートルの範囲をならした形が出てくる点を欠点として挙げています。
出てきた数値はそのまま使ってよいですか?
別の裏取りが要ります。ITRS 2007年版のメトロロジの章の和訳は、計測モデルの校正と定期的な検証を要件に挙げ、SEMやAFMやTEMでテスト構造の寸法と回路中のパターンの寸法との相関を取る必要があることを述べています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- 計測(メトロロジー)とは ── OCDはその中の光学式インライン計測にあたります
- 断面観察とは ── 切って断面を直接観察する側で、OCDが避けたい破壊計測です
- 原子間力顕微鏡(AFM)とは ── 遅い代わりに絶対寸法の基準を与える側です
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- 産業技術総合研究所 計量標準総合センター「三次元ナノ構造の寸法・形状計測技術に関する調査研究」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── OCDの測定原理、繰り返しパターンに限るという適用範囲、スポット内平均、分解能と計算量の関係、SEMやAFMとの役割分担
- 精密工学会誌「光CD計測の計測原理と関連技術」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── スキャトロメトリの位置づけ、ライブラリ方式の利点と欠点、測定できる項目、ライン・エッジ・ラフネスが対象の外になる理由
- 日立評論「デジタル社会の進化を支える半導体製造歩留まり向上ソリューション」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 断面TEMの用途が破壊計測にとどまる理由、OCDのスポット光サイズと平均という欠点
- JEITA 半導体技術ロードマップ専門委員会「ITRS 2007年版 メトロロジ 和訳」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 計測モデルが前提とする仮定、校正と定期検証の必要性、テスト構造と回路パターンの相関を取る必要
- 堀場製作所「分光エリプソメトリーの原理」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 測定してから光学モデルを作りフィッティングで膜厚と光学定数を求める手順