断面観察とは
断面観察とは、試料を切って、その切り口を電子顕微鏡などで観察する方法です。 上からの像では重なったままの層の厚み・順番・界面が、縦に並んだ姿としてそのまま並びます。
半導体は層を積んで作ります。膜を付け、パターンを刻み、また膜を付けます。ですから、完成した姿を上から眺めると、いくつもの層が重なった状態になります。厚みも、順番も、界面のくっつき具合も、縦方向の情報です。上からの像では、それらが重なったまま1枚に写ります。
東京都立産業技術研究センターの設備紹介は、不良要因の調査ではまず表面を観察し、表面の観察で判断できる範囲を超えた要因を探るために内部の断面観察まで進む場合が多いと述べています。切ってから観察する、という手間をかける理由がここにあります。
切ると何が分かるのかは、事例が具体的です。JFEテクノリサーチは3D NANDフラッシュメモリの解析事例で、垂直方向の断面から、深さ方向へ約70nmおきに38層が積み重なった構造を読み取っています。水平方向の断面では、円形のメモリセルが等間隔で並び、セルの内側に同心円状の層があるとしています。さらにEDXの面分析を重ねると、TEM像では輪郭がぼやけていたセルの外周について、厚さ2nm前後のチタン窒化層とアルミニウム酸化層まで、きれいに分けられたとしています。同社が示した解析事例での値です。
断面にすると、膜厚・積層順・界面の隙間の3つに答えが出ます。数nmの層が仕様どおりの厚みで付いているかどうか、狙った位置に狙った順で並んでいるかどうか、そして界面に隙間が入っているかどうかです。
断面の作り方は2通りです
Section titled “断面の作り方は2通りです”日本電子は、アルゴンの広いイオンビームを使うCPとガリウムの集束イオンビームを使うFIBを、どちらも断面試料が作れる装置として並べています。そのうえで、使うビームと作り方の差が、できあがる断面の性格にもそのまま出るとしています。同社の比較表では、CPのイオン源はArで最大加工幅8mm、加工位置精度は3μm程度、FIBのイオン源はGaで最大加工幅は数100μm、加工位置精度は10nm程度です。用途としては、構造の解析にCP、欠陥の解析にFIBが有効だとしています。
同社が自社装置で示した実例では、ユニバーサルプリント基板について、スルーホールの部分をCPで加工して幅1.8mm・深さ1.5mmの断面を得るのに約15時間、めっきの異常部をFIBで加工して幅60μm・深さ20μmの断面を得るのに約20分でした。そのFIBの断面からは、膨れの原因が銅めっきの剥がれであること、凹みの原因が銅めっきの凹みであることが読み取れています。
なお、どちらもイオンビームで削る点は共通します。都産技研は、FIBを試料表面へ当てて走査すると、原子の単位で弾き飛ばすスパッタリングが起き、試料へ機械的な力をかけずに削れると述べています。研磨や切断で壊れてしまうやわらかい層や、はんだのような延びる材料でも断面が出せる理由がここにあります。
観察する道具を選びます
Section titled “観察する道具を選びます”断面ができたら、次は観察する道具を選びます。倍率と、知りたいことで替わります。
SEMは、断面の形と層の並びを写します。都産技研は、同センターの装置ではFIBとSEMが54度の角度をなす配置だとし、断面へ真正面から向き合ってSEMで観察するには、その領域をいったん薄片として切り出す必要があると述べています。
SIM像は、イオンビームの走査そのもので得られる像です。日本電子は、結晶になっている試料ではチャネリングによるコントラストが強く出ること、イオンビームが内部へ入り込む深さは電子ビームよりずっと小さいため写るのがいちばん外側になること、二次電子の出方が電子ビームとは別の経路をたどるためSEM像とは別の組成コントラストが付くこと、の3点を挙げています。金属の結晶粒を確かめるときに使います。
TEMは、いちばん細かいところを担います。JFEテクノリサーチは、断面をSEMで見ながら削り進められるデュアルビームのFIB装置なら、加工する位置を数十nm程度の精度で指定でき、厚さ100nm以下のTEM・STEM用の薄膜まで正確な場所で作れると述べています。各社が自社の装置について示した値です。
元素を重ねると、さらに読めます。都産技研は、亜鉛めっきとクロメートを施した鉄板の断面をFIBで作り、FE-SEMで観察し、エネルギー分散型X線分析で元素マッピングを取って、層ごとの形と厚みをそのまま求めた事例を示しています。形が同じに映る2つの層も、元素マッピングでは別々に出ます。
1枚から立体へ
Section titled “1枚から立体へ”断面を何枚も重ねる場面もあります。日本電子は、FIBとSEMを同じチャンバへ収めた複合イオンビーム装置の紹介で、決めた間隔で加工と観察を自動で繰り返し、試料の立体の情報を取る機能を挙げています。
JAIMAの解説は、3D-NANDメモリの連続断面SEM像を5nm刻みで取り、それを組み直して立体で表示した事例を挙げています。組み直したあとは、好きな位置の断面を画面へ呼び出して、構造を確かめたり寸法を測ったりできるとしています。ロームも、断面画像を100nm刻みで取って立体へ組み直し、構造の内側へ入り込んだ異物やクラックの出方を立体で見せていると公表しています。いずれも公開されている事例での値です。
何を差し出すのか
Section titled “何を差し出すのか”断面観察は、削って観察する方法です。ですから、観察したい場所を1つ選び、その試料を作業へ差し出すことになります。時間も要ります。同じプリント基板の事例で、CPの断面作製に約15時間、FIBの断面作製に約20分がかかっていました。日本電子が同じ試料で示した比較です。
もう1つ差し出すのは、見立ての精度です。ロームの分析センター長は、見立てを先に立てるほど作業が絞れること、的確な見立てができるようになるまでにはある程度の現場経験が必要になることを語っています。同社は、開発と量産の過程で構造の出来栄えや不良の原因を、高度な分析装置を使って遅れなく像と数値へ落とすことが、分析のセクションに与えられた役割だとしています。
つまり断面観察は、欠陥検査や電気テストで場所を絞ったあとに来る工程です。広く探す道具で当たりを付けてから、断面で確かめます。この順番を守るほど、歩留まりへの折り返しが速くなります。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”断面観察とは何ですか?
試料を切って、その切り口を電子顕微鏡などで観察する方法です。上からの像では重なったままの層の厚み・順番・界面が、縦に並んだ姿としてそのまま並びます。
なぜ断面まで作るのですか?
都産技研の設備紹介は、不良要因の調査ではまず表面を観察し、表面の観察で判断できる範囲を超えた要因については、内部の断面まで観察へ進む場合が多いと述べています。層を積んで作る半導体では、原因が内側の界面にあることがよくあります。
断面はどうやって作るのですか?
主に2通りです。アルゴンの広いイオンビームで広く削るCP(クロスセクションポリッシャ)と、ガリウムの集束イオンビームで狙った1点を削るFIBです。日本電子の比較では、CPの最大加工幅は8mmで加工位置精度は3μm程度、FIBは数100μmで10nm程度です。
CPとFIBはどう使い分けるのですか?
同社は、広い範囲の断面を作る用途にはCPが、位置を指定して断面を作る用途にはFIBが向くとし、構造の解析にはCP、欠陥の解析にはFIBが有効だとしています。探す段階か、場所を絞ったあとかで替わります。
断面は何で観察するのですか?
SEM像、SIM像、TEM像を使い分けます。日本電子は、イオンビームの走査そのものからSIM像が得られ、チャンネリングコントラストが明瞭に出るため金属組織を調べる用途に向くと述べています。TEMを使う場合は、JFEテクノリサーチによれば厚さ100nm以下の薄膜を作ります。
元素まで分かるのですか?
分かります。都産技研は、FIBで断面を作ってSEMで観察し、エネルギー分散型X線分析で定性分析を重ねると、層ごとの形と厚さをそのまま求められると述べています。JFEテクノリサーチの事例では、TEM像では輪郭がぼやけていた2nm前後のチタン窒化層とアルミニウム酸化層まで分けられています。
断面観察の弱点は何ですか?
削って観察するため試料を1つ使い、時間もかかります。日本電子の事例では、同じプリント基板でCPが約15時間、FIBが約20分でした。ロームの分析センター長は、見立てを先に立てるほど作業が絞れること、的確な見立てができるようになるまでにはある程度の現場経験が必要になることを語っています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- FIB(集束イオンビーム)とは ── 断面を作る側の道具で、狙った1点を削ります
- 欠陥検査とは ── 断面へ進む前に、どこを切るかを絞る工程です
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- 日本電子「CPとFIBによる断面試料作製」アプリケーションノート(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── CPとFIBで作られる断面の特長が大きく異なること、CPがArで最大加工幅8mm・加工位置精度3μm程度・構造解析に有効、FIBがGaで最大加工幅数100μm・加工位置精度10nm程度・欠陥解析に有効という比較、ユニバーサルプリント基板でCPが幅1.8mm×深さ1.5mmを約15時間、FIBが幅60μm×深さ20μmを約20分で作製したこと、FIB断面から膨れが銅めっきの剥がれ、凹みが銅めっきの凹みと分かったこと
- 日本電子「FIBによる断面試料作製とSIM像のコントラスト」アプリケーションノート(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── SIM像のコントラストの3つの特徴(チャンネリングコントラスト、イオンビームの侵入深さが浅く最表面が観察されること、SEM像とは異なる組成コントラスト)、FIBによる断面試料作製が高い位置精度で行え不良解析に有効であること
- 東京都立産業技術研究センター「集束イオンビーム(FIB)-走査電子顕微鏡(SEM)複合装置」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 不良要因の調査ではまず表面を観察し、表面の観察で判断できる範囲を超えた要因については内部の断面まで観察へ進む場合が多いこと、イオンビームによる原子単位のスパッタリングが起きるため機械的な力をかけずに試料を削れること、同センターの装置でFIBとSEMが54度の角度をなす配置であること、断面へ真正面から向き合ってSEMで観察するには薄片として切り出す必要があること、亜鉛めっきとクロメートを施した鉄板の断面をFIBで作りFE-SEMとEDSで各層の形状・厚みを直接求めた事例
- JFEテクノリサーチ「微細デバイスの断面TEM解析」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── デュアルビームFIBで数十nm程度の位置精度の加工位置指定ができ膜厚100nm以下のTEM・STEM観察用薄膜を作製できること、3D-NANDフラッシュメモリの垂直断面で約70nmピッチの38層のレイヤー構造が観察されること、水平断面で円形メモリセルが規則正しく配置され同心円状の層構造が認められること、EDXの面分析によりセルの外周で厚さ2nm前後のチタン窒化層とアルミニウム酸化層を分離できたこと
- 日本分析機器工業会(JAIMA)「集束イオンビーム(FIB)装置の原理と応用」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── FIB加工とSEM観察を繰り返して得た連続画像を再構成すると三次元解析が可能になること、5nmピッチで3D-NANDメモリの連続断面SEM像を取得し再構成した事例、再構成後は任意位置の断面を画面上に表示でき構造を確かめることや寸法の計測が可能になること
- ローム「品質本部分析センター」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 断面の画像を100nm刻みで取って立体へ組み直し、構造の内側に入り込んだ異物やクラックの出方を立体で見せていること、分析のセクションの役割が構造の出来栄えや不良の原因を遅れなく像と数値へ落とすことであること、見立てを先に立てるほど作業が絞れ、的確な見立てには現場経験が必要になること