膜厚測定とは
膜厚測定とは、ウェーハの上へ積んだ膜の厚さを、多くの場合は光を当てて返ってきた光の変化から逆算して求める工程です。 厚さそのものへ物差しを当てる代わりに、光が膜を往復した痕跡を数えます。
厚さを直接測る手段は存在します。HORIBAは分光エリプソメトリーの概要ページで、SEMやTEMなどの電子顕微鏡で断面を観察すれば膜厚を求められるとし、倍率を高く取って切り口をそのまま観察できること、画像から厚さが読み取れること、あらゆる種類の膜へ使えることを長所に挙げています。同じページは短所も挙げています。断面を作るためにサンプルを壊すこと、導電性を持たせる蒸着などの前処理が要ること、観察範囲がμmオーダーで他の手法と比べて非常に狭いことです。
針でなぞる手段も同じ壁に当たります。同社は、触針式段差計が成膜した部分と未成膜の部分の段差から膜厚を求める装置だとしたうえで、全面へ成膜したサンプルでは段差そのものが失われるため、品質管理の用途には不向きだとしています。大塚電子も分光法による膜厚解析の入門で、触針法や電子顕微鏡による断面観察は誤差が小さい反面、サンプルへ致命的なダメージを与える危険があるため品質管理用には不向きだと書いています。
量産のラインで毎日測るとなると、壊す手段は候補から早々に離れます。そこで量産の現場が頼るのが、光を当てて返ってきた光から厚さを逆算する方式です。
厚さを取り違えると、現場で何が起きるのか
Section titled “厚さを取り違えると、現場で何が起きるのか”膜の厚さは、その膜が担う働きの前提になります。HORIBAは前掲の概要ページで、光を使う手法なので壊さず触れずに測れるため、分光エリプソメトリーは研究開発の場に限らず、工場で製品と品質を管理する場面でも使われているとしています。ゲート酸化膜のように薄さそのものが働きを左右する膜では、厚さの数字が設計どおりであることが素子の前提になります。
厚さの数字だけを追うと、取りこぼす変化もあります。大塚電子は、成膜の条件しだいで屈折率が動くため、光で厚さを測る作業と同じ光で屈折率を測る作業は一続きになると書いています。同社はさらに、半導体の材料では組成や不純物の割合が結果を左右するため、膜の組成を替えたときや成膜の条件が動いたときを見張る手段にもなると述べています。厚さが同じでも屈折率がずれていれば、膜の中身が動いた合図になります。
装置メーカー側も、この二面性を製品の売り文句へ組み込んでいます。SCREENはエリプソ式膜厚測定装置RE-3500の製品ページで、膜厚と光学定数の同時測定が可能だとし、厚さに加えて膜質の管理が要る工程や、薄膜の材料開発、成膜プロセスの開発に向くとしています。同社の製品ページの記述です。CVDの条件を動かしたあと、厚さと膜質の両方を1台で追える点が現場での使いどころになります。
何を測り、何を計算しているのか
Section titled “何を測り、何を計算しているのか”光干渉式から順に追います。大塚電子は光の干渉効果による膜厚解析で、膜の表側で跳ね返った光と、膜を通り抜けて裏側で跳ね返った光とが重なり合い、波の山と山がそろえば明るく、ずれれば暗くなる性質を使うと書いています。波長を変えながら反射強度を測ると、スペクトルの上へ干渉のパターンが浮かびます。同社は、光が膜層を2回通過して合成されるため、屈折率をn、厚さをdとすると光路差が2ndだけ生じるとし、膜層の中では光の伝わる速さがn倍遅くなることが屈折率を要する理由だと書いています。この関係から、屈折率が既知であれば厚さが求まります。同社はさらに、各波長の反射強度と理論値をカーブフィッティングさせることで、膜厚と同時に屈折率も求められるとしています。
HORIBAは同じ方式の弱点も挙げています。測定パラメータが反射率の1つだけであるため屈折率が既知である必要があること、干渉の乏しい10nm以下の非常に薄いサンプルでは膜厚を求めるのが困難なこと、反射強度が弱いサンプルや表面ラフネスが大きいサンプルでは測定が難しくなることです。
偏光を持ち込むと、測定パラメータが1つ増えます。HORIBAは分光エリプソメトリーの原理で、入射面へ平行に振動する成分をp偏光、垂直に振動する成分をs偏光と呼び、振幅と位相のそろった直線偏光をサンプルへ当てると、表面と界面から反射した光が干渉し、膜の中では屈折率のぶんだけ光の進みが遅くなるため位相もずれると述べています。同社は、この遅れ方がp偏光とs偏光で異なるため、反射光の偏光状態が入射時とは異なる楕円偏光になるとしています。楕円の形へ膜の情報が刻まれる仕組みです。
楕円の形から厚さへ至る道は、計算が引き受けます。HORIBAは、実際のサンプル構造をもとに基板と各層の膜厚と光学定数を仮定した光学モデルを作り、シミュレーション計算の結果を測定データへフィッティングする手順を挙げ、波長分散を表す分散式を使うことで、通常50以上ある測定点の数が2から14程度のパラメータへ減ると述べています。
装置の中身は、白色光と偏光子の組み合わせです。HORIBAは分光エリプソメータの特長で、白色の光源を出た光が偏光子を抜けてサンプルへ届き、返ってきた光が検光子と分光器を経て光電子増倍管やCCDで検出されるとしています。同社のUVISELシリーズが採る位相変調方式では、石英へピエゾ素子を貼った光弾性変調器を50kHzで振動させることで、透明基板の上の透明膜であれば膜厚が数nmでも測定できるとしています。同社の製品を含む記述です。
何を差し出すことになるのか
Section titled “何を差し出すことになるのか”第一に、屈折率という未知数を一緒に抱えます。大塚電子は、分光光度計を使う方法が手軽で、壊さず触れずに測れて、屈折率さえ分かっていれば精度も高いとしたうえで、成膜の条件しだいで屈折率が動くため、その屈折率を別の手立てでつかまえる必要が出てくると書いています。厚さへ直接触れずに済ませた代わりに、解くべき未知数が1つ増えました。
第二に、膜が薄くなるほど厚さと屈折率の分離が難しくなります。大塚電子はエリプソメトリーの項で、膜が数nm程度まで薄くなると測る光の波長の百分の一ほどの厚さになり、ndは出せても厚さと屈折率を切り分けにくくなると書き、これは分光法につきまとう弱点でもあるとしています。数字が1つ返ってきたことと、その数字が確かであることは別の話になります。
第三に、表面の荒れと材料が測定の窓を狭めます。HORIBAは測定できるサンプルの解説で、表面ラフネスが非常に大きいサンプルでは表面で光の散乱が起こり、その散乱光が非偏光になる偏光解消が生じるとし、解析が反射光を完全な偏光と仮定しているため、偏光解消をおよそ20%以上含む場合には正しい膜厚と屈折率と消衰係数を求めるのが難しくなると述べています。測定できる表面ラフネスの目安は測定波長の数分の1以下だとしています。金属についても、膜が厚くなると光がすべて吸われて下地の材料まで届かなくなるため、算出できる膜厚の限界は金属の種類と状態によって30〜50nm程度になり、多くの金属では100nmを超えると膜厚を出せなくなるとしています。
第四に、層どうしの屈折率が近いと界面が埋もれます。同じページは、基材と薄膜、あるいは隣り合う薄膜どうしで屈折率の差がごく小さいと、境目がぼやけて層と層の区切りが埋もれるので、それぞれの厚さを出しにくくなるとし、SiやGaAsの基板へ同じ材料を結晶成長させたホモエピタキシャル薄膜も、同じ理由で厚さを出しにくいと述べています。屈折率差が0.005以上あれば測定できる場合があるという目安も同社は挙げています。均一性を面内で追うときは、この目安が測れる層と測れる場所を先に区切ります。
第五に、速さと薄さのどちらを取るかで、導入する装置が替わります。SCREENは光干渉式のVM-1200/1300について、標準で25膜種の膜厚測定へ対応し、最大4層膜までの積層膜を同時に測れるとしています。上位のVM-2500/VM-3500では、SiO2膜を1枚あたり5点測る条件の高速モードで、毎時160枚を実現するとしています。いっぽうエリプソ式のRE-3500は、マイクロスポット光学系により40μm角の微細なエリアを測り、オプションの単波長エリプソメータを載せれば膜厚20nm以下の超薄膜まで届くとしています。いずれも同社が公表する製品仕様です。枚数を稼ぐ装置と、薄い膜と膜質まで届く装置は、同じ工場の中で役割を分担します。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”膜厚測定とは何ですか?
ウェーハの上へ積んだ膜の厚さを求める工程です。量産のラインでは、膜へ光を当てて返ってきた光の変化から厚さを逆算する方法が主に使われます。HORIBAは、分光エリプソメトリーが壊さず触れずに測れるため、研究開発の場だけでなく、工場で製品と品質を管理する場面でも使われているとしています。
なぜ断面を切って測る方法は量産へ向きにくいのですか?
そのウェーハを製品として使えなくなるためです。HORIBAは、電子顕微鏡による断面観察の長所として高倍率の観察とあらゆる膜への適応を挙げる一方、短所として断面を作るためにサンプルを壊すこと、蒸着などの前処理が要ること、観察範囲がμmオーダーで狭いことを挙げています。大塚電子も、触針法や断面観察は誤差が小さい反面、サンプルへ致命的なダメージを与える危険があるため品質管理用には不向きだと書いています。
光干渉式とエリプソ式はどう使い分けますか?
速さを取るか、薄い膜と膜質まで取るかで替わります。HORIBAは、光干渉式が装置構成の簡単さと測定の速さを持つ一方、測定パラメータが反射率の1つだけであるため屈折率が既知である必要があるとしています。分光エリプソメトリーでは波長ごとに2つの測定パラメータが得られ、未知の材料でも膜厚と光学定数を一度に求められるとしています。
屈折率が未知のときはどうしますか?
厚さと一緒に計算で求めます。大塚電子は、ピークとバレー以外の波長についても各波長の反射強度と理論値をカーブフィッティングさせることで、膜厚と同時に屈折率も求められると書いています。分光エリプソメトリーでは、サンプル構造をもとにした光学モデルを作り、シミュレーション結果を測定データへ合わせ込む手順をHORIBAが挙げています。
どのくらい薄い膜まで測れますか?
HORIBAは、分光エリプソメトリーで測定できる薄膜の膜厚を数Åから数十μmとし、材料や膜質や装置の仕様によって動くと付記しています。ただし大塚電子は、膜が数nm程度まで薄くなると測る光の波長の百分の一ほどの厚さになり、ndは出せても厚さと屈折率を切り分けにくくなると書いており、これは分光法につきまとう弱点だとしています。
金属膜も測れますか?
厚みに限りがあります。HORIBAは、金属膜が厚くなると光がすべて吸われて下地まで届かなくなるため、算出できる膜厚の限界が金属の種類と状態によって30〜50nm程度になるとし、多くの金属では100nmを超えると膜厚を出せなくなると述べています。同社の公表値です。
膜厚のほかに何が分かりますか?
膜の質が動いた合図も得られます。大塚電子は、成膜の条件しだいで屈折率が動くため、半導体の材料では膜の組成を替えたときや成膜の条件が動いたときを見張る手段にもなると書いています。SCREENも、エリプソ式のRE-3500について膜厚と光学定数の同時測定が可能であり、膜質の管理を行う工程や成膜プロセスの開発に適するとしています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- 計測(メトロロジー)とは ── 膜厚を含む計測全体の位置と、検査との役割の分担
- 断面観察とは ── 壊して直接測る側の代表格
- 均一性(面内・ウェーハ間・ロット間)とは ── 測った膜厚を面内でどう束にして判断するか
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- HORIBA「分光エリプソメトリーの概要と関連用語」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 断面観察と触針式段差計の長所と短所、分光反射式膜厚計の長所と短所、10nm以下で干渉が乏しくなること、2つの測定パラメータから膜厚と光学定数を一度に求める点、工場での品質管理への利用
- HORIBA「分光エリプソメトリーの原理」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 入射面とp偏光・s偏光、反射光の干渉と位相のずれ、楕円偏光への変化、光学モデルとフィッティング、分散式による測定点の縮約
- HORIBA「分光エリプソメータの特長」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 白色光源から偏光子・検光子・分光器・検出器へ至る構成、機械回転型と電気変調型、光弾性変調器の50kHz振動と数nmの膜への対応
- HORIBA「分光エリプソメトリーでわかること」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 測定できる膜厚が数Åから数十μmであること、偏光解消のおよそ20%という目安、表面ラフネスが測定波長の数分の1以下という目安、金属膜の30〜50nmと100nm以上の限界、屈折率差0.005の目安とホモエピタキシャル薄膜の困難さ
- 大塚電子「【入門】分光法による膜厚解析 2.薄膜の測定方法」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 触針法と断面観察のダメージ、分光光度計の手軽さと非破壊非接触、成膜条件による屈折率の変化、膜組成と成膜条件のモニターとしての役割
- 大塚電子「【入門】分光法による膜厚解析 3.光の干渉効果による膜厚解析」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 表面と裏面の反射光の干渉、光路差2ndと膜中で光の速さがn倍遅くなること、カーブフィッティングによる膜厚と屈折率の同時算出
- 大塚電子「【入門】分光法による膜厚解析 5.エリプソメトリー」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 数nm程度の薄膜でndは求まるものの厚さと屈折率の分離が困難になること
- SCREENセミコンダクターソリューションズ「光干渉式膜厚測定装置 VM-1200/1300シリーズ」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── CCDイメージセンサによる可視光全波長域の同時測定、標準25膜種、最大4層膜の同時測定
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