封止樹脂とは
封止樹脂とは、半導体チップとボンディングワイヤをまとめて覆い、固めて守るための材料です。 完成した半導体パッケージの黒い樹脂の部分が、これにあたります。
半導体パッケージの黒い外装は、ほとんどが封止樹脂です。日鉄マイクロメタルは同社の解説ページで、半導体パッケージはワイヤボンディングを終えてから樹脂で封じるため、完成後のワイヤは外から見えなくなる、と述べています。中身を覆い隠している側が封止樹脂です。
住友ベークライトはスミコンEMEの製品ページで、半導体封止材の役割として、チップ保護、外部環境からの絶縁性の確保、チップからの熱拡散性の確保、実装時のハンドリング性の確保を挙げています。同ページは製品の特長として、絶縁性、耐薬品性、耐湿性、熱耐久性、パッケージの保護、放熱性を掲げています。
中身は、樹脂と粉の混合物です。同社の製品FAQは、半導体封止用エポキシ樹脂成形材料について、シリカなどの無機フィラーをエポキシ樹脂や硬化剤と練り合わせ、均一に散らしたコンパウンド製品だと述べています。同FAQは、熱伝導性を高めたい場合にフィラーの材質をアルミナへ変更する、とも記しています。混ぜる粉の種類と比率が、樹脂そのものと同じくらい性質を左右します。
固め方も同FAQに記されています。成形方式はトランスファー成形で、硬化条件は約175℃・60秒、成形時の圧力は約10MPaです。この節に挙げた条件は同社の代表値であり、同FAQは顧客の使用条件に応じたカスタマイズが可能とも述べています。
硬いことが守ることであり、同時に代償になります
Section titled “硬いことが守ることであり、同時に代償になります”封止樹脂の役割は、覆うことと、中の部材の膨張収縮を拘束することの2つです。レゾナックはCEL-400シリーズの解説ページで、パワー半導体のパッケージに長く使われてきたシリコーン樹脂について、柔らかいために中の部材を拘束する力が弱く、動作温度の高いパワーサイクル試験では、伸び縮みするチップやワイヤを止めきれずに不合格となっていた、と述べています。同ページは、ワイヤ(Au、Cu)とチップ(Si)で熱膨張係数の差がとりわけ大きい、としています。
そこでエポキシ樹脂が使われます。ただし、エポキシ樹脂が硬いのは、ある温度までです。同ページによれば、エポキシ樹脂はガラス転移温度(Tg)より低いところでは硬さを保って部材を拘束し、ワイヤの浮き上がりや断線を防ぎます。Tgを超えると樹脂がやわらぐため、Tgが動作温度Tj以上になる封止材を選ぶ必要があります。この節の記述は同社の解説によります。
つまり封止樹脂を選ぶ作業は、その製品が何度まで硬さを保つかという数字を、デバイスの動作温度と並べて比べる作業です。
Tgを上げると別の性質が落ちます
Section titled “Tgを上げると別の性質が落ちます”高いTgには代償が付きます。レゾナックはCEL-400シリーズの解説ページで、Tgを上げるには樹脂の骨格を硬い作りに変える必要がある、と述べています。同ページによれば、骨格が動きにくくなる分だけ、高温での分解は起きやすくなり、他の部材との密着性は落ち、内部にたまる応力は大きくなります。そして、そこから生じる剥離のせいで、今度は温度サイクル試験のほうが通らなくなる問題があった、と同ページは記しています。
同ページは、CEL-400シリーズがTg(TMA)175〜190℃でありながら、分解抑制、剥離防止、応力緩和を並立させたとしています。実現の手段として、エポキシと硬化剤であるフェノールの最適配合、密着付与剤の添加、低応力化材の配合のバランスを挙げています。
住友ベークライトは2024年5月の発表で、エポキシ樹脂のTgが樹脂の種類によって異なり、架橋密度を向上させることで上げられるものの、一般には約100℃から200℃程度になる、と述べています。同発表によれば、次世代SiCパワーモジュール向けの高Tg材料では、通常の架橋密度向上に加えて樹脂の主鎖骨格を剛直化することで240℃に達するTgを実現しました。同社が参考として掲げた表では、量産品のG720シリーズとG780シリーズがTg 195℃、開発品の新グレードが240℃です。この節の数値はいずれも各社が公表した代表値であり、保証値とは別です。
高Tg化にともなう硬く脆くなる現象については、同発表は硬化剤の種類の最適化によって避けられ、組み立てプロセス中の不具合を抑える応力緩和性能を確かめたとしています。同発表は、新グレードのサンプル提供が始まったこと、量産化を2025年度から見込むことも記しています。
反りという、もう1つの代償
Section titled “反りという、もう1つの代償”硬い樹脂で覆うと、別の問題が出ます。樹脂とチップと基板とでは温度が変わったときの伸び縮みの量に差があるため、成形後に冷えたパッケージが反ります。
レゾナックの有機基板用エポキシ樹脂封止材の製品ページは、弾性率や熱膨張率をコントロールしてパッケージの反りを抑制することを特長の先頭に挙げています。同ページの製品特性表では、CEL-9750ZHF10HT3Wがガラス転移温度145℃、熱膨張係数α1が12ppm/℃、α2が41ppm/℃、曲げ弾性率27GPaです。この2つの熱膨張係数をこちらで割ると、ガラス転移温度を挟んで3.4倍になります。この節の値は同社の製品特性表によります。
反りは、パッケージが大きくなるほど歩留まりを左右します。住友ベークライトは2024年11月の発表で、パネルレベルパッケージについて、パネルが大きくなるほど実装後の反りや面内での成形厚みのばらつきが品質上の課題になっていた、としています。同発表によれば、封止材のフィラーの粒径と樹脂の粘度を調整して反りを抑えた圧縮成形用の顆粒材を製品化し、600×600mmの大型パネルでも厚みのそろった成形ができるようになりました。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”封止樹脂とは何ですか?
半導体チップとボンディングワイヤをまとめて覆い、固めて守る材料です。住友ベークライトは同社の製品ページで、封止材の役割としてチップ保護、外部環境からの絶縁性の確保、チップからの熱拡散性の確保、実装時のハンドリング性の確保を挙げています。
何でできているのですか?
樹脂と粉の混合物です。住友ベークライトは同社の製品FAQで、半導体封止用エポキシ樹脂成形材料について、シリカなどの無機フィラーをエポキシ樹脂や硬化剤と練り合わせ、均一に散らしたコンパウンド製品だと述べています。
どうやって固めるのですか?
金型の中で加熱と加圧をします。住友ベークライトは同社の製品FAQで、成形方式をトランスファー成形、硬化条件を約175℃・60秒、成形時の圧力を約10MPaとしています。同社はいずれも顧客の使用条件に応じたカスタマイズが可能とも述べています。
シリコーン樹脂とエポキシ樹脂では何が変わりますか?
部材を拘束する力の大きさが変わります。レゾナックは同社の解説ページで、パワー半導体のパッケージに長く使われてきたシリコーン樹脂は柔らかく、中の部材を拘束する力が弱いため、動作温度の高いパワーサイクル試験では、伸び縮みするチップやワイヤを止めきれずに不合格となっていた、と述べています。
ガラス転移温度(Tg)はなぜ大事なのですか?
硬さが入れ替わる境目だからです。レゾナックは同社の解説ページで、エポキシ樹脂はTgより低いところでは硬さを保って部材を拘束するものの、Tgを超えるとやわらぐため、Tgが動作温度Tj以上になる封止材を選ぶ必要がある、と述べています。
Tgは高ければ高いほど良いのですか?
代償が付きます。レゾナックは同社の解説ページで、Tgを上げるには樹脂の骨格を硬い作りに変える必要があり、その分だけ高温での分解が起きやすくなり、密着性は落ち、内部応力は大きくなる、としています。同社のCEL-400シリーズはTg(TMA)175〜190℃で、分解抑制と剥離防止と応力緩和を並立させたと同ページは述べています。
反りはなぜ問題になるのですか?
硬い樹脂とチップや基板とで、温度が変わったときの伸び縮みの量に差があるためです。住友ベークライトは2024年11月の発表で、パネルが大きくなるほど実装後の反りや成形厚みのばらつきが課題になっていた、としています。同発表によれば、フィラーの粒径と樹脂の粘度を調整することで、600×600mmの大型パネルでも厚みのそろった成形ができるようになりました。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- ボンディングワイヤとは ── 封止樹脂が拘束する相手であり、拘束が弱いとリフトオフや断線が起きる側です
- アンダーフィルとは ── 全体を覆う封止樹脂に対し、チップ下の隙間だけを埋める樹脂です
- 半導体封止材(EMC)とは ── 成形方式やMUFまで含めた工程側の解説です
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- 住友ベークライト「半導体封止用エポキシ樹脂成形材料 スミコンEME」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 封止材の4つの役割、製品の特長
- 住友ベークライト「製品に関するよくあるご質問 情報通信材料営業本部」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 無機フィラーと樹脂と硬化剤のコンパウンドであること、アルミナへのフィラー変更、約175℃・60秒、約10MPa、トランスファー成形
- 住友ベークライト「次世代SiCパワーモジュール向け高Tgエポキシ封止材料を開発」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── エポキシ樹脂のTgが一般に約100〜200℃であること、主鎖骨格の剛直化と240℃、G720/G780の195℃、2025年度からの量産化見込み
- 住友ベークライト「先端半導体向けPLPに対応した圧縮成形用封止樹脂(顆粒材料)を量産化」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── パネル大型化に伴う反りの課題、フィラーサイズと樹脂粘度の最適化、600×600mmでの均一成形
- レゾナック「パワー半導体の信頼性を向上!高Tgのエポキシ系耐熱封止材」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── シリコーン樹脂が拘束力を欠くこと、Tgを境にした硬さの入れ替わり、Tg≧Tjの必要、高Tg化のトレードオフ、CEL-400のTg 175〜190℃
- レゾナック「エポキシ樹脂封止材 有機基板用」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 反り抑制の特長、CEL-9750ZHF10HT3Wのガラス転移温度・熱膨張係数・曲げ弾性率
- 日鉄マイクロメタル「ボンディングワイヤとは?」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 封止後にボンディングワイヤが外から見えなくなること