エッチングガスとは
エッチングガスとは、ドライエッチングで、ウェーハの上の狙った膜だけを気体の化学反応で削り取るために使うガスです。 削る速さよりも、削る相手を選び分けられるかどうかで良し悪しが決まります。
削る相手が入れ替わると、ガスも入れ替わります
Section titled “削る相手が入れ替わると、ガスも入れ替わります”レゾナックは高純度ガスの製品一覧で、ガスを用途ごとに書き分けています。以下は同社が自社製品について示す用途です。酸化膜のエッチングにはC4F6、C4F8、C3F8、CF4を挙げ、窒化膜のエッチングにはCH3Fを挙げています。有機膜については、亜硫酸ガス(SO2)がカーボンマスクのエッチングなどに使われるとしています。一方で導体(コンダクタ)を削る側には、塩素(Cl2)、臭化水素(HBr)、三塩化ホウ素(BCl3)、六フッ化硫黄(SF6)が並び、塩素はポリシリコン、三塩化ホウ素はメタルに適するとしています。
全体としては、絶縁膜にフッ素や硫黄を含むガス、導体に塩素や臭素を含むガスという組み合わせになります。関東電化工業も特殊ガス製品のページで、四フッ化炭素やトリフルオロメタン、六フッ化硫黄などを半導体・FPD製造用のエッチングガスとして案内しており、日本酸素は半導体材料ガスの用途区分にエッチングを含めています。
削る速さよりも、削り分けを判断の軸にします
Section titled “削る速さよりも、削り分けを判断の軸にします”エッチングの現場では、削りたい膜の上にマスクが乗り、下には別の膜が控えています。ガスがどれも同じ勢いで削ってしまうと、マスクが先に消えて模様が崩れ、下地まで掘り進みます。狙った膜だけがよく減り、まわりが残る度合いを選択比と呼びます。
セントラル硝子は次世代半導体エッチングガスのページで、CEG 34Eについて、既存のC4F6やC4F8などと比べてアモルファスカーボンなどのマスク材に対しシリコン酸化膜とシリコン窒化膜を高い選択性で削れるとしています。CEG IF7については、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜に対してシリコン膜のほうを選んで削るとしています。以上は同社が自社製品について公表している位置づけです。何を残すかが入れ替われば、別の製品になります。
深い穴ほど、ガスごとの差が出ます
Section titled “深い穴ほど、ガスごとの差が出ます”3D NANDのように膜を何層も積む構造では、細くて深い穴を上から下まで通す必要があります。レゾナックはC4F6について高アスペクト比でのエッチングが可能と述べ、セントラル硝子はCEG 34Eの使用例に3D NAND用のSiO2/SiN積層膜エッチングと深堀エッチングを挙げています。いずれも各社が自社製品について公表している内容です。穴が深くなるほど、途中でマスクが尽きたり、底へ届く前に反応が鈍ったりする余地が増えるため、ガスごとの差が結果に出やすくなります。
装置の内壁を落とすガスとは、目的が別です
Section titled “装置の内壁を落とすガスとは、目的が別です”成膜装置の中では、ウェーハだけでなく内壁にも膜が積もります。これを落とすのがクリーニングガスです。レゾナックはC2F6を主に8インチラインのCVD装置、F2/N2を主に12インチラインのCVD装置のチャンバークリーニング用として掲載しています。セントラル硝子は、三フッ化塩素をTiNやW、20%F2/N2をシリコン、高純度無水弗酸をSiO2をターゲットとしたLP-CVD炉向けと対応づけて掲載しています。いずれも各社が自社製品について示す用途です。
同じ分子でも、工程が入れ替われば別の製品になります。セントラル硝子はクリーニング用の三フッ化塩素を純度99.9%以上、エッチング向けに高純度化したCEG ClF3を純度99.99%以上として掲載しています。八フッ化プロパン(C3F8)のように、レゾナックの一覧では絶縁膜のエッチング用、関東電化工業の一覧ではクリーニング用として載るガスもあります。分類の言葉よりも、どの工程でどの純度が要るかを追うほうが実態に近づきます。
危険性と温暖化係数も、選定の条件に入ります
Section titled “危険性と温暖化係数も、選定の条件に入ります”エッチングガスは反応する力を持つ以上、運用にも条件が付きます。レゾナックは自社製品の分類として、三塩化ホウ素を毒物、亜硫酸ガスを毒性あり、CH3Fを可燃性と記載しています。同社は地球温暖化係数(GWP値)も併記しており、C4F6を1以下、CH3Fを92としています。セントラル硝子も20%F2/Arを、既存のNF3やCF系ガスに比べて環境負荷を抑えられる環境配慮型のエッチングガスと位置づけています。削る性能に加えて、安全に運べるか、排出をどう抑えるかまで含めて製品が選ばれます。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”エッチングガスとは何ですか?
ドライエッチングで、ウェーハの上の狙った膜だけを気体の化学反応で削り取るために使うガスです。日本酸素は半導体材料ガスの用途区分にエッチングを含めており、関東電化工業も四フッ化炭素やトリフルオロメタンを半導体・FPD製造用のエッチングガスとして案内しています。
どうして何種類ものガスが要るのですか?
削る相手が異なるためです。レゾナックの高純度ガス製品一覧では、酸化膜のエッチングにC4F6やCF4、窒化膜のエッチングにCH3F、導体のエッチングに塩素や三塩化ホウ素と、用途ごとに製品が書き分けられています。
選択比とは何ですか?
狙った膜が減る速さと、まわりのマスクや下地が減る速さの比です。セントラル硝子はCEG 34Eについて、アモルファスカーボンなどのマスク材に対してシリコン酸化膜と窒化膜を高い選択性で削れるとしています。削る速さより、この削り分けがガスの価値を決めます。
絶縁膜と導体でガスの系統が入れ替わるのですか?
入れ替わります。レゾナックの製品一覧では、絶縁膜のエッチングにフッ素を含むガスや亜硫酸ガスが並び、導体のエッチングには塩素、臭化水素、三塩化ホウ素、六フッ化硫黄が並びます。同社は塩素をポリシリコン、三塩化ホウ素をメタルに適するとしています。
クリーニングガスとは何が異なりますか?
削る場所が異なります。エッチングガスはウェーハの上の膜を削り、クリーニングガスは成膜装置の内壁に付いた膜を落とします。レゾナックはC2F6とF2/N2をチャンバークリーニング用として掲載しており、関東電化工業も三フッ化窒素をクリーニングガスとして案内しています。
同じ分子でも製品が別になることはありますか?
あります。セントラル硝子は、クリーニング用の三フッ化塩素を純度99.9%以上、エッチング向けに高純度化したCEG ClF3を純度99.99%以上として、別の製品として掲載しています。工程ごとに求める純度が異なるためです。
環境への影響は選定に関係しますか?
関係します。レゾナックは自社製品のGWP値として、C4F6を1以下、CH3Fを92と記載しています。セントラル硝子も20%F2/Arを、既存のNF3やCF系ガスに比べて環境負荷を抑えられる環境配慮型のエッチングガスと位置づけています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- 特殊ガスとは ── エッチングガスを含む、性質が特殊なガス全体の運び方
- 選択比(エッチング)とは ── 削り分けの度合いを数で表す指標
- ドライエッチングとは ── ガスを使う削り方そのもの
この記事の事実は、誰でも読める公開資料を根拠とし、各URLの到達可否をこちらで実測しています。したがって、リンク先が移動または消滅した場合は、その旨をこのページへ反映します。
- レゾナック「高純度ガス」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 絶縁膜用と導体用の書き分け、各ガスの用途
- レゾナック「高純度FC-2316(C4F6)」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 高アスペクト比のエッチング、GWP値1以下
- レゾナック「高純度三塩化ホウ素 (BCl3)」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── メタルのエッチング用途、毒物の分類
- レゾナック「高純度亜硫酸ガス (SO2)」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 有機膜とカーボンマスクのエッチング、毒性の分類
- レゾナック「高純度HFC-41 (CH3F)」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 窒化膜のエッチング、可燃性、GWP値92
- レゾナック「高純度FC-116 (C2F6)」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 8インチラインのCVD装置のチャンバークリーニング
- レゾナック「高純度20%フッ素窒素混合ガス(F2/N2)」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 12インチラインのCVD装置のチャンバークリーニング
- セントラル硝子「次世代半導体エッチングガス」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── CEG 34EとCEG IF7の選択性、CEG ClF3の純度、20%F2/Arの位置づけ
- セントラル硝子「半導体製造装置用クリーニングガス」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── クリーニング用ガスのターゲットと純度
- 関東電化工業「特殊ガス製品」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── エッチング用とクリーニング用の製品区分
- 日本酸素「半導体材料ガス」(2026年8月30日にリンク生存を実測、200)── 半導体材料ガスの用途区分にエッチングを含むこと