電解めっき(Cu配線)とは
電解めっき(Cu配線)とは、めっき液に浸したウェーハへ電気を流し、液の中の銅イオンを金属の銅として析出させて、配線の溝を埋める工程です。
銅の配線は、先に溝を掘って埋める手順で作ります。日本表面科学会の会誌に載った中村友二氏の総合報告は、銅がドライエッチングする際の生成物であるハロゲン化物の蒸気圧が低いため、エッチングによるパターン形成は実用上困難だったと述べています。そこで、絶縁膜に先に溝と穴を掘って金属を埋めるダマシン法が採られました。
埋める手段が電解めっきです。SCREENセミコンダクターソリューションズの公式技術情報は、硫酸銅などを成分とした溶液にウェーハと銅の塊を漬けて電気を流し、ウェーハの表面に銅をめっきする方法だと記しています。同社は、スパッタに比べて材料コストが低く生産性も高い一方、均一性はスパッタよりも低いとも記しています。
工程の並びも決まっています。中村氏の報告は、溝とビア孔を形成したあとにバリアメタルと銅のシード膜を成膜し、そのうえで電解めっきによって銅膜を埋め込み、余分な銅をCMPで除去する流れを示しています。めっきは、前後の工程とひとつづきです。前にスパッタリング、後にCMPが必ず付きます。
半導体産業人協会の半導体歴史館は、めっき技術がCuダマシンプロセスで初めて前工程に採用されたと記録しています。深い溝を埋めるために、溝の底から銅膜が優先的に成長するボトムアップを実現する必要があり、めっき液と装置の開発が急ピッチで進められたとも述べています。
一様に析出させると、溝の口が先にふさがります
Section titled “一様に析出させると、溝の口が先にふさがります”現場で最初に起きる困りごとは、埋め残しです。溝の内側どこでも同じ速さで銅の析出が進むと、口に近い側の肩が先に太ります。肩どうしが触れた時点で溝は蓋をされ、中には空洞や継ぎ目が取り残されます。
残った空洞は、そのまま断面の欠損です。電流の通る面積が減って抵抗が上がり、後の通電で断線の起点にもなります。研磨の前に蓋がされるので、空洞はCMPで削ったあとも配線の中に居座ります。
だから、析出の速さを場所ごとに変える必要があります。上野和良氏が表面技術協会の会誌に書いた解説は、この埋め方をボトムアップフィリング、あるいはスーパーフィリングと呼んでいます。同解説によれば、微細になるほど埋め込みは難しくなります。同解説は、2012年時点の微細配線の幅を50nm程度、トレンチとビアのアスペクト比をそれぞれ2程度で合わせて4程度としています。
何をどう動かすのか、添加剤の役割です
Section titled “何をどう動かすのか、添加剤の役割です”上野氏の解説は、ボトムアップめっき浴の中身を具体的に挙げています。硫酸銅と硫酸からなる基本浴に、塩素、抑制剤(サプレッサ)、促進剤(アクセラレータ)、レベラーなどの添加剤が加えられます。
サプレッサには分子量の大きいポリエチレングリコールが主に用いられます。同解説によれば、サプレッサは塩素と複合体を形成して銅の析出を抑え、微細パターンの内部には侵入しにくいため、主にトレンチやビアの側面や外の平坦部で析出を抑えます。
アクセラレータには分子量の小さい化合物が用いられます。同解説は、分子が小さいためトレンチやビアの中にも侵入しやすく、パターン内部ではサプレッサに対する相対的な濃度が増えて抑制作用が弱まり、パターン外部より析出速度が相対的に速くなるとしています。外を抑えて中を助ける、この差がボトムアップの中身です。
レベラーは、パターンの角部に吸着しやすく、その部分での析出を抑制するとされています。同解説は、レベラーを省く浴もあると付け加えています。
現場が実際に握るのは、この濃度です。同解説は、添加剤の濃度を一定に保つことが安定した埋め込み特性の維持に重要であり、サイクリックボルタンメトリックストリッピングなどを用いた濃度管理が行われると述べています。同解説が実験に用いた浴の一例では、硫酸96%が105.8mL/L、硫酸銅が65g/L、塩酸35%が0.12mL/L、ポリエチレングリコールが100mg/L、促進剤が1mg/Lで、電流密度10mA/cm2で膜厚約500nmを堆積しています。
シードの側も埋め込みを左右します。中村氏の報告は、ルテニウムが銅とのぬれ性に優れ、その後にスパッタ成膜されるシード銅薄膜が均一に被覆されるため、電解めっき銅の埋め込み性能が向上すると述べています。Ru配線が注目される理由の一つが、この埋めやすさです。
めっきの直後は、放置するだけで結晶粒が育ちます
Section titled “めっきの直後は、放置するだけで結晶粒が育ちます”めっき直後の膜は、室温のままでも変化し続けます。上野氏の解説は、銅めっき膜では室温での堆積後から室温放置における結晶粒成長、つまり再結晶化であるセルフアニール現象が観察されると述べています。
セルフアニールは、電気と機械の両方の性質を動かします。同解説によれば、セルフアニールに伴って抵抗率の減少、膜応力の変化、CMP速度などの変化が生じます。研磨の速さが日によって動き、そのまま後工程へ跳ね返ります。
そのため、待たずに動かします。同解説は、これらの物性変動が配線形状や特性のばらつきに繋がるため、めっき後に150度から400度の間の温度で熱処理を行い、結晶粒を成長させて物性を安定化させることが一般的に行われると述べています。
差し出すもの、それは膜に残る不純物です
Section titled “差し出すもの、それは膜に残る不純物です”添加剤の成分は、仕事を終えたあとも膜の中にとどまります。上野氏の解説は、めっき膜中に主に添加剤に由来する炭素、塩素、硫黄が含まれ、二次イオン質量分析などで測られると述べています。同解説によれば、めっき液の溶媒である水の純度でも残留量は変わり、超純水を用いた浴では膜中の残留炭素濃度が1桁以上減少します。
この不純物が、まず粒の育ち方を止めます。同解説は、炭素が粒界に集まって粒界の動きをピンニングすると考えられ、膜中の炭素濃度が高いほど粒成長しにくくなると述べています。そして配線幅が100nm以下の微細配線では、電子の粒界散乱や側面散乱による抵抗上昇の影響が大きく、抵抗低減のためには粒径の拡大が重要になるとしています。粒が小さいままであることが、そのまま抵抗として出てきます。
信頼性については、向きが二つに割れます。同解説によれば、不純物濃度が増加するほどエレクトロマイグレーションの寿命は劣化します。理由は、めっき膜中の不純物が熱処理によって銅配線と絶縁膜の界面に析出し、界面の密着性が低下するからで、銅配線ではこの界面がエレクトロマイグレーションによる銅の拡散パスにあたります。
ところが、ストレス誘起ボイドには逆にはたらきます。同解説は、炭素などの粒界の不純物が粒界を介した空孔の拡散を抑制し、ボイドの形成を抑えるとしています。不純物を増やすとストレス誘起ボイドは抑制され、エレクトロマイグレーション耐性は劣化します。 同解説は、これをトレードオフと呼んでいます。
解き方も示されています。同解説は、ストレス誘起ボイドが幅依存性を持ち、幅の広い配線で顕著であること、狭い配線ではストレス誘起ボイドが生じにくくエレクトロマイグレーション耐性が問題になることを踏まえ、分子量の大きなレベラーを使う提案を紹介しています。大きな分子は広い配線溝には入れても狭い配線幅には侵入しにくいので、広い配線だけ不純物濃度を選択的に上げられるという考え方です。溝に入る分子の大きさを使い分けるという発想は、ボトムアップと同じ土台の上にあります。
関連するデータ・ツール
Section titled “関連するデータ・ツール”- 配線・メタライゼーションの工程ページ ── 工程分類と、この工程につながる公開求人を載せています
- CMPの工程ページ ── めっきであふれた銅を落とす側の工程です
- 装置カタログDB ── 公式製品ページ単位でメーカーと製品familyを引けます
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”電解めっき(Cu配線)とは何ですか?
めっき液に浸したウェーハへ電気を流し、液の中の銅イオンを金属の銅として析出させて、配線の溝を埋める工程です。SCREENセミコンダクターソリューションズは、硫酸銅などを成分とした溶液にウェーハと銅の塊を漬けて電気を流す方法だと記しています。
スパッタとめっきのうち、めっきを採るのはなぜですか?
SCREENセミコンダクターソリューションズは、スパッタに比べて材料コストが低く生産性も高い一方、均一性はスパッタよりも低いと記しています。深い溝の底まで金属を届けたい場面で、液に浸して電気を流す方法が選ばれました。
ふつうに電気を流せば溝は埋まりますか?
口の付近から先に埋まります。溝の内側どこでも同じ速さで析出が進むと、口の付近が先に太って閉じ、中に空洞や継ぎ目が取り残されます。そこで、底の析出だけを速くする必要があります。
底だけを速くするにはどうするのですか?
めっき液に添加剤を入れます。表面技術協会の会誌に載った上野和良氏の解説は、硫酸銅と硫酸からなる基本浴に、塩素、抑制剤、促進剤、レベラーなどの添加剤が加えられると述べています。分子の大きさの違いで、溝の内と外で析出の速さが変わります。
めっきした直後の膜は安定していますか?
室温のままでも結晶粒が育ちます。同解説は、銅めっき膜では室温放置での結晶粒成長というセルフアニール現象が観察され、これに伴って抵抗率の減少、膜応力の変化、CMP速度などの変化が生じると述べています。そのため、めっき後に150度から400度の間で熱処理を行い、物性を安定させることが一般的です。
添加剤を入れる代償は何ですか?
膜に不純物が入ります。同解説は、めっき膜中には主に添加剤に由来する炭素、塩素、硫黄が含まれると述べています。この不純物が、抵抗と信頼性の両方を左右します。
不純物は減らせば減らすほど良いのですか?
配線の幅で答えが変わります。同解説は、不純物を増やすとストレス誘起ボイドは抑制されるがエレクトロマイグレーション耐性は劣化するというトレードオフがあると述べています。幅の広い配線と狭い配線で、望ましい向きは逆になります。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”この記事の事実は、誰でも読める公開資料を根拠とし、各URLの到達可否をこちらで実測しています。したがって、リンク先が移動または消滅した場合は、その旨をこのページへ反映します。
- 表面技術協会 会誌「表面技術」上野和良「半導体集積回路の配線に用いる銅めっき膜の不純物」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── ボトムアップフィリングと添加剤の役割、めっき浴の組成例と電流密度・膜厚、濃度管理の方法、膜中の炭素・塩素・硫黄、超純水による残留炭素の低減、セルフアニールと熱処理温度、炭素による粒界ピンニング、配線幅100nm以下での散乱、エレクトロマイグレーションとストレス誘起ボイドのトレードオフです
- SCREENセミコンダクターソリューションズ 公式技術情報「Cu 配線」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 硫酸銅などの溶液にウェーハと銅の塊を漬けて電気を流すこと、スパッタに比べた材料コストと生産性、均一性の低さです
- 半導体産業人協会 半導体歴史館「1990年代後半 ダマシン法によるCu配線技術の採用」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── めっき技術がCuダマシンプロセスで初めて前工程に採用されたこと、溝の底から優先的に成長させるボトムアップのためにめっき液と装置の開発が進められたことです
- 日本表面科学会 会誌「表面科学」中村友二「LSIの配線技術と表面科学」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 銅のハロゲン化物の蒸気圧が低くエッチングによるパターン形成が実用上困難だったこと、バリアメタルとシード膜の後に電解めっきで埋め込む工程順、ルテニウムのぬれ性が埋め込み性能を上げることです
- 応用物理学会 会誌「応用物理」林喜宏「低誘電率絶縁膜材料の進化と最先端ULSI多層配線技術」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 銅多層配線がバリアメタル被覆成膜、めっき銅の埋設成膜、CMPによる平坦化を繰り返すダマシンプロセスで作られることです