Cu-CMPとは
Cu-CMPとは、ダマシン法で溝へ埋めた銅と、その下のバリアメタルを、絶縁膜の高さまで研磨で削り落とし、配線を1本ずつ切り離す工程です。
ダマシン法では、溝を確実に埋めるため、溝の容積より多く銅を付けます。あふれた銅は、ウェーハの表面を一続きの金属膜としておおいます。この膜が付いたまま次の層へ進むと、隣り合う配線は全部この膜を通じて導通します。
三菱電機のULSI技術開発センターに在籍した大崎明彦氏らは、表面技術に公開された解説で、ダマシン配線の作り方をたどると、銅CMPが配線抵抗に直結する工程になると述べています。同解説は、研磨の途中で銅とバリアメタルと層間絶縁膜という性質がばらばらな3種類の膜が同時に顔をのぞかせるため、制御がいっそう難しくなるとも記しています。(2002年時点の記述です)
現場の困りごとは、両側から来ます。削る量が足りなければ、表面の銅膜が配線どうしを導通させたままです。削りすぎれば、ディッシングとエロージョンで配線の断面が痩せ、抵抗が上がります。Cu-CMPは、この2つの不良にはさまれた幅の中で研磨を打ち切る工程です。
銅は、いったん錯体へ変えてから削ります
Section titled “銅は、いったん錯体へ変えてから削ります”荏原製作所の辻村学氏は、精密工学会誌の解説で、CMPの機械的な作用をプレストンの式で表し、研磨速度は押し付ける圧力と、パッド・ウェーハ間の相対速度に比例するとしています。
同解説は、材料ごとの化学的作用を分けて示しています。酸化膜はシリカ砥粒で共磨りし、アルカリ溶液で表面を滑らかにします。タングステンは酸化剤で表面を酸化してから砥粒で機械加工します。銅は酸化剤で酸化しながら錯化剤で錯体にし、その錯体を機械加工します。金属をそのまま砥粒でこすると傷が入るため、いったん柔らかい層へ変えてから削る、という順序を取ります。
Cu-CMPは2つのステップで進みます。大崎氏らの解説は、銅を落とすときとバリアメタルのTaやTaN膜を落とすときでスラリーを分ける2段構えの研磨が、多くの現場で選ばれているとしています。CMPスラリーが2系統要る理由がここにあります。
日立化成の研磨材料開発部は、精密工学会誌の紹介記事で、自社のCMPスラリーのうち、SiO2膜を削るためのセリア砥粒品と、銅のバリアメタルを削るためのシリカ砥粒品の2つで、売り上げの大半になるとしています。同記事は、先端デバイスでは砥粒より細かいパターンを数ナノメートルの精度で削るため、スクラッチをおさえることと平坦性を作り込むことが最大の課題だと述べています。(2017年時点の同社の記述です)
何を測って、何を動かすのか
Section titled “何を測って、何を動かすのか”荏原製作所の渡辺和英氏は、精密工学会誌の解説で、CMP装置の膜厚制御技術を述べています。金属膜には渦電流方式のセンサ、絶縁膜には光の干渉を使う光学式のセンサが載ります。
渦電流方式のセンサはターンテーブル側に据えられ、ウェーハの中心が真上を通ります。テーブルが1周するたびに、センサはウェーハの下をくぐります。ウェーハ面上に導電膜があると磁力線が膜を通り、面上に渦電流が生じます。渦電流の大きさは金属膜の抵抗、つまり厚さで決まります。渦電流が作る逆向きの磁力線の強度を測ると、膜厚が求まります。Cu-CMPでは、この出力から2つの終点を取ります。狙った残膜厚に達した点と、銅を削り切った点です。
動かす側は、ウェーハを保持するトップリングの中のエアバッグです。同解説によれば、エアバッグは複数のエリアに区切られており、エリアごとに圧力を変えて、ウェーハ面内で研磨レートを作り分けます。膜厚制御PCが面内の膜厚プロファイルを計算し、プレストン則をもとにした適応制御で圧力を計算し直し、目標プロファイルへ近づけます。
同解説は、研磨終了後の残膜厚の精度と面内均一性への要求が数nm以下になりつつあるとしています。パッドやスラリー、ドレッサーのわずかな品質ばらつきや経時変化で研磨レートが動くため、指定されたレシピのままでは目標へ届きにくい、という事情も述べられています。(2018年時点の記述です)
差し出すもの
Section titled “差し出すもの”大崎氏らの解説は、ディッシングとエロージョンがどちらも研磨しすぎた場面で出てきて、配線抵抗を押し上げるとしています。同解説のアルミナ砥粒スラリーの例では、広い配線ほどディッシング量が大きく、配線シート抵抗の平均値と200mmウェーハ面内のばらつきが大きく増えました。(同解説が示す1つの研磨条件での測定例です)
もう1つの代償は、表面の汚れです。三菱ケミカル黒崎研究所の河瀬康弘氏らは、精密工学会誌の解説で、CMP後の基板表面へ、研磨に使った砥粒の残り、配線材と絶縁膜の削り屑、パッドの屑といった汚れが付くと述べています。同解説は、その種類の多さが従来の半導体製造プロセスをはるかに上回るとしています。
同解説は、バリアメタル側のスラリーへBTAなどの防食剤が入っていることも記しています。防食剤は研磨中の銅表面へ保護膜を作り、腐食をおさえます。同じ膜が、洗浄の後まで有機残渣として居座る原因にもなります。守る働きと汚す働きが、1つの添加剤から来ます。
新しい材料を入れると、代償の形も動きます。同解説によれば、コバルトをバリアメタルへ使うと、標準電極電位の低いコバルトをアノードとするガルバニック電池ができ、コバルト側が選択的に溶けます。ルテニウムを使うと立場が逆になり、銅側がアノードになって溶けます。そのため、先端の世代で細い配線層を洗うときは、アルカリ性の洗浄剤が主に選ばれます。洗浄工程の設計が、Cu-CMPで選んだ材料に引きずられます。
同解説はさらに、配線の微細化で銅のグレインも微細化し、粒界へのエッチング作用が強い洗浄剤では表面ラフネスが増える傾向にあるとしています。(2018年時点の記述です)
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”Cu-CMPとは何ですか?
ダマシン法で溝へ埋めた銅と、その下のバリアメタルを、絶縁膜の高さまで削り落として配線を1本ずつ切り離す研磨工程です。あふれた銅を落とすまで、隣り合う配線は表面の金属膜を通じて導通したままです。
なぜ銅の配線に研磨が要るのですか?
銅が反応性ガスで削りにくく、先に溝を掘って埋める方式を取るためです。溝を確実に埋めるには溝の容積より多く付けますから、あふれた分を落とす工程が必ず後ろに付きます。
Cu-CMPでは何を測っていますか?
金属膜の厚さです。荏原製作所の渡辺和英氏の解説によれば、ターンテーブル側に据えた渦電流方式のセンサが、テーブルが1周するたびにウェーハの下をくぐり、導電膜に生じた渦電流が作る逆向きの磁力線の強度から膜厚を求めます。狙った残膜厚に達した点と、銅を削り切った点の2つを終点として取ります。
ウェーハ面内のばらつきはどう抑えますか?
トップリングの中のエアバッグの圧力で抑えます。同解説は、エアバッグが複数のエリアに区切られており、エリアごとに圧力を変えて、ウェーハ面内で研磨レートを作り分けると述べています。プレストン則をもとにした適応制御で、目標のプロファイルへ近づけます。
削りすぎると何が起きますか?
ディッシングとエロージョンが起きます。三菱電機の大崎明彦氏らの解説は、どちらも研磨しすぎた場面で出てきて、配線抵抗を押し上げるとしています。同解説のアルミナ砥粒スラリーの例では、広い配線ほどディッシング量が大きく、配線シート抵抗の平均値と200mmウェーハ面内のばらつきが大きく増えました。
なぜスラリーが2種類要るのですか?
銅とバリアメタルで求める研磨の性質が別だからです。同解説は、銅を落とす工程とTaやTaN膜を落とす工程でスラリーを分ける2段構えの研磨が、多くの現場で選ばれているとしています。
Cu-CMPの後に洗浄が要るのはなぜですか?
研磨を終えた表面には、種類の多い汚れが数多く残るためです。三菱ケミカルの河瀬康弘氏らの解説は、研磨に使った砥粒の残りや、配線材と絶縁膜の削り屑、パッドの屑が付くと述べ、バリア研磨スラリーの防食剤BTAが有機残渣の原因にもなると記しています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- CMP(化学機械研磨)とは ── CMP全般のうち、Cu-CMPは金属と絶縁膜が同時に露出する埋め込み型の研磨にあたります
- ディッシング(CMP)とは ── Cu-CMPで削りすぎた側に出る、広い配線1本の中央のくぼみです
- ダマシン法とは ── 溝を掘って埋める方式で、その後始末としてCu-CMPが要ります
この記事の事実は、誰でも読める公開資料を根拠とし、各URLの到達可否をこちらで実測しています。したがって、リンク先が移動または消滅した場合は、その旨をこのページへ反映します。
- 精密工学会誌「半導体プロセスのCMP技術」(荏原製作所 辻村学氏、2017年)(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── プレストンの式、銅を錯体へ変えてから機械加工する化学作用、ディッシングとエロージョンの意味
- 精密工学会誌「CMPプロセスの膜厚制御技術」(荏原製作所 渡辺和英氏、2018年)(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 渦電流方式による金属膜の終点検知、エアバッグのゾーン圧力によるプロファイル制御、残膜厚数nm以下の要求
- 精密工学会誌「先端デバイスのCMP後洗浄技術」(三菱ケミカル 河瀬康弘氏ら、2018年)(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── CMP後の汚染物、BTA防食剤と有機残渣、コバルトとルテニウムでのガルバニック腐食、粒界エッチングと表面ラフネス
- 表面技術「LSI銅配線とウェットプロセス」(三菱電機 大崎明彦氏ら、2002年)(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 銅CMPが配線抵抗に直結する事情、2ステップ研磨、ディッシングと配線シート抵抗の増大
- 精密工学会誌「日立化成における半導体用CMPスラリーの開発」(2017年)(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── セリア砥粒とシリカ砥粒の2系統、スクラッチ抑制と平坦性の制御という課題