ダマシン法とは
ダマシン法とは、絶縁膜に溝と穴を掘り、そこへ金属を埋めてから、はみ出した分を研磨で落として配線を作る方式です。 金属を削り残して配線にする従来の方式とは、順序が逆になります。
配線の作り方には、素直な順序があります。金属の膜を一面に付け、レジストでパターンを描き、残す部分の外側をエッチングで削ります。残ったものが配線になります。アルミ配線はこの方式で作られてきました。
銅では、この順序の前提が崩れます。エッチングは、削りたい材料を反応性のガスと反応させて揮発する化合物に変えることで進みます。銅のエッチング生成物が気相へ移るのは、標準的なプロセス条件の外です。削り残す方式が使える材料は、標準的な条件で気相へ移るものに限られます。
そこで順序を入れ替えます。先に絶縁膜へ配線の形の溝を掘り、そこへ銅を埋め、あふれた分を研磨で落とします。溝の中に残ったものが配線になります。削りにくいなら埋める、という順序です。
CMPが工程の中心になった理由
Section titled “CMPが工程の中心になった理由”埋める方式には、必ず後始末がついてきます。溝を確実に埋めるには、溝の容積より多く金属を付けることになるからです。あふれた分だけ表面が盛り上がります。
これを落として平らにするのがCMPです。ダマシン法では、掘る・埋める・研磨するの3つで1組になります。研磨は、配線の導通を取る工程です。CMPが半導体工程の中心へ入ってきたのは、銅配線がダマシン法を要求したからです。
埋める工程そのものも、シードとめっきの2段で進みます。Lam Researchの公式技術解説は、拡散バリアが高抵抗であり、その上でめっきを核形成するにはPVDで付けた銅のシード層が要るとしています。同解説によれば、制御が悪いとボイドやシームが生じ、電気特性・信頼性・歩留まりを落とします。溝の中を隙間なく埋めることが、そのまま歩留まりの条件になります。
上下をつなぐビアの穴と、その上の配線溝を、まとめて1回で埋める方式をデュアルダマシンと呼びます。埋める工程と研磨する工程が1組で済みます。
溝を細くすると、細くした分はバリアが占めます
Section titled “溝を細くすると、細くした分はバリアが占めます”微細化が進むと、この方式には構造的な弱点が出てきます。溝の内壁を先に占める膜の厚みが、溝の幅とは別に決まるためです。
imecは公開技術記事で、銅のメタライゼーションが信頼性を保ち銅の絶縁膜への拡散を防ぐためにバリア・ライナー・キャップ層を必要とし、その追加層が使える線幅の大きな割合を占めはじめるため、貴重な導電断面を配線金属自身が使い切れなくなると述べています。
同記事は、配線寸法が銅の電子平均自由行程に近づくにつれてRC遅延が急激に増大するとも述べています。細くすれば抵抗は上がりますが、ある寸法から先はそれ以上の速さで上がります。
同記事は、最も厳しいBEOL層のメタルピッチが数年のうちに20nmを下回り、その時点でCuデュアルダマシンは力を失うとしています。埋める方式そのものに寿命があるという見通しです。
削る方式へ戻る動き
Section titled “削る方式へ戻る動き”行き詰まりに対する答えは、材料を替えて削り残す順序を採り直すことです。削れる金属を直接パターニングすれば、埋める必要も、内壁をバリアで先に潰す前提もなくなります。imecはこれをセミダマシンと呼んでいます。
利点は2つの方向に出ます。imecのnano-interconnectsプログラムディレクターZsolt Tökei氏は同社の公開記事で、容量を抑えたまま高い線アスペクト比を取れること、そして金属CMP工程が無くなることで統合が単純かつ低コストになることを挙げています。埋める方式では研磨が必須の工程でしたが、削る方式ではその工程自体が消えます。
アスペクト比の水準も公開されています。imecは、今日の典型的なCu配線のアスペクト比が約1.6であるのに対し、セミダマシン第1世代はM0でアスペクト比2、第2世代では3を狙うとしています。さらに同社はプレスリリースで、アスペクト比6のRuをセミダマシンで加工し、同じ面積のまま約40%の抵抗低減を実験的に示したと発表しています。埋める方式では上げられなかったアスペクト比が、そのまま抵抗の余裕になる形です。
寸法も進んでいます。18nmメタルピッチでは、完全自己整合ビアを備えた2金属層のセミダマシンモジュールが機能することが実証され、2025年6月の発表では16nmピッチのRu配線まで進んでいます。そして18〜22nmピッチの範囲では、ウェーハ全面の歩留まりが90%以上と報告されています。
歩留まりという言葉は、ウェーハ全面でどれだけ成功したかを指します。埋める方式が力を失うとされる20nmピッチの手前で、削る方式はすでに量産の言葉で語られはじめています。
削りにくい材料に合わせて工程を変えたのがダマシンでした。今度は工程に合わせて材料を選び直す向きへ、判断が反転しています。
関連するデータ・ツール
Section titled “関連するデータ・ツール”- 配線・メタライゼーションの工程ページ ── 工程分類と、この工程に接続している公開求人
- CMPの工程ページ ── あふれた金属を落とす側
- 装置カタログDB ── 公式製品ページ単位のメーカーと製品family
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”ダマシン法とは何ですか?
絶縁膜にあらかじめ溝と穴を掘り、そこへ金属を埋めてから、はみ出した分を研磨で落として配線を作る方式です。金属の膜をパターン状に削り残す従来の方式とは、順序が逆になります。
なぜ削らずに埋めるのですか?
銅がエッチングで削りにくいためです。アルミは反応性ガスで揮発する化合物になりますが、銅のエッチング生成物が気体へ移るのは標準的なプロセス条件の外です。削りにくい材料に対しては、先に形を掘っておいて埋める、という順序に変えることになります。
デュアルダマシンとは何ですか?
上下をつなぐビアの穴と、その上の配線溝を、まとめて1回で埋める方式です。埋める工程と研磨する工程が1組で済みます。
研磨は必須ですか?
必須です。溝からあふれた金属を落として表面を平らにするまでが1組の工程になります。CMPがこの方式と同時に半導体工程の中心へ入ってきたのは、そのためです。
埋めるのに何が要りますか?
バリアとシードが要ります。Lam Researchの公式技術解説は、拡散バリアが高抵抗であり、その上でめっきを核形成するにはPVDで付けた銅のシード層が要るとしています。制御が悪いとボイドやシームが生じ、電気特性・信頼性・歩留まりを落とすとも記しています。
限界はありますか?
あります。imecは公開記事で、銅がバリア・ライナー・キャップを必要とし、これらの層が使える線幅の大きな割合を食いはじめ、貴重な導電断面を配線金属自身が使い切れなくなると述べています。同記事は、最も厳しいBEOL層のメタルピッチが数年のうちに20nmを下回り、そのときCuデュアルダマシンは力を失うとしています。
代わりの方式はありますか?
金属を先に付けてから削る方式へ戻る動きがあります。imecはこれをセミダマシンと呼び、18nmメタルピッチで完全自己整合ビアを備えた2金属層モジュールの実証を公開しています。金属CMPが不要になる点も利点として挙げられています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- CMP(化学機械研磨)とは ── ダマシンと1組になる工程
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- imec「Semi-damascene metallization, an inflection point in back-end-of-line processing」公開技術記事(2026年8月29日にリンク生存を実測、200)── バリア・ライナー・キャップが使える線幅の大きな割合を食うこと、電子平均自由行程に近づくとRC遅延が急増すること、数年のうちに最も厳しいBEOL層のメタルピッチが20nmを下回りCuデュアルダマシンが力を失うこと、Cu配線の典型アスペクト比約1.6とセミダマシン第1世代2・第2世代3
- imec「semi-damascene interconnects with fully self-aligned vias at 18nm metal pitch」公開技術記事(2026年8月29日にリンク生存を実測、200)── 18nmメタルピッチでの完全自己整合ビア付き2金属層モジュールの実証、金属CMP工程が無くなること、容量を抑えたまま高アスペクト比を取れること
- imec「path to line resistance halving using semi-damascene high aspect ratio processing」公式プレスリリース(2026年8月29日にリンク生存を実測、200)── アスペクト比6のRuをセミダマシンで加工して同じ面積のまま約40%の抵抗低減
- imec「16nm pitch Ru lines with record low resistance」公式プレスリリース(2026年8月29日にリンク生存を実測、200)── 16nmピッチRu配線の平均抵抗656 Ω/µm、40%の構造が抵抗目標を達成、幅8nmのローカル配線に相当、18〜22nmピッチでウェーハ全面歩留まり90%以上
- Lam Research「Tech Brief: Elements of Electroplating」公式技術解説(2026年8月29日にリンク生存を実測、200)── 拡散バリアが高抵抗で直接めっきを核形成できずPVDシードが要ること、制御が悪いとボイドとシームが電気特性・信頼性・歩留まりを落とすこと