デュアルダマシンとは
デュアルダマシンとは、絶縁膜に掘った配線の溝と、下の層へつながるビアの穴を、まとめて1回で金属で埋める方式です。 溝とビアを別々に埋める方式と比べると、埋める工程と研磨する工程が1組で済みます。
ダマシン法は、金属の膜を削り残して配線にする方式に代えて、先に絶縁膜へ形を掘り、そこへ金属を埋め、あふれた分を研磨で落とす方式です。銅がこの順序を要求しました。SCREENセミコンダクターソリューションズの初心者向け解説は、銅とプラズマイオンの反応速度が大変遅いため、ドライエッチングで銅の配線を作ることは理屈のうえでは可能でも十分な生産性は得られず、いっそCMP装置で削るダマシン工程を採用したほうがましだという判断になったと述べています。
配線は1層の上に、さらに何層も積み重ねます。上の層と下の層をつなぐ縦の穴、つまりビアが要ります。ここで順番の選択肢が生まれます。ビアの層をまず埋めて研磨し、それから溝の層を埋めて研磨するやり方が1つあります。溝とビアを掘り終えてから1回で埋めるやり方がもう1つあります。後者がデュアルダマシンです。
富士通研究所の中村友二氏は表面科学の解説で、ダマシン法を、絶縁膜へあらかじめ配線用の溝とビア孔を作っておき、そこへ金属を埋めて配線にする手法だと述べています。同解説が挙げる主要工程は、層間絶縁膜の堆積、決めた場所へのビア孔と配線溝の形成、バリアメタルとCuシード膜を付けたうえでの電解めっきによる埋め込み、そしてCMPでの余分なCu膜の除去とCu表面へのバリア絶縁膜の成膜、という順序です。溝とビア孔を先にそろえて掘るこの順序が、デュアルダマシンにあたります。掘る対象が2つに増えても、埋めるのと削るのは1回ずつです。
まとめて埋めると、現場で何が減るのか
Section titled “まとめて埋めると、現場で何が減るのか”減るのは工程の数と、界面と、不良の三つです。まてりあに載った日本アイ・ビー・エムの高辻博史氏の解説は、デュアルダマシンがCMPの回数を減らすほかに、配線とビアを同じ材料でひと続きに埋めることで、界面での抵抗の増加と、上下をつなぐビアが掘り足りずに切れたままになるオープン不良を大きく減らし、生産ラインの歩留り向上にもつながったと述べています。1999年の記述です。
別々に埋めると、溝の金属とビアの金属のあいだに境目が1つ生まれます。同じ銅どうしでも、境目は抵抗を押し上げます。IBM Researchの野上毅氏は応用物理の解説で、デュアルダマシンで得られている利点として、製造コストの低さ、溝側とビア側のパターンを重ね合わせる精度、高抵抗の界面が数のうえで半分で済むこと、そしてビアのCMPを避けられることを挙げています。
この方式が広まった理由は、工程が減って不良が減るからです。 日本半導体歴史館は、ダマシンによって銅のRIEが不要になったことに加え、配線ができた時点で表面がすっかり平らになることが多層化を後押しし、10層を超える多層配線も可能になったと記しています。平らな面をもう一度掘るところから次の層が始まるため、回数が減るほど積み上げやすくなります。
差し出しているのは、1回で埋める深さです
Section titled “差し出しているのは、1回で埋める深さです”まとめた分だけ、穴は深くなります。芝浦工業大学の上野和良氏は表面技術の解説で、トレンチやビアの縦と横の寸法比が微細化に伴って増える傾向にあり、それぞれ2程度で合わせて4程度だと記しています。2012年時点で配線幅が50nm程度という前提での記述です。溝だけ、ビアだけなら手が届く形でも、足し合わせると別の難しさになります。
この深さが、埋め方そのものを変えました。高辻氏の解説は、ターゲットとウェーハの距離を伸ばして垂直成分を高めたロングスロースパッタを使ってもアスペクト比1.5程度が限界で、アスペクト比2以上を要求するデュアルダマシンには対応できなかったと述べています。CVDは埋め込み性能では対応できたものの、異物混入による膜質低下や結晶粒が小さくEM耐性が落ちる問題があり、装置コストも高く成膜速度も遅かったとしています。残ったのが電解めっきでした。
電解めっきは、底から順に盛り上げていきます。上野氏の解説は、微細で高アスペクト比のパターンへ銅を埋めるため、めっき液の添加剤の働きで底から成長させるボトムアップフィリングが用いられると述べています。抑制剤は分子が大きくパターンの中へ入りにくいため主に外側で析出を抑え、促進剤は分子が小さくパターンの中まで入るため内側で析出が速くなる、という仕組みです。
穴の入口には、もう一つの敵がいます。JEITAが公開するITRS 2009年版配線章の日本語版は、PVDで付けた膜が溝の入口側を細らせるため、デュアルダマシンの形状では銅の電解めっきで埋められる範囲に限りがあると指摘しています。バリアメタルとシード層を側壁へ届かせるほど、入口は狭まります。
現場では何を見て、何を動かすのか
Section titled “現場では何を見て、何を動かすのか”測るのは、断面と、工程のあいだの時間です。埋め込みの結果はボイドやシームとして断面に出ます。研磨の結果はディッシングとして出ます。動かせるのは、その手前にある条件です。
めっき液の側では、添加剤の濃度が握ります。上野氏の解説は、添加剤の濃度を一定に保つことが安定した埋め込み特性の維持に重要であり、CVSなどを用いた濃度管理が行われると記しています。同解説はまた、めっき膜中に残る炭素や塩素の量が添加剤の量で変わり、その不純物が結晶粒の成長を止め、抵抗や信頼性を悪化させるとしています。埋まったかどうかだけでなく、何が一緒に入ったかまでが工程の管理対象になります。
工程のあいだの時間も管理の対象です。ITRS 2009年版配線章の日本語版は、側壁に残るポリマーや金属の汚れを落とすウェット洗浄が要るとし、その置き場所を、掘り終えてから金属を付けるまでのあいだだとしています。同資料は、エッチングと洗浄のあいだに空く時間も課題の一つに挙げています。掘り終えた穴は、そのまま待たせるだけで状態が変わります。
天秤が、逆へ傾き始めています
Section titled “天秤が、逆へ傾き始めています”1回でまとめる利点は、細くなるほど目減りします。野上氏の解説は、溝とビアを一度にパターニングして一度に埋めるという、デュアルダマシンで難しくなった部分を切り離し、そのぶん配線を背高くして抵抗を下げるシングルダマシンが、Cu配線を延命させる道の一つとして期待されていると述べています。
数字も示されています。同解説は、シングルダマシンでは細かい溝を埋めるために不可欠だったCoの濡れ層を使わなくても埋め込みが可能になるため、銅の断面積を大きく取れ、配線の高さをデュアルダマシンと同じにしたままCu配線抵抗を30%低くできるとしています。2023年の解説に載っている見通しです。同じ形のまま、埋め方を分けるだけで抵抗が下がるという指摘です。
そのかわりに手放すものも並んでいます。同解説は、シングルダマシンでは、製造コストの低さ、溝側とビア側のパターンを重ね合わせる精度、高抵抗の界面が半分で済むこと、ビアのCMPを避けられることといったデュアルダマシンの利点が失われ、工程の難易度は上がるとしています。新たに加わる最大の課題としては、シングルダマシンのビアをCMPするときに起きるガルバニック腐食で、ビアの中の金属が失われることを挙げています。
削るのが難しい銅に合わせて、掘って埋める順序が生まれました。工程を減らすために、溝とビアをまとめました。そして今度は、抵抗のために、まとめたものをもう一度ほどく検討が進んでいます。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”デュアルダマシンとは何ですか?
絶縁膜に掘った配線の溝と、下の層へつながるビアの穴を、まとめて1回で金属で埋める方式です。埋める工程と、あふれた分を研磨で落とす工程が1組で済みます。
シングルダマシンとの差は、どこにありますか?
埋める回数が違います。シングルダマシンはビアの穴を埋めて研磨し、その上に溝を掘ってまた埋めて研磨します。デュアルダマシンは溝とビアを掘り終えてから1回で埋め、1回だけ研磨します。
なぜまとめて埋めるのですか?
減るものが多いためです。まてりあに載った高辻博史氏の解説は、デュアルダマシンがCMPの回数を減らすほかに、配線とビアを同じ材料でひと続きに埋めるため、界面での抵抗の増加と、ビアが掘り足りずに上下が切れたままになるオープン不良を大きく減らし、生産ラインの歩留り向上にもつながったと述べています。
1回で埋める難しさはどこにありますか?
深さが足し算になる点にあります。表面技術に載った上野和良氏の解説は、トレンチとビアの縦横比が微細化に伴って増える傾向にあり、それぞれ2程度で合わせて4程度だと記しています。2012年時点の記述です。
どうやって埋めるのですか?
電解めっきで底から埋めます。同解説は、微細で高アスペクト比のパターンへ銅を埋めるため、めっき液の添加剤の働きで底から成長させるボトムアップフィリングが用いられると述べています。
現場では何を管理しますか?
めっき液と、工程のあいだの待ち時間です。上野氏の解説は、添加剤の濃度を一定に保つことが安定した埋め込み特性の維持に重要で、CVSなどによる濃度管理が行われると記しています。JEITAが公開するITRS 2009年版配線章の日本語版は、掘り終えてから金属を付けるまでのあいだにウェット洗浄を挟むのが通例だとしたうえで、エッチングと洗浄のあいだに空く時間も課題の一つに挙げています。
デュアルダマシンをやめる動きはありますか?
あります。応用物理に載った野上毅氏の解説は、溝とビアを別々に作るシングルダマシンへ戻せば、配線の高さを同じにしたままCu配線抵抗を30%低くできるとしています。ただし同解説は、製造コストの低さ、溝側とビア側のパターンを重ねる精度、高抵抗の界面が半分で済むこと、ビアのCMPを避けられることといった利点は失われるとも述べています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- ダマシン法とは ── 掘って埋める方式そのもの
- CMP(化学機械研磨)とは ── あふれた金属を落として1組を終える工程
- バリアメタルとは ── 埋める前に溝の内壁を先に占める膜
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- 表面科学 第35巻第5号「LSIの配線技術と表面科学」中村友二(富士通研究所)(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── ダマシン法の中身と主要工程の並び、銅がドライエッチングではパターンを作りにくい理由
- 応用物理 第92巻第6号「2 nm 以降のロジックの配線技術と材料」野上毅(IBM Research)(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── デュアルダマシンの利点として挙げられる製造コスト・合わせ精度・高抵抗界面の数の半減・ビアCMPの回避、シングルダマシンで配線抵抗を30%低減できること、シングルダマシンのビアCMPでのガルバニック腐食
- まてりあ 第38巻第1号「Cu配線の軌跡・奇跡」高辻博史(日本アイ・ビー・エム)(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── デュアルダマシンがCMP回数の低減とビアのエッチング不足によるオープン不良の激減で歩留りを上げたこと、ロングスロースパッタでもアスペクト比1.5程度が限界だったこと、CVDと電解めっきの比較
- 電子情報技術産業協会(JEITA)半導体技術ロードマップ専門委員会「ITRS 2009年版 配線」日本語版(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── PVDで付けた膜が溝の入口側を細らせ、電解めっきで埋められる範囲に限りが出ること、ウェット洗浄がエッチングと金属成膜のあいだに入り、その待ち時間が課題であること
- 表面技術 第63巻第4号「半導体集積回路の配線に用いる銅めっき膜の不純物」上野和良(芝浦工業大学)(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── トレンチとビアのアスペクト比がそれぞれ2程度で合わせて4程度であること、ボトムアップフィリングと添加剤の働き、CVSによる添加剤の濃度管理、めっき膜中の不純物が結晶粒成長を止め抵抗を上げること
- 日本半導体歴史館(半導体産業人協会)「1990年代後半 ダマシン法によるCu配線技術の採用」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── ダマシンで銅のRIEが不要になったこと、配線形成時点で表面が平坦になり10層以上の多層配線が可能になったこと
- SCREENセミコンダクターソリューションズ「初心者のための半導体入門 Cu配線」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 銅とプラズマイオンの反応速度が遅く、ドライエッチングで得られる生産性が低いためダマシン工程を選んだという判断