故障解析とは
故障解析とは、壊れた半導体を調べて、故障の原因と仕組みを突き止め、その結果を設計と製造工程の条件へ反映させる作業です。 目的は、次に出荷するロットを同じ壊れ方から守るところにあります。
現場で重いのは、1個壊れたという事実そのものより、その1個が偶然の1個か、同じロット全体に潜む問題の先触れかを判別できるまでの空白です。判別が付かないうちは、全数回収と現状維持という両極だけが選択肢に残ります。
OKIエンジニアリングの故障解析の解説は、この作業の目的を、故障を発生させている製造ロットを特定し、問題の広がりを最低限に抑え、製造または使用上の改善を導くことだと述べています。同社は、故障品が偶発によるものか波及性によるものかを切り分けることが重要で、その切り分けが対策の規模と範囲を選ぶ判断につながるとしています。
用語としての規定も同ページに載っています。JIS Z 8115:2000 の文言として、故障メカニズム・故障原因・故障が引き起こす結果を識別して解析するために行う、故障したアイテムの論理的で体系的な調査検討、という書き方です。備考には、是正処置を決定するための活動も含むと書かれています。手を打つところまでが、この語の守備範囲に入っています。
キオクシアの信頼性ハンドブック日本語版は、第四章をこの作業に充てています。同章は、信頼性管理に万全を期しても故障発生を完全になくすことは現状では不可能だと述べ、目的を3つ挙げています。開発段階の試作や評価で出た故障を設計とプロセスの条件へ反映させること、量産工程で出た不良を工程管理へ反映させること、そして市場不良の原因が製品側にあるのか、過電圧・ノイズ・熱応力といったシステムとのかみ合わせ側にあるのかを明確にすることです。
やり直せる検査から順に進めます
Section titled “やり直せる検査から順に進めます”同ハンドブックが示す手順例は、決まった並びを持っています。
まず故障品を受け取ると同時に、そのサンプルの履歴を調べます。製造ロット、故障の内容、使用条件、環境条件を洗い出します。同章は、このとき良品サンプルも用意して故障品と対応させることが原因究明の有効な手段だとしています。次に外観検査で、パッケージのクラック、端子間のマイグレーション、リードのさびなどを観察します。続いてカーブトレーサやオシロスコープ、テスタで電気的特性を測り、故障モードをオープン・ショート・劣化に大別します。ここまでで、以後の試験と分解の方針が決まります。
X線透視による内部の観察は、分解の前に行います。同章はこれを、ワイヤやリードのオープンとショートを調べるための手順として位置づけています。OKIエンジニアリングも、非破壊で行う検査として外観検査・電気的特性検査・X線検査・超音波探査を挙げ、剥離やクラックには超音波顕微鏡を用いるとしています。ボンディングワイヤの状態やモールド樹脂の中のボイドは、開けた行為そのものが状態を変えてしまうため、透かして調べる手が先に来ます。
そのうえでデキャップ(開封)へ進みます。同章は、開封法が不適当だと後に必要になる情報が失われ、原因不明に陥る可能性があると注意しています。ここが一方通行の境目です。
数億個から1か所へ、どう絞り込むのか
Section titled “数億個から1か所へ、どう絞り込むのか”開けたあとに待っているのは、広すぎる面です。同ハンドブックは、製品内のトランジスタ数が数億に達しようという状況で、1個ずつ調べて故障箇所を特定する進め方を非現実的だと述べています。そして解析装置はどちらかというと丹念に調べることを得意とするため、観測する領域をあらかじめ精度よく絞り込むことが解析時間の短縮に重要になるとしています。
絞り込みは、まず論理で行います。同章が挙げる診断ツールは、設計情報とテストパターンとテスト結果を使い、回路のどの信号に故障を仮定するとどの時刻に出力が期待値と食い違うかを論理シミュレーションで調べた表、つまり故障辞書と、実際のテスト結果を突き合わせて候補を挙げます。加えてCADナビゲーションシステムが、設計情報と解析装置上の物理座標を結び付け、観測している場所が回路のどこにあたるかを即座に把握できるようにします。
そこから先が、物理的に観測する段階です。同章は、微小リークの検出には微弱発光をとらえるエミッション顕微鏡、チップ内の温度分布の異常には赤外線の検出装置、動作状態の解析にはOBIC法やIR-OBIRCH法を挙げています。IR-OBIRCHについては、赤外線レーザーを試料表面で走査して抵抗値の変化を検知する手法で、ショートや電流リークだけでなく高抵抗による不良箇所の特定にも有効だとして、配線ビアのボイドを突き止めた事例を載せています。
浜松ホトニクスは、同社のエミッション顕微鏡について、レーザー走査で得た高解像度のパターン像に検出した信号像を重ね合わせることで、検出箇所をミクロのレベルで特定できるとしています。半導体メーカーはその位置をもとに不良因子を特定し、物理解析を経て故障原因を解明し、設計へ反映させることになるとしています。
東芝デバイスソリューションは、同社が受託している解析の仕様を公開しています。ナノプローブ解析はLSI中の単体トランジスタの電極へ直接コンタクトして電気特性を測る手法で、同社の条件では最大8電極でのプロービング、測定温度は−40℃から150℃、16nmまでのプロセスで測定実績があり、試料サイズは10mm・厚さ1mm以下とされています。EBAC解析については、配線のオープン箇所を特定する吸収電流EBAC、高抵抗箇所を特定する差動EBAC、リーク箇所を特定するDI-EBACという3つの使い分けを挙げています。
絞り込んだあとに残るのは、観察と断面です。キオクシアの同章は、内部状態の観察に金属顕微鏡や走査型電子顕微鏡を用い、故障箇所を絞ったあとはエッチングや断面カット、FIB加工で狙った1か所の断面を切り出して観察するとしています。同章の事例には、OBIC法で特定した箇所を透過型電子顕微鏡で断面解析したものも含まれます。
何を差し出すのか
Section titled “何を差し出すのか”この作業が差し出すものは、3つあります。
1つ目は試料そのものです。手元にある故障品は、多くの場合ごく少数です。開封も断面加工も1回限りですから、どの情報をどの順で取るかを決めた時点で、あきらめる情報も決まります。
2つ目は時間と費用です。浜松ホトニクスは、大量生産の半導体では低い割合で不良品が出ることを前提に製造し、検査とスクリーニングによって信頼性を保っていると述べています。自動車向けにはスクリーニングの負荷を強くして故障の可能性を減らしており、その検査とスクリーニングには多くのコストがかけられているとしています。
3つ目は設計情報の持ち出しです。診断ツールもCADナビゲーションも、回路情報とレイアウト情報を必要とします。外部へ解析を委託するときは、この情報をどこまで渡すかが交渉の対象になります。東芝デバイスソリューションは、顧客から提供を受けたテストパターン情報を、自社の解析用テスターに合わせたテストプログラムへ変換するとしています。
得られるものは、原因そのものよりも、範囲です。歩留まりの数字が下がったときも、信頼性試験で1個落ちたときも、次に決めたいのは「どこまでが同じ問題か」です。故障解析は、その線を引くための材料をつくります。
関連するデータ・ツール
Section titled “関連するデータ・ツール”- 歩留まり・欠陥解析の工程ページ ── 工程分類と、この工程に接続している公開求人
- 信頼性の工程ページ ── 壊れ方を試験で先取りする側
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”故障解析とは何ですか?
壊れた半導体を調べて、故障の原因と仕組みを突き止め、その結果を設計と製造工程の条件へ反映させる作業です。OKIエンジニアリングは、JIS Z 8115:2000 の用語規定として、故障メカニズム・故障原因・故障が引き起こす結果を識別して解析するために行う、故障したアイテムの論理的で体系的な調査検討という文言を掲げ、備考として是正処置を決定する活動も含むと示しています。
何のために行うのですか?
次に出荷するロットを、同じ壊れ方から守るために行います。キオクシアの信頼性ハンドブックは、故障解析の目的として、開発段階で見つかった故障を設計とプロセスの条件へ反映させること、量産工程の不良を工程管理へ反映させること、市場不良の原因が製品側かシステムとのかみ合わせ側かを明確にすることの3つを挙げています。
どんな順番で進めるのですか?
同ハンドブックが示す手順例では、故障品の履歴調査から始め、外観検査、電気的特性の測定と続き、X線透視は分解前に済ませます。そのうえでパッケージを開封し、内部観察、故障箇所の特定、断面加工と元素分析へ進みます。やり直せる検査から順に並ぶ形になっています。
なぜ順番が決まっているのですか?
破壊をともなう操作が1回きりのためです。同ハンドブックは、開封法が不適当だと後で必要になる情報が失われ、原因不明に陥る可能性があると注意しています。
故障箇所はどうやって特定するのですか?
論理で候補を絞ってから、光と熱で観測します。同ハンドブックは、製品内のトランジスタ数が数億に達するなかで、解析装置で観測する領域をあらかじめ精度よく絞り込むことが解析時間の短縮に重要になると述べ、設計情報とテストパターンとテスト結果を使う診断ツールの手順を挙げています。そのうえでエミッション顕微鏡やIR-OBIRCHなどの装置で発光や抵抗の変化を検出します。
どこまで細かく測れるのですか?
東芝デバイスソリューションが公開している同社のナノプローブ解析の仕様では、最大8電極でのプロービング、測定温度は−40℃から150℃、16nmまでのプロセスで測定実績、試料サイズは10mm・厚さ1mm以下となっています。同社サービスの条件です。
解析を尽くせば不良はゼロになりますか?
浜松ホトニクスは、大量生産の半導体では低い割合で不良品が出ることを前提に製造し、検査とスクリーニングによって信頼性を保っていると述べています。自動車向けにはスクリーニングの負荷を強くして故障の可能性を減らしており、その検査とスクリーニングには多くのコストがかけられているとしています。故障解析が担うのは、影響の範囲を見極め、再発を抑えるところまでです。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- 欠陥検査とは ── 作っている途中のウェーハで欠陥を探す側
- デキャップ(開封)とは ── 故障解析の途中にある、一度きりの一手
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- キオクシア「信頼性ハンドブック」日本語版PDF 第四章 故障解析(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 信頼性管理に万全を期しても故障発生を完全になくすことは現状では不可能という記述、故障解析の3つの目的(設計とプロセスへの反映、工程への反映、市場不良の原因切り分け)、手順例(履歴調査、良品サンプルの準備、外観検査、電気的特性測定、故障モードのオープン・ショート・劣化への大別、分解前のX線透視、開封、内部観察、元素分析、故障箇所特定、FIB加工による断面観察)、開封法が不適当だと原因不明に陥る可能性があるという注意、製品内トランジスタ数が数億に達しようという状況で1個ずつ調べる進め方を非現実的とする記述、解析装置は丹念に調べることを得意とするため観測領域を事前に絞り込むことが解析時間の短縮に重要になること、故障辞書と診断ツールの仕組み、CADナビゲーションシステムの役割、エミッション顕微鏡・赤外線検出装置・OBIC法・IR-OBIRCH法の用途、IR-OBIRCHを高抵抗による不良箇所の特定にも有効とする記述と、配線ビアのボイドに行き着いた事例、内部状態の観察に用いる金属顕微鏡と走査型電子顕微鏡、OBIC法で特定した箇所を透過型電子顕微鏡で断面解析した事例
- OKIエンジニアリング「故障解析」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 故障解析の目的(故障を発生させている製造ロットの特定、問題の広がりを最低限に抑えること、製造または使用上の改善)、偶発か波及性かの切り分けが対策の規模と範囲の判断につながるという記述、JIS Z 8115:2000 における故障解析の用語規定と是正処置を含むという備考、非破壊検査から破壊検査へ進む構成、非破壊で行う検査として挙げる外観検査・電気的特性検査・X線検査・超音波探査と、剥離やクラックへの超音波顕微鏡の使用
- 東芝デバイスソリューション「半導体故障解析」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 同社受託サービスの解析フロー(前処理、電気的特性取得、故障箇所特定、物理解析)、ナノプローブ解析の仕様(最大8電極、測定温度−40℃〜150℃、16nmまでのプロセスで測定実績、試料サイズ10mm・厚さ1mm以下)、EBAC解析の3手法(吸収電流EBAC、差動EBAC、DI-EBAC)とその用途、顧客提供のテストパターン情報を自社テスター向けプログラムへ変換すること
- 浜松ホトニクス「半導体故障解析」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 大量生産の半導体では低い割合で不良品の発生を前提に製造し検査とスクリーニングで信頼性を保っていること、自動車向けはスクリーニングの負荷を強くして故障の可能性を減らしていること、検査とスクリーニングに多くのコストがかけられていること、レーザー走査で得たパターン像に信号像を重ね合わせて検出箇所をミクロのレベルで特定し、その位置から不良因子を特定して設計へ反映させる流れ
- OKIエンジニアリング「デキャップソリューション(樹脂開封)」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 故障解析ではパッケージ除去後にも電気的特性の状態を確認することが多く、組立構造を維持した状態で開封する半破壊解析を定石とする記述