TEM(透過電子顕微鏡)とは
TEM(Transmission Electron Microscope、透過電子顕微鏡)とは、100nmほどまで薄く削った試料へ電子線を通し、透過した電子を磁界型の電子レンズで拡大して内部の構造を撮る装置です。 表面をなぞる顕微鏡と役割を分担し、TEMは断面の層の重なりを担当します。
先端のロジックでは、トランジスタのFinの幅が10nm以下に達しています。日本電子のアプリケーションノートは、この寸法まで細くなったFinについて、プロセスの制御や故障解析で高い空間分解能を持つTEMによる解析が必須になったとしています。Fin自体が立体であるため、FIBで三次元の位置と観察の向きを指定して薄膜試料を作る作業も要るとしています(2022年に同社が公開した解析例での記述です)。
歩留まりが落ちたとき、欠陥検査はウェーハ面の欠陥の位置と大きさを記録します。その先で要るのは、どの層のどこで何が起きたかという中身です。ゲート酸化膜の厚み、コンタクトプラグの底、バリアメタルの連続性といった深さ方向の並び方は、断面を撮る手法が答えます。
電子を通すために、試料を100nmまで削ります
Section titled “電子を通すために、試料を100nmまで削ります”東レリサーチセンターの技術情報によれば、TEMは数十kVから数百kVへ加速した電子線を薄片の試料へ当て、突き抜けてきた電子を磁界型の電子レンズで引き伸ばして像にします。同社は、この方式ならサブナノメートルまで解像できるとしたうえで、電子が抜けるように試料を100nmオーダーの薄さまで削る必要があると記しています。試料作製の方法としては、超薄切片法、イオンミリング法、FIB法を挙げ、材料の種類などに応じて使い分けるとしています(同社の技術情報ページの記述です)。
対になるのが走査電子顕微鏡(SEM)です。同社はSEMのページで、電子レンズで細く絞った電子線を試料の上で走査し、そこで放出される2次電子から表面の細かな凹凸を、反射電子から平均原子番号に応じた組成の差を像にするとしています。上で受けるか下で受けるかという受け口の差が、両者の守備範囲を分けます。
同社は形態観察のページで、TEMの守備範囲を、nmからサブnmの領域での構造・形態観察と結晶構造の解析とし、EDXやEELSを併用すれば局所領域の元素分析やマッピングも行えるとしています。半導体デバイスのほか、Liイオン電池、燃料電池、触媒、ポリマーまで対象に含めています。
日本電子は半導体向けのソリューションページで、TEMを200kVといった高いエネルギーの電子線で試料の内部構造を撮る装置とし、デバイス全体にあたる数十μmから、原子配列にあたるサブナノメートルまでを観察の対象に挙げています。同社は、STEM法を使うと原子番号の違いがそのまま明暗になるZコントラスト像、いわゆるHAADF-STEM像が得られるとし、EDSやEELSを足せば微小な部分の組成や化学結合の状態まで分析が届くとしています。
面で欠陥を探し、点で断面を撮ります
Section titled “面で欠陥を探し、点で断面を撮ります”日本電子は同じソリューションページで、先端の半導体プロセスでTEMを測長に使う場面を挙げ、FinFET型トランジスタで撮ったHAADF-STEM像と、フラッシュメモリーで撮ったTEM像から寸法を測った例を載せています。5nmのFinFET試料では、加速電圧200kVで撮った高分解能のHAADF-STEM像に、ゲート絶縁膜(SiO2やHfO2)とメタルゲートの層構造がはっきり写るとしています(同社が公開した測長例です)。
3D NANDの品質検査もTEM側です。同社が2025年に公開したアプリケーションノートは、3D NANDが数十から数百nm程度の微細構造を規則的に積み上げた構造だとしたうえで、品質検査ではTEMでの解析が一般に行われると記しています。同ノートは、Gaイオンビームでの微細加工とSEMの観察機能を併せ持つFIB-SEMなら、加工の途中で断面像を確かめながら精密なTEM試料を作れると示しています。
狙った1点を、位置精度±100nm程度で切り出します
Section titled “狙った1点を、位置精度±100nm程度で切り出します”日本電子が2019年に公開したアプリケーションノートは、リフトアウト法を自動化する仕組みで、同じ構造を持つ4か所からDRAMメモリーの試料を作った例を示しています。同社は、薄膜の厚みが約100nmで均一、膜厚のばらつきがほぼ一定、位置精度が±100nm程度だったとし、4つとも高分解能像で膜厚の測長に耐える試料になったとしています(同社が公開した測定例です)。同ノートは、デバイスが微細になるにつれて品質管理の検査手法に変化が生じ、高分解能のTEMで測る比重が増したこと、そしてユーザーの技術レベルによらず大量の試料を自動で作製する技術が要るようになったことを背景として挙げています。
薄さの代償を、仕上げ加工で減らします
Section titled “薄さの代償を、仕上げ加工で減らします”薄くする工程そのものが試料を傷めます。日本電子の別のアプリケーションノートは、TEMの結果がどれだけ確からしいかは試料の出来に大きく左右されるとし、厚みを薄くしてアモルファス層を抑えた試料を作ることが大切だとしています。同社は、GaN-LEDについて、多重量子井戸構造を撮るための断面試料を2通りの作り方で用意しています。FIBだけで作った試料(仕上げ加工3kV、厚み60nm以下)では量子井戸構造の界面が不明瞭になり、イオンスライサ仕上げ法で作った試料(仕上げ加工はFIB 5kVとArイオン1kV、厚み60nm以下)では界面が明瞭に観察できたとしています(同社が公開した測定例です)。加工の最後を低エネルギーのArイオンに委ねると、試料ダメージが減るという結果です。
差し出すものは3つです。薄片へ削った箇所は解析専用になります。1点ごとに試料作製が要るため、TEMへ回せる箇所は限られます。そして薄くするほど像は鮮明になる一方で、加工ダメージの管理が難しくなります。だからこそ、面で探す欠陥検査や計測装置と、点で断面を撮るTEMは、歩留まりを上げる作業の中で役割を分担します。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”TEM(透過電子顕微鏡)とは何ですか?
薄く削った試料へ電子線を通し、透過した電子を磁界型の電子レンズで拡大して内部の構造を撮る装置です。東レリサーチセンターは、加速電圧が数十kVから数百kV、解像度がサブナノメートルに達するとしています。
SEMとはどう違いますか?
SEMは細く絞った電子線で試料の表面を走査し、表面から出る2次電子や反射電子で像を作ります。TEMは試料を透過した電子で像を作るため、試料を薄片へ加工したうえで内部の層の重なりを撮ります。東レリサーチセンターは、SEMに備えたEDXで1μm前後の領域の元素分析も行えるとしています。
試料はどのくらい薄くしますか?
東レリサーチセンターは、電子を透過させるために試料を100nmオーダーまで薄くする必要があるとしています。日本電子が公開したDRAMメモリーの試料作製例では、薄膜の厚みが約100nmで均一、位置精度が±100nm程度でした。
試料はどうやって作りますか?
東レリサーチセンターは、超薄切片法、イオンミリング法、FIB法を挙げ、材料の種類などに応じて使い分けるとしています。半導体デバイスでは、FIBで狙った位置を切り出すリフトアウト法が広く使われます。
加工そのものが像を悪くすることはありますか?
あります。日本電子は、FIBだけで仕上げた試料でGaN-LEDの量子井戸構造の界面が不明瞭になった例と、Arイオンによる1kVの仕上げ加工を加えて界面が明瞭になった例の両方を示しています。
STEMとは何ですか?
試料へ入る電子線を細く絞り、走査して像を作る方式です。日本電子は、STEM法で原子番号に応じたコントラストの像(HAADF-STEM像)が得られるとし、EDSやEELSを加えると微小部の組成や化学結合状態の分析へ広がるとしています。
どの工程で使いますか?
故障解析と品質管理の両方です。日本電子は、先端半導体プロセスでのTEM測長を掲げ、FinFETやフラッシュメモリーの寸法を測った例を公開しています。3D NANDでも、品質検査にTEMによる解析が一般的に行われるとしています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- EDX(元素分析)とは ── TEMは形と寸法を返し、EDXは同じ場所の元素名を返します
- 原子間力顕微鏡(AFM)とは ── AFMは探針で表面の高さを測り、TEMは電子で断面の中身を撮ります
- 欠陥検査とは ── 検査は面から座標を集め、TEMはその座標の1点を切り出して撮ります
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- 東レリサーチセンター「透過型電子顕微鏡(TEM)」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 加速電圧が数十kVから数百kVであること、サブナノメートルの解像度、100nmオーダーまで薄くする必要、超薄切片法・イオンミリング法・FIB法という試料作製の方法を裏づけています
- 東レリサーチセンター「形態観察」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── nmからサブnmの領域での構造・形態観察、EDXやEELSを併用した局所領域の元素分析とマッピング、半導体デバイスを含む適用分野を裏づけています
- 東レリサーチセンター「走査電子顕微鏡(SEM)」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 電子線を細く絞って試料の表面をなぞること、2次電子による凹凸の像と反射電子による組成の像、SEMに備えたEDXで1μm前後の領域の元素分析ができることを裏づけています
- 日本電子「半導体|ソリューション」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 200kVといった高いエネルギーの電子線、数十μmから原子配列までという観察対象、HAADF-STEM像、TEM測長、5nmのFinFETでのゲート絶縁膜とメタルゲートの層構造を裏づけています
- 日本電子「TEMによる品質管理検査のための試料作製」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── DRAMメモリーの試料4か所の自動作製、厚み約100nmで均一、位置精度±100nm程度、微細化にともなう品質管理の検査手法の変化を裏づけています
- 日本電子「高分解能観察のための高品質TEM試料作製」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 結果の質が試料の状態に依存すること、GaN-LEDの量子井戸構造での界面の明瞭さの差、仕上げ加工3kVとFIB 5kVとArイオン1kVの条件、厚み60nm以下を裏づけています
- 日本電子「4D-STEMとSTEM-EELSを用いたFinFETのplan-view観察」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── Fin幅が10nm以下に達したこと、プロセス制御と故障解析で高い空間分解能のTEM解析が必須であること、FIBで三次元の位置と観察方向を指定する必要を裏づけています
- 日本電子「FIB-SEMによる3D NANDのTEM試料作製」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 3D NANDが数十から数百nm程度の微細構造を規則的に積層した構造であること、品質検査にTEM解析が一般的であること、FIB-SEMが断面画像を撮りながら試料を作ることを裏づけています