フレア(露光)とは
フレアとは、投影光学系の中で散乱した露光光が、像を結ぶべき場所の外側まで届いてレジストを薄く感光させる迷光です。 パターンの有無に関わらず露光量へ下駄を履かせる光で、その量は周囲のパターン密度で変わります。
発生源はミラー表面の凹凸です。SEAJの2012年度版 半導体製造装置技術ロードマップ報告書は、EUVでは反射ミラーを複数枚使い、短波長のため表面からの散乱が大きく、各ミラーがEUV光を散乱させてフレアを発生させるとしています。同報告は、表面の微小な凹凸の周期により散乱の角度分布が異なり、大角度から小角度までさまざまなフレアが出るとしています。散乱量を左右するのは中間空間周波数帯の粗さ(MSFR)で、同報告はこのMSFRによりフレアが生じ、線幅(CD)の制御性に影響を与えるとしています。
量は波長で決まります。同報告は、フレア量は波長の2乗の逆数に比例するとしています。露光波長そのものはSEAJの半導体製造装置用語集にあり、KrFエキシマ露光が248ナノメートル、ArFエキシマ露光が193ナノメートル、極端紫外線露光が13.5ナノメートルです。同じ面精度のミラーでも、波長が短いほど同じ凹凸から出る散乱が強まるため、フレア量は増える側へ動きます。数字も同報告に載っています。ArF・KrFリソグラフィでは光学フレア量が1パーセント以下に収まっていた一方、EUVリソグラフィでは10パーセント前後になると予想されているとしています。2012年度時点の見通しです。
フレアが増えると現場で何が起きるか
Section titled “フレアが増えると現場で何が起きるか”周囲のパターン密度が高い場所では迷光が多く、疎な場所では減るため、同じレシピで焼いても場所によってCDがずれます。
JEITAの平成21年度報告は、EUVマスク側の検討項目に並べてフレアと呼ばれる迷光を挙げ、フレアは多層膜の面精度に依存してミラー面の研磨技術が課題だとしています。同報告は量の目安も示していて、稼動中のα機で10パーセント以上、初期の量産機では7パーセント以下とされ、ArFに比べて桁違いに大きいとしています。JEITAの平成20年度報告と平成19年度報告は、同じα機を10パーセント以上、初期の量産機を6から7パーセントとしています。2007年から2009年にかけての開発段階の見通しです。
像のコントラストも薄まります。パターンの有無に関わらず露光量へ下駄を履かせる光なので、明部と暗部の差が縮む側へ動きます。SEAJの半導体製造装置用語集は、確率的影響を、光子数揺らぎ、レジスト構成材料の不均一性、露光装置のコントラスト低下によってパターン欠陥が確率的に生じる現象としています。フレアがコントラストを削る分は、この3つの要因の3番目へ足し込まれる形になります。ここは同用語集が挙げる要因の並びから、こちらでフレアと確率的欠陥を結び付けた読みです。
届く距離が、補正の作り方を変えます
Section titled “届く距離が、補正の作り方を変えます”フレアの寸法への影響は、数cm離れた場所のパターン密度から決まります。 EUVはk1が大きい側から入るため、OPCの負担そのものは軽くなります。JEITAの平成20年度報告は、EUV露光技術はRETやOPCの負担が軽いとされる一方、入射角依存の補正とフレアの補正は必要になるとしています。そのOPCが補正する近接効果の届く先はマイクロメートルの世界です。フレアは桁が違います。SEAJの2012年度版ロードマップは、パターン間の相互作用の距離が光リソグラフィでは1.5マイクロメートル程度にとどまる一方、EUVではフレアの存在によりcmのオーダにおよぶとしています。同報告は、これがデバイスパターンの持つ階層を使った高速計算を困難にし、計算の長時間化とデータサイズの膨張をもたらすとしています。
フレアの拡大率はフィールド内の位置で変わります。同報告は、フレアによる影響がフィールドからにじむような形で広がり、フィールド境界で2倍、フィールドのコーナーで3倍に拡大されるとしています。装置側の構造も混ざります。同報告は、散乱で生じるもとのフレアが点広がり関数(PSF)で表される一方、アパーチャなどで一部が蹴られて強度が下がり形状が変形するとし、さらにマスク周辺の反射防止層ブラックボーダーの反射防止には残りがあり、そこからの反射光をReMaで遮蔽しきれずに隣のフィールドを弱く露光してしまうとしています。この節の数字はいずれも2012年度版の記述です。
何を測り、どのつまみで動かすか
Section titled “何を測り、どのつまみで動かすか”計測に出るのは寸法の場所依存です。CD-SEMやOCDでフィールド内の複数点を測り、周囲のパターン密度とフィールド内位置の両方でCDを層別します。到達距離がcmのオーダにおよぶため、ショット内の位置そのものが要因の1つになります。
つまみは3つあります。
1つ目はミラーの面精度です。JEITAの平成21年度報告は、フレアが多層膜の面精度に依存し、ミラー面の研磨技術が課題だとし、EUV露光装置の課題を低収差・低フレアの光学系の製作としています。面精度を上げればフレアは下がりますが、同報告は研磨精度と多層膜の製作そのものが課題だとしています。緩めればフレアは上がり、その分をマスクデータ側の補正で背負うことになります。
2つ目はフレア補正の細かさです。SEAJの2012年度版ロードマップは、パターン密度マップとフレアの畳み込み計算でフレアマップを作り、さらに光学像とフレアマップの畳み込み計算を行ってフレアを考慮した光学像を得るとしています。細かく補正すればCD変動は削れますが、計算時間とファイルサイズが増えます。同報告は、EUVL特有の圧縮を行った場合に補正処理時間がDRAMで100分の1、ロジックで20分の1に、ファイルサイズがDRAMで40分の1、ロジックで20分の1になった例を挙げています。検証はさらに時間がかかります。同報告は、検証ではフィールド全面のチップをチェックする必要があり、時間の短縮が補正より難しいとし、圧縮前のフラットデータに比べて平均7倍の高速化が達成された例を挙げています。同報告が示した一例です。粗くすれば計算は軽くなり、残差がCDのばらつきとしてCD均一性バジェットを食います。
3つ目はレジストです。JEITAの平成21年度報告は、EUV向けネガレジストがフレアの影響の低減を目的とし、ドライエッチング耐性の改善なども同時に要求されるとしています。SEAJの2012年度版ロードマップは、レジスト材料面からの光学フレア対策を、今後の課題になりうる項目として残しています。
何を差し出すことになるか
Section titled “何を差し出すことになるか”補正の本数が増えます。SEAJの2012年度版ロードマップは、EUVではフレア、OPC、シャドーイング効果の3つの補正が必要だとしています。同報告は、シャドーイング効果はルールベースの方法で補正できるとしつつ、微細化が進むとモデルベースによる補正が要求されるとしています。JEITAの平成20年度報告は、フレアの補正のためにマスク全面を補正する必要があり、単純なルールであってもマスクの全パターンへ補正をかけることになるため、EUVL専用のマスクデータ準備(MDP)技術の開発が急務だとしています。
フレアはミラーの研磨で払うか、計算時間とデータ量で払うか、CD均一性の取り分で払うかの三択になります。装置側で払った残りは、そのままマスクデータと分解能側の余裕から引かれます。
関連するデータ・ツール
Section titled “関連するデータ・ツール”よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”フレアとは何ですか?
投影光学系の中で散乱した露光光が、像を結ぶべき場所の外側まで届いてレジストを薄く感光させる迷光です。JEITAの平成21年度報告は、EUV露光装置の検討項目としてフレアと呼ばれる迷光を挙げ、フレアは多層膜の面精度に依存するとしています。
どこから発生しますか?
ミラー表面の凹凸です。SEAJの2012年度版ロードマップは、EUVでは反射ミラーを複数枚使い、短波長のため表面からの散乱が大きく、各ミラーがEUV光を散乱させてフレアを発生させるとしています。同報告はミラーの中間空間周波数帯の粗さ(MSFR)によりフレアが生じ、線幅の制御性に影響を与えるとしています。
どのくらいの量になりますか?
SEAJの2012年度版ロードマップは、ArF・KrFリソグラフィでは光学フレア量が1パーセント以下に収まっていた一方、EUVリソグラフィでは10パーセント前後になると予想されているとしています。2012年度時点の見通しです。JEITAの平成21年度報告は、稼動中のα機で10パーセント以上、初期の量産機では7パーセント以下とし、ArFに比べて桁違いに大きいとしています。
波長を短くするとなぜ増えるのですか?
SEAJの2012年度版ロードマップは、フレア量は波長の2乗の逆数に比例するとしています。同じ面精度のミラーでも、波長が短いほど同じ凹凸から出る散乱が強まるため、フレア量は増える側へ動きます。
隣のパターンだけを見れば済みますか?
数cm離れた場所までのパターン密度が寸法へ影響します。SEAJの2012年度版ロードマップは、パターン間の相互作用の距離が光リソグラフィでは1.5マイクロメートル程度にとどまる一方、EUVではフレアの存在によりcmのオーダにおよぶとしています。同報告は、これが階層を使った高速計算を困難にし、計算の長時間化とデータサイズの膨張をもたらすとしています。
フィールドのどこで測っても同じ値になりますか?
変わります。SEAJの2012年度版ロードマップは、フレアによる影響はフィールドからにじむような形で広がり、フィールド境界で2倍、フィールドのコーナーで3倍に拡大されるとしています。
どう補正しますか?
パターン密度の分布からフレアマップを作り、光学像へ畳み込みます。SEAJの2012年度版ロードマップは、パターン密度マップとフレアの畳み込み計算でフレアマップを作り、さらに光学像とフレアマップの畳み込み計算を行うとしています。JEITAの平成20年度報告は、単純なルールであってもマスクの全パターンへ補正をかけることになり、EUVL専用のマスクデータ準備技術の開発が急務だとしています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- OPC(光近接効果補正)とは ── 数マイクロメートルの近接を補正する側
- CD均一性バジェットとは ── フレアの残差を引き受ける総額の表
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- SEAJ「2012年度版 半導体製造装置技術ロードマップ報告書 第2編 リソグラフィWG」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── ミラーからの散乱、MSFRと線幅制御性、波長の2乗の逆数に比例、1パーセント以下と10パーセント前後、PSFとアパーチャ・ブラックボーダー・ReMa、相互作用距離1.5マイクロメートルとcmのオーダ、周辺2倍・コーナー3倍、フレアマップ、圧縮の効果、3つの補正
- JEITA 半導体技術ロードマップ専門委員会「平成21年度報告 第6章 WG5 リソグラフィ」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 多層膜の面精度への依存とミラー面の研磨技術、α機10パーセント以上と初期量産機7パーセント以下、ArFに比べて桁違い、低収差・低フレア光学系、EUV向けネガレジストの要求
- JEITA 半導体技術ロードマップ専門委員会「平成20年度報告 第6章 WG5 リソグラフィ」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── α機10パーセント以上と初期量産機6から7パーセント、マスク全面の補正とMDP技術
- JEITA 半導体技術ロードマップ専門委員会「平成19年度報告 第7章 WG5 リソグラフィ」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 同時期のフレア量の見通しと、入射角依存の補正との併存
- SEAJ「半導体製造装置用語集(リソグラフィ)」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 確率的影響を生む要因としての露光装置のコントラスト低下