テレセントリシティとは
テレセントリシティとは、露光エリア内の各点で、主光線が光軸に対してどれだけ傾いているかを表す量です。 現場ではテレセン度と呼びます。この角度が、焦点が動いたときに像がボケるだけで済むのか、横へも動いてしまうのかを分けます。1つの角度が、寸法と重ね合わせの両方へ抜けてきます。
ウシオ電機の露光装置の解説は、投影レンズ内部には絞りがあり、原画面上から出てこの絞りの中央を通って像面に至る光線を主光線と呼ぶとしています。同解説は、露光エリア内の各ポイントにおける主光線の光軸に対する角度ずれ(平行度)をテレセン度と呼び、このテレセン度によってテレセントリックレンズと非テレセントリックレンズが区別されるとしています。境目も同解説にあり、テレセン度2度以内の場合をテレセントリックレンズ、それより大きい場合を非テレセントリックレンズと呼ぶとしています。同社の投影レンズについての呼び分けです。
決まる場所は絞りの位置です。ウシオ電機の光技術用語解説は、テレセントリック系を入射瞳と射出瞳のいずれかが無限遠にある光学系とし、すべての主光線が物空間または像空間において光軸に平行になるとしています。同解説は、入射瞳が無限遠にある場合は後側(像側)焦点に、射出瞳が無限遠にある場合は前側(被写体側)焦点に開口絞りを設置するとしています。キーエンスの顕微鏡技術用語は、物体側、像側、両側の3種類があるとし、通常のレンズでは対象物への距離に応じて像の大きさが変化し、視野の周辺部に行くに従って像が歪むとしています。
テレセン度が残ると現場で何が起きるか
Section titled “テレセン度が残ると現場で何が起きるか”焦点変動が、そのまま寸法変動と位置ずれへ化けます。ウシオ電機の露光装置解説は、自社の投影レンズ群の共通の特徴としてテレセントリックレンズを挙げ、ワークの凹凸などによる焦点の変動に対して寸法の変動が生じないメリットを持つとしています。裏を返せば、テレセン度が残っている光学系では、ワークの凹凸が寸法のばらつきとして出ます。
角度ずれと焦点ずれは掛け算になります。同社が区分値とする2度をそのまま使うと、焦点が1マイクロメートルずれたときの横ずれは1マイクロメートル×tan2度で約35ナノメートルです。こちらで計算しました。焦点深度がフォーカスの振れ幅そのものを表すのに対し、テレセン度はその振れ幅を横方向のずれへ変換する係数として働きます。だからウェハ側の平坦度やチャックの吸着状態が、オーバーレイ計測の値へ抜けてきます。
照明系の側にも同じ話があります。同解説は、光源の中心から射出された中心光線が光軸となす角度の最大値を中心光線平行度(別称デクリネーション角)と呼び、コンタクト・プロキシミティ方式では加工パターンの場所ズレ要因になるとし、通常は1度以下だとしています。レンズプロジェクション方式では加工パターンの対称性などに影響するとしています。
EUVではマスク側の作りが変わります
Section titled “EUVではマスク側の作りが変わります”EUVでは、この話がマスク側で最初に出ます。JEITAの平成19年度報告と平成21年度報告は、EUVマスクが反射型のためマスク面への入射と反射が光軸を共有できず、NA0.25の設計では主軸6度の入射になるとしています。両報告は、高さのある遮光膜パターンのエッジはその方向に依存して入射光の角度が異なるため、解像性能と転写位置が異なり、パターンの変形が生じるとしています。平成21年度報告は、入射角が露光領域(スリット)内で像高に依存して回転するため、歪が露光領域内で像高ごとに異なるとしています。
高さの差が重ね合わせへ抜けます。平成19年度報告は、静電チャックの使用を前提とすると要求される平坦度を数10ナノメートルとし、マスクパターンの高さの差はウェハー上での位置ずれとなって重ね合わせ精度に影響するとしています。2007年度から2009年度にかけての開発段階の記述です。
何を測り、どのつまみで動かすか
Section titled “何を測り、どのつまみで動かすか”測るのはフォーカスに対する傾きです。ウシオ電機はテレセントリックレンズの利点を焦点変動に対する寸法変動の少なさに求めています。したがってフォーカスを振りながら寸法と重ね合わせを測れば、テレセン度の残りはフォーカスに対する傾きとして出ます。CD-SEMで寸法の傾き、オーバーレイ計測で位置の傾きを追う形になります。ショット内の位置ごとに傾きが違えば、テレセン度が露光エリア内で分布していることになります。
つまみは3つあります。
1つ目はワーク側のフォーカス変動そのものです。テレセン度は係数として働くため、掛ける相手を小さくすれば結果も小さくなります。ウェハの平坦度を上げ、チャックの吸着を安定させれば、同じテレセン度でも位置ずれは減ります。緩めれば、テレセン度との積がそのまま重ね合わせの取り分を食います。
2つ目は投影レンズと照明系の組み合わせです。ウシオ電機の光技術用語解説は、絞りを後側焦点または前側焦点へ配置することでテレセントリック系になるとしています。テレセントリック側へ寄せれば、焦点変動に対する寸法と位置の動きが減ります。非テレセントリック側で使う場合の代償は同社の露光装置解説にあり、照明系にはコンデンサレンズが必要になり、性能の表し方も光軸を基準にした角度から、照射面各場所での中心光線が投影レンズの要求する光線となす角度へ変わります。照明系を投影レンズへ合わせ込む作り込みが増える形です。
3つ目はコンタクト・プロキシミティ露光での視角です。同社の露光装置解説は、視角(別称コリメーション半角)を照射面から見た光源の大きさを角度で表した量とし、コンタクト・プロキシミティ方式ではこれが露光面でのマスクパターンのぼけの程度を表すとしています。同解説は、ぼけ量を小さくするには視角を小さくする必要があるものの、視角が小さすぎるとマスクパターンによる回折の影響が大きくなるとし、通常は1度から5度の範囲だとしています。視角を絞ればぼけは減り、絞りすぎれば回折で像が崩れます。
何を差し出すことになるか
Section titled “何を差し出すことになるか”EUVの高NA世代では露光面積を差し出します。SEAJの半導体製造装置用語集は、アナモルフィック投影光学系を、高NA0.55のEUV露光でスキャン方向の倍率8倍とスキャンに垂直な方向の倍率4倍が異なる反射投影光学系だとしています。同用語集は、EUV光がある角度を持って多層膜反射マスクに照射されるため反射回折光も入射角度を中心に広がり、4倍では微細寸法で大きく広がって多層膜の反射率低下や投影光学系による回折光の捕捉が困難になるとしています。8倍にすれば回折角度が減ってこの課題は解消しますが、同用語集は、従来と同じ6インチマスクを使用する場合はウェハ上の露光面積が半分になるとしています。
露光面積が半分になれば、同じ面積を焼くためのショット数は増えます。スループットの見積りと、マルチパターニングへ振るかどうかの判断が、斜め入射という一点から動く形です。テレセン度は角度の指標ですが、現場では焦点変動を位置ずれへ両替するレートとして働きます。
関連するデータ・ツール
Section titled “関連するデータ・ツール”よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”テレセントリシティとは何ですか?
露光エリア内の各点で、主光線が光軸に対してどれだけ傾いているかを表す量です。ウシオ電機は、投影レンズ内部の絞りの中央を通って像面に至る光線を主光線と呼び、露光エリア内の各ポイントにおける主光線の光軸に対する角度ずれ(平行度)をテレセン度と呼ぶとしています。
テレセントリックと呼ぶ境目はどこですか?
ウシオ電機は、テレセン度2度以内の場合をテレセントリックレンズと呼び、それより大きい場合を非テレセントリックレンズと呼ぶとしています。同社の投影レンズについての呼び分けです。
テレセントリックにすると何が得られますか?
焦点が動いても寸法が動きません。ウシオ電機は、自社の投影レンズ群の特徴としてテレセントリックレンズを挙げ、ワークの凹凸などによる焦点の変動に対して寸法の変動が生じないメリットを持つとしています。
テレセン度が残ると位置はどれだけ動きますか?
角度ずれと焦点ずれの積になります。テレセン度2度で焦点が1マイクロメートルずれると、横方向のずれは1マイクロメートル×tan2度で約35ナノメートルです。ウシオ電機が区分値とする2度を使ってこちらで計算しました。
光学系のどこで決まるのですか?
絞りの位置です。ウシオ電機の光技術用語解説は、テレセントリック系を入射瞳と射出瞳のいずれかが無限遠にある光学系とし、入射瞳が無限遠にある場合は後側焦点、射出瞳が無限遠にある場合は前側焦点へ開口絞りを設置するとしています。
何種類あるのですか?
キーエンスは、テレセントリック光学系を主光線と光軸が平行となる光学設計とし、物体側、像側、両側の3種類があるとしています。同社は、通常のレンズでは対象物への距離に応じて像の大きさが変化し、視野の周辺部に行くに従って像が歪むとしています。
EUVのマスク側もテレセントリックになりますか?
反射型のため難しくなります。JEITAの平成19年度報告と平成21年度報告は、EUVマスクは反射型のためマスク面への入射と反射が光軸を共有できず、NA0.25の設計では主軸6度の入射になるとしています。入射角は露光領域内で像高に依存して回転するため、歪は露光領域内で場所ごとに変わります。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”この記事の事実は、誰でも読める公開資料を根拠とし、各URLの到達可否をこちらで実測しています。したがって、リンク先が移動または消滅した場合は、その旨をこのページへ反映します。
- ウシオ電機「ライトエッジ 露光装置の基礎(結像系・照明系)」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 主光線とテレセン度の呼び方、テレセン度2度以内という同社の呼び分け、テレセントリックレンズにおける焦点変動に対する寸法変動の少なさ、中心光線平行度は通常1度以下、視角は通常1度から5度で、絞りすぎたときの回折の影響、非テレセントリック投影レンズでの性能の表し方とコンデンサレンズ
- ウシオ電機「光技術用語解説 テレセントリック系」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 入射瞳と射出瞳のいずれかが無限遠にある光学系という条件、主光線が光軸に平行になること、開口絞りの配置位置
- キーエンス「テレセントリック光学系」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 主光線と光軸が平行となる光学設計、物体側・像側・両側の3種類、通常のレンズでの像の大きさの変化と視野周辺の歪み、測定器や露光装置での用途
- SEAJ「半導体製造装置用語集(リソグラフィ)」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── アナモルフィック投影光学系の倍率8倍と4倍、反射回折光の広がりと多層膜の反射率低下、6インチマスクでの露光面積が半分になる点
- JEITA 半導体技術ロードマップ専門委員会「平成21年度報告 第6章 WG5 リソグラフィ」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 反射型ゆえに入射と反射が光軸を分ける構成、NA0.25設計での主軸6度入射、入射角がスリット内で像高に依存して回転すること、露光領域内での歪の分布、静電チャックの要求平坦度
- JEITA 半導体技術ロードマップ専門委員会「平成19年度報告 第7章 WG5 リソグラフィ」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── マスクパターンの高さの差がウェハー上での位置ずれになり重ね合わせ精度へ影響すること、要求平坦度が数10ナノメートルという値