エッジ配置誤差(EPE)とは
エッジ配置誤差(EPE)とは、パターンのエッジが設計上の位置とどれだけ離れているかを表す量です。 寸法と重ね合わせを別々に管理していると見落とす、エッジ1本ぶんの合計のずれを指します。
SEAJの半導体製造装置用語集は、エッジプレースメントエラー(EPE)を、レジスト像のエッジが、設計で狙った場所からどれだけ離れているかを測る尺度としています。同用語集は、矩形のマスクパターンとレジストパターンのエッジ部を比べると光回折により差分が付き、解像限界付近ではエッジ領域の欠落が増大して差分が大きくなるとしています。
寸法(CD)との違いは、基準の取り方にあります。寸法は同じパターンの2つのエッジのあいだの距離で、EPEは1つのエッジと設計位置の距離です。したがってEPEには、寸法のばらつきに加えて、パターン全体の位置のずれ、つまり重ね合わせが入ってきます。
位置のずれの側は、オーバーレイ計測で測ります。SEAJの用語集は、アライメント(重ね合わせ)精度を露光パターンと下地層との位置ズレとし、下地層に付けたアライメントマークとレジストパターンの位置を突き合わせて求めるとしています。同用語集は、同一露光装置での精度をDedicated Chuck Overlay、異なる露光機間の精度をMatched Machine Overlayと呼び分けています。JEITAが掲載するITRS2007のリソグラフィ日本語版も、Overlayを基板側の位置と重ねるパターンの位置の差で与えられるベクトル量とし、標準偏差の3倍で示すとしています。同じ装置で露光するか別の装置で露光するかで、この数値は別に管理されます。
別の露光でエッジを作ると、重ね合わせが寸法へ変わります
Section titled “別の露光でエッジを作ると、重ね合わせが寸法へ変わります”JEITAの平成20年度報告は、Pitch Splittingでは異なる露光でエッジが形成されるパターンにおいてOverlayエラーがCDエラーとなり、実現が難しいと考えられるほど厳しい重ね合わせ精度が要求されるとしています。EPEという管理量が現場で必要になったのは、この場面です。
ITRS2007のリソグラフィ日本語版は、この関係を式で書いています。ピッチをp、第1露光と第2露光で形成される線幅をw1とw2、重ね合わせ誤差をδxとすると、できあがるスペースは p − (w1 + w2) / 2 ± δx になるとしています。同資料は、スペースの誤差が両方の露光の線幅と重ね合わせ誤差の影響を受け、さらにエッチバイアスの変動も加わるとしています。
同資料はさらに、2つの露光が重なってクリティカルパターンを形成する相関のあるケースでは、CDUの要求が通常は重ね合わせよりも厳しいため、CDUのバジェットへオーバーレイを含める必要があるとしています。CD均一性バジェットの総額に、位置の項が乗り込んでくる形です。一方、2つの露光が個別にパターンを形成する無相関のケースでは、全体のCD変動が個々の露光のCD変動の二乗和になり、クリティカルなパターンのサイズは重ね合わせ誤差と無関係だとしています。同じマルチパターニングでも、どちらのケースかで管理する量が入れ替わります。
予算は二乗で足し合わさります
Section titled “予算は二乗で足し合わさります”JEITAの平成21年度報告に載るダブルパターニングとスペーサへの要求表には、この二重構造がそのまま数字で並んでいます。ハーフピッチ52ナノメートルの2009年の欄では、両側のエッジが1回の露光で決まる線の寸法管理値が3σで3.3ナノメートル、LELEやLFLEに要求される重ね合わせが3σで5.5ナノメートル、平均のずれの上限が0.8ナノメートル、両側のエッジが別の露光で決まる隙間の寸法管理値が3σで6.4ナノメートルです。ITRS2009版の要求値を載せた表で、2009年度時点の見通しです。
3.3ナノメートルと5.5ナノメートルを二乗して足し、平方根をとると6.4ナノメートルになります。こちらで計算しました。隙間の欄は、寸法の項と重ね合わせの項の二乗和そのものです。両者を単純に足すと過大になり、寸法の項のみで見積もると過小になります。
同じ表のシングル露光の重ね合わせは、同じ欄で3σ10ナノメートルです。同報告は本文で、Pitch Splittingの要求が従来のトレンドに比べて一世代以上厳しいとし、シングル露光を基準にすると重ね合わせ精度で1/2以下、寸法均一性で1/√2以下という値が必要と報告されているとしています。
位置の側と寸法の側では、予算の桁が違います。ITRS2007のリソグラフィ日本語版が挙げる困難な課題の表は、ゲートCDを3σ1.3ナノメートル未満へ制御するプロセスと、重ね合わせ誤差を3σ5.7ナノメートル未満へ収める制御手法を別々の課題として並べています。位置の予算は寸法の予算の約4.4倍で、こちらで計算しました。EPEの大きさは、たいていの層で重ね合わせ側が主導します。
母集団が4つに増え、ピッチウォーキングが出ます
Section titled “母集団が4つに増え、ピッチウォーキングが出ます”両側のエッジを別の露光で作る層では、1つの3σで形を表すのが難しくなります。JEITAの平成21年度報告は、パターンが各露光で形成されるラインまたはスペースと、その組み合わせで決まる側とで構成されるため、計4つの組み合わせを考える必要があるとしています。同報告は、母集団が4つになってラインアンドスペースの繰返し単位がライン、スペース、ライン、スペースになり、Pitch Walkingと呼ばれる周期構造が発生するとしています。
さきほどの式の ±δx が、この形の理由です。ずれは片側の隙間を広げ、反対側を同じ量だけ狭めます。平均が同じままでも、狭い側の隙間が先に規格の下限を割ります。面内の平均寸法を合わせ込むレシピは、この偏りを平均の中へ埋めてしまいます。
同じ要求表のスペーサ方式の欄には、二峰性の空間分布を前提にしたSpace Uniformity(Bi-Modal)3σという行があり、同じ欄で4.5ナノメートルです。分布が2つの山に割れることを、要求値の側から先に認めた行になります。
測るときは、4つの組み合わせを見分けます
Section titled “測るときは、4つの組み合わせを見分けます”JEITAの平成21年度報告は、各露光による寸法と重ね合わせを測るにあたり、2枚のマスクが転写したパターンは形状と寸法、そして材料まで別々になるため、どちらのものかを見分けて測る必要があるとしています。CD-SEMやOCDで測る点を、露光ごと、ラインとスペースごとに分けて配る作業になります。
局所のばらつきも別に切り分けます。SEAJの用語集は、同じ露光ショット内の局所のばらつきをローカルCD均一性とし、解像限界付近ではレジスト成分の不均一分布、露光ドーズ量、光学コントラストで決まるとされているとしています。
装置の仕様値と現場の値は別に管理します。同報告は、最新の露光装置が重ね合わせ精度の仕様値で3ナノメートル以下を示しているとしたうえで、プロセスに起因したアライメントマークの変形や歪み、ウェハの歪みの影響も大きいとしています。2009年度時点の記述です。仕様値は、下地が素直なときの上限にあたります。
つまみを回すと、別の欄が動きます
Section titled “つまみを回すと、別の欄が動きます”位置の側では、補正の次数が最初のつまみです。SEAJの用語集は、高次ディストーション補正を、ショット中心に対してX、Yの2次以上の関数で表されるショット形状の変形に対して、ウェーハ側またはマスク側の投影像を変形させ、ショット全体の形を合わせる補正としています。同用語集は、光リソグラフィでは投影光学系内のレンズの変位で、スキャナーではマスクとウェーハの相対位置の変位で補正するとしています。次数を上げれば残差は減りますが、JEITAの平成21年度報告は、露光装置に精度の改善だけでなくスループットの向上も要求されているとしています。補正のために測る点を増やすほど、この2つはぶつかります。
歪みを露光の前に測ってしまう手もあります。ニコンは公式の解説ページで、露光前に歪みを計測してフィードフォワードで補正する考え方を示し、Litho Boosterやinline Alignment Station(iAS)を挙げています。同ページは、焼き付けの際に数十回のフォトマスク交換を繰り返すとも述べ、露光装置の性能を左右する3つの技術に投影レンズの解像度、重ね合わせ精度、スループットを挙げています。差し出すものは、露光機の外へ据える装置1台ぶんの設置面積と工程です。
寸法の側の主なつまみは露光量です。同報告は、解像度、ラフネス、感度の3つがRLSトレードオフと呼ばれる関係にあるとしたうえで、ラフネスを解決する手段が単純には露光量の増大にあるとしています。同報告は、EUVでは光の利用効率が非常に悪いため10ミリジュール毎平方センチメートル以下の高感度レジストが切望されているとしています。エッジの荒れを締める向きは、感度の要求と正面から逆を向きます。
マスク側の余地は拡大率で決まります。SEAJの用語集はMEEFをマスク上の寸法誤差がウエハ上で拡大される比率とし、同報告はダブルパターニングに伴ってマスクの高精度化も厳しく要求されるとしています。MEEFが大きい層では、フォトマスクの寸法と位置の作り込みがそのままEPEへ乗ります。
エッジ1本ずつを動かすつまみがOPCです。東芝レビューは、モデルベースOPCをパターンごとのシミュレーションで光近接効果を予測し、それが小さくなるようにマスクパターンを補正する技術としています。同レビューは、光近接効果が対象パターンを中心とした半径約2マイクロメートルの範囲内のパターン配置で決まるとし、約4×4マイクロメートルを1単位に繰り返すため、チップ全面では数億回を超える計算が必要になるとしています。2012年時点の記述です。補正の細かさは、計算時間で買う形になります。
最後のエッジは、エッチング後に決まります。SEAJのウェーハプロセス用語集は、CD制御をエッチング前のマスク寸法に対するエッチング後の寸法のシフト量を制御することとし、その面内差と疎密差を制御するとしています。東芝レビューは、加工変換差が近接する被加工面積が広く加工残留物の発生量が多いほど大きいとし、これもマスクパターンで補正しておく必要があるとしています。ドライエッチングの疎密差は、エッチング後の測定で初めて数値に出ます。
スペーサ方式は、取り分の置き場所を変えます
Section titled “スペーサ方式は、取り分の置き場所を変えます”作り方そのものを替えると、EPEの重心が動きます。JEITAの平成20年度報告は、Spacer技術ではSpacerそのもので形成されるパターンがその膜厚で決まる単一の寸法のみとなり、ラインを形成する場合はウェハ全面が単一のライン幅になるとしています。同報告は、寸法が膜厚の制御性で決まることから、スペーサで形成される部分のCDUはレジストパターンのCDUより優れているとされていると述べています。
だから重ね合わせの取り分も広くとれます。平成21年度報告の同じ要求表では、スペーサ方式の重ね合わせが11.9ナノメートルで、LELEやLFLEの5.5ナノメートルより広く、シングル露光の10ナノメートルよりも広い値です。
差し出すものは工程です。平成20年度報告は、Spacerダブルパターニングで形成できるパターンが基本的に輪郭パターン、すなわちドーナツパターンとなるため、別のマスクで切断したり、さらに別のマスクでパターンを追加したりする工程も必要になるとしています。切断のマスクには、また重ね合わせがついてきます。SADPを選ぶ判断は、周期の寸法を膜厚へ渡し、端の位置を追加マスクへ渡す取引になります。
電子情報通信学会の知識ベースも、スペーサ法とLFLE方式、LELE方式を並べ、露光同士の重ね合わせ精度が非常に厳しくなってくるとしています。2010年公開の版です。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”エッジ配置誤差(EPE)とは何ですか?
パターンのエッジが、設計上の位置とどれだけ離れているかを表す量です。SEAJの用語集は、エッジプレースメントエラーを、レジスト像のエッジが、設計で狙った場所からどれだけ離れているかを測る尺度としています。
寸法(CD)とはどこが違いますか?
基準の取り方が違います。寸法は同じパターンの2つのエッジのあいだの距離で、EPEは1つのエッジと設計位置の距離です。そのためEPEには、寸法のばらつきに加えて、パターン全体の位置のずれ、つまり重ね合わせが入ります。
どのくらいの数字になりますか?
JEITAの平成21年度報告に載るダブルパターニングとスペーサへの要求表では、2009年の欄で、両側のエッジが1回の露光で決まる線の寸法管理値が3σで3.3ナノメートル、2回露光の層に要求される重ね合わせが3σで5.5ナノメートル、両側のエッジが別の露光で決まる隙間の寸法管理値が3σで6.4ナノメートルです。ITRS2009版の要求値を載せた表で、2009年度時点の見通しです。
なぜ隙間の許容が線より大きいのですか?
別の露光で決まる2つのエッジのあいだの寸法なので、重ね合わせのずれがそのまま隙間の幅へ入るためです。表の6.4ナノメートルは、線の3.3ナノメートルと重ね合わせの5.5ナノメートルを二乗で足して平方根をとった大きさに一致します。こちらで計算しました。
現場では何をどう測りますか?
寸法をCD-SEMやOCDで測り、重ね合わせを下地のアライメントマークとレジストパターンの位置の差として測ります。JEITAの平成21年度報告は、2枚のマスクが転写したパターンは形状と寸法、そして材料まで別々になるため、どちらのものかを見分けて測る必要があるとしています。
どのつまみで動きますか?
露光機の高次アライメント補正、露光前のウェハ歪み計測、露光量、OPCの補正、エッチングの寸法シフトです。それぞれ、残差を締める向きに動かすと、スループット、装置台数、レジスト感度、計算時間、面内差のどれかが逆を向きます。
スペーサ方式にすると楽になりますか?
重ね合わせの取り分は広がります。JEITAの同じ要求表では、スペーサ方式の重ね合わせが2009年の欄で11.9ナノメートルです。代わりに寸法がスペーサの膜厚制御へ移り、輪郭パターンを切断したり追加したりするマスクの工程が増えます。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- CD均一性バジェットとは ── 寸法の総額だけを配分する枠組みで、位置の項が入る前の形
- オーバーレイ計測とは ── EPEの位置側だけを取り出して測る工程
- MEEF(マスク誤差増強係数)とは ── マスク側の誤差がEPEへ入るときの拡大率
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- SEAJ「半導体製造装置用語集(リソグラフィ)」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── エッジプレースメントエラーが指す量、アライメント(重ね合わせ)精度とDedicated Chuck OverlayおよびMatched Machine Overlayの呼び分け、MEEF、パターン寸法均一性とローカルCD均一性、ラインエッジラフネスとレジストライン幅ラフネス、高次ディストーション補正
- SEAJ「半導体製造装置用語集(ウェーハプロセス)」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── エッチングのCD制御が面内差と疎密差を対象にすること
- JEITA 半導体技術ロードマップ専門委員会「平成21年度報告 第6章 WG5 リソグラフィ」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── ダブルパターニングとスペーサへの要求表の各数値、重ね合わせ精度がシングル露光の1/2以下で寸法均一性が1/√2以下という報告、母集団が4つになることとPitch Walking、2枚のマスクからのパターンを識別して測る必要、露光装置の重ね合わせ仕様値3ナノメートル以下とアライメントマーク変形の影響、スループットの要求、RLSトレードオフと露光量の増大、EUVレジストの感度要求
- JEITA 半導体技術ロードマップ専門委員会「平成20年度報告 第6章 WG5 リソグラフィ」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── Pitch SplittingでOverlayエラーがCDエラーになること、Spacerで形成される部分の寸法が膜厚制御性で決まること、輪郭パターンの切断と追加に別のマスクが必要になること
- JEITA 半導体技術ロードマップ専門委員会「ITRS 2007 リソグラフィ 日本語版」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── Overlayの取り方と3σ表記、スペースの寸法がピッチと2つの線幅と重ね合わせ誤差で決まる式、相関のあるケースでCDUのバジェットへオーバーレイを含める必要、無相関のケースでCD変動が二乗和になること、ゲートCD3σ1.3ナノメートル未満と重ね合わせ誤差3σ5.7ナノメートル未満という課題
- 東芝レビュー Vol.67 No.4「半導体デバイスの微細化を支えるOPC技術とDFM技術」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── モデルベースOPCの仕組み、光近接効果が半径約2マイクロメートルのパターン配置で決まること、約4×4マイクロメートルを1単位として数億回を超えるシミュレーションが必要になること、加工変換差の大きさと補正の必要
- ニコン「露光から計測・検査まで」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 露光装置の性能を左右する3つの技術、数十回のフォトマスク交換、露光前に歪みを計測してフィードフォワードで補正するアライメントステーション
- 電子情報通信学会 知識ベース「10群2編3章 プロセス要素技術」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── スペーサ法とLFLE方式およびLELE方式を並べたうえで露光同士の重ね合わせ精度が非常に厳しくなること