補助パターン(SRAF)とは
補助パターン(SRAF)とは、解像限界より細い寸法でフォトマスクへ添える、本体パターンの解像を助けるための図形です。
日本半導体製造装置協会(SEAJ)の半導体製造装置用語集は、補助パターンを、パターンをウェハへ投影するときにエッジを際立たせて解像度を上げるため、パターンの周辺へ設ける限界解像度以下の図形としています。同用語集は、この項目をマスク検査の節へ収めています。
東芝は2012年の技術報告で、補助パターンがフォトマスクへ配置される一方、ウェーハで像になる手前の細さにとどめ、リソグラフィ余裕度をいっそう向上させるために形成するものだとしています。2012年時点の同社の記述です。
ここがOPCの補正図形との境目です。レーザーテックの用語解説は、OPCを、変形を先回りして見込んでマスクパターンへ図形を付加したり、パターンの疎密に応じて寸法を補正する技術としています。電子情報通信学会の知識ベースは、その例として、角が丸くなるところをはみ出させるコーナーセリフの追加を挙げています。
セリフは本体につながって、本体を写すために入れます。補助パターンは本体から離して、像を結ぶ手前の細さで添えます。
孤立したラインで何が起きているのでしょうか
Section titled “孤立したラインで何が起きているのでしょうか”東芝の同報告は、露光光がマスクで回折して干渉縞を作り、N次の干渉縞の角度が sinθN = N × λ / 2HP で表され、ハーフピッチHPが小さくなるほど投影レンズへ取り込む干渉縞の本数が減るとしています。開口の外へ抜けた次数が欠けると、角の丸まり、ライン端部の後退、ピッチの違いによる寸法ずれが出ます。同報告はこれらを光近接効果(OPE)と呼び、OPEが対象パターンを中心とした半径約2µmの範囲内のパターン配置で決まるとしています。2012年の同社の報告での記述です。
補助パターンが動かしているのは、この半径約2µmの中の配置です。孤立したラインの隣へ、解像限界より細い線を添えれば、本体の周りの周期が入れ替わります。解像度の式そのものへ手を入れずに、本体が受け取る近傍の配置だけを書き換える操作になります。
同報告は、解像限界に近いピッチのラインアンドスペースを作るには二重極(ダイポール)照明が要る一方、その照明形状では孤立パターンなどをラインアンドスペースと同時に形成することが困難だとしています。1枚のレチクルには、密なラインも孤立線も同居します。照明条件を密なパターンへ合わせたまま孤立側も通したいとき、手が残っているのはマスク側です。
現場では何を測り、どのつまみを動かしますか
Section titled “現場では何を測り、どのつまみを動かしますか”測る先はプロセスウィンドウです。SEAJはプロセスウィンドウを、CDフォーカスカーブから寸法スペックの上下限に対応する露光量とフォーカスをプロットしたときのフォーカスマージンと露光量マージンとし、CDへの要求が緩い層では寸法の±10%を満たす焦点深度と露光量裕度で表すことが多いとしています。補助パターンを足した結果は、焦点深度とプロセスウィンドウがどれだけ広がったかで測ります。仕上がりの寸法はCD-SEMで追います。
配置した後の検証は、計算側で回ります。JEITAの平成21年度報告は、計算機リソグラフィを、リソグラフィプロセスの転写性能を予測してOPCの計算やSB(Scattering Bar)の発生を検証し最適化する技術とし、マスク上の全パターンの転写性能の確保を実現するとしています。同報告は、モデルベースのOPCが広く採られ、SBも自動発生し、発生したマスクパターンの転写性を検証して転写裕度をマスク全領域にわたって保証するとしています。2009年度時点の記述です。
動かせるつまみは、おおむね3本です。
- 太さです。ウェーハで像になる手前という東芝の条件が、そのまま太さの天井になります。細くする側へ振れば天井から離れますが、そのぶん電子ビームマスク描画とマスク検査が描いて測る対象が細くなります。
- 適用する層と自動発生の範囲です。JEITAの平成19年度報告が載せる表は、マスクの行を、クリティカル層のモデルベースOPCとゲート層の補助パターンから始め、ベクトルシミュレーションを伴うモデルベースOPCへ補助パターンと偏光補正を加える段に進めています。適用を広げれば余裕の要る層まで届き、狭めればマスクへ渡すデータと検証の対象が軽くなります。
- 照明と同時に解くかどうかです。東芝は、照明内の光源1つずつの輝度を個別に制御する新機能とSMOを組み合わせると、露光するパターンのどれにも余裕を最大限に残す輝度の配り方が決まり、それと同時に補助パターンの配置も決まるとしています。SMOへ預ければ照明とマスクが1つの解になり、マスクだけで解けば照明は固定のまま、稼げる余裕はマスク側の分に限られます。
マスク側が払う勘定
Section titled “マスク側が払う勘定”平成19年度報告のフォトマスク要求表は、4倍マスクを前提に、2007年の欄でマスクの名目寸法を170nm、主パターンの最小寸法を119nm、補助パターンの最小幅を85nmとしています。同表の脚注は、名目寸法をウェハのレジスト上の最小寸法にマスクの縮小倍率を掛けたものと定め、補助パターンの最小幅の欄を、マスク上でウェハへ写る手前にとどまる図形の最小幅と定めています。ウェハ側の同じ欄のレジスト上のMPUゲート寸法は42nmです。85nmを4で割ってウェハ換算にすると約21nmで、そのゲート寸法の半分ほどになります(計算値)。2022年の欄では主パターンが21nm、補助パターンが15nmまで下がります。2007年度時点の見通しの数値です。
同表の寸法直線性は2007年の欄で10.4nm、2022年の欄で1.8nmで、その脚注は、直線性を測る寸法の範囲が最小の補助パターンから始まると記しています。マスク上だけの図形にも、寸法規格が付いてきます。
同じ要求表のデータ量の欄は、1層分の非圧縮データをパターン発生装置へ渡すときの想定最大サイズとして、2007年の欄で413GB、2022年の欄で13,209GBを並べています。この欄が世代ごとに伸びる先で、マスクへ足した図形は描画とマスク検査の対象になります。
寸法の許容幅も、マスク側へ厳しく返ります。同報告の脚注は、ウェハ上のCD誤差がマスク上のCD誤差に比例し、MEEFがその比例定数だとしています。同じ脚注は、MEEFが1を超えると、ウェハのCD均一性バジェットを守るためにマスクのCD均一性要求が厳しくなると記しています。同表のMEEFは2007年の欄で孤立ライン1.6、密なライン2.2、コンタクト3.5です。補助パターンを増やすほどマスクへ載る図形は増え、その1本ずつがCD均一性バジェットの中で守るべき寸法を持ちます。
設計側も払います。先にマスクの行を引いた各種技術の表は、要求表とは別の表で、その設計ルールの行を、OPCと位相シフトマスク、補助パターンを許すところから始め、ピッチと向きの制限、OPCとの相性と転写可否を検証したライブラリセル、格子上への配置、使える図形の限定へと、累積で制限が増える形に並べています。デザインルールチェックへ落ちてくる制限は、補助パターンを添える余地との引き換えです。同じ表のk1の欄は0.48〜0.52から0.18〜0.28までを並べています。
得られるものと、その届く範囲
Section titled “得られるものと、その届く範囲”平成21年度報告は、プロセスマージンを最大限に広げるため、照明もマスクも制限を外してピクセル単位で設計する方向を挙げ、ハーフピッチ45nm以下ではマスクの三次元効果を計算へ取り込む必要があり、負荷が非常に高いとしています。補助パターンを平らな図形として計算できる範囲を越えると、断面の形まで計算の入力になります。
東芝は、照明とマスクに設計パターンも加えたトータル最適化によって、リソグラフィ余裕度を約1.5倍へ広げた例もあるとしています。同報告は、その最適化では調整可能な因子の数が膨大になるため、品質工学的手法で余裕度を左右する重要因子だけを抽出し、多変数最適化アルゴリズムで各因子を確定する手法を構築したとしています。2012年時点の同社の記述です。
JEITAの平成20年度報告は、マスクの負担を度外視するインバースリソグラフィやピクセル位相マスクが、付加価値の高いロジックデバイスで検討されてハーフピッチ40nmの実現に迫っている一方、コスト負担とマスク精度の限界から広く展開できる技術として普及するかは不透明だとしています。マスク上だけの図形をどこまで足せるかは、マスク側が払える額で決まります。マルチパターニングへ切り替えるか、1回の露光にマスクの図形を足して粘るかの境目も、同じ勘定の上にあります。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”補助パターン(SRAF)とは何ですか?
フォトマスクの本体パターンの周りへ添える、解像限界より細い図形です。SEAJの用語集は、パターンをウェハへ投影するときにエッジを際立たせて解像度を上げるために設けるものだとしています。
OPCの補正図形とは、どこが異なりますか?
本体につながるかどうかと、ウェハ上で像を結ぶかどうかです。電子情報通信学会の知識ベースは、OPCの例として、角が丸まるところをはみ出させるコーナーセリフの追加を挙げています。セリフは本体の一部として像を結びますが、東芝は補助パターンをウェーハで像になる手前の細さで作るとしています。
なぜ像を結ぶ手前の細さで添えるのですか?
本体の周りの状況を入れ替えるためです。東芝は2012年の技術報告で、光近接効果が対象パターンを中心とした半径約2µmの範囲のパターン配置で決まるとしています。補助パターンは、その範囲の中の配置を書き換えます。
どれくらいの細さですか?
JEITAの平成19年度報告のフォトマスク要求表は、4倍マスクを前提に、2007年の欄でマスク上の主パターン最小寸法を119nm、補助パターンの最小幅を85nmとしています。2022年の欄では21nmと15nmです。2007年度時点の見通しの数値です。
誰が、どこで配置するのですか?
マスクデータを作る計算のなかで配置します。JEITAの平成21年度報告は、計算機リソグラフィがOPCの計算とSB(Scattering Bar)の発生を検証して最適化する技術だとし、SBも自動発生して、発生したマスクパターンの転写裕度をマスク全領域にわたって保証するとしています。
添えると何が増えますか?
マスクへ載る図形が増え、その1本ずつに寸法の規格が付いてきます。JEITAの平成19年度報告のフォトマスク要求表は、寸法直線性を測る寸法の範囲が最小の補助パターンから始まると脚注で定めています。同表は1層分の非圧縮マスクデータ量を2007年の欄で413GB、2022年の欄で13,209GBと見通しており、足した図形はこの量の中で描画と検査の対象になります。
照明条件とはどう関係しますか?
一緒に決まります。東芝は、光源1つずつの輝度を個別に制御する機能とSMOを組み合わせると、余裕を最大限に残す輝度の配り方と補助パターンの配置が同時に決まるとしています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- OPC(光近接効果補正)とは ── OPCは本体につながって本体を写すための図形、補助パターンは本体から離して像を結ぶ手前の細さで添える図形
- 光源マスク最適化(SMO)とは ── SMOは照明とマスクをまとめて解く枠組み、補助パターンはその解のマスク側に出てくる図形
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- SEAJ「半導体製造装置用語集(リソグラフィ)」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 補助パターン(SRAF)の項目、マスク検査の節への収載、プロセスウィンドウと焦点深度の項目、MEEFの項目
- 東芝レビュー Vol.67 No.4「半導体デバイスの微細化を支えるOPC技術とDFM技術」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 補助パターンがマスクへ配置され像になる手前の細さにとどめること、干渉縞の角度の式、光近接効果が及ぶ半径約2µm、二重極照明と孤立パターンの同時形成の難しさ、照明輝度分布と補助パターン配置の同時決定、余裕度約1.5倍の事例
- JEITA 半導体技術ロードマップ専門委員会「平成19年度報告 第7章 WG5 リソグラフィ」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── フォトマスク要求表の名目寸法・主パターン最小寸法・補助パターン最小幅・寸法直線性・マスクデータ量・MEEF、直線性の範囲が最小補助パターンから始まる脚注、MEEFとマスクCD均一性要求の脚注、照明と設計ルールとマスクの世代表、k1の欄
- JEITA 半導体技術ロードマップ専門委員会「平成21年度報告 第6章 WG5 リソグラフィ」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 計算機リソグラフィがSB発生を検証して最適化すること、SBの自動発生と全領域での転写裕度保証、ピクセル単位の照明とマスク、ハーフピッチ45nm以下のマスク三次元効果
- JEITA 半導体技術ロードマップ専門委員会「平成20年度報告 第6章 WG5 リソグラフィ」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── SB適用の自動化、インバースリソグラフィとピクセル位相マスクのハーフピッチ40nmへの接近、コスト負担とマスク精度の限界による普及の不透明さ
- レーザーテック「光近接効果補正」用語解説(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── OPCがマスクパターンへ図形を付加し疎密に応じて寸法を補正する技術であること
- 電子情報通信学会 知識ベース「10群2編3章 プロセス要素技術」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── OPCのコーナーセリフ、解像度向上技術と計算機リソグラフィの位置づけ