プラズマ診断(終点検出)とは
プラズマ診断(終点検出)とは、プラズマの中で起きている変化を測り、加工がどこまで進んだかを判断する仕組みです。 量産ラインで広く使われている形が終点検出で、加工が完了する瞬間に生じる発光の変化を検出してエッチングを終了させます。
現場が困るのは、同じレシピを流してもエッチングが完了する時刻が回ごとにばらつくことです。HORIBAの技術資料は、製造装置間の個体差やプロセス実行ごとに発生するプロセスチャンバ内の状態変化によってプラズマの発光状態が変化するため、生産現場では終点検知条件の調整が頻繁に行われていると述べています。同社の2009年時点の記述です。
終了時刻を1つの設定値で通すと、この揺れがそのまま不良になります。実際の終点より遅く終了させれば、余った時間で下地を削ります。早く終了させれば削り残しが生じます。ドライエッチングは下地との選択比で守られていますが、その守りには限度があります。電子情報通信学会の知識ベースは、ゲート多結晶Siのエッチングで、寸法制御性に加えて極薄となるゲート酸化膜とのエッチング選択比を確保する点からClやBrの化合物が使われるようになってきたと述べています。守りを厚くしたうえで、なお終了時刻を当てる仕事が現場に付いてまわります。
何を測って終了させているのか
Section titled “何を測って終了させているのか”終点検出が読み取っているのは、削る相手が尽きた瞬間に反応の中身が入れ替わることです。HORIBAの技術資料は、終点検知モニタがプロセス中の発光をチャンバの観察窓から光学ファイバを経由して受け取り、マルチチャンネルCCD分光器で広帯域の光を計測すると述べています。同資料は酸化膜エッチングを例に挙げ、終点である酸化膜の界面に近づくと、エッチングガスであるCFxに基づく発光は増加し、反応生成物として生成されていたCOによる発光は減少すると記しています。この変化が一定の閾値に到達した時点を終点として検知します。同社の記事での記述です。
言い換えると、削る材料から出ていた光が細り、余りはじめたエッチングガスの光が濃くなる、その交差点を探します。増える側と減る側の両方を組み合わせられる点が、分光で検出することの利点になります。
発光で終了させるという発想の始まり
Section titled “発光で終了させるという発想の始まり”この発想は装置技術の初期からありました。応用物理学会「応用物理」の業績賞受賞者随想で堀池靖浩氏は、プラズマから離れた場所でのエッチング中にSi表面から化学蛍光が輝き、その蛍光がSi表面に限って生じるため、SiO2上の多結晶Siのエッチング終点を検出できたと述べています。分光すると450nm付近に最大のブロードなスペクトルが観測され、後にSiのエッチング生成物である励起状態のSiF3が基底状態へ遷移するときの発光であると明らかにされたとしています。2016年の記事での回想です。
同記事は、この化学蛍光を用いた終点検出による全自動装置が東芝と徳田製作所(現・芝浦メカトロニクス)により共同開発され、米国モトローラ社へ初の国産半導体装置として輸出されたこと、約40年間で6インチから300mmウェーハまで約1400台が世界中に販売され、現在は主要各社のエッチング装置の1モジュールとして搭載されていることを紹介しています。約1400台は2016年2月調べの数字です。終点を検出する仕組みは、装置の外付け品から装置の一部へ移りました。
診断で分かることと、装置へ常設できるもの
Section titled “診断で分かることと、装置へ常設できるもの”プラズマは基板に痕跡を残します。応用物理学会「応用物理」の解説で布村正太氏は、プラズマが電子、イオン、ラジカル、フォトンから構成され、これらの粒子が材料表面に到達することで欠陥が発生すると述べています。イオンはシースで加速されて高い運動エネルギーで表面に入射し、表面近傍の構造を変形させて材料内部にも侵入します。真空紫外域のフォトンは材料内部の弱い結合を切断してダングリングボンド欠陥を作るとしています。2021年の解説です。
同解説は、こうした欠陥がプロセス後にTEM、SIMS、PL、CL、DLTS、PCDなどで検出され、DLTSとPCDは深い準位の欠陥を10¹¹ cm⁻³程度まで検出できるとしたうえで、これらの手法をプロセス中のプラズマ誘起欠陥の検出へ適用するのは困難だと述べています。同解説が紹介するその場計測では、プロセス中の試料にイオン電流やプラズマ発光起源の電流が流れるため、そこから目的の信号を抽出する工夫が要るとしています。
これに対し、装置へ常設する側は小型に作れます。HORIBAの技術資料は、同社のエンドポイントモニタがプロセス装置へ組み込むことを考慮した小型のセンサユニットとコントローラユニットで構成され、センサユニットが142×257×152mm、4.0kgだとしています。波長範囲は200から800nm、A/D分解能は16ビット、露光時間は20msから2.5sで、エッチング中は約100msの一定間隔でスペクトルを連続してサンプリングすると記しています。これらは同社製品の値です。
現場では何を動かすのか
Section titled “現場では何を動かすのか”条件づくりは、波長を絞ってから閾値を設定する順で進みます。HORIBAの技術資料は、終点検知に関連するラジカルやイオンからの発光波長を任意に選択できることを、終点検知モニタへの主要な要求の1つに挙げています。同資料が示す作業手順は、信号変化の傾向が似た発光波長を分類して解析する領域を限定し、最も変化量の大きい波長と演算窓の条件を選び、複数枚の同一プロセス結果を比べて条件の良否を確かめ閾値を設定する、という3段階です。同社ソフトウェアでの手順です。
作った条件が当たっているかは、別に確かめます。同資料は、発光分析モニタの終点情報でプロセス停止を行った結果、実デバイスの加工状態が適切であるかを検証することが重要だと述べています。あわせて、約600プロセス実行分の生産実績データに対して終点検知時間の統計を取った例や、チャンバ内にN2ガスのリークが発生したと仮定した場合に650nm帯や750nm帯のスペクトル変化が観察される例を挙げており、終点を検出する仕組みがそのままチャンバの状態監視にも使えるとしています。
何を差し出すことになるのか
Section titled “何を差し出すことになるのか”第一に、発光から読み取れるのは反応の進み具合までです。基板に残る欠陥を調べるには別の手段が要ります。それでも終了時刻を当てる価値は、寸法の精度に加えてダメージの抑制にも及びます。電子情報通信学会の知識ベースは、ドライエッチングがデバイスに物理的および電気的な損傷を与える可能性があり、電気的な損傷はチャージダメージと呼ばれてゲート酸化膜を破壊あるいはその信頼性を低下させると述べています。余分に流す時間が延びれば、ウェーハはその環境にさらされ続けます。
第二に、機械に判断を任せた代わりに、条件を作って検証し続ける手間を引き受けます。装置ごと、実行ごとに発光の出方が動くため、条件の調整は現場の日常業務になります。
第三に、発光以外の測り方にもそれぞれの代償があります。大塚電子の解説は、膜の表面で反射した光と裏面で反射した光が干渉し、光は膜層を2回通過するため光路差が生じることから、屈折率が既知であれば厚さを求められると述べています。厚みを直接測れる一方で、屈折率という別の未知数を抱える形になります。
なお、終点を当てる努力が要る背景には、ドライが主力になった事情があります。SCREENセミコンダクターソリューションズの初心者向け入門は、半導体回路の微細化が進んでラフな回路が減っているため、現在のエッチング工程の9割以上がドライで行われていると述べています。削る向きを揃えた代わりに、終了時刻を自分で探す仕事が生まれました。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”プラズマ診断とは何ですか?
プラズマの中や基板の表面で起きている変化を測り、加工がどこまで進んだかを判断する仕組みの総称です。半導体の量産ラインでもっとも身近な形が終点検出で、加工が完了する瞬間に生じる発光の変化を検出してエッチングを終了させます。
終点検出とは何ですか?
削るべき膜が尽きた時刻を装置へ知らせる仕組みです。HORIBAの技術資料は、チャンバの観察窓から光学ファイバを経由してプラズマの発光を分光器で計測し、発光の変化が一定の閾値に到達した時点をプロセスの終点として検知すると述べています。
なぜ時間だけで区切ると困るのですか?
エッチングが完了する時刻が毎回ばらつくためです。HORIBAの技術資料は、製造装置間の個体差やプロセス実行ごとに発生するチャンバ内の状態変化によってプラズマの発光状態が変化するため、生産現場では終点検知条件の調整が頻繁に行われていると述べています。終了時刻を1つの設定値で通すと、完了が早い回は下地まで削り、遅い回は削り残しが生じます。
終点はどの波長で検出するのですか?
削る材料ごとに異なります。HORIBAの技術資料は、酸化膜エッチングでは終点に近づくとエッチングガスであるCFxに基づく発光が増え、反応生成物であるCOによる発光が減ると述べています。応用物理学会の受賞者随想は、1978年ごろにプラズマ中のSiエッチング速度とフッ素の703.7nmの発光強度によい対応があることが示されたと紹介しています。
終点検出はエッチング以外にも使いますか?
使います。HORIBAの技術資料は、応用として工程不良検出、プロセスチャンバの状態監視、プラズマ発光量に合わせたプロセス条件のリアルタイム制御を挙げ、チャンバのクリーニングモニタやプロセス異常モニタの例も示しています。
発光から基板のダメージも分かりますか?
発光から読み取れるのは反応の進み具合までです。応用物理学会の解説は、プロセス後の欠陥検出にTEM、SIMS、PL、CL、DLTS、PCDなどが使われるとしたうえで、これらをプロセス中のプラズマ誘起欠陥の検出へ適用するのは困難だと述べています。基板に残る欠陥を調べるには別の手段が要ります。
発光以外に終点や深さを測る方法はありますか?
光の干渉を使う方法があります。大塚電子の解説は、膜の表面で反射した光と裏面で反射した光が干渉し、屈折率が既知であれば光路差から厚さを求められると述べています。同解説は、成膜条件により屈折率が変化するため屈折率も測る必要があるとも述べており、厚みを直接測れる代わりに未知数が1つ増えます。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- ドライエッチングとは ── 終点検出が付く相手そのもの
- 選択比とは ── 終了の遅れをどこまで許せるかを示す指標
- アッシング(レジスト灰化)とは ── 同じ酸素プラズマで、形を作る代わりにレジストを消す工程
この記事の事実は、誰でも読める公開資料を根拠とし、各URLの到達可否をこちらで実測しています。したがって、リンク先が移動または消滅した場合は、その旨をこのページへ反映します。
- HORIBA 技術情報誌Readout No.35「半導体製造プロセスでのプラズマ発光分析終点検知モニタEV140Cの実用例」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 観察窓と光学ファイバとCCD分光器の構成、酸化膜エッチングでのCFxとCOの増減、閾値による終点の検知、条件づくりの3段階、装置間の個体差による条件調整、EV-140Cの仕様値
- 応用物理学会「応用物理」第85巻第7号「ケミカルドライエッチングの発見が研究人生を開いた」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 化学蛍光による多結晶Siの終点検出、450nm付近のスペクトル、フッ素の703.7nmの発光との対応、終点検出付き全自動装置の実用化と販売台数
- 応用物理学会「応用物理」第90巻第2号「プラズマ誘起欠陥の発生と修復 半導体デバイス製造におけるその場検出」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── プラズマの構成粒子と欠陥の発生要因、欠陥検出法の種類と感度、プロセス中の検出が難しい事情
- 電子情報通信学会 知識ベース「10群2編3章 プロセス要素技術」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── ゲート酸化膜との選択比確保、ドライエッチングの物理的および電気的な損傷とチャージダメージ
- SCREENセミコンダクターソリューションズ「初心者のための半導体入門 エッチング」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 現在のエッチング工程の9割以上がドライであること
- 大塚電子「【入門】分光法による膜厚解析 3.光の干渉効果による膜厚解析」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 表面と裏面の反射光の干渉、光路差、屈折率が既知であれば厚さを求められること