ドライエッチングとは
ドライエッチングとは、プラズマ中の反応種とイオンを使って、レジストで覆われていない部分の層を除去する方法です。 イオンが基板へ向かって入射するため縦方向へ選択的に削れ、微細な形状を作れます。
ドライエッチングの中心にあるのは、削れる向きに偏りを作るという発想です。薬液に浸した場合、溶ける作用は全方向へほぼ均等に働きます。プラズマを使うと、電界で加速されたイオンが基板へ向かって入射するため、縦方向の除去が横方向より速く進みます。この偏りを異方性と呼びます。
異方性が要る理由は、パターン幅を保つためです。横方向にも同じ速さで削れると、レジストの下へ食い込んで仕上がりの幅が設計より広くなります。微細化が進むほどこの食い込みが無視できなくなるため、現在の半導体前工程ではドライエッチングが主力を占めます。Oxford Instruments Plasma Technologyの公式技術ページは、RIE(反応性イオンエッチング)が幅広いプロセスに対して異方性のドライエッチングを与えると述べています。
装置の呼称も、この主力ぶりを反映しています。東京エレクトロンの公式用語集は、エッチング装置およびエッチャという語が通常はプラズマベースのドライエッチング装置を指すと記しています。
削れ方の3区分 ─ 速さと形は逆を向く
Section titled “削れ方の3区分 ─ 速さと形は逆を向く”異方性の度合いは、成分の配合で決まります。Oxford Instrumentsの日本語RIEページは、エッチングプロセスの選択肢として化学エッチング(等方的で高速)、イオン誘起エッチング(異方的で中速)、物理エッチング(異方的で低速)を挙げています。この3つが同じチャンバの中で同時に走り、どの成分が優勢かでレートと形が定まります。
化学エッチングは、ラジカルが表面の原子と反応して揮発性の生成物を作る経路です。反応の向きは全方向へ散るため等方的で、速さは3つのうちで最も上です。物理エッチングはイオンの運動量で原子を叩き飛ばす経路で、向きは揃いますが1個のイオンが除去できる原子数が限られるため低速になります。イオン誘起エッチングはその中間で、イオンが表面を活性化し、そこへラジカルが反応します。異方性を保ったまま速さを稼げるのはこの経路です。
したがってレシピは、この3成分の配合を選ぶ作業になります。速さが要る場面では化学成分を増やして横方向の食い込みを差し出し、形が要る場面ではイオン誘起と物理の側へ振ってレートを差し出します。
圧力が向きを作る
Section titled “圧力が向きを作る”異方性の根っこには、イオンが向きを変えずに表面へ届くかどうかがあります。アルバックの平均自由行程の公式解説ページは、気体分子がまっすぐ飛べる距離を圧力ごとの数値で記しています。大気圧の10⁵ Paでは700Å、10¹ Paでは0.7mm、10⁻¹ Paでは7cm、10⁻² Paでは70cm、10⁻³ Paでは7mです。同ページは、蒸着装置が普通10⁻² Paから10⁻³ Paを使い、装置の幅や高さが1mから2mであるため、飛び出した分子がまっすぐ基板へ届くと述べています。
Oxford Instrumentsの日本語ICP RIEページは、低圧を保てることを優れたプロファイル制御の理由として挙げています。低圧側では衝突が減り、シースで加速されたイオンが向きを保ったまま底へ届きます。
RIE(反応性イオンエッチング)は、反応性ガスのプラズマ中でイオンを基板へ加速して当てる基本形式です。Oxford Instrumentsの日本語RIEページは、単一のRFプラズマ源によってイオンの密度とエネルギーを設定すると述べています。同社の日本語プラズマエッチングページは、RIEの性能をICP-RIEより下と位置づけたうえで、絶縁体マスクのエッチングのように高いエッチングレートが不要な場面では、優れたマスクを作るのに十分な垂直性を得ると述べています。
ICP-RIE(誘導結合プラズマRIE)は、ICPでプラズマを作る電源とイオンを加速する電源を分けます。Oxford Instruments Plasma Technologyの公式技術ページは、RF発生器とICP発生器を分けることでイオンエネルギーとイオン密度を別々に制御でき、高いプロセス自由度が得られると述べ、高いエッチレート、高い選択比、低ダメージを設計目標として挙げています。同社の日本語プラズマエッチングページは、ICP-RIEがエッチング速度を非常に高速から超低速まで制御し、ダメージが小さく、マスク材料や基板材料の選択性が高く、形状制御性が高いと述べています。
PE(プラズマ励起エッチング)は、同じ日本語ページでプラズマエッチングのうち最も指向性が低い方式とされ、アンダーカットが許容される高選択的な等方性プロセスや、下層の材料を大面積で除去する用途に割り当てられています。垂直な形状を作る用途とは別の役目です。
ALE(原子層エッチング)は、表面を化学的に改質する段と、その改質層だけを取り除く段を交互に繰り返します。Oxford Instrumentsの日本語ALEページは、ALEが200mmウェーハまで±2%以内の均一性(ティピカル値)と高精度の深さ制御を与え、標準的なICPと組み合わせて使えると述べ、10nm以下の微細化と極薄の2D材料が原子スケールの精度を要する背景として挙げています。同ページは1サイクルあたりのエッチングレートを2Åから7Åとしており、刻みの細かさは1サイクルの単位そのものです。
DRIE(深堀り反応性イオンエッチング)は、深い溝や穴を作るための方式です。
現場のつまみと、両側で起きること
Section titled “現場のつまみと、両側で起きること”下げると平均自由行程が伸びて異方性が強まり、上げると反応種の数が増えてレートが伸びます。差し出すものは互いに逆で、下げる側ではレートを、上げる側では垂直性を手放します。
基板側のバイアス(イオンエネルギー)
Section titled “基板側のバイアス(イオンエネルギー)”基板側のバイアス電力を上げるとイオン誘起と物理の成分が増えて形が締まります。差し出すのは選択比とレジストの残り厚です。Oxford Instrumentsの日本語ICP RIEページは、低いイオンエネルギーによって選択性とダメージを制御すると述べています。下げるとマスクと下地は守られ、代わりに等方成分が相対的に増えて幅が広がります。
ウェーハ温度
Section titled “ウェーハ温度”Oxford Instrumentsの日本語RIEページは、電極温度の設定範囲を-150℃から+400℃とし、ハードウェア表ではPlasmaPro 80とPlasmaPro 100が-150℃から400℃、PlasmaPro 800が10℃から80℃です。ウェハクランプでのHe裏面冷却によって最適なウェハ温度制御を得るとも述べています。東京エレクトロンの公式ブログは、現行機のブライン温度が0度から用途により80度で、クライオジェニックエッチングではマイナス数十度まで下げられると記しています。温度を下げると側壁の堆積物が残って形が締まり、上げると堆積物が抜けてレートが伸びます。差し出すのは冷却系の能力と静電チャックまわりの設計余裕です。
ガス種と流量
Section titled “ガス種と流量”同じ公式ブログは、高アスペクト比のエッチングに炭素とフッ素を含むCF系ガスが一般に使われてきたこと、C₄F₈などの主なガスの地球温暖化係数が高いこと、クライオジェニックエッチングではCF系ガスの91%をHFガスへ置き換えたことを述べています。ガス種を替えると形状と環境負荷が同時に動くので、エッチングガスの選択はレシピと排ガス設備の両方へ及びます。流量はマスフローコントローラで決めます。増やせば供給が増えてレートが伸び、代わりに滞留時間が短くなって解離の度合いが下がります。減らせば解離は進みますが、深い穴の底での供給が細くなります。
測る量と、公表されている実測値
Section titled “測る量と、公表されている実測値”- 加工寸法の幅は、サムコの半導体製造装置入門で100nmから1000nm程度の細い幅の深い溝、Oxford Instrumentsの日本語プラズマエッチングページでnmスケールから数100μmまでです。
- 深さと時間の実測値は、東京エレクトロンの公式ブログで深さ10μmを超える穴を従来の2.5倍の速さ、消費電力は40%以上の削減です。
- 均一性はOxford Instrumentsの日本語ALEページで200mmウェーハまで±2%以内(ティピカル値)です。
- レジストの残り厚は、SCREENセミコンダクターソリューションズの公式解説ページで、マスクとして働いていたフォトレジストが、対象の膜が十分に削れた時点で半分以上失われ、一部が変質してポリマになるとされています。ポリマを回路に付けたまま残すとICの欠陥につながるため、同ページはウェットステーションまたはスピンプロセッサでの薬液洗浄を挙げています。レジストを灰化して剥がすアッシングとは別に、この洗浄が1工程分積み上がります。
- 工程の占有率と装置価格は、同じページでエッチング工程の9割以上がドライ、ウェット側の装置価格が1億円から3億円程度、ドライ側がその2倍以上、ウェットは1度に50枚のバッチ投入、ドライは1枚ずつです。
取引 ─ 何と引き換えに何を差し出すか
Section titled “取引 ─ 何と引き換えに何を差し出すか”- 形とレートです。3区分の順序がそのまま代償の表になっています。異方性を取るほど速さを手放します。
- レートと選択比です。バイアスとパワーを上げれば速く掘れますが、レジストの残り厚と下地のダメージを差し出します。SCREENの記載する半分以上というレジスト消耗が、その上限を示しています。
- 装置価格と形状です。SCREENの公式解説ページによれば、ドライ側の装置価格はウェットの2倍以上で、1枚ずつの加工になります。ラフな回路をウェットへ、微細な回路をドライへ振り分けるという使い分けは、この差から来ています。
- 形状と環境負荷です。地球温暖化係数の高いCF系ガスを使えば高アスペクト比の形が取れますが、排ガスの負荷を差し出します。HFガスへの置き換えは、その反対側へ動く選択です。
- 刻みの細かさとスループットです。ALEは±2%以内の均一性と原子層単位の深さ制御を与えますが、Oxford Instrumentsの日本語ALEページが挙げる1サイクルあたり2Åから7Åという刻みで進むため、連続のエッチングに比べて時間を差し出します。
この用語に対応する装置と製造メーカー
Section titled “この用語に対応する装置と製造メーカー”装置カタログDBから、この用語に一致する製品familyを持つメーカー 3社/3family を引いています。 各行は各社の公式製品ページを出典とします。 DBからの生成日: 2026-08-21
- Hitachi High-Tech
- NAURA Technology Group
- アルバック
出典は各社の公式製品ページです。 装置カタログDB では、同じ製品familyを工程・メーカー横断で検索できます。
関連するデータ・ツール
Section titled “関連するデータ・ツール”- ドライ・プラズマエッチングの工程ページ ── 工程分類と、この工程に接続している公開求人
- エッチングの求人一覧 ── 現在この工程で募集している企業
- 装置カタログDB ── 公式製品ページ単位のメーカーと製品family
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”ドライエッチングとは何ですか?
ドライエッチングは、プラズマ中の反応種とイオンを使って、レジストの開口部にある層を除去する方法です。東京エレクトロンの公式用語集は、エッチングにプラズマベースのドライエッチングと液体ベースのウェットエッチングの2種類があると述べています。
ドライエッチングとウェットエッチングの違いは何ですか?
削れる向きの偏りが異なります。ウェットエッチングは薬液が全方向へ均等に働くため、レジストの下へも横に食い込みます。ドライエッチングはイオンが基板へ向かって入射するため縦方向へ選択的に削れます。Oxford Instruments Plasma Technologyの公式技術ページは、RIEが幅広いプロセスに対して異方性のドライエッチングを与えると述べています。
ドライエッチングにはどんな種類がありますか?
プラズマの作り方と目的で決まります。RIE(反応性イオンエッチング)、ICP-RIE(誘導結合プラズマRIE)、ALE(原子層エッチング)、DRIE(深堀り反応性イオンエッチング)が代表です。プラズマ密度とイオンエネルギーを別々に制御できるかどうかが、分類の中心にあります。
異方性エッチングとは何ですか?
削れる向きに偏りがあり、縦方向が横方向より速く進む状態を指します。イオンが基板へ向かって入射することでこの偏りが生まれます。異方性が高いほど、レジストのパターン幅に近い形状を下の層へ写せます。
エッチング装置はドライエッチングを指しますか?
通常はドライエッチング装置を指します。東京エレクトロンの公式用語集は、エッチング装置およびエッチャという語が通常はプラズマベースのドライエッチング装置を指すと記しています。
ドライエッチング装置のメーカーはどこですか?
当サイトの装置カタログDBでは、ドライエッチングやプラズマエッチングに一致する製品familyを持つメーカーを公式製品ページ単位で引けます。ラムリサーチ、東京エレクトロン、Applied Materials、日立ハイテク、アルバック、NAURA、AMEC、Oxford Instruments Plasma Technologyなどが該当します。
ドライエッチングの削れ方は1種類ですか?
3区分あります。Oxford Instrumentsの日本語RIEページは、エッチングプロセスの選択肢として化学エッチング(等方的で高速)、イオン誘起エッチング(異方的で中速)、物理エッチング(異方的で低速)を挙げています。形を取るほど速さを差し出す順序になっており、レシピはこの3成分の配合として組みます。
現在のエッチング工程はドライとウェットのどちらが多いですか?
ドライです。SCREENセミコンダクターソリューションズの公式解説ページは、半導体回路の微細化でラフな回路が減ったため、エッチング工程の9割以上がドライだと述べています。同ページはウェット側の装置価格を1億円から3億円程度、ドライ側をその2倍以上とし、ウェットが1度に50枚といったバッチ投入に対応する一方でドライは1枚ずつであると記しています。
ドライエッチングでレジストはどれだけ減りますか?
同じSCREENの公式解説ページは、対象の膜が十分に削れた時点でマスクとして働いていたレジストは半分以上が失われ、その一部が変質してポリマになると述べています。同ページは、ポリマを回路に付けたまま残すとICの欠陥につながるため、ウェットステーションまたはスピンプロセッサでの薬液洗浄を挙げています。
ドライエッチングはどのくらい細い形状を作れますか?
サムコの半導体製造装置入門は、ドライエッチング装置が100nmから1000nm程度の細い幅で深い溝を彫る加工に対応すると述べています。Oxford Instrumentsの日本語プラズマエッチングページは、広範な材料に対してnmスケールから数100μmまでの微細構造を作れると述べています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- 主要メーカーのエッチング装置分類 ── メーカー別の装置分類
- エッチング工程 ── 工程としてのエッチングの全体像
この記事の事実は次の一次資料を根拠とし、各URLの到達可否をこちらで実測しています。したがって、リンク先が移動または消滅した場合は、その旨をこのページへ反映します。
- 東京エレクトロン 公式用語集「Etching」「Etching Equipment」(2026年8月21日にリンク生存を実測、200)── エッチングの2分類、エッチング装置という語が通常ドライを指すこと
- Oxford Instruments Plasma Technology「Reactive ion etching (RIE)」公式技術ページ(2026年8月21日にリンク生存を実測、200)── RIEが異方性のドライエッチングを与えること
- Oxford Instruments Plasma Technology「ICP RIE」公式技術ページ(2026年8月21日にリンク生存を実測、200)── RF発生器とICP発生器を分けた独立制御と3つの設計目標
- Oxford Instruments Plasma Technology「プラズマエッチング」日本語公式技術ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── nmスケールから数100μmという加工範囲、ICP-RIEの速度幅、RIEとPEの位置
- Oxford Instruments Plasma Technology「リアクティブイオンエッチング (RIE)」日本語公式技術ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 3区分と速さの順、単一RF源、電極温度-150℃から+400℃、PlasmaPro各機の温度範囲、He裏面冷却
- Oxford Instruments Plasma Technology「原子層エッチング (ALE)」日本語公式技術ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 200mmウェーハまで±2%以内の均一性、10nm以下の微細化、標準的なICPとの組み合わせ
- SCREENセミコンダクターソリューションズ「初心者のための半導体入門 エッチング」公式解説ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 9割以上がドライ、ウェット装置1億円から3億円程度とドライの2倍以上、1度に50枚と1枚ずつ、レジスト半分以上の消耗とポリマ
- サムコ「ドライエッチング装置とは」半導体製造装置入門(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 100nmから1000nm程度の細い幅での深い溝加工、RIEとICP-RIEの区分
- アルバック「平均自由行程」公式解説ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 圧力別の平均自由行程の数値と蒸着装置の圧力域
- 東京エレクトロン「クライオジェニックエッチング」公式ブログ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── ブライン温度0度から80度とマイナス数十度、従来比2.5倍、40%以上の低消費電力化、CF系ガスの91%をHFへ置換
- 装置と製造メーカーの行は
intel.equipment_vendor_families(公式製品ページ由来)から生成