ICP(誘導結合プラズマ)とは
ICP(Inductively Coupled Plasma、誘導結合プラズマ)とは、コイルに高周波電流を流して作る誘導電界でガスを電離させ、プラズマを作る方式です。 プラズマを作る電源と、基板側でイオンを加速する電源を分けられます。
ICPが解く課題は、プラズマ密度とイオンエネルギーが連動してしまうことです。平行平板の電極でプラズマを作る形式では、投入電力を上げるとプラズマ密度が上がると同時に、基板へ入射するイオンのエネルギーも上がります。エッチレートを上げようとすると、下地へのダメージも一緒に増える関係になります。
コイルで作るという方式が、この連動をほどきます。プラズマの生成をコイル側の電源が担い、基板側の電源がイオンの加速を担うため、2つを別々に設定します。Oxford Instruments Plasma Technologyの公式技術ページは、RF発生器とICP発生器を分けることでイオンエネルギーとイオン密度を別々に制御でき、高いプロセス自由度が得られると述べ、高いエッチレート、高い選択比、低ダメージを設計目標として挙げています。
削る側と積む側の両方で、同じ考え方が使われます。ICPCVDの公式技術ページは、ICPCVDが低温かつ低ダメージで高品質な誘電体膜を成膜できると述べ、イオンエネルギーとイオン電流密度の独立制御、典型的なプロセス圧力1から10ミリトールを挙げています。したがってICPは、エッチングとCVDの双方にまたがるプラズマ源として位置づけられます。
コイルから基板までの経路
Section titled “コイルから基板までの経路”コイルに高周波電流を流すと、その周りに誘導電界が生じます。電界に引かれた電子がガス分子と衝突して電離を進め、プラズマが保たれます。電離が進む場所はコイルの周りに限られるため、コイル側のパワーは密度だけを動かします。
基板の側には別の経路があります。ウェーハ表面の前にはシースと呼ぶ電界の層ができ、イオンはこの層の電位差で加速されて表面へ入射します。基板側のRFはこの電位差を動かすので、イオンエネルギーだけが変化します。Oxford Instrumentsの日本語ICP RIEページは、Cobra ICPプラズマソースが低圧で動作して均一な高密度プラズマを作り、基板のDCバイアスをRFジェネレーターによって独立に制御するため、プロセスの必要に応じてイオンエネルギーを操作できると述べています。
連動がほどけた結果が、密度の絶対値に出ています。サムコのICPエッチング装置公式ページは、ICPエッチング装置が、従来の標準である平行平板型のRIE装置に対しプラズマ密度で1000倍の高密度プラズマを与え、プロセスマージンが大きく広がると述べています。同ページは、均一なプラズマを作る側に課題があったため、コイル部分を3次元構造にしたトルネードICPを開発したと記しています。
装置仕様に出ている数字
Section titled “装置仕様に出ている数字”つまみを動かせる幅は、公表仕様の範囲でほぼ決まります。日本語で公開されている数字を順に挙げます。
- RF電源はアルバックのプラズマ発生用電源公式ページによれば、エッチングやプラズマCVD、RFスパッタリング向けとして13.56MHz、出力は0.5kW、1kW、3kW、5kWです。整合器を内蔵したRMG-1303は13.56MHzで300Wです。同ページには20kHzから100kHzで定格出力を連続で出せるLF電源も載っています。
- イオン密度はOxford Instrumentsの日本語ICP RIEページで10¹¹cm⁻³を超える値、ラジカル密度も高い側とされ、これが高いエッチレートの根拠として挙がっています。
- 圧力はICPCVDの公式技術ページで1から10ミリトールです。
- 電極温度はOxford Instrumentsの日本語ページで-150℃から+400℃です。同社の日本語RIEページのハードウェア表では、PlasmaPro 80とPlasmaPro 100が-150℃から400℃、PlasmaPro 800が10℃から80℃です。
- 電極サイズは同表でPlasmaPro 80とPlasmaPro 100が240mm、PlasmaPro 800が460mmです。基板の側はPlasmaPro 80が最大240mm、PlasmaPro 800が最大460mm、PlasmaPro 100が200mmです。ガスラインは8ラインまたは12ラインのマスフローコントローラ構成です。
- ウェーハ径はサムコのRIE-400iP公式ページでø2、3、4インチの直接搬送による枚葉方式、同社のトレイ搬送機は⌀230mmと⌀350mmです。
- 加工寸法の幅はOxford Instrumentsの日本語プラズマエッチングページで、nmスケールから数100μmまでの微細構造とされています。
これらは各社の公表値です。装置形式、材料、世代が別なら、同じ数字を自分の装置へ持ち込む前に取り直します。
現場のつまみと、両側で起きること
Section titled “現場のつまみと、両側で起きること”ICP側のRFパワー
Section titled “ICP側のRFパワー”上げるとプラズマ密度とラジカル量が増え、エッチレートが伸びます。10¹¹cm⁻³を超えるイオン密度と高いラジカル密度が高レートの根拠だという記載は、この向きです。差し出すのはマスクの消耗とチャンバ壁への負荷です。ラジカルが増えると等方的な成分も増えるため、側壁への横方向の反応が伸びます。下げると、レートが落ちる代わりに横方向の反応とマスク消耗がどちらも軽くなります。
基板側のバイアス(イオンエネルギー)
Section titled “基板側のバイアス(イオンエネルギー)”基板側のバイアス電力を上げると異方性が強まり、底に溜まった反応生成物を叩いて掘り進めます。差し出すのは選択比と下地のダメージです。Oxford Instrumentsの日本語ICP RIEページは、低いイオンエネルギーによって選択性とダメージを制御すると述べています。下げると選択比とダメージは良い側へ動き、代わりに垂直性が緩んで裾引きが出やすくなります。
下げると平均自由行程が伸びてイオンが向きを変えにくくなり、プロファイルが締まります。同ページは、低圧で動作するソースと低圧下での高密度な反応種を、優れたプロファイル制御の理由として挙げています。差し出すのはレートと、投入できるガス総量です。上げるとレートは伸びますが、衝突が増えて斜め入射の成分が増えます。
ウェーハ温度
Section titled “ウェーハ温度”サムコはRIE-400iPについて、静電チャックとHeによってウェーハの温度を安定して制御すると記しています。温度を下げると側壁の堆積物が残りやすくなって形が締まり、上げると堆積物が抜けてレートが伸びる側へ動きます。差し出すのは静電チャックとHe裏面冷却の設計余裕です。Oxford Instrumentsの日本語RIEページは、ウェハクランプでのHe裏面冷却によって最適なウェハ温度制御を得ると述べています。
ガス流量と排気
Section titled “ガス流量と排気”サムコはRIE-400iPについて、反応室直結の排気システムによって小流量かつ低圧力域から大流量かつ高圧力域までの幅広いプロセスウィンドウを実現すると記しています。流量を増やせば反応種の供給が増えてレートが伸びる代わりに、滞留時間が短くなって解離の度合いが下がります。減らせば解離は進みますが、深い穴の底での供給が細くなります。
取引 ─ 何と引き換えに何を差し出すか
Section titled “取引 ─ 何と引き換えに何を差し出すか”- 密度と選択比です。ICP側を上げれば高レートを得られますが、等方成分の増加とマスク消耗を差し出します。
- エネルギーと下地です。バイアスを上げれば垂直性を得られますが、選択性とダメージを差し出します。Oxford Instrumentsの日本語プラズマエッチングページは、ICP-RIEがエッチング速度を非常に高速から超低速まで制御し、ダメージが小さく、マスク材料や基板材料の選択性が高く、形状制御性が高いと述べています。速度の幅そのものが、この2軸を分けた見返りです。
- 速度と原子層の刻みです。同社の日本語ALEページは、原子層エッチングが200mmウェーハまで±2%以内の均一性(ティピカル値)と高精度の深さ制御を与え、標準的なICPと組み合わせて使えると述べています。10nm以下の微細化で刻みの細かさが要る場面では、レートを差し出して深さ制御を取ります。
- 低圧と装置構成です。アルバックのNLD-5700公式ページは、磁気中性線プラズマがICP方式より低圧で、より高密度、より低い電子温度のプラズマを与えるため、石英やガラス、水晶、LN基板、LT基板の加工へ向くと述べています。ICPより低圧側へ振るには、磁場構造を持つ別のプラズマ源を導入します。
この用語に対応する装置と製造メーカー
Section titled “この用語に対応する装置と製造メーカー”装置カタログDBから、この用語に一致する製品familyを持つメーカー 5社/5family を引いています。 各行は各社の公式製品ページを出典とします。 DBからの生成日: 2026-08-21
- AMEC
- Evatec
- CLUSTERLINE 300Advanced Packaging / PVD / Etch
- Oxford Instruments Plasma Technology
- PlasmaPro etch familyEtch / ICP / RIE
- Plasma-Therm
- VERSALINE ICP / DSE / IBE platformEtch / Specialty Semiconductor
- Samco
- ICP-RIE / ALE / DRIE etching systemsEtch / Compound Semiconductor
出典は各社の公式製品ページです。 装置カタログDB では、同じ製品familyを工程・メーカー横断で検索できます。
関連するデータ・ツール
Section titled “関連するデータ・ツール”- ドライ・プラズマエッチングの工程ページ ── 工程分類と、この工程に接続している公開求人
- 装置カタログDB ── 公式製品ページ単位のメーカーと製品family
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”ICPとは何ですか?
ICP(Inductively Coupled Plasma、誘導結合プラズマ)は、コイルに高周波電流を流して作る誘導電界でガスを電離させ、プラズマを作る方式です。プラズマを作る電源と、基板側でイオンを加速する電源を分けられる点が特徴になります。
ICPの利点は何ですか?
イオンエネルギーとイオン密度を別々に制御できる点です。Oxford Instruments Plasma Technologyの公式技術ページは、RF発生器とICP発生器を分けることでイオンエネルギーとイオン密度を別々に制御でき、高いプロセス自由度が得られると述べています。同社の日本語ページは、高いイオン密度として10¹¹cm⁻³を超える値を挙げています。
ICP-RIEとRIEの違いは何ですか?
制御できる項目の数が異なります。通常のRIEでは、Oxford Instrumentsの日本語ページが述べるとおり単一のRFプラズマ源がイオンの密度とエネルギーの両方を設定します。ICP-RIEでは電源が別なので、密度を上げたままイオンエネルギーを低く保てます。低ダメージで高いエッチレートを狙えるのはこのためです。
ICPは低圧で使いますか?
低圧で使います。Oxford Instruments Plasma Technologyの公式技術ページは、ICPCVDの典型的なプロセス圧力を1から10ミリトールとし、低圧で反応種を高密度に保てると述べています。同社の日本語ICP RIEページも、低圧を保てることを優れたプロファイル制御の理由として挙げています。
ICPはエッチング以外にも使いますか?
成膜にも使います。ICPCVD(誘導結合プラズマCVD)は、低温かつ低ダメージで高品質な誘電体膜を成膜する方式です。同じプラズマ源の考え方が、削る側と積む側の両方で使われます。
ICP装置のメーカーはどこですか?
当サイトの装置カタログDBでは、ICPに一致する製品familyを持つメーカーを公式製品ページ単位で引けます。Oxford Instruments Plasma Technology、SAMCO、Plasma-Therm、AMECなどが該当します。
ICPのプラズマ密度は平行平板型RIEとどのくらい違いますか?
サムコはICPエッチング装置の公式製品ページで、従来の標準である平行平板型のRIE装置に対し、プラズマ密度で1000倍の高密度プラズマを得られ、プロセスマージンが大きく広がると述べています。同ページは、均一なプラズマを作る側に課題があったため、コイル部分を3次元構造にしたトルネードICPを開発したと記しています。
ICPのRF電源はどのくらいの周波数と出力ですか?
アルバックはプラズマ発生用電源の公式製品ページで、エッチングやプラズマCVD、RFスパッタリングといったプラズマプロセス向けとして13.56MHzの電源を挙げ、出力を0.5kW、1kW、3kW、5kWとしています。整合器内蔵型のRMG-1303は13.56MHzで300W出力です。同ページには20kHzから100kHzの周波数帯で定格出力を連続で出せる電源も載っています。
ICPよりさらに低圧で高密度のプラズマ源はありますか?
アルバックは磁気中性線プラズマ(NLD)を挙げています。同社のNLD-5700公式製品ページは、NLDがICP方式より低圧で、より高密度、より低い電子温度のプラズマを作れるため、石英やガラス、水晶、LN基板、LT基板の加工へ向くと述べています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- 主要メーカーのエッチング装置分類 ── メーカー別の装置分類
- CVDとPVDの違い(成膜プロセス比較) ── ICPCVDを含む成膜側の比較
この記事の事実は次の一次資料を根拠とし、各URLの到達可否をこちらで実測しています。したがって、リンク先が移動または消滅した場合は、その旨をこのページへ反映します。
- Oxford Instruments Plasma Technology「ICP RIE」公式技術ページ(2026年8月21日にリンク生存を実測、200)── RF発生器とICP発生器を分けた独立制御、高いエッチレートと高い選択比と低ダメージという設計目標
- Oxford Instruments Plasma Technology「ICPCVD」公式技術ページ(2026年8月21日にリンク生存を実測、200)── 低温かつ低ダメージでの誘電体膜成膜、プロセス圧力1から10ミリトール
- Oxford Instruments Plasma Technology「誘導結合プラズマ RIE (ICP RIE)」日本語公式技術ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 10¹¹cm⁻³超のイオン密度、-150℃から+400℃の電極、Cobraソースの低圧動作とDCバイアスの独立制御、低イオンエネルギーによる選択性とダメージの制御
- Oxford Instruments Plasma Technology「リアクティブイオンエッチング (RIE)」日本語公式技術ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 単一RF源が密度とエネルギーの両方を設定すること、電極240mmと460mm、基板の最大寸法、8ラインまたは12ラインのガス供給、He裏面冷却
- Oxford Instruments Plasma Technology「プラズマエッチング」日本語公式技術ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── nmスケールから数100μmまでという加工範囲、ICP-RIEの速度幅と選択性と形状制御性
- Oxford Instruments Plasma Technology「原子層エッチング (ALE)」日本語公式技術ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 200mmウェーハまで±2%以内の均一性、10nm以下の微細化、標準的なICPとの組み合わせ
- サムコ「ICPエッチング装置」公式製品ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 平行平板型RIE比1000倍のプラズマ密度、トルネードICPの3次元コイル構造
- サムコ「ICPエッチング装置 RIE-400iP」公式製品ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 静電チャックとHeによる温度制御、ø2から4インチの枚葉方式、反応室直結の排気による広いプロセスウィンドウ
- アルバック「プラズマ発生用電源」公式製品ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 13.56MHzで0.5kWから5kWの出力、RMG-1303の300W、20kHzから100kHzの帯域
- アルバック「ドライエッチング装置 NLD-5700」公式製品ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 磁気中性線プラズマがICP方式よりさらに低圧、高密度、低電子温度であること
- 装置と製造メーカーの行は
intel.equipment_vendor_families(公式製品ページ由来)から生成