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プラズマとは

プラズマとは、気体へ電力を加えて原子や分子の一部を電子とイオンへ分け、電子・イオン・ラジカル・中性のガスが混じり合った状態です。 半導体の製造では、ウェーハを低い温度に保ったまま強い化学反応を起こす道具として使います。

サムコの半導体製造装置入門にあるプラズマとはのページは、固体・液体・気体に次ぐ4番目の状態としてプラズマを挙げています。同ページは、原子核と電子の間に働く力がほどけて電子が離れることを電離と呼び、離れた電子を自由電子、残された粒子をイオンと呼ぶ、と記しています。そして、電子が飛び交いイオンが舞う状態がプラズマである、としています。

作り方は放電です。アルバックの真空ひばりの真空教室は、プラズマを生成する方法として放電電離・熱電離・光電離の3つを挙げ、真空技術で用いるのは放電電離である、と述べています。同ページは、ガラス製の放電管の両端へ直流高電圧を加えると、圧力10³Pa以下・放電電流数十mA以下で安定したグロー放電が見られる、としています。

ここから先が、製造を左右する性質です。成蹊大学の中野武雄氏が日本真空学会の会誌に載せた講座「プラズマの基礎」は、真空機器が関わるプラズマのほとんどが0.1〜100Pa程度の気体へ電場を加えた放電であり、荷電粒子のほかに中性のガスが大量に残る弱電離プラズマである、としています。同講座は、電子とイオン・中性粒子の間では衝突のときに運動エネルギーの交換が起こりにくく、低圧の放電では衝突の頻度そのものも小さいため、両者が熱的な釣り合いから離れる、と述べています。値としては、イオンや中性粒子の温度が容器の壁面(室温)に近く、電子の温度は数万K程度に達することが多い、と挙げています。これが非平衡プラズマと呼ばれる理由です。

全部を温めるかわりに、電子だけを熱くします
熱くする相手を選べるかどうかが、両者の差になります熱で反応させる形ガスも器も同じ温度まで上がりますウェーハとレジストも熱くなります上限は、載っている材料が耐えられる温度です温度を下げると、反応そのものが遅くなりますプラズマで反応させる形小さな点が電子で、数万K程度に達します大きな丸がイオンと中性のガスで、室温に近い温度ですウェーハは冷たいままです上限が、材料の耐熱から切り離されます中野武雄氏が2014年の講座で挙げた温度の値です
中野武雄氏の講座によれば、低圧の放電では電子とイオン・中性粒子が熱的な釣り合いから離れるため、電子だけが数万K程度に達し、イオンと中性粒子は室温に近い温度にとどまります。この差があるおかげで、ウェーハを温めずに反応だけを進められます。

現場では、温度を上げずに反応を起こす道具になります

Section titled “現場では、温度を上げずに反応を起こす道具になります”

サムコのプラズマを技術に活かすは、同社がプラズマを薄膜の形成と微細加工へ応用しているとして、3つの使い道を挙げています。プラズマCVDでは、基板の上へ原料ガスを供給し、放電でガスをプラズマ化し、生成された物質を堆積させて薄膜を作ります。同ページは、この方法が従来の熱処理による製法に比べて低い温度で膜を作れるためデリケートな基板をいたわることができ、奥行きの深い複雑な形にも応用できる、としています。プラズマドライエッチングは、その逆に基板の表面をプラズマで削り取る技術で、薬液で溶かす方法に比べてクリーンで正確である、と述べています。3つ目のプラズマクリーニングは、基板の表面に付いた有機物をプラズマで取り除く洗浄です。当サイトでは、それぞれPECVDドライエッチング洗浄にあたります。同社の装置についての記述です。

熱処理で同じ反応を進めようとすると、ウェーハに載ったレジストや下地の膜もいっしょに温めることになります。プラズマを使う理由は、温めたい相手を電子だけに絞れるところにあります。

放電が立つかどうかは、圧力と電極の間隔の積で決まります

Section titled “放電が立つかどうかは、圧力と電極の間隔の積で決まります”

中野氏の同じ講座は、タウンゼントの放電開始理論を紹介しています。放電が続くために働く効果は2つで、1つは陰極を出発した電子が電場で加速され中性のガスに衝突して電離を起こす作用、もう1つは正イオンが陰極に当たって陰極から電子を放出させる作用です。同講座は、この2つから放電開始電圧を導き、それが圧力と電極間距離の積だけに依存する関数になることを示しています。これがパッシェンの法則です。同講座は、金属と希ガスの組み合わせでイオンの入射エネルギーが数100eVのとき、陰極から電子を放出させる確率の典型的な値が0.1程度である、とも挙げています。

現場の言葉へ置き換えると、同じ電力を入れても、圧力とギャップの組み合わせ次第で着火したり着火しなかったりします。立ち上げのレシピで圧力とギャップを先に固め、そのうえでRF電源・整合器マスフローコントローラを追い込むのは、この順番を守るためです。

装置の方式ごとに、圧力と電子温度の居場所が別々になります

Section titled “装置の方式ごとに、圧力と電子温度の居場所が別々になります”

東洋大学の岡本幸雄氏が日本真空学会の会誌に載せた講座「プロセスプラズマの基礎」は、代表的な生成方式ごとの特性を挙げています。以下は同講座が挙げる代表値です。容量結合プラズマ(CCP)は比較的高い圧力の10〜1000Paで、電子密度1×10¹⁶/m³、電子温度およそ2eV、安定で大面積という特性を持ちます。誘導結合プラズマ(ICP)は圧力1〜100Pa、電子密度10¹⁷〜10¹⁸/m³、電子温度2〜5eVで、原理として外部磁場を省けるためプロセス用に広く用いられている、としています。電子サイクロトロン共鳴プラズマ(ECR)は動作圧力1〜10⁻²Pa、電子温度5〜15eV、電子密度10¹⁷〜10¹⁸/m³です。表面波プラズマ(SWP)は動作圧力1〜10⁻²Pa、電子温度およそ3eV、電子密度10¹⁷〜10¹⁸/m³です。

同講座は、電子温度がほぼ電界強度と圧力の比に比例し、さらに圧力とプラズマ体積の積の関数で決まる、とも述べています。つまみを1つ回すと、ほかの量も連れて動きます。

圧力を下げていくほど、電子は熱くなります
同じプラズマでも、方式ごとに居場所が離れます10001001010.10.01横軸は動作圧力(Pa)で、右へ行くほど低い圧力です051015電子温度(eV)CCP 約2eV密度 1×10¹⁶/m³ICP 2〜5eV密度 10¹⁷〜10¹⁸/m³SWP 約3eVECR 5〜15eV密度 10¹⁷〜10¹⁸/m³岡本幸雄氏が2016年の講座で挙げた代表値です
岡本幸雄氏の講座が挙げる代表値を、圧力と電子温度の面へ描いた図です。低い圧力で運転する方式ほど電子温度が高く、電子密度も高い側になります。方式を選ぶ作業は、この面のどこで運転するかを選ぶ作業になります。

何を見て動かしているのかを確かめます

Section titled “何を見て動かしているのかを確かめます”

ソニーの辰巳哲也氏が応用物理学会の会誌に載せた解説は、エッチング装置のプラズマの電子密度が10⁸〜10¹²cm⁻³程度である、と挙げています。同解説は、電子温度を測るならラングミュアプローブ、中性粒子の密度を測るなら赤外線レーザー吸収分光法というように個々の計測技術が確立し、研究のレベルでは有用性も検証されてきた一方で、機器を入れると不純物の混入やプラズマの変動、異常放電といった安定性の課題やコストが生じるため、量産設備での採用はごく一部にとどまる、と述べています。同解説によれば、実際に量産で手に入るのは、加工の終点検出に使う発光分光分析と、電源からの高周波信号のピーク値であるVppなど、限られた情報です。2016年時点の記述です。

つまり現場のエンジニアは、この限られた指標だけを頼りに、圧力・流量・電力・周波数という外側のつまみでプラズマを動かしています。レシピが装置ごとに固有になりやすいのは、この事情によります。

密度を上げると速くなり、そのぶん選択比を失います

Section titled “密度を上げると速くなり、そのぶん選択比を失います”

同じ解説は、絶縁膜の加工で高いエッチング速度を確保するために高い密度(1×10¹¹cm⁻³以上)のプラズマを使うと、ガス分子が受ける電子衝突の回数が増えて分子がばらばらになり、原子状のFが多く含まれるプラズマになる、と述べています。原子状のFが増えるとSiやSi₃N₄の表面へポリマーを十分に厚く形成できず、選択比の確保が難しくなります。同解説は、この過剰な解離を抑えるためにプラズマ中の滞在時間を10ms程度以下に制御することが有効であり、そのために電極間隔の狭い平行平板型の設備を選び、C₄F₈などのフロロカーボン系ガスを大量のArで希釈する組み立てが一般的である、としています。

速さを取りにいくと選択比を差し出すことになり、その埋め合わせに装置の形とガスの流し方を使う、という取引です。イオンのエネルギーを上げる側の取引については、シースのページに書きます。

プラズマとは何ですか?

気体へ電力を加えて原子や分子の一部を電子とイオンへ分け、電子・イオン・ラジカル・中性のガスが混じり合った状態です。サムコの半導体製造装置入門は、固体・液体・気体に次ぐ4番目の状態としてプラズマを挙げ、電子が飛び交いイオンが舞う状態をプラズマと呼ぶ、と記しています。

なぜ半導体の製造でプラズマを使いますか?

ウェーハを低い温度に保ったまま強い化学反応を起こせるためです。サムコは、プラズマCVDが従来の熱処理による製法に比べて低い温度で膜を作れるため、デリケートな基板をいたわることができる、としています。

プラズマは熱いのですか、冷たいのですか?

電子だけが熱く、それ以外は冷たい状態です。成蹊大学の中野武雄氏による日本真空学会の講座は、低圧の放電では電子とイオン・中性粒子が熱的な釣り合いから離れており、イオンや中性粒子の温度が容器の壁面(室温)に近い一方で、電子の温度は数万K程度に達することが多い、と挙げています。

プラズマはどうやって作りますか?

放電で作ります。アルバックは、プラズマを生成する方法として放電電離・熱電離・光電離の3つを挙げ、真空技術で用いるのは放電電離である、と述べています。同社は、放電管の両端へ直流高電圧を加えると圧力10³Pa以下・放電電流数十mA以下で安定したグロー放電が見られる、としています。

放電が立つかどうかは何で決まりますか?

圧力と電極間隔の積で決まります。中野氏の講座は、タウンゼントの放電開始理論から、放電開始電圧が圧力と電極間距離の積だけに依存する関数になることを導いています。これがパッシェンの法則です。

プラズマの状態はどうやって測りますか?

量産で手に入る情報は限られます。ソニーの辰巳哲也氏による応用物理学会の解説は、電子温度ならラングミュアプローブというように個々の計測技術が確立し、研究のレベルでは有用性も検証されてきた一方で、不純物の混入やプラズマの変動、異常放電、コストのために量産設備での採用はごく一部にとどまる、としています。同解説は、実際に使えるのは終点検出用の発光分光分析と高周波信号のピーク値Vppなどである、と述べています。2016年時点の記述です。

プラズマを強くすれば加工は速くなりますか?

速くなるかわりに選択比を失います。辰巳氏の解説は、高いエッチング速度のために高密度のプラズマを使うと電子衝突の回数が増えて分子がばらばらになり、原子状のFが多いプラズマになるため選択比の確保が難しくなる、と述べています。

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  • サムコ「半導体製造装置入門 プラズマとは」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 固体・液体・気体に次ぐ4番目の状態、電離・自由電子・イオンの呼び分け
  • サムコ「半導体製造装置入門 プラズマを技術に活かす」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── プラズマCVD・プラズマドライエッチング・プラズマクリーニングの3つの使い道、熱処理製法より低温で膜を作れること
  • アルバック「真空ひばりの真空教室 Vol.10 プラズマと真空中の薄膜生成」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 放電電離・熱電離・光電離の3つ、真空技術で用いるのは放電電離であること、グロー放電の圧力と電流の目安
  • 日本真空学会「真空」57巻8号 中野武雄「講座 プラズマの基礎」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 0.1〜100Paの弱電離プラズマであること、電子と中性粒子が熱的な釣り合いから離れること、電子は数万K程度でイオンと中性粒子は室温近くであること、タウンゼントの放電開始理論とパッシェンの法則
  • 日本真空学会「真空」59巻7号 岡本幸雄「講座 プロセスプラズマの基礎」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── CCP・ICP・ECR・SWPの動作圧力と電子密度と電子温度の代表値、電子温度が電界強度と圧力の比に比例すること
  • 応用物理学会「応用物理」85巻9号 辰巳哲也「解説 半導体デバイス加工におけるプラズマ制御技術」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── エッチング装置の電子密度10⁸〜10¹²cm⁻³、量産設備での計測採用が一部にとどまる事情、発光分光分析とVpp、高密度化と過剰解離による選択比の低下、滞在時間10ms程度以下
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