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ボッシュプロセスとは

ボッシュプロセスとは、シリコンを掘るガスと側壁へ保護膜を積むガスを交互に供給し、深い穴や溝を垂直に掘るドライエッチングの手順です。 1本のレシピが守る段と掘る段の2つに割れており、そのどちらへ時間を配るかが側壁の形とエッチングレートを同時に左右します。掘る段を延ばせば1サイクルで進む深さは増え、一方で側壁の保護膜は薄くなり、破れた瞬間にサイドエッチが出ます。

理化学研究所は、高アスペクト比シリコン貫通穴の作製技術を伝えるプレスリリースの用語欄で、ボッシュ法をSF₆ガスとC₄F₈ガスを交互に流す反応性イオンエッチングの一種としています。同機関の記述では、まずC₄F₈を流すと側壁が保護膜で覆われ、SF₆へ切り替えると底の保護膜が削られてシリコンが露出し、そのシリコンが削れます。側面の保護膜が残っているうちに再びC₄F₈へ切り替えて次の保護膜を積み、これを繰り返すことで高アスペクト比のエッチングが成り立つとしています。2017年のプレスリリースの記述です。

電子情報通信学会の知識ベースも、TSVのようにアスペクト比の大きい孔を作る方法としてボッシュプロセスが広く使われているとし、エッチングガスと側壁保護膜堆積用のガスを交互に供給してウェーハを貫通させるほどの孔を作るものだとしています。2010年時点の記述です。

条件を流し続ける通常のドライエッチングと比べると、掘る速さを稼ぐ段と側壁の在庫を積む段が、時間軸の上で別の段になっています。掘る段の長さが1サイクルの掘削量になり、守る段の長さが側壁に載る保護膜の厚みになります。同じ深さへ届くまでのサイクル数は、1サイクルの掘削量で決まります。装置としての位置づけはDRIEのページに書きました。

保護膜の在庫を使い切る前に、掘る段を切り上げます
側壁に載る保護膜の厚み厚みがゼロになる線掘る段を延ばすと破れます守る掘る守る掘る1サイクル厚みの線は仕組みを示す形で、縦軸は相対値です配り方が、形とレートを左右します掘る段を延ばすと1回の掘削量が増え同じ深さへ届くサイクル数が減ります保護膜が尽きると側壁が横へ削れサイドエッチとボーイングが出ます短く切り替えると段差は小さくなりサイクル数のほうが増えます
掘る段を延ばすほど1サイクルで進む深さは増え、側壁の保護膜は薄くなります。理化学研究所が示す条件、つまり側面の保護膜が残っているうちに切り替えるという条件が、この配り方の上限になります。

切り替えの遅れは、サイドエッチとボーイングになります

Section titled “切り替えの遅れは、サイドエッチとボーイングになります”

切り替えが遅れたときに何が出るかは、装置メーカーの公開データに書かれています。サムコは深さ400 μmの順テーパー加工のプロセスデータで、数百μmレベルの深掘りでは、ボーイング形状や、掘る途中で側壁の保護膜が破れて起きるサイドエッチなど、多くの問題が出ると述べています。ボーイングは穴の途中が樽のように膨らむ形、サイドエッチは側壁が横へ食い込む形を指す現場語です。同社は同じ加工でこれらを抑え、ø8インチウェハで深さ400 μm、ホール径ø15 μm、チルト(面内で穴が傾く量)が90°±0.3°以内、アスペクト比27、選択比40という結果を示し、ボーイングを抑えたまま先端を順テーパーに制御できたとしています。同社製品での加工例の値です。

保護膜が持ちこたえた場合も、1サイクルで横へ進んだ量は側壁の段差として刻まれます。サムコは非ボッシュプロセスのプロセスデータで、ボッシュプロセスによるSiの深掘りでは原理として側壁にスカロップが出る点が問題になりうると述べています。スカロップは、サイクルごとに側壁へ刻まれる段差を指す現場語です。

測るのは、段差と傾きと選択比です

Section titled “測るのは、段差と傾きと選択比です”

サムコの公開プロセスデータには、加工の規模ごとにスカロップの値が載っています。ø30 nmのナノピラー加工(深さ444 nm、エッチングレート370 nm/min)ではスカロップを8.6 nm以下に抑えたとし、アスペクト比52の深掘りではスカロップサイズを100 nm以下としています。同社製品での加工例の値です。同じ現象でも、掘る規模が2桁動けばスカロップの値も2桁動きます。

段差とボーイングの位置は、断面で測ります。断面観察が側壁の波形と膨らみの位置を写す測定です。CD-SEMが返すのは上から見た開口寸法なので、深さ方向のどこが膨らんだかは断面の側で測ります。チルトは面内分布として集計します。サムコはRIE-800iPBの特長として、チルトを抑制してø8インチウェハでの良好な均一性を実現したことを挙げています。均一性の面内成分に、この項目が乗ります。

選択比は、掘りたい層のレートをマスクの減るレートで割った比です。使い分けは選択比のページに書きました。サムコの公開データでは、幅3 μm・深さ70 μmの加工でレジストに対するシリコンの選択比が100対1程度、幅100 μm・深さ500 μmの貫通加工では熱酸化膜マスクに対して1000対1程度としています。いずれも山形県工業技術センターの提供として同社が2018年の雑誌記事から引用した、研究開発用のRIE-400iPBでの加工例です。装置仕様としては、RIE-800iPBがレジストとシリコンの選択比1対500以上でのエッチングに対応するとしています。

1つ目は、1サイクルの中で守る段と掘る段へ時間をどう配るかです。掘る段を延ばせば1サイクルの掘削量が増え、同じ深さへ届くサイクル数が減ります。代わりに、側壁の保護膜が尽きる側へ近づきます。守る段を延ばせば側壁は持ちこたえ、そのぶん底の保護膜を破る時間が増えます。サムコはRIE-800iPBの製品ページで、0.1秒のガスの高速切り替えにより低スカロップ加工が可能だとしています。切り替えを速くする側が、段差を小さくする側です。

2つ目は、マスクの厚さと材料です。サムコはアスペクト比52の加工について、加工深さがマスク厚で制限を受けているとし、マスクが厚ければアスペクト比をさらに伸ばせるとし、マスク厚が足りていれば300 nmのパターンでアスペクト比100まで届くとしています。ø70 nmのホール加工(深さ552 nm、アスペクト比7.9、レート460 nm/min)についても、マスクを厚くするかSiO₂マスクを用いることでアスペクト比15以上の加工が可能だとしています。同社製品での加工例の値です。厚くする側が到達アスペクト比を伸ばし、薄い側ではマスクが先に消えて、深さがそこで打ち切られます。メタルハードマスクフォトレジストのどちらを載せるかが、到達アスペクト比を左右します。

3つ目は、プラズマ源へ入れる電力です。サムコはRIE-800iPBについて、ボッシュプロセス専用のICPコイルにより5,000 Wの高RFパワーを効率よく印加でき、45 μm/min以上の高速シリコン深掘りと100以上の高アスペクト比加工が可能だとしています。同社が研究開発用と呼ぶRIE-400iPBは、30以上の高アスペクト比加工を特長に挙げています。同一メーカーでも、公表されている到達アスペクト比は量産向けが100以上、研究開発用が30以上です。イオンの当たり方そのものはイオンエネルギーのページに書きました。

段差を消す道もあります。サムコは非ボッシュプロセスのプロセスデータで、□50 μmのホールパターンを深さ126 μmまで掘った例を示し、開口部を73°の順テーパーに調整してボーイングを抑え、エッチングレートは7.9 μm/minで、平滑な側壁を維持しながら100 μm以上の深掘りが可能だとしています。ボッシュ側では、幅50 μm・深さ128 μmの加工でエッチングレート18 μm/minという値を示しています。装置も別で、18 μm/min側が研究開発用のRIE-400iPB、7.9 μm/min側がø8インチ対応のRIE-800iPBでの加工例です。それでも、段差を消す側と速さを取る側が、同じメーカーの50 μm級・深さ130 μm弱という近い条件で並びます。

段差を消す側と、速さを取る側が並びます
ボッシュプロセス非ボッシュプロセス側壁にサイクルごとの段差が刻まれます幅50 μm・深さ128 μm で 18 μm/minø30 nmピラーでは段差 8.6 nm以下側壁は平滑に仕上がります□50 μm・深さ126 μm で 7.9 μm/min開口部は73°の順テーパー値はサムコの公開プロセスデータ。幅・深さ・装置が別々の加工例です
サイクルを刻む方式は側壁へ段差を刻み、連続で掘る方式は平滑な側壁を返します。同じメーカーの50 μm級・深さ130 μm弱という近い条件で、この2つが別のレシピとして並んでいます。

サイクルを刻む方式そのものにも請求書が付きます。1サイクルあたりの掘削量を小さくすれば段差は小さくなり、同じ深さへ届くサイクル数は増えます。ガスの供給と排気を毎サイクル切り替えるので、エッチングガスの切り替え応答とチャンバ内壁の状態が、そのままサイクル間の再現性になります。細い穴だけが浅く仕上がる側の話はARDEのページに書きました。深い構造そのものが要るTSVMEMSでこの方式が使われ続ける理由は、ここまでの取引が成り立つ範囲にあります。

ボッシュプロセスとは何ですか?

シリコンを掘るガスと側壁へ保護膜を積むガスを交互に供給し、深い穴や溝を垂直に掘る手順です。理化学研究所は、SF₆ガスとC₄F₈ガスを交互に流す反応性イオンエッチングの一種としています。

切り替えの条件はどこにありますか?

側面の保護膜が残っているうちに戻ることです。理化学研究所の用語欄は、側面の保護膜が残っているうちに再びC₄F₈へ切り替えて次の保護膜を堆積し、これを繰り返すと述べています。掘る段を延ばすほど、この条件の端へ近づきます。

切り替えが遅れると何が出ますか?

サイドエッチとボーイングです。サムコは深さ400 μmの加工データで、数百μmレベルの深掘りでは、ボーイング形状や、掘る途中で側壁の保護膜が破れて起きるサイドエッチなど、多くの問題が出ると述べています。同社製品での加工例に付いた記述です。

スカロップはどのくらいの大きさですか?

加工の規模で2桁動きます。サムコの公開データでは、ø30 nmのナノピラー加工(深さ444 nm、レート370 nm/min)でスカロップを8.6 nm以下に抑え、アスペクト比52の深掘りではスカロップサイズを100 nm以下としています。同社製品での加工例の値です。

到達アスペクト比は何で決まりますか?

マスクの厚さが到達深さを制限します。サムコはアスペクト比52の加工について、加工深さがマスク厚で制限を受けているとし、マスク厚が足りていれば300 nmのパターンでアスペクト比100まで届くとしています。ø70 nmのホールでは、マスクを厚くするかSiO₂マスクを用いてアスペクト比15以上が可能だとしています。

段差を消す方法はありますか?

非ボッシュプロセスを選ぶ道があります。サムコは□50 μmのホールを深さ126 μmまで掘った例で、開口部を73°の順テーパーに調整し、エッチングレート7.9 μm/minで平滑な側壁を維持しながら100 μm以上の深掘りが可能だとしています。ボッシュ側では幅50 μm・深さ128 μmの加工で18 μm/minという値を示しています。

どの工程で使いますか?

深い構造そのものが要る工程です。電子情報通信学会の知識ベースは、TSVのようにアスペクト比の大きい孔を作る方法としてボッシュプロセスが広く使われているとしています。2010年時点の記述です。MEMSの可動構造やTSVの貫通孔が代表例になります。

この記事の事実は、誰でも読める公開資料を根拠とし、各URLの到達可否をこちらで実測しています。したがって、リンク先が移動または消滅した場合は、その旨をこのページへ反映します。

  • 理化学研究所「高アスペクト比シリコン貫通穴の作製技術」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── ボッシュ法をSF₆とC₄F₈を交互に流す反応性イオンエッチングの一種とする記述、側面の保護膜が残っているうちに切り替えて繰り返す手順、アスペクト比を深さと幅の比とする用語欄の条件
  • 電子情報通信学会 知識ベース「10群2編3章 プロセス要素技術」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── TSVのようにアスペクト比が大きな孔を作る方法としてボッシュプロセスが多く使われているという記述、エッチングガスと側壁保護膜堆積用のガスを交互に供給する方式の位置づけ
  • サムコ「深さ400 μm順テーパー加工」プロセスデータ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 数百μm級の深掘りで出るボーイングと側壁保護膜の破れからのサイドエッチ、ø8インチで深さ400 μm・ホール径ø15 μm・チルト90°±0.3°以内・アスペクト比27・選択比40という結果
  • サムコ「アスペクト比52のSi深掘り」プロセスデータ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── スカロップサイズ100 nm以下、加工深さがマスク厚で制限を受けるという記述、マスク厚が足りていれば300 nmパターンでアスペクト比100まで届くという記述
  • サムコ「高速シリコンディープエッチング装置 RIE-800iPB」製品ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── ICPコイルへの5,000 W印加、0.1秒のガス高速切り替えによる低スカロップ加工、レジストとシリコンの選択比1対500以上、45 μm/min以上の深掘り、100以上のアスペクト比、チルト抑制とø8インチの均一性
  • サムコ「TSV向け開口部の広い深さ126 μmの加工」プロセスデータ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── ボッシュプロセスでは原理上スカロップの発生が問題になるという記述、非ボッシュで□50 μm・深さ126 μm・73°順テーパー・7.9 μm/min・平滑な側壁で100 μm以上の深掘りという結果
  • サムコ「ø30 nmのナノピラー形成」プロセスデータ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 深さ444 nm、スカロップ8.6 nm以下、エッチングレート370 nm/min
  • サムコ「アスペクト比23のSi深掘り」プロセスデータ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 幅3 μm・深さ70 μmでレジストに対するシリコンの選択比100対1程度、研究開発用シリコン深掘り装置という位置づけ、山形県工業技術センター提供で2018年の雑誌記事からの引用という条件
  • サムコ「深さ500 μmの貫通加工」プロセスデータ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 幅100 μm・深さ500 μmの貫通構造で熱酸化膜マスクに対するシリコンの選択比1000対1程度、山形県工業技術センター提供という条件
  • サムコ「18 μm/minの高速Si深掘り」プロセスデータ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── ボッシュプロセスでパターン幅50 μm・深さ128 μm・エッチングレート18 μm/minという結果と、使用装置がRIE-400iPBであること
  • サムコ「高速シリコンディープエッチング装置 RIE-400iPB」製品ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 30以上の高アスペクト比加工という特長、ø4インチ対応で研究開発用途を応用例に挙げるという位置づけ
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