ラインエッジラフネス(LER)とは
ラインエッジラフネス(LER)とは、出来上がったパターンの縁が、まっすぐな線からどれだけ細かく揺れているかを表す量です。 平均の太さとは別に、1本の線の中の揺れを表します。
SEAJの半導体製造装置用語集は、パターン転写のあと、現像後およびエッチング後のパターンエッジのラフネスが問題になるとしたうえで、そのラフネスをLERと呼び、ばらつきを3σ値、つまり標準偏差の3倍で表記することが多いとしています。同用語集の書き方です。
似た言葉にLWRがあります。SEAJの技術ロードマップは、基準線から片側のエッジまでの寸法のばらつきを3σで表したものをLERの指標とし、パターンの寸法そのものを測ってばらつきを3σで表す方法はLWRとも呼ばれる、としています。片側の縁だけを基準線と比べて求めるのがLER、両側の縁にはさまれた線幅から求めるのがLWRです。
この量は、寸法そのものとは別の指標にあたります。露光と現像を終えたラインを測り、平均の太さが規格に入っていても、その1本の中で縁が大きく揺れていれば、場所ごとに太さは異なります。寸法の管理だけを頼りにすると合格に思えるのに、素子の出来上がりがばらつく、という食い違いが起きます。
それが無いと、現場で何が起きるのか
Section titled “それが無いと、現場で何が起きるのか”最も影響が大きいのはゲートです。SEAJの技術ロードマップは、ゲートについては、ゲート長のゆらぎこそが問題になるとして、LWRのほうを指標に使うとしています。同ロードマップは、トランジスタ内のLWRによる局所的な短チャネル効果よりも、長い周期のラフネスによってトランジスタ内のゲート長が全体的に短くなる効果のほうが大きいとしています。2012年版の記述です。細かなギザギザよりも、ゆるやかなうねりのほうが素子を変えてしまうという指摘になります。
数字の側からも同じことが出ています。SEAJのウェーハプロセス編ロードマップは、LWRのばらつきがトランジスタ特性のばらつきに影響することから、LWRのばらつきの抑制がCD制御で大きな比重を占めるとしています。同編は、ITRS2011の要求値としてゲート長のCD制御の3σを挙げ、LWRやチップ内、ウェーハ内、ウェーハ間、ロット間のランダムなばらつきを合わせて物理ゲート長の12パーセント以下が要求されるとしています。ラフネスは、寸法の予算の中に同居しています。
配線にも影響します。SEAJのリソグラフィ編ロードマップは、配線のLERが与える影響を抵抗率の増大とTDDB特性の劣化の2つとし、特に銅とlow-k膜の配線では後者の問題が顕在化すると考えられるとしています。縁の揺れは、細いところで電気を通しにくくし、絶縁膜の寿命を削ります。
何を測り、どう測るのか
Section titled “何を測り、どう測るのか”測るのはCD-SEMです。日立製作所の技術誌は、LER計測を、対象パターンの長さ方向に多点分割してCD計測を行い、統計解析によって長さ方向のCDばらつきの分布解析、周波数解析、平均寸法計測を行う機能としています。
ここで問題になるのが、測り方が値を左右する点です。SEAJの技術ロードマップは、得られるLERやLWRに最も影響の大きい計測パラメータを、測定するパターンの長さと測定箇所数としています。同ロードマップは、標準的なゲートのLWRの指標として、パターン長2マイクロメートル、測定箇所200箇所、その結果として測定間隔10ナノメートルという提案を紹介しています。長さを大きくとると短い周期の成分が長い周期の成分に紛れてしまうため、何を知りたいかで仕様を変える必要があるとも述べています。
装置側の誤差も乗ります。同ロードマップは、パターンエッジを抽出するときに画像ノイズのため観測エッジが真の位置に対してずれ、観測されるLERやLWRの値が真の値よりも大きくなる現象を、画像ノイズ起因のバイアスとしています。信号の積算回数を増やせばノイズは減らせるものの、レジストが縮む問題がある場合には難しく、特に3ナノメートル以下の計測では注意が要るとしています。
この誤差の大きさは、実測値と比べると分かります。日立製作所の技術誌は、当時のArFレジストでの実際のLWRが3から6ナノメートルであり、通常のCD計測再現性より約1桁大きい値になるため、プロセスの安定性を監視する目的の計測では誤った判断の原因になるとしています。2006年時点の記述です。同誌は、対策として広い範囲を低倍率で撮り、複数パターンの測定値を平均化してラフネスの誤差を除く機能を挙げ、これがレジストへの電子線ダメージの低減にもなるとしています。
どこから生まれるのか
Section titled “どこから生まれるのか”SEAJの技術ロードマップは、LERを引き起こす最も大きな要因として、レジストのベース樹脂を構成する分子のサイズ、反応サイトの位置と数のばらつき、そして化学増幅系レジストにおける酸拡散プロセスを挙げています。ほかに、現像時の膨潤や収縮、雰囲気汚染による酸濃度の変化も指摘されているとしています。
酸の拡散が出てくる理由は、レジストの作りにあります。電子情報通信学会の知識ベースは、化学増幅レジストが光酸発生剤で作った酸による触媒反応を用いるとし、触媒反応で感度を上げられるものの、そのためには酸の拡散が必要で、露光後現像前に露光後ベーキングと呼ばれる加熱を行うのが通例だとしています。感度を稼ぐ仕組みそのものが、縁をぼかす仕組みでもあります。
EUV世代では、光の粒の数まで問題になります。SEAJの用語集は確率的影響を、パターン微細化とともに光子数の揺らぎ、レジスト構成材料の不均一性、露光装置のコントラスト低下によってパターン欠陥が確率的に生じる現象とし、EUV露光で顕在化したとしています。同用語集はストキャスティクス欠陥として、パターンがつながるブリッジ欠陥、断線するブレーク欠陥、欠損するミッシング欠陥などを挙げています。揺れが大きくなると、やがて線が切れます。
像のコントラストも影響します。同用語集は、パターンエッジ領域での光学コントラストを表すイメージ・ログ・スロープについて、これが大きいほど解像性が優れ、LWRも低減されるとしています。縁で光の強さが急に立ち上がるほど、縁は締まります。
縁を静めるために、何を差し出すのか
Section titled “縁を静めるために、何を差し出すのか”差し出すものは感度と時間です。SEAJの技術ロードマップは、LERが一般にレジストの感度とトレードオフの関係にあり、材料とプロセスの開発が非常に難しいとしています。同ロードマップは、EUVレジストでは解像力、感度、LWRが相反関係にあることが知られており、EUVレジスト開発の大きな課題になっているとしています。
材料そのものの大きさも壁になります。同ロードマップは、ITRSのロードマップによればハーフピッチ22ナノメートル世代に要求されるLWRを2ナノメートル以下としたうえで、一般的な化学増幅型レジストのベースポリマーなどによる平均粒塊が数十ナノメートル程度とされることから、従来のポリマー系では目標の達成を難しいとする意見もある、と述べています。同ロードマップは、粒塊の径を小さくするため分子量1000から2000程度とした低分子ガラスタイプのレジストが提案されているとしています。
エッチングで整える手もありますが、届く範囲が限られます。同ロードマップは、ドライエッチング時に側壁の凹凸が均一化されて短い周期のLERが低減する傾向があるとしたうえで、トランジスタ性能のばらつきに大きな影響を与えるゲートの長い周期のLERは、そのまま持ち越されるとしています。SEAJのウェーハプロセス編ロードマップも、レジストのトリミングからハードマスクのエッチングでは、LERを保ったまま、可能であれば減らしながらマスクを作ることが要求されるとし、ArFレジストの場合には堆積性の強いプロセスでイオンエネルギーを高めることで垂直形状とLERの低減が図れるという報告を紹介しています。
反対の指摘もあります。電子情報通信学会の知識ベースは、ドライエッチングがデバイスに物理的、電気的な損傷を与える可能性があるとし、プラズマが発生する紫外線によるLERの増大も指摘されている、としています。エッチングは、条件しだいで縁を整える側にも荒らす側にも回ります。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”ラインエッジラフネスとは何ですか?
パターンの縁が、まっすぐな線からどれだけ細かく揺れているかを表す量です。SEAJの用語集は、現像後およびエッチング後のパターンエッジのラフネスをLERと呼び、ばらつきを3σ値で表記することが多いとしています。
LERとLWRの違いは何ですか?
求める対象です。SEAJの技術ロードマップは、基準線から片側のエッジまでの寸法のばらつきをLERとし、パターンの寸法そのもののばらつきをLWRと呼ぶとしています。片側の縁だけを基準線と比べて求めるのがLER、両側にはさまれた線幅から求めるのがLWRです。
平均の寸法が規格内でも、なぜ管理するのですか?
平均の寸法とラフネスは別の指標です。同じ平均でも、縁が大きく揺れていれば1本の中で場所ごとに太さが変わります。SEAJの技術ロードマップは、ゲートでは長い周期のラフネスによってゲート長が全体的に短くなる効果のほうが大きいとしています。
何が原因で生まれるのですか?
SEAJの技術ロードマップは、レジストのベース樹脂を構成する分子のサイズ、反応サイトの位置と数のばらつき、化学増幅系レジストでの酸拡散プロセスを、LERを引き起こす最も大きな要因としています。現像時の膨潤や収縮、雰囲気汚染による酸濃度変化も挙げられています。
どうやって測るのですか?
CD-SEMで測ります。日立製作所の技術誌は、対象パターンの長さ方向に多点分割してCD計測を行い、統計解析で長さ方向のばらつきの分布や周波数を調べるとしています。
測り方で値は変わりますか?
変わります。SEAJの技術ロードマップは、最も影響の大きい計測パラメータを、測定するパターンの長さと測定箇所数としたうえで、ゲートのLWRではパターン長2マイクロメートル、測定箇所200箇所という提案を紹介しています。画像ノイズによって観測値が真の値より大きくなる現象も挙げられています。
LERを下げるには何を差し出すことになりますか?
感度か時間です。SEAJの技術ロードマップは、LERがレジストの感度とトレードオフの関係にあり、材料とプロセスの開発が非常に難しいとしています。EUVレジストでは解像力、感度、LWRが相反関係にあることが知られています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”この記事の事実は、誰でも読める公開資料を根拠とし、各URLの到達可否をこちらで実測しています。したがって、リンク先が移動または消滅した場合は、その旨をこのページへ反映します。
- SEAJ「半導体製造装置用語集(リソグラフィ)」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── LERとLWRの意味と3σ表記、イメージ・ログ・スロープとLWRの関係、確率的影響とストキャスティクス欠陥
- SEAJ 半導体製造装置技術ロードマップ「リソグラフィ」2012年版(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── LERとLWRの測り方の違い、発生要因と感度とのトレードオフ、計測仕様と画像ノイズ起因のバイアス、ゲートの長周期ラフネスの影響、配線LERと抵抗率およびTDDB、ハーフピッチ22ナノメートル世代のLWR要求と低分子ガラスタイプレジスト
- SEAJ 半導体製造装置技術ロードマップ「ウェーハプロセス」2012年版(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── LWRのばらつきがトランジスタ特性に与える影響、ITRS2011のゲート長CD制御の要求値、エッチングでLERを保ったままマスクを作る要求とArFレジストでの報告
- 日立評論2006年3月号「設計データを活用したCD-SEMの新しい世界」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── CD-SEMによるLER計測の手順、当時のArFレジストのLWR実測値と計測再現性との差、平均化による誤差の除去
- 電子情報通信学会 知識ベース「プロセス要素技術」(2026年9月2日にリンク生存を実測、200)── 化学増幅レジストの触媒反応と酸の拡散、露光後ベーキング、プラズマの紫外線によるLER増大の指摘