コーター/デベロッパとは
コーター/デベロッパとは、レジストの塗布、ベーク、現像を連続して行う装置です。 トラックとも呼ばれ、露光装置とインラインで連結して運用されます。
露光装置が担うのは、光を当てる一瞬だけです。その前後には、レジストを塗る、溶媒を飛ばす、露光後に反応を進める、現像液で溶かす、洗い流して乾かすという工程が並びます。これらをまとめて担うのがコーター/デベロッパです。
露光装置とインラインで連結する理由は、待ち時間にあります。塗布したレジストは時間とともに状態が変わります。露光から現像までの間にも化学反応が進みます。待ち時間が枚ごとにばらつけば、仕上がりの寸法もばらつきます。搬送を自動化すれば、この時間を一定に保てます。SEAJの半導体製造装置用語集は塗布現像装置を、露光後の引き置きが寸法へ響くのを抑えるため、露光機へインラインで連結されることも多い装置と記述しています。
管理項目は膜厚と温度です。膜厚は回転数と粘度で決まり、解像度とエッチング耐性の両方へ影響します。ベークの温度は化学反応の進み方を決め、面内の温度差はそのまま寸法差になります。SCREENは公式製品ページでDT-3000をコータ/デベロッパとして掲載しています。
レシピの実物を1本読み通す
Section titled “レシピの実物を1本読み通す”トラックの中身は、公開レシピを1本たどると具体になります。東京応化工業はバンプ形成用レジストのPMER P-BKシリーズについて、下地をCu、プリベークを145℃×300秒、露光をi線ステッパー(NA0.18)、PEBを85℃×180秒、現像をTMAH2.38%で60秒×6パドル、レジスト膜厚を20μm〜65μmと公開しています。同ページはS/H30μm、20μm、10μmの断面像を膜厚65μmの例で載せています。めっき電極用の厚膜レシピですが、トラックが握る変数はここで出そろいます。
公開区間だけで温度と時間の合計は840秒です(当サイトで計算)。うち360秒がパドル現像で、露光そのものよりベークと現像へ時間を割いています。SEAJは各ベークの役目を分けて記述しており、塗布前に基板表面の水分を除去するのが脱水ベーク、塗布後・露光前にレジスト溶剤を乾燥させるのがプリベーク(PAB)、露光後にレジスト内の化学反応を進め、光の定在波で側壁が波打つのを反応物の拡散で抑えるのがPEB、現像後に焼きしめて現像液とリンス液を乾かすのがポストベークです。ホットプレートは4種類の目的で並びます。
薬液も条件で決まっています。SEAJはTMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)の2.38質量%水溶液を、量産で広く使われる現像液としており、アルカリ性の液が露光後のレジストのうち極性の高い部分だけを溶かすこと、現像後はTMAHを除去するためリンスと呼ぶ水洗をすることを添えています。酢酸エチルなどの有機溶媒で極性の低い部分を溶かすネガ型現像(NTD)も同ページに並んでいます。富士フイルムはその他現像液として、界面活性剤の有無で分けたTMAH2.38wt%に加えてTMAH24.9%濃縮液と10%TMAHを掲載しています。工場で希釈できるなら濃縮液で受け入れる選択肢が薬液系の設計に入ります。
タクトは何枚/時で語られるか
Section titled “タクトは何枚/時で語られるか”トラックの生産性はwph(1時間あたりの枚数)で公開されます。東京エレクトロンのLITHIUSシリーズは、インラインスループットをLITHIUS Pro DICEで440wph、Pro Zで300wph、Pro Vで250wph、Proで200wph、認定中古のLITHIUSで150wphとしています。440wphは1枚あたり8.2秒、150wphは24.0秒です(いずれも当サイトで計算)。機種の選択で、1枚に許される秒数が3倍近く動きます。
対応プロセスも機種で切り分けられています。同ページではLITHIUS Pro DICEとPro ZがEUVからi-lineとSOCまで、Pro VとProがImmersion以下、認定中古のLITHIUSがi-lineまでで、ウェーハサイズは300mm対応が4機種、200mmと300mmの両対応が2機種です。
SCREENのDT-3000(SOKUDO DUO)は毎時450枚以上を掲げ、その作り方をデュアルプロセスラインの並行運用としています。同社は、2本で並行させて各ラインの搬送速度を抑えたままスループットを上げ、搬送システムの信頼性も確保したと述べています。速度と信頼性を両取りするため、本数を増やす解です。2本を独立に運用すればメンテナンス中も生産が続き、高価な露光機を常にウェーハを流している状態に保てるとも書いています。
東京エレクトロンは2025年12月15日のLITHIUS Pro DICEの販売開始で、レジスト塗布に起因する欠陥とコストを従来比50%以上下げること、生産性と環境性能を従来比25%以上上げることを挙げています。いずれも同社試算で、前者はディフェクト性能と薬液消費量、後者はスループットとフットプリントと用力排気量の比較です。High NAを含むEUVからDUVまで対応することも述べています。
露光機の側と比べると理由が読み取れます。ニコンはArF液浸のNSR-S636Eの仕様でスループットを≧280枚/時(96ショット)としています。440wphや毎時450枚以上のトラックは、この露光機へ余裕を持って供給する側の数字です。
面内でそろえるための管理点
Section titled “面内でそろえるための管理点”面内均一性は、そろい方を何σで語ります。SEAJはパターン寸法均一性(CDU)を、ウェーハ内の複数点のCDを計測してばらつきを3σで表記する指標と記述し、ラインエッジラフネスも3σ表記としています。トラックが握る膜厚と温度のばらつきは、この3σの内側へ入れる対象です。
その3σが向かう先はプロセスウィンドウです。SEAJは、CDへの要求が緩いレイヤーでは寸法の±10%という枠を満たす焦点深度(DOF)と露光量裕度(EL)でプロセスウィンドウを取ることが多いと記述しています。膜厚と温度の面内ばらつきは、この±10%の枠を露光の前に食う側の変数です。露光条件を絞り込む段階で使える枠は、トラック側の残し方で決まります。
トラックが塗る膜は、レジストのほかにもあります。SEAJは、光の反射を抑え密着性と形状を調整する下層反射防止膜(BARC)、平坦化とエッチングマスクを兼ねる有機下層膜、その間の中間層を挙げています。レジスト溶剤にはPGMEA、塗布欠陥を下げる部品としてレジストフィルタが並びます。
現場のつまみと、その両側
Section titled “現場のつまみと、その両側”回転数 ── 上げれば膜厚は薄くなり、解像度の側が有利になるかわりにエッチング耐性が落ちます。下げれば膜は厚くなり、耐性は稼げるものの解像度が落ちます。東京応化工業のPMER P-BKは20μm〜65μmという厚膜域で、露光をNA0.18のi線ステッパーで受けています。厚膜と低NAは組みで選ばれています。
PEBの温度と時間 ── 上げれば酸触媒の反応と反応物の拡散が進み、定在波による側壁の波打ちが減りますが、進みすぎれば拡散が輪郭をなまらせます。下げれば拡散が足りず、側壁の波打ちが残る側へ動きます。東京応化工業の公開条件は85℃×180秒です。どの値を選んでも、面内の温度差はそのまま寸法差になります。
現像時間とパドル回数 ── パドルを打ち直すたびに現像液が入れ替わります。回数を増やせば溶解の進み方がそろう側へ動きますが、1枚あたりの時間と薬液量が増えます。減らせばタクトと薬液は縮み、溶け残りが裾へ回ります。東京応化工業の条件は60秒×6パドル、合わせて360秒です。440wphの装置の1枚8.2秒と比べれば、厚膜の現像が時間を食う側だと数字で出ます(当サイトで計算)。
現像液の受け入れ形態 ── 2.38質量%で受け入れれば量産の標準に乗ります。富士フイルムのTMAH24.9%濃縮液や10%TMAHにすれば輸送と保管の量が減るかわりに、工場側が希釈と濃度管理を持ちます。
インライン運用と搬送速度 ── 露光機へ連結すれば引き置き時間は一定に保たれますが、露光機が止まればトラックも止まります。SCREENはデュアルプロセスラインの独立運用で片側のメンテナンス中も生産を続ける構成を掲げ、止まる範囲を半分に切っています。搬送速度を上げれば1枚あたりのタクトは縮みますが、同社は速度を抑えたままスループットを上げるためラインを2本にしたと述べ、東京エレクトロンはLITHIUS Pro Zの特長に低パーティクルの搬送システムを挙げています。速度を取ればパーティクルと信頼性の側へ請求が回ります。
この用語に対応する装置と製造メーカー
Section titled “この用語に対応する装置と製造メーカー”装置カタログDBから、この用語に一致する製品familyを持つメーカー 4社/4family を引いています。 各行は各社の公式製品ページを出典とします。 DBからの生成日: 2026-08-22
- Kingsemi
- KS coater and developer familyLithography Track
- SCREEN
- DT / RF / SK / SC track familyLithography
- SEMES
- OMEGA photo track / spinner familyLithography / Track
- TEL
- CLEAN TRACK LITHIUS SeriesLithography
出典は各社の公式製品ページです。 装置カタログDB では、同じ製品familyを工程・メーカー横断で検索できます。
関連するデータ・ツール
Section titled “関連するデータ・ツール”- CLEAN TRACK(塗布・現像)の工程ページ ── 工程分類と、この工程に接続している公開求人
- レジスト塗布・ベークの工程ページ ── 塗布側の工程
- 装置カタログDB ── 公式製品ページ単位のメーカーと製品family
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”コーター/デベロッパとは何ですか?
レジストの塗布、ベーク、現像を連続して行う装置です。トラックとも呼ばれます。露光機とインラインで連結され、塗布から現像までを1つの流れとして担います。
なぜ露光装置とインラインで連結するのですか?
塗布から露光、現像までの待ち時間が寸法へ回るためです。SEAJは塗布現像装置を、露光後の引き置きが寸法へ響くのを抑えるため、露光機へインラインで連結されることも多い装置と記述しています。搬送を自動化すれば、待ち時間を一定に保てます。
何を管理しますか?
膜厚と温度です。膜厚は回転数と粘度で決まり、解像度とエッチング耐性の両方へ影響します。ベークと現像後の温度履歴も、パターンの寸法を左右します。面内で温度がそろうかが管理項目になります。
ベークは何回しますか?
複数回あります。SEAJは、塗布前に基板表面の水分を除去する脱水ベーク、塗布後・露光前にレジスト溶剤を乾燥させるポストアプライベーク(プリベーク)、露光後にレジスト内の化学反応を進めるPEB、現像後に焼きしめて現像液とリンス液を乾かすポストベークを、それぞれ別の目的で並ぶ熱工程として記述しています。
実際のベーク温度と現像条件はどれくらいですか?
東京応化工業はバンプ形成用のPMER P-BKシリーズについて、下地Cu、プリベーク145℃×300秒、露光はi線ステッパー(NA0.18)、PEB85℃×180秒、現像はTMAH2.38%で60秒×6パドル、レジスト膜厚20μm〜65μmという条件を公開しています。
現像液には何を使いますか?
SEAJは、TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)の2.38質量%水溶液を量産で広く使われる現像液としています。富士フイルムも公式製品ページで、界面活性剤の有無で分けたTMAH2.38wt%の現像液と、TMAH24.9%濃縮液や10%TMAHを掲載しています。
スループットはどれくらいですか?
東京エレクトロンはCLEAN TRACK LITHIUSシリーズのインラインスループットとして、LITHIUS Pro DICEを440wph、LITHIUS Pro Zを300wph、LITHIUS Pro Vを250wph、LITHIUS Proを200wph、認定中古のLITHIUSを150wphと公開しています。SCREENはDT-3000(SOKUDO DUO)を毎時450枚以上のデュアルトラックシステムとしています。
なぜ引き置き時間が寸法を動かすのですか?
露光後のレジスト内で反応が進み続けるためです。SEAJは化学増幅レジストを、露光で生じた反応触媒によって反応が増幅し、現像液への溶解性が動くレジストと記述しています。露光からPEBまでの時間が枚ごとにばらつけば、反応の進み方も枚ごとにばらつきます。
装置の名前がメーカーごとに異なるのはなぜですか?
各社が自社の製品名を付けているためです。東京エレクトロンはCLEAN TRACK LITHIUS、SCREENはコータ・デベロッパの名で製品を展開しています。SCREENは公式製品ページでDT-3000(SOKUDO DUO)を掲載しています。
コーター/デベロッパのメーカーはどこですか?
当サイトの装置カタログDBでは、リソグラフィトラックに一致する製品familyを持つメーカーを公式製品ページ単位で引けます。東京エレクトロン、SCREEN、SEMES、KINGSEMIなどが該当します。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- CLEAN TRACK装置解説 ── 東京エレクトロンのトラック
- リソグラフィ工程 ── 工程としてのリソグラフィ
この記事の事実は次の一次資料を根拠とし、各URLの到達可否をこちらで実測しています。したがって、リンク先が移動または消滅した場合は、その旨をこのページへ反映します。
- SCREEN セミコンダクターソリューションズ「DT-3000」公式製品ページ(2026年8月22日にリンク生存を実測、200)── DT-3000がコータ/デベロッパとして掲載されていること
- ASML「DUV lithography systems」公式製品ページ(2026年8月22日にリンク生存を実測、200)── トラックとインラインで組む露光装置の側の製品構成
- SCREEN セミコンダクターソリューションズ「DT-3000(SOKUDO DUO)」公式製品ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 毎時450枚以上、デュアルプロセスラインで搬送速度を抑えたままスループットを上げる作り、独立運用によるダウンタイム低減、露光機を常にウェーハを流している状態に保つ運用、先端液浸リソグラフィと電子ビームとDSAへの対応
- 東京エレクトロン「コータ/デベロッパ LITHIUSシリーズ」公式製品ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── インラインスループット440wph/300wph/250wph/200wph/150wph、機種ごとの対応プロセスとウェーハサイズ、LITHIUS Pro Zの低パーティクル搬送システム
- 東京エレクトロン「CLEAN TRACK LITHIUS Pro DICE 販売開始のお知らせ」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── レジスト塗布に起因する欠陥とコストの従来比50%以上の低減、生産性と環境性能の従来比25%以上の向上、いずれも同社試算であること、LITHIUS Pro Zを10年以上提供、High NAを含むEUVからDUVまでの対応
- SEAJ「半導体製造装置用語集(リソグラフィ)」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 塗布現像装置が引き置きの影響を抑えるため露光機へ連結されること、脱水ベーク・ポストアプライベーク・PEB・ポストベークの役目、TMAH2.38質量%水溶液とリンス、ネガ型現像(NTD)、化学増幅レジストと光酸発生剤、BARCと有機下層膜と中間層、PGMEA、レジストフィルタ、CDUとLER/LWRの3σ表記、プロセスウィンドウの±10%
- 東京応化工業「バンプ形成用レジスト」公式製品ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── PMER P-BKシリーズの下地Cu、プリベーク145℃×300秒、i線ステッパー(NA0.18)、PEB85℃×180秒、TMAH2.38%で60秒×6パドル、レジスト膜厚20μm〜65μm、S/H30/20/10μmの断面像
- 富士フイルム「その他現像液」公式製品ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 界面活性剤の有無で分けたTMAH2.38wt%現像液、TMAH24.9%濃縮液、10%TMAH、浸漬とインライントラック現像への適用
- ニコン「NSR-S636E 仕様」公式製品ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── ArF液浸露光機のスループット≧280枚/時(96ショット)
- 装置と製造メーカーの行は
intel.equipment_vendor_families(公式製品ページ由来)から生成