再付着(リデポジション)とは
再付着(リデポジション)とは、エッチングで出た生成物やマスクのスパッタ物、プラズマ中で生成した重合成分が、揮発して排気されるまえに側壁や加工面へ貼りつく現象です。 側壁へ付けば垂直形状の味方になり、加工面や底へ戻れば面荒れとレート低下の原因になります。
揮発しそこねた削りカスは、その場に貼りつきます
Section titled “揮発しそこねた削りカスは、その場に貼りつきます”名古屋大学プラズマナノ工学研究センターの関根誠氏は、プラズマ・核融合学会誌2007年4月号の小特集で、中性種と容易に反応が進む材料を削る場合、エッチング生成物とレジストの分解物がパターンの側面へ積もり、中性種による横方向の反応を抑えるとしています。同氏は、パターンの底ではイオンが当たってこの薄い膜が剥がされるため、異方性の加工になるとしています。以上は同誌2007年4月号の記述です。塩素系で多結晶シリコンを削る例では、生成物のSiClxがこの役に回ると同氏は挙げています。ドライエッチングの垂直性は、この貼りつきと剥がしの差で立ちます。
同じ貼りつきが、場所を変えると面荒れになります。名古屋大学の林俊雄氏は同誌2007年4月号で、加工面が粗くなる原因として、重合物を作りやすい物質を使うとチャンバー壁へ膜が付いてダストになること、マスクがスパッタされて戻る分、そして蒸気圧の低い生成物が戻る分を挙げています。同氏は、生成物に不揮発性物質を含むLiNbO3やPZTなどでは主に化学スパッタ機構を用いるとし、圧力が高くて基板の近くで分子同士がよくぶつかる状態だと、不揮発の生成物が基板へ戻って加工面が荒れるとしています。
厚みそのものがイオンのエネルギーを左右します。ソニー半導体事業本部の辰巳哲也氏は同誌2007年4月号で、酸化シリコンの表面に定常状態で形成されるC-Fポリマーが、その厚さに応じてイオンを減速するとしています。マスク側でも同じ理屈が働きます。林氏は、ニッケルやクロムのフッ化物が蒸気圧を持たず、そのため高い選択比が得られるとし、その一方でクロムのエッチングでは有効な側壁保護膜を作りにくいためCDシフトが出やすく、設計値より寸法が大きく引いてしまうとしています。選択比を稼ぐ材料選びが、寸法の後退を連れてくる関係になります。
現場で先に出るのは、樽型と縦筋と面荒れです
Section titled “現場で先に出るのは、樽型と縦筋と面荒れです”日立製作所中央研究所の根岸伸幸氏と伊澤勝氏は、プラズマ・核融合学会誌2007年4月号で、微細ホールの絶縁膜エッチングにおける形状異常としてボーイング、つまりホール中間部が樽型になる症状を取り上げ、パターン間のショートマージン低下の要因になるとしています。同氏らは、アルゴンとC5F8と酸素の混合ガスで加工し、ボーイング位置の寸法シフト量からホール間口の寸法シフト量を引いた値をボーイング量として、ホール径が細るほどボーイング量が急激に増えたとしています。以上は同社のUHF-ECR装置での検討結果です。
同氏らは、加工済みホールを低ウエハバイアス条件のプラズマへ曝露して側壁の堆積厚さを測り、ホール径の微細化に伴って側壁堆積量が直線的に減る一方、堆積膜が途切れる位置のアスペクト比は3程度でほぼ一定にとどまったとしています。同氏らは、ボーイングが出る位置のアスペクト比もホール径によらず4程度でほぼ一定だとしています。同氏らは、ホールへ入るイオンフラックスがアスペクト比で決まるため、ホール径が細るほど、ボーイングの出る位置では入射イオン量に対して側壁へ積もる速さの割合が下がっていくと想定しています。同氏らは、マスクのファセット部やネッキング部で反射したり、チャージアップで向きを変えたイオンが側壁を削っていくと述べています。
厚い側にも症状が出ます。キオクシアの大村光広氏らは同誌2021年9月号で、高アスペクトホール側壁の縦筋状の形状異常、つまりストライエーションについて、ホール上部の側壁フルオロカーボン膜の厚さが約3ナノメートルで、側壁が平滑な深い領域よりも厚かったとし、この膜がある厚さを超えて厚くなるほど縦筋がひどくなると見ています。同氏らは、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、フルオロカーボン膜へ800エレクトロンボルトのアルゴンイオンビームを垂直から85度という寝かせた角度で照射する実験を行い、フルオロカーボン膜にはビームの入射方向と平行な鮮明な縦筋が観察されたとし、無機の膜よりも有機の膜の上で縦筋が付きやすいと述べています。この縦筋がそのままラインエッジラフネス(LER)側の数字へ移ります。
穴底の丸さにも影響します。同氏らは、コンタクトホール加工後のサンプルをCMPで削って真円度のアスペクト比依存を求めた報告を引き、アスペクト比10以上で真円度が急激に悪化する一方、オーバーエッチングの段でポリマーを落とすステップを挟むと真円度が7パーセント良くなったとしています。
異物の側も同じ根から出ます。日立評論1989年5月号は、パターン側壁に保護膜を形成するデポジション性の強いガスの添加が必要になる一方、そのガスがエッチング室の内壁にも付着し、ウェーハを連続で流す過程でウェーハ上の異物が増えてデバイスの歩留まり低下の一因になるとしています。林氏は、光導波路などの深溝加工では形状を制御しながらのエッチング速度が0.5マイクロメートル毎分前後で、50マイクロメートルの加工に100分前後を要するとし、この間にチャンバー壁へ付いた膜がダスト源となり、加工中に加工面へ舞い降りると粗い加工表面になるとしています。チャンバ内壁の状態とパーティクルの管理が、同じ現象の別の出口になります。
測るのは側壁の膜厚と、途切れる位置のアスペクト比です
Section titled “測るのは側壁の膜厚と、途切れる位置のアスペクト比です”根岸氏らの手順では、断面SEMで側壁のデポ厚さと、堆積膜が途切れる位置のアスペクト比を同時に求めます。大村氏らは、絶縁膜側壁のフルオロカーボン膜の厚さをTEM(透過電子顕微鏡)で観察し、加工深さに対してプロットしたとしています。同氏らは、界面反応層が大気開放で変質しやすい一方、表面のフルオロカーボン膜は安定なため解析しやすいとしています。
転写のタイミングは、剥がしてから比べます。同氏らは、50秒後と150秒後を比べ、50秒後は酸素アッシングでカーボン膜とフルオロカーボン膜を除去するとストライエーションが消え、150秒後はアッシング後にも残ったとし、縦筋が絶縁膜へ転写される段階を切り分けています。同氏らは、ストライエーション下端のアスペクト比が加工時間50秒から700秒までのすべてで約23になっていたとし、形成領域がアスペクト比に強く依存するとしています。以上はキオクシアが自社の加工サンプルを解析した結果です。
つまみは希釈ガス流量、電極温度、圧力と排気、そして時分割です
Section titled “つまみは希釈ガス流量、電極温度、圧力と排気、そして時分割です”第一のつまみはラジカル組成です。この節で挙げる装置の数値は、いずれも各社が公表した自社装置または自社の検討結果の値です。根岸氏らは、ボーイング部の側壁保護膜を作る手として、ホール中間部の堆積を担うCF2ラジカルの量を増やす道と、ホール上部で止まってしまうCラジカルの付着係数を下げて奥へ堆積成分を運ぶ道の2つを検討し、前者をアルゴン流量によるC5F8分圧の制御、後者を電極温度の高温化で比べたとしています。同氏らは、アルゴン流量が800ミリリットル毎分ではホール中間部の側壁に堆積が見られず、500、200ミリリットル毎分と下げると側壁堆積量が増え、低流量化で付着係数の低いCF2系ラジカルが増えたと考えられるとしています。同氏らは、電極温度が低くて付着係数が高いままだとアスペクト比3から4のあたりに側壁保護膜が付かずボーイングが出ると見込まれる一方、電極温度を上げて側壁の付着係数を下げるとラジカルがホールの奥まで届き、ボーイングの出る位置の付近で堆積速度が上がって保護膜が立つとしています。同氏らは、アルゴン流量の最適化と電極温度の高温化を組み合わせ、ホールのトップ寸法を維持したままボーイング量を56.3ナノメートルから15.2ナノメートルへ低減できたとしています。
厚くする方向の代償も公開資料にあります。膜を厚くすればボーイングは収まる方向へ動き、同じ膜が一定の厚さを超えるとストライエーションが悪化する方向へ動きます。ガス側の配分も同じ形です。日立評論2003年4月号は、UHF-ECR方式の絶縁膜エッチング装置について、ウェーハとシャワープレートのギャップを詰めるとCF2/F比が上がって対レジスト選択比を大きく取れる一方、ギャップを広げるとCF2/F比が下がってCD制御性と垂直性の面で優れたプラズマになるとしています。同誌は、この装置で0.1マイクロメートルのホールでアスペクト比20以上の加工例を示しています。エッチングガスの解離バランスは、堆積側と寸法側のどちらを取るかの配分になります。
第二は圧力と排気です。関根氏は、エッチング生成物の再吸着を抑えて高速エッチングを可能とする高ガス流量あるいは高速排気の技術が提案されているとしています。林氏は、MEMS分野のシリコン深堀りでは高いエッチ速度を得るため使用圧力領域が3から100パスカルと高いとし、ガラスのエッチングではイオンの基板への到達効率の良い0.2から2パスカルが用いられるとしています。同氏は、石英の深堀り加工の例として、C4F8を50立方センチメートル毎分、バイアスパワー400ワット、圧力0.67パスカルで深さ120マイクロメートルの形状を得たとしています。低圧側へ振れば再付着は減り、高圧側へ振ればラジカル供給によるレートを取る配分です。
第三は時分割で、こちらは再付着を工程として作りにいく側です。サムコは、ボッシュプロセスをシリコンの等方性エッチング、保護膜の堆積、底面の保護膜を除去する異方性エッチングという3ステップの繰り返しとし、エッチングにSF6、保護膜にC4F8を主に使い、高い選択比を保ちながら高異方性のエッチングを可能にするとしています。同社はRIE-800iPBについて、ボッシュプロセス専用ICPコイルで5,000ワットの高RFパワーを効率よく印加できるとし、ガスを0.1秒で切り替えられるためスカロップを小さく抑えられるとしています。同社は、レジストとシリコンの選択比1対500以上、45マイクロメートル毎分以上のシリコン深掘り、100以上の高アスペクト比加工に対応するとしています。切り替えを速くするほど側壁の段差は小さくなり、段差そのものを避ける道として、同社は非ボッシュプロセスでの順テーパー加工とスカロップフリーの加工にも対応するとしています。この方式はDRIE(深堀り反応性イオンエッチング)やTSV(シリコン貫通電極)の穴あけで使われます。関根氏も、堆積性ガスとエッチングガスを数秒ごとに切り替え、エッチング時にバイアスRFを印加するTime-modulated etching法を挙げています。
第四はレイアウトです。ソニーセミコンダクタソリューションズの久保井信行氏らは同誌2021年9月号で、加工特性が振れる要因にポリマーの再堆積量を左右するウェハ内とチップ内の開口率を挙げ、ダミーパターンの配置も含めてマスクレイアウトを緻密に設計する必要があるとしています。ここから先はローディング効果と同じ話になります。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”再付着(リデポジション)とは何ですか?
エッチングで出た生成物やマスクのスパッタ物、プラズマ中で生成した重合成分が、揮発して排気されるまえに側壁や加工面へ貼りつく現象です。名古屋大学の関根誠氏は、プラズマ・核融合学会誌2007年4月号で、エッチング生成物とレジストの分解物がパターンの側面へ積もり、中性種による横方向の反応を抑えるとしています。
再付着は害だけですか?
貼りつく場所によって役割が入れ替わります。関根氏は、パターンの底ではイオンが当たってこの薄い膜が剥がされるため異方性の加工になるとしています。側壁へ付けば垂直形状の味方になり、加工面や底へ戻れば面荒れとレート低下の原因になります。
現場ではどんな形状異常として出ますか?
ホール中腹の樽型(ボーイング)と、側壁の縦筋(ストライエーション)です。日立製作所中央研究所の根岸伸幸氏らは、同社のUHF-ECR装置での検討として、側壁堆積膜が途切れる位置のアスペクト比がホール径によらず3程度、ボーイングが出る位置のアスペクト比が4程度でほぼ一定だとしています。キオクシアの大村光広氏らは、ホール上部の側壁フルオロカーボン膜の厚さが約3ナノメートルで、平滑な深い領域より厚かったとしています。
どのつまみで側壁の膜厚を動かしますか?
希釈ガス流量と電極温度です。根岸氏らは、アルゴン流量が800ミリリットル毎分ではホール中間部の側壁に堆積が見られず、500、200ミリリットル毎分と下げると側壁堆積量が増えたとし、電極温度を上げて側壁の付着係数を下げるとラジカルがホールの奥まで届くとしています。同氏らは、両者の組み合わせでボーイング量を56.3ナノメートルから15.2ナノメートルへ低減できたとしています。
膜を厚くする側の代償は何ですか?
側壁の縦筋です。大村氏らは、高アスペクトのホール側壁でフルオロカーボン膜がある厚さを超えて厚くなるほど縦筋がひどくなると見ています。同氏らは、800エレクトロンボルトのアルゴンイオンビームを垂直から85度で照射した実験で、フルオロカーボン膜にビームの入射方向と平行な鮮明な縦筋が観察されたとしています。
何を測ると堆積量が出ますか?
断面のホール側壁です。根岸氏らは、あらかじめエッチングで加工したホールサンプルを低ウエハバイアス条件のプラズマへ曝露し、側壁に堆積したデポ厚さを断面SEMで測定し、あわせて堆積膜が途切れる位置のアスペクト比を求めたとしています。大村氏らはTEMで膜厚を加工深さに対してプロットし、表面のフルオロカーボン膜は安定なため解析しやすいとしています。
ボッシュプロセスは再付着とどう関係しますか?
再付着を工程として時分割で作る方式です。サムコは、ボッシュプロセスをシリコンの等方性エッチング、保護膜の堆積、底面の保護膜を除去する異方性エッチングの3ステップの繰り返しとし、エッチングにSF6、保護膜にC4F8を主に使うとしています。同社はRIE-800iPBについて、ガスを0.1秒で切り替えられるためスカロップを小さく抑えられるとしています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- ローディング効果とは ── 開口率が再堆積量を動かす側、再付着はその動かされる実体です
- 選択比(エッチング)とは ── 不揮発のフッ化物で選択比を稼ぐ材料は、側壁保護膜を作りにくくCDシフトを連れてきます
- パーティクルとは ── 壁へ付いた堆積物が剥がれて加工面へ落ちる出口です
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- プラズマ・核融合学会誌「Vol.83 No.4(2007年4月)小特集 材料プロセス用フルオロカーボンプラズマ-現状と展望-」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 関根誠氏による側壁保護膜の成り立ちと底面での除去、生成物の再吸着を抑える高ガス流量と高速排気、Time-modulated etching法、根岸伸幸氏と伊澤勝氏によるボーイング量の求め方とアスペクト比3および4、アルゴン流量800から200ミリリットル毎分、電極温度の高温化、56.3から15.2ナノメートル、林俊雄氏による面荒れの3つの原因と圧力領域、石英深堀りの条件、辰巳哲也氏によるC-Fポリマーの厚さとイオンの減速
- プラズマ・核融合学会誌「Vol.97 No.9(2021年9月)小特集 先端デバイス構造を実現する超絶ドライエッチング技術の最前線」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 大村光広氏らによる側壁フルオロカーボン膜の約3ナノメートル、800エレクトロンボルトのアルゴンイオンビームを85度で照射した結果、ストライエーション下端のアスペクト比約23、真円度のアスペクト比10と7パーセント改善、TEM解析の位置づけ、久保井信行氏らによるウェハ・チップ内開口率とダミーパターン設置
- 日立評論「Vol.71 No.5(1989年5月)特集 半導体製造技術 ドライエッチング装置」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── デポジション性ガスの添加とエッチング室内壁への付着、連続で流したときの異物増加と歩留まり低下
- 日立評論「Vol.85 No.4(2003年4月)次世代プロセス対応のUHF-ECR方式絶縁膜エッチング装置」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── ギャップとCF2/F比の関係、対レジスト選択比とCD制御性の配分、0.1マイクロメートルホールでのアスペクト比20以上
- サムコ「高速シリコンディープエッチング装置」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── ボッシュプロセスの3ステップとSF6およびC4F8の役割分担
- サムコ「高速シリコンディープエッチング装置 RIE-800iPB」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 5,000ワットの高RFパワー、0.1秒のガス切り替えと低スカロップ加工、選択比1対500以上、45マイクロメートル毎分以上、アスペクト比100以上、非ボッシュプロセスでのスカロップフリー