ローディング効果とは
ローディング効果とは、同じレシピのまま、ウェーハ上で削る面積やパターンの疎密、穴の深さが異なるだけで、エッチング速度と加工形状に差が出る現象です。 供給が枯れる側と、穴の中で輸送が詰まる側という、機構の異なる2つが同じ名前で呼ばれます。
供給が枯れる側と、穴の中で詰まる側があります
Section titled “供給が枯れる側と、穴の中で詰まる側があります”ソニー半導体事業本部の辰巳哲也氏は、プラズマ・核融合学会誌2007年4月号の小特集で、装置へ導入したフルオロカーボンガスがプラズマ中の電子衝突で解離・電離・励起され、生成した活性種は滞在時間のあいだにプラズマを囲む壁と反応したのち排気されるとし、その一部が基板上へ輸送されてエッチング反応によって消費されるとしています。同氏は、イオンが基板の酸化シリコン表面へエネルギーを与える深さが数ナノメートル程度で、この活性な領域で単位時間に何個のCF系活性種中のフッ素が反応するかによってエッチング速度が定まるとしています。以上は同誌2007年4月号の記述です。削る面積が増えれば、この消費の側が増えます。
同誌2021年9月号の小特集で、ソニーセミコンダクタソリューションズの久保井信行氏らは、加工特性が振れる要因を3つ挙げています。加工の途中で上がっていくアスペクト比、チャンバ壁の表面状態に伴って振れるバルクプラズマ側のイオンとラジカルの組成および面内の揃い方、そしてポリマーの再堆積量を左右するウェハ内とチップ内の開口率です。開口率が変動要因として出てくるとおり、面積の側は再付着が作る側壁保護膜の厚さと同じ根を持ちます。
疎密の側には古くから名前が付いています。日立評論1989年5月号は、ドライエッチング装置の記事の脚注で、マイクロローディング効果について、パターンが疎か密かでエッチ速度と加工形状に差が出る現象だと述べています。深さの側は別の名前で呼ばれます。キオクシアの大村光広氏らは同誌2021年9月号で、アスペクト比が上がるほどエッチングレートが落ちる現象をRIE-lagと呼び、高アスペクト領域での落ち込みの原因候補にイオンのシャドウイング、細孔の内部での中性粒子の輸送、側壁と穴底のチャージアップを挙げています。同氏らは、どの要因が支配するかはアスペクト比とプロセス条件で入れ替わるため機構の特定には至っておらず、研究を続ける必要があるとしています。同氏らは、3次元フラッシュメモリのメモリホールのアスペクト比が既に40を超えており、さらなる大容量化では100を超えると予想されるとしています。
現場で先に出るのは、時間の伸びとマスクの後退です
Section titled “現場で先に出るのは、時間の伸びとマスクの後退です”東芝の大岩徳久氏は、東芝レビュー2004年8月号で、寸法が細るほどレジストは薄くなり、加工パターンのアスペクト比が大きくなるほどエッチング速度は落ちるとし、この速度低下をマイクロローディング効果と呼んでいます。同氏は、そのぶんエッチング時間が伸びてマスクが後退していくと述べています。同氏は、その手当てとしてレジストとSOGと塗布カーボン膜を積層した多層レジストプロセス(S-MAP)を挙げ、上層のレジスト膜厚を300ナノメートル以下、中間層のSOGを80ナノメートルとし、寸法180ナノメートルのホールエッチングで従来のレジストプロセスと比較した結果を示しています。以上は2004年時点の同社の開発結果です。同氏は、レジストをそのままマスクに使う従来プロセスではマスクが大きく後退し、ホール上部の寸法が広がってしまうとしています。マスク側の耐性で受ける道はメタルハードマスクへも続きます。
その道で払うものも公開資料に書かれています。日立製作所中央研究所の根岸伸幸氏と伊澤勝氏は、プラズマ・核融合学会誌2007年4月号で、多層レジスト方式はプラズマ耐性の高いアモルファスカーボン膜などへいったんパターンを移してから被加工膜を削るため、ArFレジストのエッチング負荷を軽減するとし、その一方で工程数の増加に伴う製造コストの増大や各工程での厳密な寸法管理といった課題が多いとしています。
面内の割れ方も同じ根から出ます。名古屋大学の関根誠氏は同誌2007年4月号で、パターンの加工寸法(CD)の変換差の制御において均一性が強く影響するとし、生成物とラジカルとイオンの面内のむらが、側壁保護膜の厚さのばらつきとして出るためだと述べています。均一性を追う工程は、ここでローディング効果と同じ対象を測ることになります。コストへの跳ね返りも明示されています。大村氏らは、RIE-lagを課題として残す理由として、エッチングレートがそのまま単位時間あたりの生産量になり、メモリのコストへ大きく響く点を挙げています。
差の出どころは、モニタウェーハの作り方で切り分けます
Section titled “差の出どころは、モニタウェーハの作り方で切り分けます”疎密の差を同じウェーハへ載せて断面を比べる手順は古くから使われています。日立評論1989年5月号は、5インチウェーハの半分にだけレジスト(OFPR800を220度でベーク)を塗ったサンプルでAl-Si-Cu膜を加工し、レジスト端面からの距離を5ミリメートル、20ミリメートル、40ミリメートルとして断面形状を比べた結果を載せ、マイクロ波プラズマ方式ではこの極端なパターンでも寸法と形状の差が小さく、疎密の厳しいASICの加工に向くとしています。以上は同誌1989年5月号に載る同社装置の結果です。同誌は同じ記事で、Al合金膜のRIEについてエッチング中のガス圧力が高いためマイクロローディング効果が出やすいとし、マイクロ波プラズマエッチングでは従来のRIEより真空度の高い領域で高密度のプラズマを安定して立てられるため、マイクロローディング効果を小さく保ったエッチングができるとしています。
終点側の信号にも面積が乗ります。辰巳氏は、量産設備で実際に応用されているモニタリング機器が限られるとし、光ファイバを観測窓の外へ配置してプラズマ光を分光する簡易的なOES、つまり反応生成物の発光の推移からエッチングの完了時点を見積もる終点検出(EPD)と、基板のRF供給系の一部の電位や基板電極の温度のモニタリングに留まっているとしています。反応生成物の発光で終点を取る以上、削る面積そのものが信号の大きさへ乗る、という筋になります。プラズマ診断(終点検出)の波形を比べるとき、開口率の異なるモニタウェーハを混ぜると、レシピ由来の差と面積由来の差が同じ数字へ重なります。日々の管理では、CD-SEM(寸法測定)の実測値をSPC(統計的工程管理)へ載せる前に、この前提を揃える作業が入ります。
つまみは圧力、ガス滞在時間、レイアウト、ウェーハ温度です
Section titled “つまみは圧力、ガス滞在時間、レイアウト、ウェーハ温度です”第一のつまみは圧力です。この節で挙げる装置の数値は、いずれも各社が公表した自社装置の値です。日立評論1991年9月号は、酸化膜エッチング装置M-328EXについて、0.1パスカル台でのエッチングができてマイクロローディング効果がほとんど出ず、径の小さい高アスペクト比の穴を垂直に加工できるとしています。同誌は同じ装置で、BPSG膜のエッチング速度700から1,000ナノメートル毎分、アスペクト比の高い0.5から0.35マイクロメートルのコンタクトホール加工、そして穴底における下地シリコンに対する選択比が、穴径の小さいほうで高くなる傾向を挙げています。穴径が小さくなるとレートは落ちる側へ、下地との選択比は上がる側へ動く、という併記です。
圧力を下げた代わりに手放すものも書かれています。名古屋大学プラズマナノ工学研究センターの林俊雄氏は、プラズマ・核融合学会誌2007年4月号で、MEMS分野のシリコン深堀りでは高いエッチ速度を得るため使用圧力領域が3から100パスカルと高いとし、ガラスのエッチングではイオンの基板への到達効率の良い0.2から2パスカルが用いられるとしています。同氏は、圧力が高いとイオン種が基板へ到達するまでに他の原子種・分子種と衝突してエネルギーを失い、エッチ速度が低下するとしています。低圧側へ振ればイオンの方向性と到達効率を取り、高圧側へ振ればラジカル供給によるレートを取る、という配分になります。
第二はガス滞在時間と排気です。関根氏は、1個のガス分子が排気されるまでのあいだにプラズマの中で何回の電子衝撃を受けるかを解離制御の一指針とし、その回数はガスの滞在時間と電子密度と衝突解離レートの積に相当するとしています。同氏は、ICP(誘導結合プラズマ)は構成上チャンバ体積が大きく、ガスの滞在時間が増えて解離度が上がり、フルオロカーボンガスが高度に解離してフッ素原子が多く生成されることが低選択比の一因になったとし、マグネトロンRIEでは3センチメートル程度の電極間隔と一酸化炭素またはアルゴンの大流量導入で滞在時間を短くし、窒化シリコン膜に対する酸化シリコン膜の高選択比エッチングを実現したとしています。同氏は、CF4単体では酸化シリコンと下地シリコンの選択比が1.3程度と小さい一方、水素を加えると40程度まで上がるとしています。滞在時間を縮める側は解離を抑えて選択比を取り、伸ばす側は活性種の生成量を取る配分になります。
第三はレイアウトです。久保井氏らは、ウェハ内とチップ内の開口率については、ダミーパターンの配置も含めてマスクレイアウトを緻密に設計する必要があるとしています。開口率を揃える手当てはマスク設計側の工程へ移り、ドライエッチング側に残るのは、面積差を抱えたまま許容範囲へ収める条件を探す作業です。
第四はウェーハ温度です。大村氏らは、エッチングレート低下を改善する技術として注目を集めているものにクライオエッチングプロセスを挙げ、30年近く前から検討されてきた技術ながら絶縁膜エッチングに対する報告例が限られるとしています。東京エレクトロンは2023年6月9日のニュースリリースで、400層を超える積層膜へメモリチャネルホールを開ける技術を挙げ、絶縁膜のエッチングではこれまで実用に至っていなかった極低温の領域で速度を大きく引き上げるプロセスを開発したとしています。同社は、高アスペクト比の深さ10マイクロメートルを33分で加工でき、地球温暖化係数を従来比84パーセント削減できるとしています。
同社は2024年10月21日のブログで、現行機のブラインの温度が0度から用途によって高いもので80度という範囲に対し、クライオジェニックエッチングではマイナス数十度に達する極低温のブラインを流せるとし、これにより深さ10マイクロメートル以上の穴を従来比2.5倍の速度でまっすぐ加工できるようになり、40パーセント以上の低消費電力化も実現するとしています。同社は、いまはアスペクト比1対100の工程をいくつも重ねて細かい加工を作っているとし、目指すのは工程を1回にまとめて1対200を削れる環境だとしています。同社は、3回に分けていた加工を2回で済ませられれば、そのぶん製造コストを抑えられるという例も挙げています。RIE-lagを抑える取り組みは、3D NAND(BiCS FLASH)の積層数と工程分割数の設計へ直結します。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”ローディング効果とは何ですか?
同じレシピのまま、ウェーハ上で削る面積やパターンの疎密、穴の深さが異なるだけで、エッチング速度と加工形状に差が出る現象です。原因は供給が枯れる側と穴の中で輸送が詰まる側の2系統になり、後者はアスペクト比依存のレート低下としてRIE-lagとも呼ばれます。
マイクロローディング効果はどう区別しますか?
パターンの疎密や寸法という局所の差で速度と形状に差が出る側を指します。日立評論1989年5月号は、マイクロローディング効果について、パターンが疎か密かでエッチ速度と加工形状に差が出る現象だと脚注で述べています。ウェーハ全体の開口面積で活性種の消費量が動く側は、開口率の側の話になります。
RIE-lagとは何ですか?
アスペクト比が上がるほどエッチングレートが落ちる現象です。キオクシアの大村光広氏らは、プラズマ・核融合学会誌2021年9月号で、高アスペクト領域での落ち込みの原因候補にイオンのシャドウイング、細孔の内部での中性粒子の輸送、側壁と穴底のチャージアップを挙げ、どの要因が支配するかはアスペクト比とプロセス条件で入れ替わるため機構の特定には至っておらず、研究を続ける必要があるとしています。
現場では最初にどんな症状として出ますか?
時間の伸びとマスクの後退です。東芝の大岩徳久氏は、東芝レビュー2004年8月号で、加工パターンのアスペクト比が大きくなるほどエッチング速度は落ちるとし、この速度低下をマイクロローディング効果と呼んだうえで、そのぶんエッチング時間が伸びてマスクが後退していくと述べています。面内では側壁保護膜の厚さのばらつきを介してCDの変換差に出ます。
どのつまみで抑えますか?
圧力とガス滞在時間、ウェーハ温度、そしてマスクレイアウトです。日立評論1991年9月号は、同社の酸化膜エッチング装置について、0.1パスカル台でのエッチングができてマイクロローディング効果がほとんど出ず、径の小さい高アスペクト比の穴を垂直に加工できるとしています。温度側では極低温のクライオエッチングが挙がっています。
圧力を下げると何を手放しますか?
ラジカル供給によるレートです。名古屋大学の林俊雄氏は、プラズマ・核融合学会誌2007年4月号で、MEMS分野のシリコン深堀りでは高いエッチ速度を得るため使用圧力領域が3から100パスカルと高いとし、ガラスのエッチングではイオンの基板への到達効率の良い0.2から2パスカルが用いられるとしています。
開口率はエッチングのレシピで揃えられますか?
手当てはマスク設計側の工程へ移ります。ソニーセミコンダクタソリューションズの久保井信行氏らは、プラズマ・核融合学会誌2021年9月号で、ポリマーの再堆積量を左右するウェハ内とチップ内の開口率については、ダミーパターンの配置も含めてマスクレイアウトを緻密に設計する必要があるとしています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- アスペクト比とは ── 深さと幅の比そのもの、RIE-lagはこの数字に対するレートの落ち方です
- 再付着(リデポジション)とは ── 開口率が動かす先の実体、側壁保護膜の厚さがここで決まります
- 均一性(面内・ウェーハ間・ロット間)とは ── 面内でどれだけ揃うかの指標、面積差はこの指標へ乗ります
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- プラズマ・核融合学会誌「Vol.83 No.4(2007年4月)小特集 材料プロセス用フルオロカーボンプラズマ-現状と展望-」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 辰巳哲也氏による活性種の滞在時間と基板での消費、OESと終点検出の実装範囲、関根誠氏によるガス滞在時間と解離制御、CD変換差と均一性の関係、選択比1.3から40、林俊雄氏による3から100パスカルと0.2から2パスカルの使い分け、根岸伸幸氏と伊澤勝氏による多層レジスト方式の課題
- プラズマ・核融合学会誌「Vol.97 No.9(2021年9月)小特集 先端デバイス構造を実現する超絶ドライエッチング技術の最前線」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 大村光広氏らによるRIE-lagの呼称と原因候補、メモリホールのアスペクト比40超と100超の見通し、レートと生産量とコストの関係、クライオエッチングへの言及、久保井信行氏らによるウェハ・チップ内開口率とダミーパターン設置
- 日立評論「Vol.71 No.5(1989年5月)特集 半導体製造技術 ドライエッチング装置」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── マイクロローディング効果の脚注記述、5インチウェーハ半面レジストとレジスト端面からの距離5・20・40ミリメートルの比較、RIEのガス圧力との関係
- 日立評論「Vol.73 No.9(1991年9月)特集 微細プロセス装置 マイクロ波プラズマエッチング装置」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 0.1パスカル台でのエッチングとマイクロローディング効果、BPSG膜700から1,000ナノメートル毎分、0.5から0.35マイクロメートルのコンタクトホール、穴径と下地選択比の傾向
- 東芝レビュー「Vol.59 No.8(2004年8月)次世代微細加工技術」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── アスペクト比増大によるレート低下とエッチング時間の伸び、マスク後退、S-MAPのレジスト300ナノメートル以下とSOG80ナノメートル、寸法180ナノメートルのホール比較
- 東京エレクトロン「400層を超える3D NAND Flash向けメモリチャネルホールエッチング技術」ニュースリリース(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 極低温領域での絶縁膜エッチング、深さ10マイクロメートルを33分、地球温暖化係数の従来比84パーセント削減
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