サブトラクティブ配線とは
サブトラクティブ配線とは、金属を先に全面へ付けてから、余分なところをエッチングで削り落として線を残す作り方です。 溝を掘って金属を埋めるダマシン法とは、工程の順序が逆になります。
配線の作り方は2通りあります。削って残すか、掘って埋めるかです。そして、どちらを選べるかは金属の性質しだいです。
決めているのは反応生成物の揮発性です。エッチングは、金属をガスと反応させて揮発する化合物に変え、排気で持ち去る操作です。飛ぶ化合物ができる金属だけが、削って形を作れます。
電子情報通信学会の知識ベースは、Al配線のエッチングガスをCl2、側壁保護用の添加ガスをBCl3やCCl4とし、フッ化物であるAlF3は不揮発だと記しています。同じアルミでも、削れるのは塩素のときだけです。ガスの選択は、生成物の蒸気圧で決まります。
方向性はRIEが担います。同じ知識ベースは、平行平板の電極でウェーハ側を負に帯電させる自己バイアスが数百ボルトになり、これがイオンを加速して方向を与えることで異方性のエッチングが成り立つと述べています。削る方式の配線は、エッチングガスが化学を、イオンが方向を受け持つ分業の上に立っています。
なぜ一度この作り方を降りたか
Section titled “なぜ一度この作り方を降りたか”Al系の材料は、LSI開発の当初から配線材料として使われてきました。日本半導体歴史館は、微細化とともに配線抵抗が上がり、RC(配線抵抗と浮遊容量の積)の増加が信号線での遅延、電源線での電力損失としてLSIの性能へ影響し始めたと述べています。
Cuへ移る理由は揃っていました。同館によれば、Cuは比抵抗がAlの3分の2以下で、マイグレーション耐性も高く、許容電流密度でAl配線より一桁近く高いとされます。ところがCuはRIEでの加工が難しい金属です。同館は、それが実用化を妨げていたところへ80年代後半に実用化の進んだCMPが登場し、ダマシン法との組み合わせで一気に量産化が進んだと記しています。
作り方を替えると、ラインの中身も入れ替わります。同館は、成膜がAlスパッタからCuスパッタやCuめっきへ、加工がAlのRIEから酸化膜のRIEへ、平坦化がエッチバックからCMPへ移ったとしています。スパッタへの要求も移りました。削る方式では平坦部への成膜なので面内均一性が主な課題だったのに対し、埋める方式では深い穴や細く深い溝の側壁へ均一に付けることが課題になり、イオン化スパッタなどの技術革新が進んだと述べています。
時期も具体的です。同館は、IBMが1997年暮れのIEDMで0.25µm CMOSでの配線試作の成功を発表し、日本国内ではそれより一世代遅れた0.18µm CMOS世代以降にCuダマシン配線の製品化が進んだとしています。配線ができた時点で表面が平坦になるので積み増しがしやすく、同館は10層以上の多層配線も可能になったとしています。
削る側で、寸法はどこから狂うか
Section titled “削る側で、寸法はどこから狂うか”削る方式の寸法は、エッチングの側壁角度がそのまま左右します。
電子情報通信学会の知識ベースは、ゲート加工を例に、側壁の角度が89°になると物理的なゲート長が7%増えると示しています。この7%はゲート加工の厚さでの値です。ただし幾何そのものは配線でも変わらず、垂直から1度倒れるだけで、線の高さに応じて足元が太ります。裾が太れば隣との間隔が食われ、層内の容量が上がります。アスペクト比を上げるほど、この影響は強くなります。
同じ知識ベースは、側壁に保護膜を堆積しながら削る方法が異方性の実現に有効だとしたうえで、その機構のエッチングでは孔径によってエッチング速度が大きく変動するマイクロローディング効果が起きるので注意が要ると述べています。側壁パッシベーションとローディング効果は、削る方式では同じつまみの表と裏です。
いま、削る方式が戻ってきています
Section titled “いま、削る方式が戻ってきています”imecは公開技術記事で、1997年のCuデュアルダマシン導入がBEOLの転換点になったとし、そこでチップメーカーはサブトラクティブなAlのパターニングから、Cuの電解めっきとCMPという湿式の工程へ移ったとまとめています。そして重要なBEOL層の金属ピッチが20nmを下回ると、デュアルダマシンが息切れするとしています。Cuの平均自由行程に線の寸法が近づいてRC遅延が急に増え、加えてCuにはバリアメタル、ライナー、キャップが要り、これらが線幅の大きな割合を食うためです。
そこで同社が2020年に提示した方式がセミダマシンです。Alのときと同じく、最初の局所配線層を直接パターニングすることから始めます。したがって削れる金属が要り、W、Mo、Ruなどが候補になります。ビアはシングルダマシンで作り、穴を金属で埋めたあと絶縁膜の上まで盛り、そのまま2層目の線としてマスクして削ります。2層目の線は1層目と直交します。
得るものは3つです。金属CMPが消えて工程が簡単になり、線の高さの制御が良くなります。アスペクト比を上げられます。そしてエアギャップを使えるので、狭い溝へ絶縁膜を均一に埋める問題そのものを避けられます。
数値も出ています。以下はimecの実験結果です。18nmピッチのRu線で、アスペクト比3に対して6にすると、面積を変えずに線抵抗が約40%下がりました。2025年のIITCでは、16nmピッチの直接エッチRu線で平均抵抗656Ω/µmを示し、16nmピッチ構造の40%が薄膜抵抗率から予測される抵抗目標を満たしたと発表しています。これは線幅8nmの局所配線に相当します。18〜22nmピッチの範囲では、ウェーハ全面の歩留まりが90%以上でした。パターニングには、EUVベースのSADPを改変したspacer-is-dielectric方式とRuの直接エッチを組み合わせています。
つまみと、動かした代わりに何が悪くなるか
Section titled “つまみと、動かした代わりに何が悪くなるか”削る方式の失敗は、方向が2つあります。
1つは線が切れる側です。imecは、直接金属エッチがRu線の側壁を攻撃して線切れ欠陥を生み、アスペクト比を上げるほど悪化すると述べています。つまみはスタックの構成です。以下は同社の実験結果です。密着性のために1nmのTiNを付け、その上にPVDでRuを付ける構成が、線の高さ全体にわたって最も低い抵抗を与えました。欠陥はRuの粒構造と結晶方位にも左右され、これらは成膜方法に強く依存するため、PVDが有利になります。さらに、2枚のRuの間にサブnmのTiNまたはWを挟む欠陥抑制層を入れると、直接金属エッチでの横方向の攻撃と線切れが起きにくくなりました。ピッチ24nmまでは良好な信頼性を示していますが、18nmピッチへの拡張、エアギャップとの整合、TDDBと機械的信頼性のマージンは今後の課題です。
もう1つは線がつながる側です。imecは、16nmピッチの流れで、Ruエッチの改良によりSiNハードマスクの酸化を抑え、線どうしがつながる欠陥を避けたとしています。削り足りなければ隣とつながり、削りすぎれば側壁を失って切れます。上げ下げの両側に別々の不良が待つ、狭い窓です。
アスペクト比そのものもつまみです。上げれば線抵抗は下がりますが、層内の容量が上がります。第2世代がlow-kの埋め込みからエアギャップへ移るのは、この順序のためです。imecは、エアギャップを使ったセミダマシンの流れが10年を超える寿命を示したとしています。
取引はここにあります。金属CMPという難所を1つ手放すかわりに、金属を直接削るという難所を1つ受け取ります。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”サブトラクティブ配線とは何ですか?
金属を先に全面へ付けてから、余分なところをエッチングで削り落として線を残す作り方です。溝を掘って金属を埋めるダマシン法とは、工程の順序が逆になります。
削れるかどうかは何で決まりますか?
反応生成物が飛ぶかどうかです。電子情報通信学会の知識ベースは、Al配線のエッチングガスをCl2、側壁保護用の添加ガスをBCl3やCCl4とし、フッ化物であるAlF3が不揮発だと記しています。同じ金属でも、ガスを替えれば加工できるかどうかが入れ替わります。
なぜ銅では使えなかったのですか?
日本半導体歴史館は、CuはRIEでの加工が難しく、それが実用化を妨げていたと記しています。そこへCMPが実用化され、ダマシンと組み合わせることで量産化が一気に進みました。
削る方式に戻る動きがあるのはなぜですか?
imecは、重要なBEOL層の金属ピッチが20nmを下回るとCuデュアルダマシンが息切れするとしています。Cuの平均自由行程に寸法が近づいてRC遅延が急増し、加えてバリア・ライナー・キャップが線幅の大きな割合を占めるためです。
削る方式で得られるものは何ですか?
imecは、金属CMPが要らなくなって工程が簡単になり線高さの制御が良くなること、アスペクト比を上げられること、狭い溝へ絶縁膜を埋める問題を避けてエアギャップを使えることを挙げています。
どこまで作れていますか?
imecは2025年のIITCで、16nmピッチの直接エッチRu線について平均抵抗656Ω/µmを示し、16nmピッチ構造の40%が抵抗目標を満たしたと発表しています。これは線幅8nmの局所配線に相当し、18〜22nmピッチではウェーハ全面の歩留まりが90%以上でした。
失敗はどんな形で出ますか?
両側に出ます。削りすぎ側では、直接金属エッチがRu線の側壁を攻撃して線切れ欠陥が生じ、アスペクト比を上げるほど悪化します。削り残る側では、SiNハードマスクの酸化にともなって線どうしがつながる欠陥が出ます。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- ダマシン法とは ── 削るかわりに掘って埋め、高さがCMPで決まる作り方です
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- 日本半導体歴史館「1990年代後半:ダマシン法によるCu配線技術の採用」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── Cuの比抵抗がAlの3分の2以下で許容電流密度が一桁近く高いこと、CuのRIEが難しいこと、CMPとの組み合わせでダマシンが量産化したこと、成膜・加工・平坦化・スパッタ要求の移り変わり、IBMの1997年IEDM発表と国内0.18µm世代以降、10層以上の多層配線の根拠です。
- 電子情報通信学会「知識ベース 10群2編3章 ドライエッチング技術」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── Al配線のエッチングガスCl2と添加ガスBCl3・CCl4、AlF3が不揮発であること、自己バイアスが数百ボルトになること、側壁角度89°でゲート長が7%増えること、側壁保護とマイクロローディング効果の根拠です。
- imec「Semi-damascene metallization: inflection point in back-end-of-line processing?」公開技術記事(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 1997年のCuデュアルダマシン導入でサブトラクティブAlから移行したこと、金属ピッチ20nm以下での限界、削れる金属としてのW・Mo・Ru、金属CMPの省略と線高さ制御、エアギャップ、1nm TiNとPVD Ruのスタック、粒構造と結晶方位の影響、欠陥抑制層とピッチ24nmまでの信頼性の根拠です。
- imec「16nm pitch Ru lines with record-low resistance obtained using a semi-damascene integration approach」公式プレスリリース(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 16nmピッチRu線の平均抵抗656Ω/µm、構造の40%が抵抗目標を満たすこと、線幅8nm相当、18〜22nmピッチでのウェーハ全面歩留まり90%以上、spacer-is-dielectric方式のSADPとSiNハードマスク酸化の抑制の根拠です。
- imec「Line Resistance Halving using Semi-Damascene with High-Aspect-Ratio Processing」公式プレスリリース(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 18nmピッチでアスペクト比3から6にすると面積を変えずに線抵抗が約40%下がること、エアギャップを使ったセミダマシンが10年を超える寿命を示したことの根拠です。