アクティニック検査とは
アクティニック検査とは、露光に使うのと同じ波長の光でマスクを検査することです。 EUV露光であれば波長13.5nmのEUV光で検査し、実際に転写される欠陥だけを検出します。
検査の目的は、転写されて困る欠陥を見つけることです。マスクの見た目のきれいさと、露光したときに写るかどうかのうち、判断の基準になるのは後者です。この基準に忠実にやるなら、露光と同じ条件で検出するのが最も確かです。SEAJの半導体製造装置用語集も、アクティニック検査を露光光と同じ波長で検査することとし、特に波長13.5nmのEUV光を使うEUVパターンマスク検査で使う語だと述べています。
波長を変えれば、検出される欠陥の顔ぶれも入れ替わります。可視光でEUVマスクを検査すると、EUV露光では転写を免れる微小な表面の凹凸を欠陥として拾う一方、EUVでは確実に転写される欠陥を見落とす場合があります。前者はレビューの負担を増やし、後者は不良を素通りさせます。
EUVで特に問題になるのが位相欠陥です。EUVマスクは多層膜で光を反射させる構造を持ちます。この多層膜の内部に乱れがあると、表面は平らなまま、反射する光の位相がずれます。位相がずれた光は干渉の仕方を変えるため、転写されるパターンが崩れます。表面の凹凸を測る検査は、この欠陥を素通りします。
欠陥は2種類に呼び分けられています。レーザーテックの用語解説は、位相欠陥を多層膜の周期を乱して反射光の位相へ影響する欠陥とし、露光時の転写パターンに寸法変化を生じさせる要因だと述べています。いっぽうで異物のように反射を阻害し、反射光の強度へ影響する欠陥を振幅欠陥と呼んでいます。強度が落ちる欠陥は明るさの差として立ちます。位相だけがずれる欠陥では、その明るさの差がごくわずかです。この差が、検査の光学系を分ける理由になります。
どれだけ小さい段差が寸法を動かすか
Section titled “どれだけ小さい段差が寸法を動かすか”数字が入ると話の重さが変わります。SEAJの半導体製造装置用語集は多層膜(ML)を、EUV光が通常の物質で反射しにくいために異なる物質を交互に積んで反射材とした膜とし、モリブデンとシリコンの40対以上が一般に使われると述べています。JEITAの半導体技術ロードマップ専門委員会は平成21年度報告のリソグラフィの章で、この多層膜を周期約7nm・40周期以上とし、Mo/Si多層膜の反射率が理論値でも70%強にとどまることを記しています。
同じ章は、EUVマスク固有の位相欠陥が多層膜の平坦性が崩れた段差で生じ、1.5から2nmの段差が干渉によって暗部を作ると述べています。この段差はおもに超低膨張ガラス基板の表面が持つ起伏から来るとし、幅25nm・高さ3nmの段差がハーフピッチ22nmのパターンで10%の寸法誤差を招くとしています。周期7nmの膜に対して1.5nmという段差は、1層の厚みの数分の1にあたります(周期からの計算です)。基板の研磨で残った起伏がそのまま転写結果へ届く経路が、ここにあります。
同じ章はまた、EUV波長を使うアクティニック欠陥検査装置の開発が進んでいること、DUV光や電子線を使うパターン欠陥検査がハーフピッチ22nmまで目処の立った段階にとどまることを記し、開発課題の1位が光源から無欠陥マスクへ移ったとしています。修正側にも代償があり、黒欠陥を除去する際にFIBを使う従来の手法ではGaが基板へ打ち込まれて多層膜が劣化し、反射率が下がると述べています。
レーザーテックは公式ページで、アクティニックEUVパターン付きマスク検査システムとしてACTIS A300シリーズ、ACTIS A150、ACTIS A200HiTシリーズを掲載しています。パターンを描く前の段階についても、EUVマスクブランクスの検査およびレビューシステムとしてABICSシリーズを掲載しています。
系譜には順番があります。ABICS E120は2017年4月3日発表で、λ=13.5nmのEUV光源と、Mo/Si多層膜の内部にある転写性の位相欠陥の高感度検出、暗視野光学系を掲げ、2017年十大新製品賞「日本力賞」と半導体・オブ・ザ・イヤー2018の半導体製造装置部門グランプリを受けています。ACTIS A150は2019年9月12日発表の世界初のEUVパターンマスク欠陥検査装置で、波長13.5nmのEUV光源により従来のDUV光源に比べ欠陥検出感度を大幅に上げたこと、ウェハ露光機と同じ波長の光源で検査して、露光で転写される欠陥を高い感度で拾うこと、ペリクル付きEUVマスクの検査へ対応することを掲げています。
ACTIS A300シリーズは2023年11月24日発表で、High NA世代のEUVマスクと現行開口数のEUVマスクの双方の欠陥検査へ対応し、「URASHIMA」光源と高効率の光学設計によって高い生産性を実現したとしています。ABICS E320は2024年12月2日発表で、λ=13.5nmのEUV光源、40倍の暗視野光学系による高感度かつ高速な検査、1500倍のレビューで欠陥座標を高い精度で測ること、明視野と暗視野のレビューによる欠陥の分類と疑似欠陥の切り分けを掲げています。ACTIS A200HiTシリーズは2025年10月31日発表で、ACTIS A150の3倍の検査速度と、ウェハファブでEUVマスクの運用中に生じる転写性欠陥の検出を掲げています。
ブランクスの段階で位相欠陥を見つけられれば、描画の費用をかける前にそのブランクスを弾けます。パターンを描いたあとで見つかれば、そのマスク1枚が無駄になります。段階を分けて検査する理由がここにあります。レーザーテックの用語解説は、この前段の検査をABI(Actinic Blank Inspection)と呼び、EUV露光装置と同じ波長のEUV光(13.5nm)を使うマスクブランクス検査、またはその装置としています。
現場のつまみと、その両側
Section titled “現場のつまみと、その両側”検査波長が第一のつまみです。13.5nmへそろえれば転写される欠陥だけを拾えますが、EUV光源とすべて反射式の光学系が要るため、装置の構成が大がかりになります。193nmや電子線を選べば構成は軽くなり、レーザーテックのMATRICS X9ULTRAのようにハイパワー193nmレーザーで微小異物へ届く形も取れます。代償は上のとおりで、位相だけがずれる欠陥の明るさの差がごくわずかなぶん、取りこぼしが増えます。
暗視野の倍率とレビュー倍率が第二のつまみです。ABICS E320の40倍の暗視野光学系は広い視野で速く走る側、1500倍のレビューは欠陥座標を細かく詰める側に立ちます。検査倍率を上げれば感度は上がりますが、1枚の走査時間が伸びます。レビュー倍率を上げれば座標の精度が上がり、欠陥ミチゲーション(吸収体パターンの配置で欠陥を隠す手当て)へ渡せる情報が増える代わりに、1点あたりの時間が増えます。
検査する段階が第三のつまみです。ブランクスで弾けば描画費用を守れますが、描画とその後の工程で生じる欠陥は素通りします。パターン付きで検査すれば最終形に近い状態を測れる代わりに、そこで落とすとマスク1枚分の費用が飛びます。ACTIS A200HiTがウェハファブでの運用中の転写性欠陥を対象にしているのは、この段階のさらに後ろに検査の場が残っているからです。
スループットと感度が第四のつまみです。ACTIS A150に対するA200HiTの3倍という値は、同じ時間で3倍の枚数を回せる意味を持ちます。定期的な品質点検の頻度を上げれば運用中に育つ欠陥を早く見つけられますが、その分だけマスクが露光機を離れる時間が増え、ラインの流れが細ります。
関連するデータ・ツール
Section titled “関連するデータ・ツール”- マスク・レチクル欠陥検査の工程ページ ── 工程分類と、この工程に接続している公開求人
- ペリクル製造・検査の工程ページ ── マスクを守る側の工程
- 装置カタログDB ── 公式製品ページ単位のメーカーと製品family
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”アクティニック検査とは何ですか?
露光に使うのと同じ波長の光でマスクを検査することです。EUV露光であれば波長13.5nmのEUV光で検査します。SEAJの半導体製造装置用語集も、露光光と同じ波長で検査することとし、特にEUV光(波長13.5nm)を使うEUVパターンマスク検査で使う語だと述べています。
なぜ同じ波長で検査するのですか?
波長が変われば、検出される欠陥の顔ぶれも入れ替わるためです。可視光で検査すると、EUV露光では転写を免れる欠陥を拾ったり、逆にEUVでは転写される欠陥を見落としたりします。転写されるかどうかが判断の基準になる以上、露光と同じ条件が要ります。
位相欠陥とは何ですか?
EUVマスクの多層膜の内部にある乱れが、反射する光の位相をずらす欠陥です。レーザーテックの用語解説は、位相欠陥を多層膜の周期を乱して反射光の位相へ影響する欠陥とし、異物のように反射を阻害して反射光の強度へ影響する欠陥を振幅欠陥と呼び分けています。表面は平らなままなので、表面の凹凸を測る検査はこの乱れを素通りします。
位相欠陥はどれだけ小さくても寸法を動かしますか?
JEITAの半導体技術ロードマップ専門委員会は平成21年度報告のリソグラフィの章で、多層膜の平坦さが崩れた段差のうち1.5から2nmのものが干渉によって暗部を作ると述べ、幅25nm・高さ3nmの段差がハーフピッチ22nmのパターンで10%の寸法誤差を招くとしています。
なぜEUVで特に重要なのですか?
EUVマスクが反射で使われるためです。透過で使うDUVマスクでは、遮光膜のパターンそのものを見れば足ります。EUVマスクは多層膜で反射させる構造のため、膜の内部の状態が転写結果を左右します。
アクティニック検査の装置はありますか?
あります。レーザーテックは公式ページで、アクティニックEUVパターン付きマスク検査システムとしてACTIS A300シリーズ、A150、A200HiTシリーズを掲載しています。またEUVマスクブランクスの検査およびレビューシステムとしてABICSシリーズを掲載しています。
ブランクスの段階でも検査しますか?
します。パターンを描く前の多層膜の状態で位相欠陥を見つけられれば、描画の費用をかける前に弾けます。レーザーテックのABICSシリーズがこの用途にあたり、同社の用語解説は、EUV露光装置と同じ波長のEUV光(13.5nm)を使うブランクス検査をABI(Actinic Blank Inspection)と呼んでいます。
検査速度はどれだけ違いますか?
レーザーテックはACTIS A200HiTシリーズの公式製品ページで、2025年10月31日発表の同機がACTIS A150の3倍の検査速度を達成し、ウェハファブでEUVマスクの運用中に生じる転写性欠陥を検出すると掲げています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- レチクルとフォトマスクの材料 ── マスクの材料と構造
- レーザーテック ACTIS A200HiT ── EUVマスク検査装置の深掘り
この記事の事実は次の一次資料を根拠とし、各URLの到達可否をこちらで実測しています。リンク先が移動または消滅した場合は、その旨をこのページへ反映します。
- レーザーテック「半導体関連製品」公式ページ(2026年8月22日にリンク生存を実測、200)── ACTIS A300/A150/A200HiTとABICSの掲載
- レーザーテック「ACTIS A150」公式製品ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 2019年9月12日発表、世界初、波長13.5nmでDUV光源比の感度向上、露光機と同じ波長、ペリクル付き対応
- レーザーテック「ACTIS A200HiT」公式製品ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 2025年10月31日発表、A150の3倍の検査速度、運用中の転写性欠陥
- レーザーテック「ACTIS A300」公式製品ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 2023年11月24日発表、High NAと現行NAの双方、URASHIMA光源
- レーザーテック「ABICS E320」公式製品ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 2024年12月2日発表、λ=13.5nm、40倍暗視野、1500倍レビュー、明視野と暗視野による分類と疑似欠陥の切り分け
- レーザーテック「ABICS E120」公式製品ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 2017年4月3日発表、λ=13.5nm、Mo/Si多層膜内部の転写性位相欠陥、暗視野光学系、受賞歴
- レーザーテック 用語解説「位相欠陥」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 多層膜の周期を乱して位相へ影響する欠陥と、強度へ影響する振幅欠陥の呼び分け
- レーザーテック 用語解説「ABI」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── EUV露光装置と同じ波長のEUV光を使うブランクス検査
- SEAJ「半導体製造装置用語集(リソグラフィ)」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── アクティニック検査を露光光と同じ波長での検査とすること、多層膜のMo/Si 40対以上
- JEITA 半導体技術ロードマップ専門委員会「平成21年度報告 第6章 WG5 リソグラフィ」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 多層膜の周期約7nmと40周期以上、反射率70%強、位相欠陥1.5〜2nmの段差、幅25nm高さ3nmでhp22nmの10%寸法誤差、アクティニック検査装置の開発、DUVと電子線の目処hp22nm、無欠陥マスクが課題の1位、FIB修正のGa打ち込みによる反射率低下