マスク検査とは
マスク検査とは、露光に使うフォトマスクやレチクルに欠陥の有無を調べる工程です。 マスクの欠陥は使うたびに同じ位置へ写るため、使い始める前に確かめます。
マスク検査の価値は、影響の広がり方から来ます。ウェーハ上に欠陥が1つあれば、そのチップが1個不良になります。マスクに欠陥が1つあれば、そのマスクで露光したすべてのウェーハの、すべてのチップの同じ位置へ写ります。1枚の欠陥が製造ライン全体へ広がります。
したがって、使い始める前に確かめることに大きな意味があります。ウェーハ検査が作ったものの状態を調べるのに対し、マスク検査はこれから何度も使う道具の状態を調べます。しかもマスク側の誤差はウェーハ上で拡大されます。SEAJの半導体製造装置用語集はMEEF(Mask Error Enhancement Factor)を、マスク上の誤差がウェーハ上で何倍になるかを示す比率としています。
検査は2つの段階で行われます。パターンを描く前の素材の状態で行うブランクス検査と、パターンを描いたあとに行うパターン検査です。レーザーテックは公式ページで、EUVマスクブランクスの検査およびレビューシステムとしてABICSシリーズを、EUVパターン付きマスクの検査システムとしてACTISシリーズを掲載しています。MAGICSシリーズ M9650/M9651の公式製品ページは、2018年11月27日発表の同機が設計ルール5nm以降の最先端マスク用ブランクスを対象とし、サブストレートに加えてブランクス各層の欠陥検出感度を上げたこと、M9651がライン&スペースで作ったモニターパターンの検査へ対応することを掲げています。
EUVとDUVの分化
Section titled “EUVとDUVの分化”使う光の波長とマスクの構造が異なるため、装置も別のラインになります。レーザーテックは公式ページで、EUV向けのACTISシリーズおよびABICSシリーズと、DUV向けのMATRICSおよびMAGICSシリーズを別のラインとして掲載しています。
EUVマスクは光を反射させて使う構造を持ちます。多層膜で反射させるため、表面の形だけでなく、多層膜の内部にある乱れも欠陥として働きます。表面の形の観察をすり抜ける欠陥まで検出する点が、透過で使うDUVマスクとの違いになります。
膜の中身も数字で追えます。SEAJの半導体製造装置用語集は多層膜(ML)を、EUV光が通常の物質で反射しにくいために異なる物質を交互に積んで反射材とした膜とし、モリブデンとシリコンの40対以上が一般に使われると述べています。JEITAの半導体技術ロードマップ専門委員会は平成21年度報告のリソグラフィの章で、EUVマスクの膜構成をMo約3nm・Si約4nm・周期約7nm・40層超の多層膜、Si約11nmのCapping、Ru約1〜3nmのBuffer、TaやTaBNなど50〜70nmの遮光膜として示し、Mo/Si多層膜の反射率が理論値でも70%強にとどまることを述べています。同じ章は、光源から照明系とマスクと投影光学系の反射面を経てウェハへ届くEUV光が1%に届かず、ほぼ全てが熱負荷になるとし、基板にTiドープ石英ガラスなど低熱膨張材料(LTEM)を使うとしています。
同じ章は、EUVマスクの位相欠陥が多層膜の平坦性の崩れた段差で生じ、1.5から2nmの段差が干渉によって暗部を作ると述べています。この段差はおもに超低膨張ガラス基板の表面が持つ起伏から来るとし、幅25nm・高さ3nmの段差がハーフピッチ22nmのパターンで10%の寸法誤差を招くとしています。DUV光や電子線を使うパターン欠陥検査はハーフピッチ22nmまで目処が立った段階だと同じ章は記しており、より細かい世代へはアクティニック検査が要ります。
マスクは使うほど汚れます
Section titled “マスクは使うほど汚れます”出荷検査で無欠陥だったマスクも、使うあいだに欠陥を得ます。レーザーテックの用語解説は成長性異物(ヘイズ)を、ArFレーザーの高い照射光エネルギーがマスク表面のまわりにあるガス状の物質へ化学反応を起こし、マスク上で固体の異物へ育つものと述べています。SEAJの用語集も同じ機構をヘイズとして掲げています。つまりマスク上のパーティクルは、露光ショット数とともに増えていきます。
そこで比較の相手をマスク自身の過去へ取る方式が入ります。レーザーテックはMATRICS X8ULTRAの公式製品ページで、使い始めの時点でマスクパターンの全画像を残し、ウェハ露光後のパターンと比べてマスク上の異物を見つけるMtM機能(マスクtoマスク比較検査)を掲げています。同機はテクノロジーノード7nm/5nm/3nmのペリクル非装着EUVマスクとフォトマスクを対象とし、ピクセルサイズは45nm、光源は213nmのハイパワーQCWレーザー(400mW超)、そこへ2種類の偏光照明を足して異物検出性能を上げたとしています。
EUVマスクでは付着そのものが重い問題になります。JEITAのリソグラフィの章は、EUVマスクが従来の考え方のペリクルを欠くためマスク表面への欠陥の付着が問題になり、真空中では照射領域へハイドロカーボンなどの不純物が堆積して反射率が下がると述べ、開発課題の1位が光源から無欠陥マスクへ移ったことを記しています。レーザーテックのBASICシリーズはEUVマスク裏面について、異物の検出と高さの測定とクリーニングを1台へ収め、対象を6インチのEUVマスク、装置本体サイズを1,550(W)×2,955(D)×2,400(H)mmとしています。MZ100は、フォトマスク中央146×146mm2以外のすべての領域を検査領域とし、エッジ部のサイド面とベベルを対象にしています。
現場のつまみと、その両側
Section titled “現場のつまみと、その両側”光源の波長と出力が第一のつまみです。レーザーテックはMATRICS X810EXの公式製品ページで、213nm QCWレーザーの出力を従来比2倍(400mW超)へ上げてさらに高感度化したと掲げ、MATRICS X9ULTRAではハイパワー193nmレーザーと高開口数対物レンズで微小異物検出性能を上げたとしています。出力を上げれば同じ寸法の異物からの信号が増えますが、上のヘイズの機構がそのまま働きます。露光波長のエネルギーは異物を育てる側でもあるためです。
ピクセルサイズが第二のつまみです。X8ULTRAのピクセルサイズ45nmは、マスク倍率4倍のもとでウェーハ上の約11nmに当たります(倍率からの計算です)。画素を細かくすれば小さな異物へ届きますが、同じ面積のデータ量が増えます。同じX810EXの公式製品ページは、スキャン時間を100mm×100mmエリアあたり38分、対応マスクをCr・MoSi・OMOG、マスクサイズを6インチとしています。
検査領域が第三のつまみです。MZ100の中央146×146mm2という区切りが示すように、パターン面の中央部と、その外側のエッジ部やベベル、裏面は別の装置が受けます。領域を広げれば発塵源を先に見つけられますが、1枚あたりの占有時間が増えます。領域を絞れば台数は減る代わりに、パターン面の外から来る異物の見落としが増えます。
比較方式が第四のつまみです。X810EXの公式製品ページはマルチダイモードとシングルダイモードを掲げています。同一マスク内で同じパターンが並ぶ場合はダイ同士の比較で足りますが、1枚に1つだけのパターンでは設計データとの比較が要り、OPC後の補正パターンまで含んだデータ整備の負担が乗ります。レーザーテックの用語解説はこの3方式をダイ比較検査(Die to Die)、セル比較検査(Cell shift)、データ比較検査(Die to Database)として掲げています。
寸法と位相も測ります
Section titled “寸法と位相も測ります”測る対象は欠陥の有無にとどまらず、寸法と位相まで及びます。JEITAのリソグラフィの章に載るフォトマスクへの要求表は、マスク倍率4倍のもとで、マスク上の像位置精度(多点)を2009年の6.2nmから2022年の1.4nmへ、マスク上の解像限界以下の補助パターン寸法を93nmから20nmへ、CDの目標値からのずれを4.1nmから0.9nmへ縮める形で示しています。X810EXがマスク検査と同時にパターン寸法分布(CD uniformity)を測る機能を掲げているのは、この要求の側から来ています。
位相も測る対象です。レーザーテックはMPM193シリーズの公式製品ページで、ステッパの露光波長と同じArF 193nmで位相シフト量を直接測ると掲げ、測定再現性をレーザー光源のMPM193EXで位相差0.2°(3σ)・透過率0.04%(3σ)、ランプ光源のMPM193IIで位相差0.5°(3σ)・透過率0.2%(3σ)としています。露光と同じ波長で測る発想は、EUV側のアクティニック検査と同じ筋です。
この用語に対応する装置と製造メーカー
Section titled “この用語に対応する装置と製造メーカー”装置カタログDBから、この用語に一致する製品familyを持つメーカー 2社/3family を引いています。 各行は各社の公式製品ページを出典とします。 DBからの生成日: 2026-08-22
- レーザーテック
- ACTIS / ABICS EUV mask inspection familyInspection / Metrology
- MATRICS / MAGICS DUV mask inspection familyInspection / Metrology
- NuFlare Technology
- NPI mask inspection systemsInspection / Metrology
出典は各社の公式製品ページです。 装置カタログDB では、同じ製品familyを工程・メーカー横断で検索できます。
関連するデータ・ツール
Section titled “関連するデータ・ツール”- マスク・レチクル欠陥検査の工程ページ ── 工程分類と、この工程に接続している公開求人
- フォトマスク・レチクル(全体)の工程ページ ── マスク工程の全体
- 装置カタログDB ── 公式製品ページ単位のメーカーと製品family
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”マスク検査とは何ですか?
露光に使うフォトマスクやレチクルに欠陥の有無を調べる工程です。マスクは同じパターンを何枚ものウェーハへ繰り返し転写するため、1枚の欠陥がそのまま全数へ写ります。
なぜウェーハ検査と別に行うのですか?
影響の広がり方が異なるためです。ウェーハ上の欠陥はそのチップだけの問題ですが、マスクの欠陥は使うたびに同じ位置へ写り続けます。使い始める前に確かめる価値が非常に高くなります。
ブランクス検査とは何ですか?
パターンを描く前の素材の状態で行う検査です。レーザーテックは公式ページで、EUVマスクブランクスの検査およびレビューシステムとしてABICSシリーズを掲載しています。素材の段階で欠陥があれば、描画する前に弾けます。
EUVとDUVで装置は違いますか?
別のラインになります。レーザーテックは公式ページで、EUV向けのACTISシリーズ、DUV向けのMATRICSおよびMAGICSシリーズを別のラインとして掲載しています。使う光の波長とマスクの構造が異なるためです。
EUVマスク特有の難しさは何ですか?
反射で使うことです。EUVマスクは多層膜で光を反射させる構造のため、表面の形だけでなく多層膜の内部の乱れも欠陥になります。表面の形の観察をすり抜ける欠陥まで検出する必要があります。SEAJの用語集は、EUVマスクの多層膜にモリブデンとシリコンの40対以上の積層が一般に使われると述べています。
マスクは使っているうちに汚れますか?
汚れます。レーザーテックの用語解説は、ArFレーザーの高い照射光エネルギーがマスク表面のまわりのガス状の物質へ化学反応を起こし、固体の成長性異物としてヘイズが育つと述べています。レーザーテックはMATRICS X8ULTRAで、使い始めの時点のマスクパターンの全画像を残し、ウェハ露光後のパターンと比べて異物を見つけるMtM機能を掲げています。
マスクのどこを検査しますか?
パターン面のほかにエッジ部と裏面も対象です。レーザーテックはMZ100の公式製品ページで、フォトマスク中央146×146mm<sup>2</sup>以外のすべての領域を検査できると掲げ、BASICシリーズではEUVマスク裏面について、異物の検出と高さの測定とクリーニングを1台へ収めています。
マスク検査装置のメーカーはどこですか?
レーザーテックが代表的なメーカーです。当サイトの装置カタログDBでは、検査に一致する製品familyを公式製品ページ単位で引けます。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- レチクルとフォトマスクの材料 ── マスクの材料と構造
- レーザーテック ACTIS A200HiT ── EUVマスク検査装置の深掘り
この記事の事実は次の一次資料を根拠とし、各URLの到達可否をこちらで実測しています。リンク先が移動または消滅した場合は、その旨をこのページへ反映します。
- レーザーテック「半導体関連製品」公式ページ(2026年8月22日にリンク生存を実測、200)── ABICS・ACTIS・MATRICS・MAGICSの掲載
- レーザーテック「MATRICS X8ULTRA」公式製品ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── ピクセルサイズ45nm、213nm QCWレーザー400mW超、2種類の偏光照明、MtM機能、7nm/5nm/3nm
- レーザーテック「MATRICS X810EX」公式製品ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 213nm QCWレーザーの出力2倍化、スキャン時間38分/100mm×100mm、CD uniformityの同時計測、Cr・MoSi・OMOG、6インチ、マルチダイ/シングルダイモード
- レーザーテック「MATRICS X9ULTRA」公式製品ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── ペリクル非装着EUVマスクの3nm以降、193nmレーザーと高NA対物レンズ
- レーザーテック「MAGICS M9650/M9651」公式製品ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 2018年11月27日発表、設計ルール5nm以降、ブランクス各層、モニターパターン検査
- レーザーテック「BASICシリーズ」公式製品ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── EUVマスク裏面の異物検出と高さ測定とクリーニング、6インチ、1,550×2,955×2,400mm
- レーザーテック「MZ100」公式製品ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 中央146×146mm2以外の全領域、エッジ部のサイド面とベベル
- レーザーテック「MPM193シリーズ」公式製品ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── ArF 193nmで位相シフト量を直接測定、位相差0.2°/0.5°(3σ)、透過率0.04%/0.2%(3σ)
- レーザーテック 用語解説「成長性異物(ヘイズ)」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── ArFの照射光エネルギーによる化学反応と固体状の成長性異物
- SEAJ「半導体製造装置用語集(リソグラフィ)」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 多層膜のMo/Si 40対以上、MEEFがウェーハ上での拡大比率にあたること、ヘイズ
- JEITA 半導体技術ロードマップ専門委員会「平成21年度報告 第6章 WG5 リソグラフィ」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── EUVマスクの膜構成(Mo約3nm、Si約4nm、周期約7nm、40層超、Capping約11nm、Buffer 1〜3nm、遮光膜50〜70nm)、反射率70%強、ウェハ到達1%未満、LTEM、位相欠陥1.5〜2nm、幅25nm高さ3nmでhp22nmの10%寸法誤差、DUVと電子線の目処hp22nm、ペリクルを欠く構造、無欠陥マスクが課題の1位、要求表(倍率4倍、像位置精度6.2nm→1.4nm、補助パターン93nm→20nm、CD 4.1nm→0.9nm)
- 装置と製造メーカーの行は
intel.equipment_vendor_families(公式製品ページ由来)から生成