コンタクトエッチストップ層とは
コンタクトエッチストップ層とは、トランジスタの上へ先に薄く敷いておき、層間絶縁膜を掘るエッチングをその面で受けて、削りの速さをそこで落とすシリコン窒化膜です。 掘る深さの高低差を、エッチング時間の代わりに材料の速度差で吸収します。
なぜ時間で打ち切る方法から離れたのでしょうか。掘る深さは同じウェーハの中でも上下するため、レシピの時間を1つへ揃えた瞬間、ある穴は掘りすぎ、別の穴は底へ酸化膜を残した状態へ倒れます。プロセス担当が回すつまみは、膜厚と選択比とオーバーエッチの3つです。
コンタクトを掘る深さは、ウェーハの上で場所ごとに異なります。
電子情報通信学会の知識ベース(10群2編1章、2010年10月版)は、サリサイドの形成後に酸化膜と窒化膜をCVD法で成膜し、その後BPSG膜を成膜して層間絶縁膜を作るとし、コンタクトホール形成の前のBPSG膜平坦化のためのCMPを済ませた段階でも、ポリシリコン部分とソース/ドレイン領域部分でBPSG膜の膜厚に高低差が存在するとしています。同章は、そこで先に成膜した窒化膜をポリッシングストッパーとして用い、その後に窒化膜および酸化膜をエッチングしてコンタクトホールを作ると書いています。
高低差はもう1つの経路からも入ります。同じ知識ベースの別の章(10群2編3章、2010年4月版)は、Si酸化膜のエッチングのように側壁保護膜で異方性を作る機構のエッチングでは、孔径すなわちアスペクト比によってエッチング速度が大きく上下するマイクロローディング効果が発生するため注意が要るとしています。同じレシピでも、太い穴と細い穴では底へ届く時間が違います。
時間で打ち切るエッチングは、この2つの差をそのまま受けます。層間絶縁膜が薄い側では削りが接合へ届き、厚い側では穴の底へ酸化膜が残った状態になります。コンタクトエッチストップ層は、この差を材料の速度差へ移すために敷きます。
削りすぎの行き先は、接合リークです
Section titled “削りすぎの行き先は、接合リークです”削る余地はもともと薄いままです。JEITAが公開する国際半導体技術ロードマップ 1999年版の日本語訳(半導体技術ロードマップ専門委員会訳)は、シリコン消費によるコンタクト抵抗率の上昇を避けるために、シリサイド膜厚をコンタクトの接合深さの1/2以下にするとしています。シリサイドの下に控える余白は、接合深さの残り半分だけです。
同資料はDRAMの積層キャパシタについて、高集積密度を達成するために期待されるコンタクトのサイズが0.1 μmでアスペクト比は10以上になるとし、自己整合の高アスペクト比コンタクトエッチングプロセスとエッチング後の十分なクリーニング手法の開発が課題になると述べ、エッチストップと接合へのダメージを抑制してCDと選択性を保つことが技術的挑戦になるだろうとしています。いずれも1999年時点の見通しです。
同資料は、そのための工程の組み方も挙げています。メインエッチステップでバルク材料の大部分を除去し、その後のオーバーエッチステップで完了させるマルチステップのエッチングプロセスの開発が要るとし、事前に終点が定まるようにインターフェロメトリや同様の検知手法を用いて、メインエッチが終了する前に被エッチング材料の残り量を測定することが強く望まれると述べています。同資料は、このエッチングを完成させるために高選択比でダメージを抑えたプロセスが要るとしています。
段差被覆性が、そのまま着地の均一さになります
Section titled “段差被覆性が、そのまま着地の均一さになります”ストップ層は、段差の底と側面の両方で同じ働きを要求されます。株式会社日立国際電気の須田敦彦氏らが日立評論 2007年4月号に載せた解説は、ALD法を、低サーマルバジェットと良好なステップカバレッジという特徴から65〜45 nmノード以降のデバイスプロセスに対応できる成膜技術だとしています。同解説は、ALD法の適用が見込まれる部位として、高ステップカバレッジのライナー膜およびコンタクトエッチストッパ膜(ALD-SiN)と、低温形成のサイドウォールスペーサ膜(ALD-SiN、SiO)を挙げています。この図はSEAJ半導体製造装置ロードマップを基に同社が作成したものだと注記されています。
数字も同解説にあります。膜厚100 nmのSiN膜について、高密度パターン部では底部100%・側部97.8%、低密度パターン部では底部98.9%・側部97.8%というステップカバレッジの観察例を挙げています。装置性能としては、300 mmウェーハで膜厚均一性がウェーハ面内±2.0%、ステップカバレッジ97%超、1バッチ100枚、0.13 μmを超えるパーティクルが1ウェーハあたり50個未満、スループットが膜厚25 nmで32枚/時としています。同社製品での値です。
同解説は、600 ℃以下の低温域での窒化シリコン膜形成にはウェーハの極近傍での窒素活性種の生成が要るとし、水素脱離量で計測した水素含有量について、ウェーハ表面の化学反応を利用するALD法では減圧CVDで得られた膜よりも低水素の膜がより低温域で得られるとしています。
容量と埋め込みが、厚みの上限を作ります
Section titled “容量と埋め込みが、厚みの上限を作ります”JEITAの半導体技術ロードマップ専門委員会が公開するITRS 2013年版の日本語訳は、配線の拡散防止絶縁膜についての記述の中で、SiNのκ値が6を超えるとしています。同章は別の箇所で、接着層やエッチストップ層、ハードマスク層、誘電体バリアといった膜があるために、全配線容量の削減へのLow-κ材料の寄与が薄れてきたとも述べています。配線側の記述です。ストップ層を敷く側も、同じ勘定の上に乗ります。
厚みのもう一方の行き先は、ゲート間の隙間です。ストップ層はゲートの側面にも底部と近い厚さで付くため、厚くした分だけ左右から隙間が詰まり、コンタクトを埋め込める幅が減ります。段差被覆性が高い膜ほど、側面に付く厚さは底部に付く厚さへ近づきます。
同じ膜が応力の役も引き受ける場合があります。東京エレクトロンのNT333シリーズの製品ページは、同装置がALDサイクル内へ改質ステップを組み込むことで、低温域での膜質の高品質化と、アプリケーションごとに最適な膜ストレス調整を可能にしたとし、段差のある複雑な形状への高いカバレッジ性と膜自体のエッチング耐性を挙げています。同社製品についての記述です。膜厚、応力、酸化膜に対する選択比の3つが、1枚の膜へ同時に注文されます。応力の側は応力ライナーの記事で述べています。
窒化膜を開ける工程が、最後の関門です
Section titled “窒化膜を開ける工程が、最後の関門です”ストップ層で速さを落としたあとは、その窒化膜を開けてコンタクトプラグをシリサイドへ届かせます。ここでは選択比の向きが逆になり、窒化膜を削って酸化膜と下地を守る側へ回ります。膜が薄いぶん、この工程のイオンエネルギーとオーバーエッチ時間は接合へ直結します。
東京エレクトロンのCertasシリーズの製品ページは、Certas LEAGAを、洗浄液を使わずに表面エッチングとクリーニングを行うガスケミカルエッチング装置だとし、プラズマレスの加工による高い稼働率と低コストを挙げています。同ページは、完全にドライ化されたプロセスユニットの特長としてウォーターマークレス、各種酸化膜エッチングでのユニークな選択比、微細な界面クリーン制御を挙げ、アプリケーションとしてシリコンコンタクト前の表面クリーニング、シリコン酸化膜除去およびエッチバック、ハイアスペクト3次元構造の選択エッチング、高精細なリセスを挙げています。同社製品についての記述です。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”コンタクトエッチストップ層とは何ですか?
トランジスタの上へ先に薄く敷いておき、層間絶縁膜を掘るエッチングをその面で受けて、削りの速さをそこで落とすシリコン窒化膜です。日立国際電気は日立評論で、ALD-SiNの適用部位としてライナー膜とコンタクトエッチストッパ膜を挙げ、高ステップカバレッジを特徴に挙げています。
なぜ時間で打ち切る方法から離れたのですか?
掘る深さが場所ごとに異なるためです。電子情報通信学会の知識ベースは、コンタクトホール形成の前のBPSG膜平坦化のためのCMPを済ませた段階でも、ポリシリコン部分とソース/ドレイン領域部分でBPSG膜の膜厚に高低差が存在するとしています。時間で打ち切ると、層間絶縁膜が薄い側では削りが接合へ届き、厚い側では穴の底へ酸化膜が残った状態になります。
削りすぎると何が起きますか?
シリサイドを突き抜けて接合へダメージが入ります。JEITAが公開するITRS 1999年版の日本語訳は、シリコン消費によるコンタクト抵抗率の上昇を避けるため、シリサイド膜厚をコンタクトの接合深さの1/2以下にするとしています。1999年時点の見通しです。削る余地はもともと薄いままです。
どのくらい均一に付ける必要がありますか?
日立国際電気は日立評論で、膜厚100 nmのSiN膜について、高密度パターン部で底部100%・側部97.8%、低密度パターン部で底部98.9%・側部97.8%というステップカバレッジの観察例を挙げています。同社は装置性能として、ウェーハ面内の膜厚均一性±2.0%、ステップカバレッジ97%超を挙げています。同社製品での値です。
現場ではどのつまみを回しますか?
膜厚、酸化膜に対する選択比、そしてメインエッチとオーバーエッチの切り分けです。ITRS 1999年版の日本語訳は、メインエッチステップでバルク材料の大部分を除去し、その後のオーバーエッチステップで完了させるマルチステップを挙げ、インターフェロメトリなどでメインエッチ終了前に残り量を測定することが強く望まれるとしています。
厚くすると何を差し出しますか?
ゲート間の隙間と、寄生容量です。ITRS 2013年版の日本語訳は、配線の拡散防止絶縁膜についての記述の中でSiNのκ値が6を超えるとし、別の箇所では接着層やエッチストップ層、ハードマスク層、誘電体バリアがあるために配線容量の削減へのLow-κ材料の寄与が薄れてきたとしています。
応力ライナーと同じ膜ですか?
同じ膜が両方の役を担う場合があります。東京エレクトロンはNT333の製品ページで、ALDサイクル内へ改質ステップを組み込むことで低温域での膜質の高品質化とアプリケーションごとの膜ストレス調整を可能にしたとし、膜自体のエッチング耐性にも触れています。同社製品についての記述です。厚みと応力が同時に注文されます。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- 自己整合コンタクトとは ── ゲートの横で短絡を防ぐ側で、こちらは穴の底で接合を守る側です
- 応力ライナーとは ── 同じ窒化膜へ、応力という2つ目の注文が乗った姿です
- ステップカバレッジ(段差被覆性)とは ── ストップ層の側面の薄さが、そのまま抜けやすさになります
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- 日立評論 2007年4月号「45 nmノード対応縦型ALD成膜装置 ALDINNA」株式会社日立国際電気 須田敦彦ほか(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── ALD法を低サーマルバジェットと良好なステップカバレッジから65〜45 nmノード以降に対応する成膜技術とすること、ALD-SiNの適用部位としての高ステップカバレッジのライナー膜およびコンタクトエッチストッパ膜と低温形成のサイドウォールスペーサ膜、膜厚100 nmのSiN膜での高密度パターン部の底部100%・側部97.8%と低密度パターン部の底部98.9%・側部97.8%というステップカバレッジ観察例、300 mmウェーハでの膜厚均一性±2.0%・ステップカバレッジ97%超・1バッチ100枚・0.13 μm超パーティクル50個未満・膜厚25 nmで32枚/時のスループット、600 ℃以下の低温域での窒素活性種生成、ALD膜と減圧CVD膜の水素脱離量の比較
- JEITA公開「国際半導体技術ロードマップ 1999年版 日本語版 フロントエンドプロセス」半導体技術ロードマップ専門委員会訳(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── シリコン消費によるコンタクト抵抗率上昇を避けるためシリサイド膜厚をコンタクト接合深さの1/2以下とすること、DRAM積層キャパシタでのコンタクトサイズ0.1 μmとアスペクト比10以上、セルフアラインの高アスペクト比コンタクトエッチングとエッチング後のクリーニング手法、エッチストップと接合へのダメージ抑制およびCDと選択性の維持、メインエッチとオーバーエッチによるマルチステップとインターフェロメトリによる残り量測定
- 電子情報通信学会「知識ベース 10群2編1章 集積回路プロセス技術概論」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── サリサイド形成後の酸化膜・窒化膜・BPSG膜による層間絶縁膜、CMP後もポリシリコン部分とソース/ドレイン領域部分でBPSG膜厚に高低差が存在すること、窒化膜をポリッシングストッパーに用いること、窒化膜および酸化膜のエッチングによるコンタクトホール形成
- 電子情報通信学会「知識ベース 10群2編3章 プロセス要素技術」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 側壁保護膜で異方性を作るSi酸化膜エッチングでは孔径すなわちアスペクト比によってエッチング速度が大きく上下するマイクロローディング効果が発生すること
- JEITA 半導体技術ロードマップ専門委員会 公開「ITRS 2013年版 日本語訳 配線」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── SiNのκ値が6を超えること、接着層やエッチストップ層・ハードマスク層・誘電体バリアの存在によって全配線容量の削減へのLow-κ材料の寄与が薄れてきたこと
- 東京エレクトロン「成膜 NT333シリーズ」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── ALDサイクル内へ改質ステップを組み込むことによる低温域での膜質の高品質化とアプリケーションごとの膜ストレス調整、段差のある複雑形状への高いカバレッジ性、膜自体のエッチング耐性
- 東京エレクトロン「エッチング Certasシリーズ」Certas LEAGAの項(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 洗浄液を使わずに表面エッチングとクリーニングを行うガスケミカルエッチング装置であること、プラズマレスの加工による高稼働率と低コスト、ウォーターマークレス・各種酸化膜エッチングでのユニークな選択比・微細な界面クリーン制御、シリコンコンタクト前の表面クリーニングとシリコン酸化膜除去およびエッチバック、ハイアスペクト3次元構造の選択エッチングと高精細なリセスというアプリケーション