ダイ・ツー・ウェーハ接合とは
ダイ・ツー・ウェーハ接合とは、個片に切り出したダイを、個片化前のウェーハの上へ載せて接合する方式です。 貼り合わせる前に良品を選べる代わりに、切ったあとの面を接合面として持ち込むことになります。
ウェーハ接合には二通りの流し方があります。ウェーハを2枚そのまま合わせる流し方がウェーハ・ツー・ウェーハ(W2W)で、片方だけを先に個片化してから合わせる流し方がダイ・ツー・ウェーハ(D2W)です。
EV Groupは日本語の公式技術ページで、別々の生産ラインで作ったウェーハを積んで電気的につなぐW2Wハイブリッド接合をヘテロ集積化の中心に置き、CMOSイメージセンサや各種メモリとロジックの統合といった用途で既に実証されているとしています。同ページは続けて、多くのチップレットの大きさがまちまちであるため、D2Wによるハイブリッド接合が、ヘテロ集積化を可能にするためのより実用的な手段になるとしています。
外形寸法の話に、良品の位置の話が重なります。W2Wでは、相手のウェーハのどこに良品があるかも、こちらの手の外にあります。NEDOが公開している事業原簿は、三次元積層する際に、良品チップのみを選別して積層するか、良品率の高いウェハを選別して積層する必要があるとし、不良品を大量に製造する恐れを避けるため、良品を選別するためのテスト技術が不可欠だとしています。良品ダイを切り出してから載せるD2Wは、この選別を接合の手前へ回した方式です。
切ったあとの面が、そのまま接合面になります
Section titled “切ったあとの面が、そのまま接合面になります”D2Wの難しさは、接合面がダイシングを通り抜けてくるところにあります。W2Wでは、接合面は最後まで前工程のクリーンルームの中にあります。D2Wでは、いったん切り、フィルムフレームなどのキャリアへ載り、ピックアップされてから接合面として使われます。
面への要求は、直接接合の側から出ています。三菱重工技報は常温ウェーハ接合について、活性化した面の結合の手(dangling bond)どうしが原子の距離まで近づく必要があるぶん、接合できるかどうかが界面の面粗さでほぼ決まるとし、具体的には算術平均面粗さRaで0.5nmから0.7nm以下が必要だとしています。同技報が対象とする常温ウェーハ接合装置での値です。同技報はさらに、接合界面に存在するパーティクルがボイドの原因となるため洗浄も十分行う必要があるとし、活性化した表面へ残留ガス成分が再吸着して結合の手を終端してしまう事態を避けるため、一般に10のマイナス6乗Pa台の真空度が必要だとしています。
Ra 0.5nmという面が、切断と搬送を経て手元へ来ます。パーティクルが1つ挟まれば、そこはボイドになります。EV Groupは公式技術ページで、直接配置式D2W接合の短所として、接合界面への接触が必要なこと、マルチダイスタック用途でのダイ搬送、そしてダイ配置時のパーティクル管理を挙げています。
同社は公式製品ページで、EVG320 D2Wを直接配置式D2W接合向けの業界初の商用ハイブリッド接合用活性化・洗浄装置だとし、フィルムフレームやその他のカスタマイズされたキャリアなど各方式によるダイ投入に対応し、サードパーティのピック&プレース・ダイボンディングシステムとシームレスに統合できるハードウェアとソフトウェアのインターフェースを備えるとしています。個片化したダイを接合の直前にもう一度洗って活性化する工程が、D2Wでは1台の装置になっています。
一括式と直接配置式で、積み上がる誤差が入れ替わります
Section titled “一括式と直接配置式で、積み上がる誤差が入れ替わります”EV Groupの公式技術ページは、ヘテロ集積化のためのD2W接合方式として、一括式D2W接合(Co-D2W)と直接配置式D2W接合(DP-D2W)の二つを挙げ、それぞれに長所と短所があるとしています。
一括式は、複数のダイを1回のステップで最終ウェーハへ一括搬送する方式です。同ページは、その製造フローがキャリアの準備、キャリアへのダイ配置、ウェーハ接合(仮接合と永久接合)、キャリア剥離の4つの主要セグメントで構成されるとし、シリコンフォトニクス向けなどで数年来、数量を限った生産に使われてきた方式だとしています。長所として同ページが挙げるのは、確立された技術であること、W2Wハイブリッド接合と同等のダイ活性化と洗浄が使えること、酸化膜の管理、そして支持基板がリワーク可能であることの4点です。短所として挙げられているのは、D2WとW2Wのアライメントエラーが加算されること、キャリアの準備・利用・洗浄にかかる費用、そしてダイ厚のばらつきを最小にする必要があることです。
直接配置式は、ピック&プレース式のフリップチップボンダーを使い、個片化したダイをターゲットウェーハ上に1つずつ接合する方式です。同ページは、その製造フローの主要セグメントを3つとし、キャリアへのダイ配置、ダイの洗浄と活性化、そしてフリップチップ方式による直接配置を挙げています。
二つの方式は、誤差の積み上がりとパーティクルの持ち込みを交換しています。 一括式は再構成キャリアの上へダイを並べ、その先はW2Wと同じ形で流します。洗浄と活性化はウェーハ相手の工程がそのまま使える代わりに、キャリアへ並べたときのずれと、キャリアをウェーハへ合わせるときのずれが足し算になります。直接配置式では位置合わせが一段で済む代わりに、接合界面へ触れながら1つずつ載せることになります。
つまみは、ダイの厚みと、熱処理の手前で区切る線です
Section titled “つまみは、ダイの厚みと、熱処理の手前で区切る線です”D2Wで先に動かすことになるのが、ダイの厚みです。薄くすれば積んだときの総高さが下がり、一括式が求めるダイ厚のばらつきも絶対値として小さくなります。代わりに、キャリアから剥がす工程に時間がかかります。東レエンジニアリングは公式ニュースで、半導体実装工程においてチップをダイシングフィルム等のキャリアから剥離する工程はニードルによる剥離が主流だとしたうえで、一般に薄型に分類される100µm以下のチップではチップ専用の治具を用いた方式が用いられ、通常の10倍以上の時間がかかるとしています。同社は、粘着力の差を利用して剥離するスタンプ方式ではさらに時間が要り、生産性の問題があったとしています。同社が2024年に公表した開発の記述です。
同社は、新たに開発したレーザー・ピール・トランスファー(LPT)技術であれば、厚みが3µm以下の超極薄チップでも、従来のフリップチップボンダーを上回る速さでキャリアから拾い上げて基板へ移せるとしています。厚みを下げるほどピックアップ側の時間が伸びるという関係を、装置開発の側から裏返す動きです。ウェハ薄化と薄化ウェーハのハンドリングが、D2Wでは接合の前提条件になります。
もう一つのつまみが、どこまで進んだら後戻りが利くかという線です。東京エレクトロンは公式製品ページで、Synapse ZFが貼り合わせ後、永久接合であるアニールの前にやり直し可能なリワーカー装置だとし、永久接合プロセスにおける歩留まり向上と製造コストの削減に寄与するとしています。同社製品での記述です。仮接合と永久接合を分けておけば、ずれや異物に気づいた段階で外せます。ひと続きにすれば工程は短くなり、接合アライメントの結果を後から確かめて直せる範囲は、熱処理の手前までになります。
代わりに引き受けるもの
Section titled “代わりに引き受けるもの”D2Wが引き受ける代償は3つあります。1つずつ載せるという時間、切ったあとの面を接合面として持ち込むという清浄度の負担、そして一括式を選んだ場合に足し算になる位置合わせの誤差です。その代わりに得られるのが、大きさの異なるダイを載せられることと、載せる前に良品を選べることです。
ハイブリッドボンディングをD2Wで流すとき、接合面の作り込みはCMPから始まり、ダイシング、キャリア搬送、洗浄と活性化を経て接合へ入ります。工程の数だけ、Ra 0.5nmの面が汚れる機会が増えます。D2Wの歩留まりの原因が接合の手前の搬送と洗浄へ集まるのは、そのためです。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”ダイ・ツー・ウェーハ接合とは何ですか?
個片に切り出したダイを、個片化前のウェーハの上へ載せて接合する方式です。貼り合わせる前に良品を選べる代わりに、切ったあとの面を接合面として持ち込むことになります。
ウェーハ・ツー・ウェーハとの使い分けはどうなりますか?
選別を接合の手前へ回せるかどうかで使い分けます。EV Groupの公式技術ページは、多くのチップレットの大きさがまちまちであるため、ダイ・ツー・ウェーハによるハイブリッド接合がヘテロ集積化のより実用的な手段になるとしています。ウェーハ同士を合わせる方式では、良品の位置も外形寸法も相手のウェーハに従います。
良品を選んでから載せると、何が起きますか?
不良を作り込む量が減ります。NEDOの事業原簿は、三次元積層する際に良品チップのみを選別して積層するか、良品率の高いウェハを選別して積層する必要があるとし、不良品を大量に製造する恐れを避けるため、良品を選別するためのテスト技術が不可欠だとしています。
一括式と直接配置式はどう使い分けますか?
EV Groupの公式技術ページは、一括式D2W接合が複数のダイを1回のステップで最終ウェーハへ一括搬送する方式で、キャリアの準備、キャリアへのダイ配置、ウェーハ接合、キャリア剥離の4つのセグメントからなるとしています。直接配置式はピック&プレース式のフリップチップボンダーで個片化したダイを1つずつ接合する方式で、キャリアへのダイ配置、ダイの洗浄と活性化、ダイの直接配置の3つのセグメントからなるとしています。
接合面にはどのくらいの平坦さが要りますか?
三菱重工技報は、常温ウェーハ接合では結合の手どうしが原子の距離まで近づく必要があるぶん、接合できるかどうかが界面の面粗さでほぼ決まるとしたうえで、算術平均面粗さRaで0.5nmから0.7nm以下が必要だとしています。同技報が対象とする常温ウェーハ接合装置での値です。
パーティクルは何を引き起こしますか?
ボイドです。同技報は、接合界面に存在するパーティクルがボイドの原因となるため、洗浄も十分行う必要があるとしています。EV Groupの公式技術ページも、直接配置式の短所としてダイ配置時のパーティクル管理を挙げています。
置き直しはどの段階まで可能ですか?
熱処理の手前までです。東京エレクトロンは公式製品ページで、Synapse ZFが貼り合わせ後、永久接合であるアニールの前にやり直し可能なリワーカー装置だとしています。同社製品での記述です。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- ハイブリッドボンディングとは ── 誘電体と金属を同時に直接つなぐ接合そのものです
- ウェーハ接合とは ── ウェーハ同士を合わせる側の流し方です
この記事の事実は、誰でも読める公開資料を根拠とし、各URLの到達可否をこちらで実測しています。したがって、リンク先が移動または消滅した場合は、その旨をこのページへ反映します。
- EV Group「ダイ・トゥ・ウェーハ プラズマ活性化フュージョン/ハイブリッド接合」公式技術ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── W2Wハイブリッド接合がヘテロ集積化の中心的プロセスでありCMOSイメージセンサやメモリとロジックの統合で実証済みであること、多くのチップレットの大きさがまちまちであるためD2Wがより実用的な手段になること、一括式D2Wが複数ダイを1ステップで一括搬送しキャリアの準備・キャリアへのダイ配置・ウェーハ接合・キャリア剥離の4セグメントからなること、その長所と短所、直接配置式D2Wがキャリアへのダイ配置・ダイの洗浄と活性化・フリップチップ方式による直接配置の3セグメントからなること、その短所に接合界面への接触とダイ配置時のパーティクル管理が含まれること
- EV Group「EVG320 D2W 全自動接合界面活性化/ダイ・トゥ・ウェーハ高精度配置装置」公式製品ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 直接配置式D2W接合向けの活性化・洗浄装置であること、フィルムフレームやカスタマイズされたキャリアなど各方式によるダイ投入に対応すること、サードパーティのピック&プレース・ダイボンディングシステムと統合できるインターフェースを備えること
- 三菱重工工作機械 後藤崇之「多岐にわたる半導体デバイスの製造に貢献する常温ウェーハ接合装置」三菱重工技報 Vol.57 No.3(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 接合には結合の手どうしが原子レベルまで接近する必要があり接合界面の面粗さが接合の可否を大きく左右すること、算術平均面粗さRaで0.5nmから0.7nm以下が必要であること、接合界面のパーティクルがボイドの原因となるため十分な洗浄が要ること、活性化面への残留ガス再吸着を避けるため一般に10のマイナス6乗Pa台の真空度が必要であること
- 東レエンジニアリング「半導体用の超極薄チップ実装技術を開発」公式ニュース(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── チップをダイシングフィルム等のキャリアから剥離する工程はニードルによる剥離が主流であること、100µm以下の薄型チップでは専用治具を用いた方式で通常の10倍以上の時間がかかること、スタンプ方式ではさらに時間が要り生産性の問題があったこと、レーザー・ピール・トランスファー技術なら厚み3µm以下のチップを従来のフリップチップボンダーより速く拾い上げて基板へ移せること
- NEDO「立体構造新機能集積回路(ドリームチップ)技術開発 事業原簿 公開版」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 三次元積層する際に良品チップのみを選別して積層するか良品率の高いウェハを選別して積層する必要があり、不良品を大量に製造する恐れを避けるため良品を選別するためのテスト技術が不可欠であること
- 東京エレクトロン「3次元実装 Synapse/Ulucusシリーズ」公式製品ページ(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── Synapse ZFが貼り合わせ後・永久接合であるアニールの前にやり直し可能なリワーカー装置であること、永久接合プロセスにおける歩留まり向上と製造コスト削減に寄与すること