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エロージョン(CMP)とは

エロージョンとは、CMPで細い配線が密集した領域が、絶縁膜ごと周囲より低くなる現象です。 1本の配線がへこむディッシングに対し、領域単位で沈む点が異なります。

エロージョンの量を左右するのはパターン密度です。CMPでは、東京エレクトロンの公式用語集が記述するとおり、研磨パッドで覆われた回転テーブルへウェーハを押し当て、スラリーの化学作用と機械的な研磨を同時に働かせます。このとき、削れる速さは表面に露出している材料の組み合わせで決まります。

配線が密集した領域では、単位面積あたりに露出する金属の割合が高くなります。金属が絶縁膜より削れやすい条件では、その領域の実効的な除去速度が周囲より上がります。結果として、領域が絶縁膜ごとまとめて低くなります。周囲の疎な領域との差は、領域単位の段差となって上の層へ引き継がれます。

影響は上の層へ及びます。領域単位で表面高さがずれると、その上でリソグラフィを行ったときに面内で焦点がずれます。配線の断面積も減るため抵抗のばらつきが増えます。多層に積むほど誤差が累積するため、設計と工程の両方で密度を均す対策が取られます。

段差は、上の層へ積み上がります
多層に積むほど段差が積み上がります設計上の表面高さ3層目2層目1層目配線が密集した領域設計と工程の両方で密度を均します上の層で焦点がずれます領域単位で表面高さがずれるため、面内で焦点が揃わなくなります抵抗のばらつきが増えます配線の断面積も減るためです多層に積むほど誤差が累積します
エロージョンでできた領域単位の段差は、層を重ねるほど積み上がります。表面高さが領域ごとにずれると上の層で焦点が揃わなくなり、配線の断面積も減るため抵抗のばらつきが増えます。
エロージョンとディッシング ─ 沈む範囲が異なります
設計上の表面高さ疎な領域金属の面積比が低いほぼ設計高さのままエロージョン量ディッシング密な領域金属の面積比が高い絶縁膜ごと領域全体が沈む疎な領域ダミーパターンで密度を均す対象
配線が密集した領域では金属の面積比が高く、実効的な除去速度が上がります。その領域が絶縁膜ごと沈むのがエロージョンで、その中の1本1本に乗る局所的なへこみがディッシングです。断面計測では両者を分けて測ります。

レゾナックが公開している日立化成テクニカルレポート第55号(2013年1月、野部茂氏ほか)は、Cu配線のCMPで、最終的に100 µm幅の太幅配線のディッシングを10 nm以下、細密配線のエロージョンを数nm以下へ収める必要があると書いています。

同レポートのメタルスラリー一覧では、一段目のCu用スラリーHS-H700シリーズは研磨圧力14.0 kPaでCu 850 nm/min・TaN 1 nm/min未満、このとき100/100 µm部のディッシングが50 nm未満、9/1 µm部のエロージョンが10 nm未満です。二段目のバリアメタル用スラリーHS-T915シリーズは研磨圧力10.5 kPaでCu 27 nm/min・TaN 95 nm/min・SiO₂ 90 nm/min・SiOC 31 nm/minとなり、ディッシングが10 nm未満、エロージョンが5 nm未満へ縮みます。ロータリータイプの研磨機とポリウレタン系硬質パッドでの、同社の測定値です。

二段目で縮む理由は、選択比の付け替えです。同レポートは、Cu-CMPで生じた段差をバリアCMPの研磨選択比の制御で回復させられるとし、研磨条件と酸化剤濃度の最適化でCu:Ta:SiO₂の選択比を1:3:3程度にすると最終仕上がりが最も平坦になると書いています。上のHS-T915シリーズの数値はこの比に近く、約1:3.5:3.3にあたります(同レポートの数値からこの記事で計算しました)。一段目でCuを速く削り、二段目ではCuをほとんど削らずに絶縁膜側を削って段差を埋めます。

JSRが公開しているJSR TECHNICAL REVIEW 第118号(2011年、金野智久氏)は、Cu配線のCMPを、Cuを研磨する一段目とバリアメタルを研磨する二段目の二段階研磨として記述し、各段階でCu配線が過剰に研磨されるディッシングと、微細配線が緻密に配列した箇所の絶縁膜が過剰研磨されるエロージョンが生じるとしています。同資料は、この窪みの深さが配線の厚みばらつきへ直結するとしています。

二段目では、残留したCuとバリアメタル、絶縁膜の3種類を同時に研磨します。同資料は、この被研磨対象材料の研磨速度比が平坦化性能へ大きく影響するとしています。細い配線が並んだ領域は、単位面積あたりのCuとバリアメタルの割合が高く、絶縁膜の割合が低くなります。3材料の研磨速度が揃うほど密集側と疎側の差は縮み、どれか1つだけが速く削れる条件ではその材料の面積比が高い領域が沈みます。エロージョンがパターン密度で決まるのは、この面積比の作用のしかたが理由です。同資料は、二段目のスラリーがアルカリ性主流のため脆弱なLow-k膜も高い研磨速度で削ってしまい、誘電率が約2.2のporous Low-k膜では膜厚の制御が難しくなるとも書いています。

現場のつまみと、動かした代償

Section titled “現場のつまみと、動かした代償”

研磨圧力を上げると単位時間あたりの除去量は増えますが、密集領域の沈み込みも増えます。フジミインコーポレーテッドの森永均氏による公開解説は、研磨の摩擦が加工面の摩耗だけでなく摩擦熱を引き起こし、加工面が数十度加温される例も多いと述べたうえで、化学作用は一般に10℃程度の加温で2倍程度促進されると書いています(反応の活性化エネルギーが51 kJ/molの場合の目安です)。同氏は、大型基板では中心部に熱がこもりやすく中心部の研磨速度が増大して平坦性へ悪影響を及ぼすとしています。圧力を下げた側の代償は時間です。減った除去量を研磨時間で埋める間、凹部は薬液にさらされ続けます。

研磨時間は段差の詰まり方を直接左右します。ケイデンスが公開しているCMP平坦化シミュレーションの技術記事は、研磨時間を20秒、40秒、60秒、80秒と振ったときに膜厚が削れていく様子を示し、Cuプロセスが5工程、PMDプロセスが4工程から成るとしています。時間を伸ばせば疎な領域も削れて段差は詰まりますが、密集領域は先に沈んでいるので、伸ばした分だけエロージョンが深くなります。

添加剤による選択比は、圧力の作用のしかたそのものを動かすつまみです。東亞合成の研究年報 TREND 2025 第28号(藤本悠椰氏)は、研磨量が圧力に比例するプレストン式に対して、圧力が1乗より大きく影響する非プレストニアン性を示す添加剤が有効とされると述べ、低圧部では膜に吸着保護して研磨速度を下げ、高圧部では剥がされて元の研磨速度を維持する添加剤が望まれると書いています。同社の測定条件は、研磨装置Engis製EJ-380CH-Y、研磨盤回転数60 rpm、研磨時間2 min、研磨荷重1 kgと6 kg、パッドIC1000/SUBA400、一次粒径80 nmの高純度コロイダルシリカ10 wt%にポリマー0.05 wt%、pH11、対象は30 mm×30 mmのSiO₂膜とSiN膜です。疎水変性ブロック共重合品のPP-40HDが非常に優れた圧力応答性を示し、この品だけがSiN膜の研磨速度を下げました。代償は絶縁膜の物性です。前掲のJSRの資料は、非イオン性界面活性剤でLow-k膜の研磨抑制効果を大きくしたスラリーで、研磨後のLow-k膜の誘電率が上昇し、リーク電流密度が大きく絶縁破壊電圧も低下したと報告しています。

砥粒の種類と粒径も密集領域の沈み方を左右します。前掲の日立化成テクニカルレポート第55号のセリアスラリー一覧では、添加剤を使ったHS-8005がSiO₂膜350 nm/min・SiN膜8 nm/minで研磨傷の相対値100、液中造粒で粒径を制御したHS-NCがSiO₂膜250 nm/min・SiN膜4 nm/minで研磨傷1未満です。SiO₂とSiNの研磨速度比はHS-8005で約44倍、HS-NCで約63倍にあたります(同レポートの数値からこの記事で計算しました)。研磨傷を100分の1へ落とす代わりに、SiO₂の研磨速度を350 nm/minから250 nm/minへ渡しています。レゾナックの公式コラムも、粒子径を大きくするとスクラッチが増える課題があったと書いています。

パターン密度は設計側のつまみです。前掲のケイデンスの記事は、密度・配線幅・配線間隔をデザインルールでチェックする従来の方法について、CMPの影響が広範囲に及ぶため局所的なチェックでは不十分だとしています。同記事の例では、密度がルール内でも膜厚が極端に薄い領域と、ルール違反でも膜厚ばらつきが小さい領域が同じチップに並びます。同記事は、パターンの疎な領域へダミーのパターンを生成するダミーフィルについて、配線容量が増加してタイミングへ影響するため最適なルールでの平坦化が課題になるとし、28 nmプロセスノード以降はダミーフィルの最適化だけでホットスポットが残るケースも出てきたとしています。

段差を詰めた分は、どこかで払います
二段研磨で段差が縮みます棒の高さは段差の上限値です(1 nm を 1.8 px で描いています)50 nm未満10 nm未満ディッシング100/100 µm部10 nm未満5 nm未満エロージョン9/1 µm部一段目 Cu研磨 14.0 kPa二段目 バリア研磨 10.5 kPa研磨速度を渡しますCu は 850 から 27 nm/min へ代わりに TaN 95・SiO₂ 90 nm/min で周囲の絶縁膜側を削って段差を埋めます配線容量を渡しますダミーフィルで密度の疎密は縮みますが配線容量が増えてタイミングが悪化します28 nm 以降は設計側の追加対応が要ります
レゾナックが公開する日立化成テクニカルレポート第55号の数値では、一段目のCu研磨後に50 nm未満のディッシングと10 nm未満のエロージョンが、二段目のバリア研磨でそれぞれ10 nm未満と5 nm未満へ縮みます。縮んだ分の代わりに、Cuの研磨速度は850 nm/minから27 nm/minへ、設計側ではダミーフィルによる配線容量の増加を渡すことになります。

何を測るとエロージョンが分かるか

Section titled “何を測るとエロージョンが分かるか”

段差そのものは断面で測ります。前掲の日立化成テクニカルレポート第55号は、二段研磨したパターンウェーハの断面TEM写真を200 nmのスケールバー付きで載せています。日常の管理では膜厚測定の面内分布と、欠陥検査で拾える研磨傷の数を並走させます。ウェーハ端の1周だけエロージョンが深いという分布が出たときは、圧力側を疑います。前掲のフジミの解説は、軟質パッドではパッドの復元力により加工面の端部に圧力が集中しやすく、対策にリテーナリングやテンプレートが用いられるとしています。運用はパッドコンディショニングCMPパッドのページへ続きます。

影響はその層の外へ及びます。前掲のケイデンスの記事は、表面高さのばらつきがリソグラフィ工程での焦点深度のホットスポットを誘発し、製造歩留り悪化の原因になるとしています。同記事はさらに、28 nmプロセスノード以降では配線幅が細くなるため膜厚研磨量の断面積に対する割合が高くなり、配線抵抗と配線容量のばらつきが大きくなるとし、多層配線の下層の凸凹によりCuプーリングで配線ショートが問題になる場合があるとしています。抵抗の側はビア抵抗RC遅延へ、ショートの側は歩留まりへ跳ね返ります。

積み上がる層数も条件です。前掲の日立化成テクニカルレポート第55号は、ロジックICが10層以上に多層化されており各層の平坦化が要るとし、CMPの適用箇所がSTIダマシン法によるCu配線形成へ多岐に及ぶとしています。1層あたり数nmの取りこぼしでも、10層を超えて積めば桁が上がります。

エロージョンとは何ですか?

CMPで細い配線が密集した領域が、絶縁膜ごと周囲より低くなる現象です。金属の面積比が高い領域では実効的に削れやすくなるため、領域全体が沈みます。

エロージョンとディッシングの違いは何ですか?

沈む範囲が異なります。ディッシングは1本の広い配線の内側がへこみます。エロージョンは配線群が並んだ領域が絶縁膜も含めて全体的に低くなります。前者は配線幅、後者はパターン密度で決まります。

なぜパターン密度で決まるのですか?

単位面積あたりに露出する金属の割合が動くためです。金属が削れやすい条件では、金属の面積比が高い領域ほど実効的な除去速度が上がります。周囲の疎な領域との差が、領域単位の段差として居座ります。

エロージョンが起きると何が困りますか?

領域単位で表面高さがずれるため、その上の層のリソグラフィで焦点が面内で揃わなくなります。配線の断面積も減るため、抵抗のばらつきが増えます。多層に積むほど誤差が累積します。

どうやって抑えますか?

パターン密度を面内で均すことが基本です。設計側では、疎な領域へダミーパターンを入れて金属の面積比を揃えます。工程側では、削る材料と絶縁膜の選択比を上げて密度差の影響を小さくします。

ディッシングと同時に起きますか?

同時に起きます。密集領域全体がエロージョンで低くなり、その中の1本1本にはディッシングが乗ります。断面計測では、両者を分けて測ります。

エロージョンはどこまで抑える数値なのですか?

レゾナックが公開している日立化成テクニカルレポート第55号は、Cu配線のCMPで、100 µm幅の太幅配線パターンのディッシングを10 nm以下、細密配線のエロージョンを数nm以下へ収める必要があると書いています。同レポートのバリアメタル用スラリーHS-T915シリーズは、研磨圧力10.5 kPaで9/1 µm部のエロージョンを5 nm未満としています。

二段研磨のどちらでエロージョンが決まりますか?

二段目です。同レポートは、Cu-CMPで生じた段差をバリアCMPの研磨選択比の制御で回復させられるとし、研磨条件と酸化剤濃度の最適化でCu:Ta:SiO₂の選択比を1:3:3程度にすると最終仕上がりが最も平坦になると書いています。一段目のHS-H700シリーズは9/1 µm部のエロージョンが10 nm未満、二段目のHS-T915シリーズは5 nm未満です。

選択比を上げると何が悪化しますか?

絶縁膜そのものの物性です。JSR TECHNICAL REVIEW 第118号は、非イオン性界面活性剤でLow-k膜の研磨抑制効果を大きくしたスラリーが、Low-k膜の誘電率を上昇させ、リーク電流密度を増やし、絶縁破壊電圧を低下させたと報告しています。研磨速度も同時に落ちます。

ダミーパターンを入れる代償は何ですか?

配線容量です。ケイデンスの公開技術記事は、ダミーフィルにより配線容量が増加してタイミングへ影響するため、最適なダミーフィルルールでの平坦化が課題になると書いています。同記事は、28 nmプロセスノード以降では、ダミーフィルの最適化だけでホットスポットが残る場合も出てきたとしています。

砥粒を替えるとエロージョンはどう動きますか?

レゾナックのセリアスラリー一覧では、添加剤を使ったHS-8005のSiO₂研磨速度が350 nm/min、SiN膜が8 nm/min、超微粒子品のHS-NCがSiO₂ 250 nm/min・SiN 4 nm/minです。研磨傷の相対値は100から1未満へ下がる一方、SiO₂の研磨速度も350 nm/minから250 nm/minへ落ちます。ロータリータイプの研磨機とポリウレタン系硬質パッドでの同社の測定値です。

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