選択成膜とは
選択成膜とは、同じ反応室の同じレシピのまま、載せたい下地の面にだけ膜を成長させ、隣の面の成長量を抑える成膜の作り方です。 膜厚の差を作るのは下地の表面終端であり、リソグラフィとエッチングを1組ずつ省く代わりに、選択性が破れた箇所がそのまま欠陥になります。
選択の土台は、下地ごとに最初の核が立つまでのサイクル数に差が付くことです。核生成遅れは、下地へ最初の核が立つまでにかかるサイクル数を指す現場語です。SEAJの半導体製造装置用語集(ウェーハプロセス)は、エレベートソース/ドレインを、絶縁膜上とシリコン上の成長過程の差を利用してソース/ドレイン領域のみへ選択的にシリコン膜を成長させ、その領域を積み上げた構造としています。同じガスを同じ時間流しても、絶縁膜の面とシリコンの面で成長量に差が付くため、窓が開いた面だけが厚くなります。
この差は、量産級のラインでは装置の構成そのものに刻まれています。産総研の先端半導体製造技術コンソーシアムが公開している導入装置一覧は、シリコンゲルマニウム化学気相成長装置を、シリコン基板表面が限定的に表れている領域に対して、高濃度にドーピングしたN型シリコン膜とP型シリコンゲルマニウム膜を選択成長させる装置と記述しています。同じ一覧は、この装置が成長膜の下地表面から酸素と炭素を除去して下地を清浄化するための専用チャンバを併設していると記述し、洗浄装置の主な適用工程として、n型Siエピ膜とp型SiGeエピ膜それぞれの選択成長前の洗浄、およびALDによるHigh-kと仕事関数金属の成長前の洗浄を掲げています。2026年時点の同コンソーシアムの掲載内容です。
選択成膜の要点は、成膜レシピよりも1つ前の洗浄にあります。下地へ酸素と炭素が付いたままだと成長の起点が変わり、窓の内側でも核生成遅れが伸びます。
選択性が破れたときに払うもの
Section titled “選択性が破れたときに払うもの”JEITAの半導体技術ロードマップ専門委員会が公開しているITRS 2013年版の配線章は、選択プロセスに起因した配線間ショートによる歩留り低下が依然として懸念されると報告しています。同じ章は、キャップメタルをファインピッチのCu配線へほとんど完璧に成長させる要求を挙げています。2013年版時点の記述です。
ITRS 2011年版の配線章は、メタルキャッププロセスをCu配線上へ選択的にメタルバリアが成長するものと記述し、Low-k層間絶縁膜とCu配線の間へ拡散防止膜を挿入する工程を割愛できる可能性を挙げています。同じ章は、選択性が不完全なため移行期にはキャップメタルと拡散防止絶縁膜が共存すると述べ、この時点で選択メタルキャッププロセスが研究段階にとどまると報告しています。同じ章が選択成膜可能な金属材料として名前を挙げるのは、W、CoWP、NiMoP、CVD Co、CVD Ruで、当時すでに製造工程への採用もみられると述べています。
何を測り、どのつまみで動かすか
Section titled “何を測り、どのつまみで動かすか”測る対象は3つです。載せたい面と隣の面の膜厚の比、隣の面へ立った核の個数、そして配線間のリーク電流とショートによる歩留りです。膜厚の比は膜厚測定、核の個数は欠陥検査が受け持ちます。
1つ目のつまみは下地の洗浄です。前掲のITRS 2011年版の配線章は、選択性がメタル間の絶縁膜の前洗浄や後洗浄により向上すると述べ、同時にこれがコスト増へつながること、洗浄プロセス自身も選択性の課題を抱えることを挙げています。洗浄を強めると選択比が上がり、代わりに工程数と薬液のコストが増え、洗浄そのものの面内ばらつきが新しい変動源になります。緩めるとコストが戻り、代わりに残渣の分だけ隣の面の核生成遅れが縮みます。
2つ目は核生成ステップです。ITRS 2013年版の配線章は、W-CVDが通常シランによる核生成ステップを用いること、これで形成されるSiリッチなWがプラグ内に占める割合が高くなり、将来の技術世代でコンタクト抵抗が許容範囲を超えて上昇することを述べています。核生成層を厚くすると成長の立ち上がりが揃い、代わりにコンタクトプラグの抵抗が上がります。薄くすると抵抗を返す代わりに、立ち上がりがサイクルごとにばらつきます。
3つ目はサイクル数です。半導体歴史館のALDの記述は、置換吸着が飽和する反応のため、充分な暴露時間のもとでは表面反応が成長速度を支配し、ほぼ完全な表面反応律速の成膜になると述べています。サイクル数を増やすと膜厚が積み上がり、代わりに隣の面へ核が立つ確率が上がります。数サイクルごとに洗浄やエッチを挟んで選択性を回復させる作り方が、膜厚とこの確率を別々に管理するやり方です。
得るものは、リソグラフィ1回とエッチング1回、そして合わせ精度の取り分1つです。前掲のITRS 2013年版の配線章は、CVDによる選択CoキャップがTDDBの劣化と抵抗の増大を伴わずにEM信頼性を30倍改善したという報告を挙げ、RC遅延への影響を5パーセント未満へ抑えるキャッピングプロセススキームを要求として掲げています。同じ章は、高品質のALDプロセスの出現の遅れが2nm以下のバリア厚の要求へ追いつかず、課題になっていると述べています。バリアメタルの取り分を配線断面へ返す道が、選択成膜の側にあります。2013年版時点の見通しです。
差し出すものは3つです。選択性の破れが歩留りへ直結すること、前後の洗浄の工程数と薬液コスト、そして前工程の残渣と自然酸化膜という下地の履歴に成膜結果が左右されることです。ダマシン法の流れの中では、この3つが配線層ごとに積み上がります。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”選択成膜とは何ですか?
同じ反応室の同じレシピのまま、載せたい下地の面にだけ膜を成長させ、隣の面の成長量を抑える成膜の作り方です。膜厚の差を作るのは下地の表面終端です。
何が選択を作るのですか?
下地ごとに最初の核が立つまでのサイクル数に差が付くことです。SEAJの用語集は、エレベートソース/ドレインを、絶縁膜上とシリコン上の成長過程の差を利用してソース/ドレイン領域のみへ選択的にシリコン膜を成長させた構造としています。
現場では下地に何をしてから成膜へ入りますか?
下地の酸素と炭素を除去します。産総研の先端半導体製造技術コンソーシアムの導入装置一覧は、選択成長を担うシリコンゲルマニウム化学気相成長装置が、成長膜の下地表面から酸素と炭素を除去して下地を清浄化するための専用チャンバを併設していると記述しています。
選択性が破れると何が起きますか?
配線間のショートです。JEITAが公開するITRS 2013年版の配線章は、選択プロセスに起因した配線間ショートによる歩留り低下が依然として懸念されると報告しています。
効果はどのくらいの数字で語られていますか?
同じ2013年版の配線章は、CVDによる選択CoキャップがTDDBの劣化と抵抗の増大を伴わずにEM信頼性を30倍改善したという報告を挙げ、RC遅延への影響を5パーセント未満へ抑えるキャッピングプロセススキームを要求として掲げています。2013年版時点の見通しです。
選択比を上げるつまみは何ですか?
下地の洗浄です。ITRS 2011年版の配線章は、選択性がメタル間の絶縁膜の前洗浄や後洗浄により向上すると述べ、同時にこれがコスト増へつながること、洗浄プロセス自身も選択性の課題を抱えることを挙げています。
選択成膜の候補として挙がっている金属は何ですか?
ITRS 2011年版の配線章は、エレクトロマイグレーション耐性を改善する選択成膜可能な金属材料として、W、CoWP、NiMoP、CVD Co、CVD Ruの名前を挙げ、当時すでに製造工程への採用もみられると述べています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- ALD(原子層堆積)とは ── 表面反応律速という共通の土台と、下地依存という差
- 選択比とは ── エッチングの選択比と、成長量の比としての選択性
- ステップカバレッジとは ── 同じ面へ均一に載せる指標と、面ごとに載せ分ける指標
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- 産総研 先端半導体製造技術コンソーシアム「導入装置一覧」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── シリコン基板表面が限定的に表れている領域への選択成長、下地から酸素と炭素を除去する専用チャンバの併設、選択成長前の洗浄という工程名
- JEITA 半導体技術ロードマップ専門委員会「ITRS 2013年版 配線」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 選択プロセスに起因した配線間ショートによる歩留り低下、選択CoキャップのEM信頼性30倍、RC遅延5パーセント未満の要求、W-CVDのシラン核生成ステップとSiリッチ層、2nm以下のバリア厚の課題
- JEITA 半導体技術ロードマップ専門委員会「ITRS 2011年版 配線」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── Cu配線上へ選択的に成長するメタルキャップ、選択性の不完全さとキャップメタルおよび拡散防止絶縁膜の共存、前洗浄と後洗浄による選択性の向上とコスト増、選択成膜可能な金属として名前が挙がるW・CoWP・NiMoP・CVD Co・CVD Ru
- SEAJ「半導体製造装置用語集(ウェーハプロセス)」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── エレベートソース/ドレインにおける絶縁膜上とシリコン上の成長過程の差、ALDの原料交互供給
- 半導体歴史館(SHMJ)「ALD(原子層成膜)」(2026年9月3日にリンク生存を実測、200)── 置換吸着が飽和する反応という記述、充分な暴露時間のもとでの表面反応律速